【外国人労働者向けの求人票】作成のポイントや注意点まで簡単解説

海外における求人票の役割

まずは海外における求人票の役割について確認してみましょう。 

日本よりも海外の方が求人票の役割が大きい

求人票とは社員の採用に取り組んでいる企業が、職務内容や応募条件などを記載する書類のことです。

主に人材紹介サービスや求人媒体、ハローワーク、大学の就職センターなどに発行する形になります。

この求人票は日本に限らず海外でも採用活動において活用される共通のツールです。

しかし、求人票に求められる役割は日本よりも海外の方が大きいと言われています。

日本と海外における求人票の役割の違いについては

  • ローコンテクストかハイコンテクストか
  • ジョブ型雇用かメンバーシップ型雇用か

といった背景に起因していると考えられています。 

次の項目から詳しく見ていきましょう。 

ローコンテクストとハイコンテクスト

ローコンテクストとは話し手に責任があり、誰が聞いてもわかるようにシンプルに話すコミュニケーションを指します。

対してハイコンテクストは聞き手側に責任があり、暗黙の了解や空気を読むといったことを求めるコミュニケーションのことです。

海外、特に欧米圏においてはローコンテクストが多く、日本は高いレベルでのハイコンテクスト文化とされています。

これらの違いは当然求人票にも表れており、ローコンテクスト文化が根強い海外では、業務の詳細からキャリアプラン等必要な情報を細かく記載し、求人票だけで職務に関する情報をほとんど得ることができるようになっています。

反面ハイコンテクスト文化である日本はある程度の必要事項は記載するものの、後は面接などで補足するといった形を取ることが多いのです。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用

ジョブ型雇用とは、あらかじめ業務内容を明確に定義し、その職務遂行に必要な専門スキルを持った人材を雇用する仕組みのことです。

職務の目的や内容・範囲、責任や権限などが事細かに記載されたジョブディスクリプションを作成するという特徴を持ち、これをそのまま求人票として扱うような形になります。

求職者はジョブディスクリプションを読めば、その業務に関する情報をほとんど得ることができます。

対してメンバーシップ型雇用とは日本型雇用とも呼ばれ、終身雇用や年功序列をベースとした雇用の仕組みです。

メンバーシップ型雇用では総合職としての採用になることが多く、求人票は大枠のみ記載されており、入社した後に求人票に書かれていた内容から変更されることも往々にしてあります。

外国人労働者向けの求人票における項目

海外における求人票の役割について見ていただいたところで、ここからは外国人労働者向けの求人票における具体的な項目についてご紹介します。

必須項目

日本で求人票を作成する場合、職業安定法で定められた以下の項目を明示する必要があります。 

業務内容

募集する業務に関する内容を記載する必要があります。 

労働契約期間

労働契約期間についての記載も求められます。

就業することになる場所

実際に就業することになる場所の住所などを記載します。

就労時間、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日

始業時間や終業時間、残業の有無、休憩時間や休日に関して明確に記載します。 

賃金

業務における給与について、月給や時間給などの形で記載します。 

健康保険や厚生年金、労災保険、雇用保険の適用に関する事項

社会保険などの適用に関して、記載することも求められます。

外国人労働者向けに設けた方が良い項目

外国人労働者の採用に取り組む場合は、求人票に以下の項目も設けるとよいでしょう。

キャリアパス

そのポジションにおける将来的なキャリアパスを記載しましょう。 

役割や責任・権限

求められている役割や、そのポジションにおける責任・権限なども明示すべきです。 

独自の価値観や組織風土

自社独自の価値観や風土などがあれば記載しましょう。 

募集背景

この求人募集を出すに至った理由や背景も記載する必要があります。 

福利厚生

福利厚生においての諸制度について記載しましょう。 

求める日本語レベル

このポジションにおいて求められる日本語レベルも明確にしておきます。 

外国人労働者向けの求人票を作成するときのポイント

続いて、外国人労働者向けの求人票を作成するときのポイントについて、6つのカテゴリーに分けてみていきましょう。

業務内容

まずは業務内容を記載する時のポイントについて確認したいと思います。

求人票においてメインの項目とも言える業務内容ですが、外国人労働者向けに作成する場合はより重要になってきます。

先程触れた通りジョブ型雇用が主流である海外では、ジョブディスクリプションを軸に求人を行います。

ジョブディスクリプションには業務の詳細や目的、求められている役割や成果、チーム編成に至るまで詳しく記載されているのです。

そのため日本において外国人労働者向けに求人票を作成する場合は、業務内容をできるだけ詳細に記載していくことが求められるでしょう。

一方で、外国人労働者は従事可能な業務内容・職種が在留資格によって制限されていますので、以下の記事で確認してみてください。
▶︎【外国人労働者の職種一覧】在留資格別に代表的な職種をご紹介

募集背景

また募集背景についても詳細に記載することがポイントになります。

日本では「事業拡大のため増員」や「欠員が発生したため」など、簡素に書かれている場合が多いですが、外国人労働者向けの求人票においてはより詳細に記載することが重要です。

例えば「事業拡大のための増員」だとしても

  • 具体的にどういった方向に進んでいるのか
  • 中長期の目標やビジョンはどのようになっているのか
  • 事業拡大におけるポジションの役割や責任範囲は

といったことを記載することで、外国人労働者側としても「企業が何を求めているのか」を明確に理解することができます。

キャリアパス

続いてのポイントはキャリアパスについてです。

日本人に向けた求人票ではキャリアパスが記載されていないケースも散見されますが、先述の通り外国人労働者にとっては重要な情報となります。

キャリアパスを記載する際は、1年先や3年先、5年先などある程度の段階に応じたモデルを明確に示すことが肝要です。

またキャリアパスに応じて責任範囲や権限などがどのように変化していくのか、ポジションはどのように上がっていくのかといったことも明示すべきでしょう。

他にもキャリアパスに合わせた研修が、どのように行われるのかなども併せて記載すると、より効果の高い求人票を作成することができます。

キャリアパスについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
【外国人労働者のキャリアパス】パターンや設計のポイントなどを簡単に解説

応募条件

応募条件についても確認していきましょう。

基本的に応募条件は必須条件と歓迎条件に分けて記載していきます。

この点は日本人を採用する場合と特に変わりありませんが、外国人労働者向けの求人票における応募条件には、先述の通り日本語能力のレベルも記載することがポイントになります。

日本語レベルについては基本的に

  • ネイティブレベル
  • ビジネスレベル
  • 日常会話レベル

というようなレベル分けがあるので、どのレベルが必要なのかを明示しましょう。 

例えば必須条件にネイティブレベルと記載があれば、必然的に募集ターゲットも限られてくる形になります。

福利厚生

続いては福利厚生に関するポイントです。

社会保険などの加入に関する事項は勿論のこと、支給する手当やその他の福利厚生に関する制度については、全て記載するとよいでしょう。

住宅手当や家族手当、皆勤手当てなど一般的な手当ては勿論、自社が独自で設けている手当などがあるのであれば漏れなく記載することで、外国人労働者に対してのアピールとなるでしょう。

その他、退職金の支給の有無は勿論、レクリエーション、その他ユニークな社内制度などがあれば、併せて記載しておきましょう。

報酬

ポイントの最後にご紹介するのは報酬です。

報酬は求職者側にとって、業務内容と同じく求人票における最重要情報の一つでしょう。

報酬に関する記載としては、まず月収と年収両方を記載することが重要です。

たとえば「月収30万円」という記載だけでは年間の総収入をイメージしづらいため、年収に関しても「420万円(賞与2か月分)」という風に記載しておくことで、具体的に把握しやすくなります。

また1年目、5年目などの節目ごとのモデル年収の記載もしておくことで、外国人労働者にとって将来的なキャリアプランがイメージしやすくなるため、この点も押さえておきましょう。

さらに、年間何回昇給機会があり、どのような基準で昇給していくのか等、評価制度に関してもざっくりと記載しておいた方が良いでしょう。

外国人労働者向けの求人票を作成する際の注意点

最後に外国人労働者向けの求人票を作成する際に、押さえておくべき注意点について確認しておきます。

報酬は日本人と同等以上

一つ目の注意点は報酬に関してのものです。

外国人労働者向けに求人票を作成する場合、報酬については日本人と同等以上でなければなりません。

外国人労働者が日本で働くために必要な在留資格の取得要件には、報酬要件が設けられていることが多いです。

報酬要件は基本的に「その業務に従事している日本人社員と同等以上の報酬が支払われること」となっているため、求人票の作成時点からこの点は留意して作成するべきと言えるでしょう。

仮に低い報酬で募集をかけて応募者が来たとしても、最終的に在留資格申請が通らずに、結局働くことができないという結果になるので注意しましょう。

在留資格については、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説

できれば多言語表記をする

続いての求人票の表記に関する注意点をご紹介します。

外国人労働者向けの求人票を作成する場合は、できれば多言語で表記した分を用意すべきです。

すでに来日して日本企業で働いている外国人労働者を募集ターゲットとする場合、ビジネスレベルの日本語を理解できるケースは多いため、日本語表記のものだけでも構いません。

しかし、海外に住んでいる外国人労働者を日本に呼び寄せる場合は、日本語表記のものだけでなく、当該外国人の母国語や英語で表記したものを用意すべきでしょう。

どのような外国人労働者を募集ターゲットとするかによって変わりますが、求人票を作成する際には押さえておきたいポイントです。

国籍指定は不可

最後の注意点は国籍指定についてです。

日本の職業安定法では、人種や国籍を理由とした差別的な取り扱いを禁じているため、求人票においても国籍指定は当然NGです。

そのため実際には外国人労働者をターゲットとしている求人票であっても

  • ベトナム人限定募集
  • 中国人の方歓迎
  • 外国人歓迎

などを表記することは認められていません。 

もし外国人労働者を雇用する理由として、特定の国への海外展開を考えている場合は、その特定の国の言語を話せることなどを募集要件に記載するなどの工夫が必要と言えます。

まとめ

今回は外国人労働者向けの求人票をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。

当社は企業様の外国人労働者の雇用を支援すべく、人材紹介サービスを提供しております。

外国人労働者向けの求人票を作成するためのアドバイスは勿論、在留資格手続きの支援や受け入れ後の体制構築支援なども対応していますので、もし少しでもご興味ありましたら、お気軽にご相談ください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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