特定技能外国人を外食業で雇用できるのを知っていますか?本記事では、特定技能「外食業」で従事可能な仕事内容・雇用するまでのステップや注意点などを解説していきます。
また、在留資格を取得するための試験内容にも触れていますので、既に留学生をアルバイトで雇用されている飲食店様は、ぜひ確認いただき、特定技能制度への移行も視野にいれていただければと思います。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、併せてご覧ください。
※この記事は、出入国在留管理庁「特定の分野に係る運用別冊」の外食分野を参考に解説しています。
特定技能「外食業」とは?
特定技能ってなに?
外国人が日本での就労や活動を合法的に行うためには、法務省入国管理局が取り扱う「在留資格」が必要です。
特定技能とはこの在留資格の一つで、日本の労働力不足への対策として、特定の業種での外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された比較的新しい労働制度のことを指します。
この「特定技能制度」は、特定の業種における外国人労働者の受け入れを対象としており、例えば外食業、建設業、農業、宿泊業、製造業など、労働力需要が高い分野が該当します。
また特定技能制度は、一定の条件を満たすことで異なる業種への転職も可能になっており、労働者の柔軟性とキャリアパスの形成を支援しています。
さらに特定技能には、「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類の在留資格があり、1号は特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向け、2号は特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
この特定技能制度の設置により、外食業でも、後ほど紹介する試験に合格した外国人であれば正社員として雇用することが可能となりました。
「特定技能」の他、在留資格「技能」、「特定活動46号」でも、正社員として雇用することが可能ですが、後ほどご紹介する通り、これらは募集難易度が高いため、なかなか雇用することが難しいのが現状です。
「特定技能」の概要についてもっと詳しく知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
どうして外食業で「特定技能」は認められたのか?
新型コロナ前から飲食店は慢性的な人手不足に悩まされており、厚生労働省発表の飲食店に関わる職種の有効求人倍率は、2019年1月時点で、
飲食物調理 4.36倍 / 接客・給仕 3.49倍 (全職種平均 1.52倍)
と高い水準にありました。
特定技能制度は一定の産業や分野での人手不足を解消しようとするものであり、外食業も外国人労働者の受け入れによってその課題を一部解消することが期待されたため、特定技能制度の対象となる産業の1つとして位置付けられました。
上記の通り新型コロナ前から人手不足が大きな課題であった外食業ですが、新型コロナ流行後も人手不足は解消されておらず、帝国データバンクによると、2022年1月時点で、正社員・非正社員(パートアルバイト)が不足していると回答した飲食店はそれぞれ全体の65.1%・76.6%と、大半の飲食店が人手不足に悩まされていることがわかります。
飲食店では、コロナ禍の営業規制や休業により従業員の解雇や休業、シフト減をせざるを得ず、通常営業を再開しても離れてしまった人員が戻らないのが現状です。
一方、厚生労働省・農林水産発表のデータによると、2022年10月末時点で、飲食店での外国人労働者数は182,550人ですが、そのうち約58%が就労時間制限のある留学生アルバイトであり、特定技能制度を活用した人材確保は外食業の人手不足解消の鍵となるかもしれません。(参考:農林水産省『外国人材の受入れ状況』)
実際、外食業に特定技能外国人がどのくらいいるのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?以下のグラフは出入国在留管理庁が出している統計数値のグラフです。
ご覧の通り、2022年12月末時点で、特定技能全体で130,923名の外国人が滞在しております。同年6月末時点では、87,472名であったため、半年で40,000名以上も増加しています。
そして、「外食業」分野においては、2022年12月末時点で、5,159名が滞在しております。同年6月末時点では、3,199名であったため、半年で約2,000名も増加しています。
上記の通り、各分野で特定技能制度を活用した外国人労働者の確保は積極的に行われている現状です。
日本政府は特定技能が設立された2019年から5年間で、特定技能外国人の受け入れ上限人数目標を345,150人、うち外食業は53,000人 (※2022年8月に30,500人に見直し)と設定しており、外食に限らず全分野で今後より一層の特定技能外国人の受入れが活性化されると予想されます。
外国人にとって、外食業は人気なのか?
特定技能外国人の受入れが今後活性化されてくることは上記の数値でも分かる通りですが、かつて「3K(きつい、汚い、危険)」とも言われ日本人からは不人気な職種の外食業は外国人労働者を確保できるか疑問に思う方もいらっしゃると思います。
実は外食業は外国人からは非常に人気があり、アジア圏では特に高くなっていると言われております。その理由としては、
- 手軽に働けるのに給料が高い
- 外国人が多く働きやすい
- 日本語能力を向上させることができる
- 将来飲食店を開業したい
などが挙げられます。
また、特定技能外国人の多くは、母国にいる家族を養うために日本に来ているので、就労意欲が非常に高いのがポイントです。
実際に弊社がご支援させていただいている、特定技能外国人へのインタビュー事例も紹介しておりますので、興味ある飲食店様はぜひご覧ください。
▶︎【事例インタビュー】メンバーとの関係性作りが大切 / 有限会社斉屋様
▶︎【事例インタビュー】過疎地認定地域での特定技能外国人雇用。その受け入れ実態とは?
▶︎【事例インタビュー 前編】 初めて特定技能外国人を受け入れる。その決断の背景とは?!
▶︎【事例インタビュー後編】飲食店での外国人雇用事例「将来はベトナムでお好み焼き屋さんを作りたい」
特定技能「外食業」で従事できる業務は?
外食業分野の特定技能外国人の受け入れには、受入可能な業態や従事できる業務等の制限がいくつかあります。
ここでは、可能な業態や制限・従事できる業務・他の在留資格との違い について説明します。
受け入れ可能な業態に制限はあるのか?
外食業において、特定技能外国⼈を受け⼊れられる事業者・事業所は以下のように定められております。
上記に該当する業態であれば特定技能外国人の受け入れは可能ですが、「風俗営業」や「性風俗関連特殊営業」を営む事業所においては、上記に挙げた業務であっても就労が認められていません。
特定技能外国人を雇用する際は受入れる側が、上述のような事業所であり要件を満たす旨を「外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」で誓約する必要があります。
この誓約書は、雇用する外国人のビザを申請する際に、提出する必要があり、もし事業所の要件を満たしていないにもかかわらず、同誓約書を提出し「特定技能」ビザを取得した場合には、在留資格等不正取得罪となるので注意しましょう。
どのような業務をやらせても良いのか?
特定技能外国⼈が受け入れ可能な事業所(飲食店)であっても、彼らにどんな業務をやらせても良いというわけではありません。
農林水産省が定めている『特定技能外国⼈が従事する業務』には大枠として以下3つの業務にて従事することと決められています。
- 飲⾷物調理:客に提供する飲⾷料品の調理、調整、製造を⾏うもの
- 接客:客に飲⾷料品を提供するために必要な飲⾷物調理以外の業務を⾏うもの
- 店舗管理:店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの
具体的な業務内容は以下の表のようなものがあります。
またこれらの業務に従事している日本人が通常従事することになる関連業務においても、付随的に従事することが可能となっており、例えば以下のような業務があります。
- 店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
- 店舗における物品の販売
- ピザなどのフードデリバリー(配達)業務
一方で、認められていない業務もあるため注意が必要です。具体例としては、
- 長期にわたり清掃、皿洗いといった業務のみに従事させる
- 調理や接客などが全く含まれない、デリバリー(配達)業務のみに従事させる
- ホテル等宿泊施設のレストラン運営に関わる業務は可能だが、フロント対応やフロントやベッドメイキングなどのホテル業務全般(この場合、特定技能「宿泊業」分野が該当します。)
などです。
自社で従事してもらおうとしている業務が、外食業分野に該当するかよく分からないという方は、農林水産省のお問い合わせ窓口までご連絡ください。
農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課
住所:〒100-8950 東京都千代田区霞ヶ関1-2-1
電話:03-6744-7177
他の在留資格(ビザ)との違いは?
ここで改めて飲食店の「外国人労働者の雇用」に関して整理してみましょう。
外食業の飲食店が外国人労働者を雇用するためには、採用予定の外国人が在留資格を有している必要があります。
よく巷では「ビザ」と混同されている方もいらっしゃいますが、「ビザ」とは日本に入国する前に発行される入国許可証のことを指しており、「在留資格」は外国人が日本で在留し、何かしらの活動を行うために必要となる資格のことなので、全くの別物です。
この在留資格は、出入国管理及び難民認定法によって規定されており、現在29種類が存在しております。(参考:出入国在留管理庁 在留資格一覧表)
この29種類は一般的に「就労系在留資格」「身分系在留資格」で分けられることが多いですが、就労の可否・就労制限の有無から分かりやすく以下に分けることが出来ます。
- 就労制限のない在留資格 4種類:永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者
- 就労制限のある在留資格 19種類:技術・人文知識・国際業務、経営・管理、特定技能、技能実習など
- 就労不可の在留資格 5種類:文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
※ただし、留学・家族滞在は資格外活動許可を得ることができれば就労可能 - 個別な判断が必要な在留資格 1種類:特定活動(この中でさらに46種類に分かれる)
※特定活動の種類や就労の可否と注意点に関してはこちらをご覧ください。▶︎【特定活動とは】概要や種類、取得申請の方法などをまとめて解説
上記のうち、外食業で雇用ができる在留資格は限られております。
具体的には、
- 永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者、特定技能、技能、留学、
- 家族滞在、特定活動46号
の在留資格所有者のみが就労可能です。
特定技能に限らず飲食店で外国人を採用を考えている方はこちらの記事をご覧ください。▶飲食店で外国人は雇用できる?採用までの流れや注意点を解説!
特定技能外国人の契約関係についてはどうなっているのか?
特定技能外国人を雇用契約をする際には、国によって定められたルールを守る必要があります。ここでは、
①雇用形態 ②報酬・賃金 ③雇用期間 ④受入れ可能人数 ⑤その他注意点
について説明していきます。
①雇用形態
雇用形態とは、企業と従業員との間で締結する雇用契約の種類のことです。 具体的には、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、委託・請負社員などがありますが、特定技能外国人をどのような雇用形態で契約をしても良いわけではありません。
特定技能外国人を雇用する条件としては、「正社員(フルタイム勤務)での直接雇用」が前提で、週5日、30時間以上の勤務が必要となるため、留学生のように、アルバイトで雇用することや派遣形態での受け入れもできません。
※農業分野と漁業分野の2つの分野に関しては、特定技能を派遣として雇用することが例外として認められています。
②報酬・賃金
報酬額、いわゆる給与に関しては、同じ程度の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上の水準が求められています。もちろん、報酬以外の手当や福利厚生施設がある場合の利用なども、日本人と同等である必要があります。
国で定められている最低賃金を割るような契約だけでなく、企業内での最低給与を下回るような契約も出来ないので注意が必要です。
報酬額については、出入国管理庁へ在留資格申請する際に確認され、場合によっては修正するようにと指摘が入ってきます。
また、各種手当等に関しては、受け入れ後の四半期報告書で確認されることになりますので、ごまかすことはできません。
③雇用期間
特定技能外国人の雇用期間については、特段の定めはなく労働関係法令に準じます。
ただし特定技能制度に「在留期間」の上限が定められているため、これを超える期間の雇用契約を締結した場合でも、上限期間を超える在留はできないため、雇用期間の上限=在留期間の上限と考えて問題ありません。
特定技能制度ができた当初、外食分野は在留資格「特定技能1号」のみが対象でしたが、2023年6月の閣議決定により、特定技能2号の分野が拡大され外食業も特定技能2号の対象となりました。
※ 参考:特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)
これにより、特定技能1号から2号へ移行することができれば、在留期間更新が認められる限り、無期限で日本に滞在することが可能となりました。
④受け入れ可能人数
外食業分野の場合、企業ごとで特定技能外国人の受け入れ人数に制限はありません。店舗で何名でも特定技能外国人を雇用することができます。(一方で、建設業と介護業に関しては日本人従業員の常勤職員数以下という人数制限が課されています)
ただし、日本全体として特定技能の受け入れ上限(目標数値)が定められており、外食業分野では30,500人が上限となってます。
受け入れ人数については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。▶【特定技能の受け入れ人数】人数制限の有無や現状の受け入れ状況を解説
⑤その他注意点
上記①~④以外で注意しなければならない点として、法令で定められている、受け入れ企業が特定技能外国人へ実施しなければならない「10の義務的支援業務」というものがあります。
これらの義務的支援業務は、外国人労働者の安定した雇用と働きやすい環境を提供する目的で設けられていますが、例えばその一つとして、「適切な住居の確保に係る支援」があります。
これは、専門的な日本語も多い賃貸契約を特定技能外国人が自力で理解し締結するのが困難であるためです。具体的に行う対応は、以下の3つのいずれかになります。
そのほかにも、義務的支援についてもっと詳しい内容が知りたい方は、こちらの記事をぜひご覧ください。▶特定技能外国人と技能実習生の住居は企業で準備?支援内容や住居ルールなどを解説
特定技能外国人を受け入れる企業の要件
ここまで読んでいただいている方はある程度お分かりかもしれませんが、特定技能外国人の受け入れに大手チェーン、個人経営などの企業の大小の基準は無いものの、受け入れ企業になるには満たすべき基準があります。
以下では、受け入れ企業が満たすべき基準や、採用から入社までの具体的な流れについて簡単にご説明します。
受け入れ企業が満たすべき基準
特定技能外国人を雇用する企業や組織のことを受け入れ機関(特定技能所属機関)
と呼び、特定技能外国人の受け入れ機関になるには、大きく以下の三つの条件があります。
支援体制に関する基準に関しては、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。上記を外食業企業が満たすのはハードルもあるため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関を利用するのが一般的になっております。
特定技能外国人の受け入れ機関(特定技能所属機関)が満たすべき基準に関する詳細はこちらの記事をご覧ください。▶特定技能の受け入れ機関(特定技能所属機関)になるには?受け入れ条件や果たすべき義務などを徹底紹介!
また、「登録支援機関」に関して詳しく知りたい!という方はこちらをご覧ください。▶「登録支援機関」徹底解剖!特定技能外国人への支援内容から選び方まで解説
採用〜入社までの具体的な流れは?
受け入れまでの流れは、国外から呼び寄せるパターンと国内在住者が転職するパターンで若干異なってきます。
ステップ①:人材募集・面接
まずは外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。
ステップ②:特定技能雇用契約の締結
無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。
ステップ③:1号特定技能支援計画の策定
次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。
特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上、日常生活面での支援を行う必要があります。次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を誰が行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。
こちらの支援計画の策定に関しては、先にもあげた「登録支援機関」を活用することで、作成サポート及び義務的支援の実施まで委託することが可能です。
ステップ④:在留資格認定・変更申請
続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。
国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、概ね申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。
この時に用意すべき書類は大きく「外国人本人に関する書類」、「受け入れ機関(雇用主)に関する書類」、「分野に関する書類」の3つのカテゴリーに分けられます。
それぞれに該当する必要書類は多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。下にスクロールしていただくと、「在留資格認定証明書交付申請」、「在留資格変更許可申請」の箇所がでてくると思いますので、必要書類を確認し、過不足の無いようにご準備ください。
また、注意点として、すでに「特定技能1号」の在留資格を持っている方を受け入れる場合であったとしても、新たに「在留資格変更許可申請」が必須です。そのため、特定技能保持者であったとしても、入管からの許可がおりなければ、働き始めることはできないという点は覚えておきましょう。
ステップ⑤:ビザ申請
こちらは、国外から呼び寄せる場合のみ発生してくるステップになります。
無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。
ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは概ね2-3週間程度が平均となっています。)
ステップ⑥:就業開始
無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。
特定技能外国人の募集~採用の流れが知りたい!という方はこちらの記事をご覧ください。
▶【特定技能外国人の採用方法】募集から採用までの流れ・費用などを徹底解説!
食品産業特定技能協議会へ参加する
特定技能外国人が入社したあと、さらに実施しなければならない手続きがあります。
外食分野において特定技能外国人を受け入れる場合、食品産業特定技能協議会へ加入しなければならないのです。
食品産業特定技能協議会は、農林水産省をはじめ、特定技能の受け入れ機関や登録支援機関、業界団体などの連携強化を図り、特定技能制度が適切に運用されるように統括を行う機関となっています。
受け入れ企業は、加入だけでなく、必要に応じて食品産業特定技能協議会に協力することも求められるのです。
加入するには、初めて特定技能外国人を受け入れてから4ヶ月以内に、農林水産省「食品産業特定技能協議会 加入申請フォーム(特定技能所属機関)」のフォームに必要事項を記入し、手続きを行う必要があります。数日以内に、事務局からメールが届くので、出入国在留管理庁に申請した「特定技能外国人の受け入れに関する誓約書」の写しをpdfで添付し、返信して完了です。
特定技能「外食業」を取得するには?
ここまでは特定技能外国人を受け入れる企業側のやるべきことについての話でしたが、ここからは被雇用者となる外国人が、特定技能「外食業」の在留資格を取得するための要件をみていきます。
全ての外国人が無条件で「特定技能」を取得できるわけではなく、以下の二つのいずれかの条件を満たした外国人のみ、取得することが可能です。
「特定技能評価試験」と「日本語能力試験」に合格する
まずは、「外食業特定技能1号技能測定試験」と「日本語能力試験」をクリアするルートを見ていきましょう。
外食業特定技能1号技能測定試験
この試験は外食産業分野において、即戦力として働くことができる知識や経験を持っているかを確認するための試験です。
これはOTAFFという法人が実施しており、試験科目は、①学科試験と②実技試験の2科目、試験時間は80分、マークシート方式で実施されます。以下が試験の概要です。
①学科試験
衛生管理、飲食物調理と接客全般の知識と仕事で必要な日本語の能力試験
②実技試験(「判断試験」と「計画立案」)の2つ
「判断試験」は、図やイラスト等を見て、正しい行動がどれか、「計画立案」は計算式を使って、作業の計画となる技能水準を作ることができるか、という仕事の能力試験です。
令和5年度国内試験実施スケジュール(▶︎国外試験のスケジュールはこちら)
マイページの登録を期日までに済ましたのち、試験の申し込みを実施する形となります。試験の詳細及び申し込み方法等は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)のHPをご確認ください。
また、この特定技能評価試験は二国間協定という政府間の協定を締結している以下の国でも実施されております。そのため、前述の技能実習を修了せずとも、現地国で特定技能評価試験に合格することで来日できます。
※外食業特定技能1号技能測定試験については、インドネシア、フィリピン、カンボジア、タイ、ネパール、ミャンマー、スリランカの7カ国に限られます。
日本語能力試験
日本語能力試験とは、特定技能での就労を望む外国人の日本語能力を測る試験です。この試験は、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicの2つの内どちらかを受験し、それぞれ設けられた以下の合格基準に達する必要があります。
また、この日本語能力試験も日本だけでなく海外での受験も可能です。開催国、スケジュールの確認はそれぞれ公式サイト(日本語能力試験/JLPT公式サイト / 国際交流基金日本語基礎テスト/JFT-Basic公式サイト)より確認ください。
- 日本語能力試験:N4以上
- 国際交流基金基礎テスト:A2以上
なお、N4およびA2は、基本的な日本語を理解できるレベルと考えていただいて問題ありません。日本語能力試験のN1~N5のレベルについては、こちらをご参照ください。
特定技能を取得するための試験について、より詳細を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。▶特定技能の取得に必要な「特定技能評価試験」とは?日程や合格率を解説
各試験の合格率は?
開催会、受験者の国や地域によっても異なりますが、各試験のおおよその合格率は以下の通りです。
- 特定技能評価試験 60%
- 程度日本語能力試験(N4) 30~45%程度
- 国際交流基金日本語基礎テスト(A2) 40%程度
技能実習2号を修了する
次に、技能実習を修了するルートを見ていきましょう。
「技能実習」から「特定技能」へ移行するためには、「技能実習2号」を良好に修了することが必要です。そして、この場合、先に挙げた技能試験や日本語試験は免除されます。良好とは、「技能実習計画を2年10ヶ月以上修了」している状態を指します。
また、技能実習から特定技能へ移行するためには、同じ職種であることが求められます。
外食分野の場合は、技能実習「医療・福祉施設給食製造職種:医療・福祉施設給食製造」に限定されていますので注意が必要です。もしその他の分野・職種で実習をしていた場合、先に挙げた技能評価試験を受験し、合格しなければ、外食分野へ移行することができません。
「技能実習制度」や「特定技能と技能実習の違い」については、それぞれ以下の記事でご確認ください。
▶技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説
▶【特定技能と技能実習】7つの違いとメリット/デメリットを徹底解説!
特定技能外国人を採用する費用は?
最後に、特定技能外国人を雇用する際にかかる費用を確認していきましょう。
国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。
そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点は気をつけましょう。
また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。
初回の申請手数料のみならず、受け入れ後も毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに申請委託費用も発生してきます。
最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。
あくまでも概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。
より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、▶︎【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介 をご覧ください。
特定技能外国人を雇用する際の注意点は?
前述とも重複する部分はありますが、特定技能外国人を雇用する際にの注意点を以下に記載します。
派遣やアルバイトでの雇用はできない
前述の雇用形態でもふれましたが、特定技能外国人を雇用する条件としては、雇用形態は「正社員(フルタイム勤務)での直接雇用」が前提で、週5日、30時間以上の勤務が必要となるため、留学生のように、アルバイトで雇用することや派遣形態での受け入れもできません。
ただ、上記には例外があり、「農業」と「漁業」分野においては、一定の条件を満たすことで、派遣形態で特定技能外国人の受け入れが可能になります。
こちらの詳細に関しては、こちらの記事をご覧ください。▶【特定技能って派遣できる?】受け入れ方法や要件、注意点などを解説
申請で不許可になることがある
前述の通り、特定技能外国人を受け入れるには在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施する必要があります。
国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行いますが、必ずしも全てが許可になるわけではなく、不許可になることもあります。
不許可になる場合、多いものとして以下のケースが考えられます。
①週28時間ルールに抵触
在留資格を「留学」から「特定技能」へと変更申請する際の提出書類に、
- 直近1年分の個人住民税の課税証明書及び納税 証明書
- 給与所得の源泉徴収票
があります。
また、前述の通り、本来「留学」の在留資格は就労が認められておりませんが、資格外活動許可を取得することで週28時間以内の就労が可能になります。この「週28時間ルール」を超えて就労をしていた場合、上記の提出書類より不法就労が発覚してしまうため、特定技能への在留資格変更が認められません。
②税金の滞納
出入国在留管理庁が発表している「特定技能外国人受入れに関する運用要領」に在留資格変更許可申請及び在留期間更新許可申請時の取扱いとして、明確に「納税義務」に関しての記載があります。
日本に住む場合、国籍を問わず原則国民年金や国民健康保険(国保)に加入し、社会保険料を納める義務があります。この義務を果たしていない場合は在留資格の申請が不許可になる可能性が高いのでご注意ください。
また、これは被雇用者だけでなく受け入れ機関についても同様です。
③退学・除籍留学生
本来、在留資格の「留学」は日本の教育機関に在籍するためのものとして認められており、退学や除籍となった留学生が日本に在留する場合は、正当な理由が必要となります。
そのため、原則として相当の理由があるとは認められないと判断される上記の場合に関しては、①②と同様に「特定技能」に係る在留資格の許可がおりない場合があります。
上記は、大半が「留学生」から「特定技能」への在留資格変更で起こり得るケースです。「折角苦労して雇用契約の締結まで進んだのに、、、」とならないように事前に確認をすることをオススメします。
まとめ
今回は特定技能の中でも外食分野にフォーカスして、従事できる業務や雇用できる期間、受け入れるための条件などについてお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は特定技能における登録支援機関として活動しており、受け入れ機関となる企業様に対して、支援業務の代行や在留資格申請のサポートなどを実施しております。
就業開始後の定着支援や受け入れ体制の構築支援なども行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。