技能実習制度が抜本的に改革される?!見直しポイントについて解説!

この記事では、昨今活発に議論されている「技能実習制度の改正」について、少し古い内容にはなってしまいますが、2022年7月29日付けの日本経済新聞の内容を元に、外国人材業界における現場の第一線で活動している弊社代表中村が解説しています。

なお、本記事は以下のYouTubeの内容を一部編集した上で公開しております。ぜひ以下のYouTube動画もあわせてご覧ください。

出演者プロフィール
中村 大介 / 株式会社ジンザイベース
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスの立上げを主導。国内在住の外国人材の就職課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。
和須津 亮 / 株式会社ジンザイベース
1994年千葉県市原市生まれ。2018年に大学卒業後、外国人採用支援を展開するスタートアップに新卒入社。特定技能、技能実習、技術・人文 知識・国際業務の人材紹介及び累計100名を超える特定技能・技能実習生の支援業務に携わる。2022年3月株式会社ジンザイベースヘ入社し、特定技能外国人の募集・集客及びマーケティング業務全般を担当している。

外国人技能実習の制度趣旨自体が形骸化している?

出典:日本経済新聞『技能実習、関係省庁で見直し 法相「課題、決着を」』2022年7月29日

和須津:2022年7月末に、古川法務大臣(当時)から「技能実習制度の本格的な見直しに乗り出す」という表明がなされて、今外国人材業界で話題となっています。

現状の技能実習制度では、実習先での暴力やパスポートの取り上げ等に始まる人権侵害、国際貢献という建前のもと受け入れている一方で、実態としては労働力の調整弁として活用されているのではという指摘があったりします。

また、国際社会からは、「転職ができない現代の奴隷制度」と散々批判をされている中で、こういった見直し議論が始まっています。

この報道に対して、率直に中村さんはどう思いますか?

中村:難しいですね。いい方向に動いていけばいいですよね。皆さんにとってのwin-winになっていくような動きがあれば、いいんじゃないかなとは思いますね。

和須津:実際、中村さんは前職で監理団体の役員という形で技能実習と特定技能の様々な現場で活動されてきたと思うんですけど、何が一番の問題なんですかね?

中村:どうでしょう。どの立場から見るかによって変わってくるのかなとは思いますが、結構、制度設計そのものに無理があるのかもしれないなとは思いますよね。

「実習」という建前で来てもらっているところが、形骸化してるってのが今回のニュースでも認めてると思うんですが、そこの制度設計を現代の実態に沿った形に変えていくってことが必要になってくるのかなと思いますね。

和須津:そうですね。本当にご指摘の通りで、実際は労働力として扱われてしまっているのは、私も前の会社で実習生の監理団体職員として働いてた時に感じるところはありましたね。実際そういう認識の企業や、実習生としてもお金稼ぐために日本に来ている方が大半で、「国際貢献って何だろう?」みたいなのは、結構感じることがあったので本当におっしゃる通りだなと思いました。

技能実習生の日本語能力は不足している?

和須津:今回発表された論点としまして、実習生の日本語能力が不足していて意思疎通が取れないといったところが問題として挙げられています。どうですか?制度が見直される中で、今後どうあるべきなんですかね?

中村:そうですね、確かに日本語能力のところは今年の初めぐらいですかね、片山さつきさんの講演をYouTubeで見たことがあったんですけど、そのときの問題点として、語学力の部分をご指摘なさっていた記憶がありますね。

まあ確かに、語学力が全くない状態で日本に来て、仕事も含めていろんな活動をしていくのは難しいのかなというのは、当たり前ですよね。

しかも、勉強しに来てる人たちではなくて、働きに来てる人たちで語学ができないっていうのは普通に考えたらあまりないですよね。

和須津:技能実習制度だと、日本語教育は基本送り出し機関に丸投げというか、正直日本側がそんなに関与できてるかっていうと、できていない制度なのかなって言うのも感じますね。

現地での日本語教育については、見直ししていただきたいなっていうのは個人的には報道見ていて思いましたね。

中村:そうなってくると、あんまり来なくなる可能性もありますね。

和須津:確かに、一長一短はありますね。

中村:筆記テストの「日本語能力試験」を仮に基準としたときに、実際の生活において重要な部分っていうのは、「読み書き」というよりかは「話す聞く」の方だと思うんですよね。ここの部分は、何か想定される課題になりそうな気はするんで、語学力をどういった基準でチェックしていくのかっていうのは、結構注目してるとこではありますね。

技能実習生が借金を背負って来日することは問題か?

和須津:送り出し機関に関連して、「不当に高額な借金を持って来日する技能実習生が多い」っていうところも一つ論点として挙げられていました。

中村:でもこれってどうなんですかね?

結局は、嘘をついてきてるわけじゃなくて、そういうビジネスを海外側においては展開していて、一方で日本は職業紹介で求職者からお金取るのはよろしくないよってとこで、ルールや文化の違いなだけの話だと思います。

なので、そこはちょっと疑問があるというか、「かわいそう」って確かに思っちゃうんですけど、ただ、欲しいものがあったときに、そこで自分のお金じゃできないから、何かしらの形でお金を集めて、それを得るだけの話だと思うんですよね。

それでいくと、学校に通えるようにどこかから借金をして通ったりする人いるじゃないですか。そういうことが全部問題なんじゃないかなみたいな議論になっちゃうんじゃないかな。

和須津:難しいですね。かわいそうという感情が先に出てきてしまうので、実態を歪めてしまってるケースがもしかしたらあるのかもしれませんね。

確かに中村さんのご意見の通り、自分でお金払って何かを得るために日本来るっていう立場で考えるのであれば、確かにもっとより公平な議論をしていくべきなのかなと思いますね。

送り出しビジネスの産業化と現地における情報格差

中村:まず借金のところでいうと、いいサービスを受けたらやっぱそこの金額が高いのは仕方ない話だと思うんですよね。

別にいっぱい借金を持ってる人もいれば、持ってない人もいたとすると、「どういう送り出し機関を使ってきてるか」っていうところの情報に偏りがあるってだけの話で、そこは日本側で解決できるポイントではないんじゃないかなと思ったりはしています。

来日するまでのお膳立てを全般送り出し機関がしてくれて、その対価を得たり、日本語教育も実態がどこまで伴ってるかちょっと微妙なんですけど、やった役務に対しての対価っていう形であれば、多分、今後もなくならないんじゃないかなと思いますね。

名目が変わるだけで同じような費用を取っていくんじゃないか。ってぐらいに、送り出し産業ってのが現地で成り立ってしまってますよね。

和須津:よく聞きますよね。送り出しビジネスがベトナムをはじめとした送り出し国の中で一つの産業として確立してしまっているので、絶対になくならないと。

中村:別に日本行き以外には、韓国・台湾・中東・イスラエルとかいろいろあるわけで。なので、日本行き以外にも多数の選択肢がある中で、さらに送り出し機関も無数にある。こういった中でどういった国・送り出し機関を選択するのか、そこの情報を透明化することが現地国において必要なのかなと。

費用の部分に関しては、繰り返しになりますが産業化してしまっているので、この構図を変えることはできないと思います。

転職ができない制度設計が、企業努力(待遇改善など)を阻害してきた?

中村:問題として何が上がってるのかといえば、いろいろと読み解いていくと、結局転職ができればそれで解決するんじゃないかなと思いますけどね。

和須津:まさしくそこの転職ができないっていうところも大きな論点の一つとして挙げられています。国際社会からも批判されてますし。

中村:転職ができるようになると、賃金が安いとか、劣悪な労働環境の会社からは人が一時的には来たとしても定着はしないって問題が起きてしまいます。

ただ、ここってもうその会社が変わらない以上解決できない話で、結構制度でそこの強制力を発揮したとしても、無理があるんじゃないかなと。

和須津:本当に人材獲得競争が日本人だけではなく、外国人材でも激しくなっていく、そんな未来なんですかね。

中村:でも当たり前ですよね。やっぱり働きたいと思ってもらえる環境をちゃんと作らないと人は定着しないわけで、それが外国人だからといっても日本人と同じく感情があるわけだから、そこを鑑みた上で待遇や労働環境を整備していくっていうのは、本来であれば当たり前の話で、そこにあぐらをかいてたってだけの話じゃないかな。

すでに出稼ぎ国としての日本人気に陰りが出ている?

和須津:先ほど台湾、韓国っていう選択肢があるという話で、日本以外にも高齢化が進んでいる国ってどんどんアジア圏で増えてるじゃないですか。

今後は中国とかも、同じ海外から人材を呼び寄せる戦略をとってきたときに、日本ってどうなっちゃうんですかね。

中村:現時点ですでに韓国の方が人気あるらしいですよ。

韓国の方が稼げると。ただ韓国の方が行くためのハードルは高いみたいですね。

なので、第1希望は韓国っていう方が多い可能性はありますね。ただ、日本の方が比較的手軽に行きやすいってところはあるかもしれないですが。

あとは、金銭面とか経済面で勝てないのであれば、文化推ししかないんじゃないすか。

和須津:最近は文化面でも韓国に負けちゃっている気がしますが。K-⁠POPとかですね。

中村:確かにそうですね。

実習生/受け入れ企業を監督する監理団体は、既得権益化している?

出典:外国人技能実習機構「令和2年度外国人技能実習機構業務統計概要」

和須津:最後に一つ論点として上がってたのが実習生の保護と、あとその受け入れ先企業の監督を行う第三者機関「監理団体」さんですね、ここの監理が不十分なんじゃないかと。

中村:ここはですね、もう既得権益になってる部分あると思うんですよ。

いわゆる、協同組合っていうのが実施をする団体監理型が大多数を占めてる中で、通常の企業(株式会社など)の参入ができないのが実態だと思うんですよね。

なので、通常の株式会社が特定技能の登録支援機関制度みたいに参入できるような形にして、競争できるような体制をとっていければ解決するんじゃないかなとは思いますけどね。

和須津:難しそうではありますけど。

中村:特定の団体しかできない制度なので、あぐらかいてしまうといったことは、構図としては起きてしまうのかなとは思いますね。

あとは、「実習」としてやっていくのか「労働者」としてやるのか、つまり、そもそもの定義を「現状のまま」なのか、それとも「変えていく」のかによって、そこの体制ってのも不要になる可能性もあると思います。

労働者寄りになっていくのであれば、別に協同組合以外にもできる、許認可制のもっと簡易的にやっていく形でもいいと思いますし。

編集後記

今回は、外国人技能実習制度の改革・見直し審議をテーマに、外国人材紹介会社の経営者に意見をお伺いしてきました。なかなか課題の多い制度ではありますが、どのような改革がなされていくのでしょうか。今後の動きに目が離せません。なお、YouTubeでもご覧いただけますので、続きが気になる方はぜひこちらからご覧ください。

また、弊社は登録支援機関として特定技能外国人のご紹介・支援に強みを持っています。技能実習や特定技能外国人の雇用を検討しているが、もう少し詳しく話を聞いてみたい、具体的に募集をしてみたいという方いらっしゃいましたら、ぜひこちらの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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