施工管理でも外国人労働者の雇用は可能?
結論、施工管理業務においても、外国人労働者の雇用は可能です。
建設業界はその他の業界と同じく人手不足が慢性化しており、外国人労働者の受け入れを促進してきました。
ただし昨今導入された特定技能や、従来から建設業界における人材供給源となっていた技能実習では施工管理での外国人労働者の受け入れはできません。
実際に、施工管理で受け入れることができる在留資格にはどのようなものがあるのか、次項から解説していきたいと思います。
施工管理で雇用可能な外国人は?
施工管理で雇用可能な外国人を判断するための最初のステップとして、在留資格について確認していきましょう。
施工管理に従事できる在留資格
在留資格とは、外国人が日本に在留し、何かしらの活動を行うために必要となる資格のことを指します。「出入国管理及び難民認定法」によって定められており、29の在留資格が存在しています。
外国人の方は、許可された在留資格に応じて、日本で滞在中に可能な活動範囲が決まってきます。具体的には、「就労ができるのか、できないのか」、「就労できる場合、どんな業務に従事できるか」、「家族を呼び寄せることができるのか、できないのか」など、在留資格に応じて認められている活動内容は多種多様です。しかし、ざっくりとした括りで、「就労可能」「就労不可」「身分系」の3つのカテゴリーに分類することが可能となっています。
その数ある在留資格の中で、施工管理に従事できる在留資格としては以下の2つの在留資格が挙げられます。
- 技術・人文知識・国際業務
- 身分系在留資格
それぞれ詳しく見ていきましょう。
技術・人文知識・国際業務
まずご紹介するのは技術・人文知識・国際業務です。
技術・人文知識・国際業務とは、「技術」と「人文知識」と「国際業務」という3つのカテゴリーを網羅する就労系在留資格となっています。
出入国在留管理庁によって、それぞれ以下のように定義されています。
・技術
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学・工学その他自然科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務に従事するためのもの
・人文知識
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学・経済学・社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務に従事するためのもの
・国際業務
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事するためのもの
このうち「技術」の分野において、施工管理業務に従事することが可能です。
働ける期間としては、「技術・人文知識・国際業務」は在留期間更新が可能で、かつ更新回数に制限がないため、更新許可が得られる限り、何年でも施工管理に従事することができます。
ただし、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するには、以下いずれかの要件を満たす必要があります。
- 施工管理に関する内容を大学で専攻(建築・土木学科など)し、卒業していること
- 施工管理の実務経験が10年以上ある(大学などで、施工管理に関連する科目の専攻期間を含む)
また、賃金に関しては、日本人と同等水準以上でないと、在留許可が降りませんので、外国人だからと言って不当に安く雇えるわけではないことはしっかりと認識しておきましょう。
技術・人文知識・国際業務の詳細に関しては、こちらの記事も合わせてご確認ください。
▶︎【技術・人文知識・国際業務とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
身分系在留資格
身分系在留資格とは、以下の在留資格を総称する言葉となっています。
・永住者
法務大臣が永住を認める者
・日本人の配偶者等
日本人の配偶者もしくは特別養子、または日本人の子として出生した者
・永住者の配偶者等
永住者等の配偶者又は永住者等の子として本邦で出生し、その後引き続き本邦に在留している者
・定住者
法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める者
これらの在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格とは異なり、活動制限が設けられていません。
そのため日本人と同じように、施工管理含めたあらゆる業務に従事することができるのです。
特に永住者は在留期間が無制限となっているため、日本人と同じような働き方ができることも鑑みると、雇用する側としてもしっかりと定着施策を実施することで、人員を安定させることが可能でしょう。
現場で働くことはできるの?
「技術・人文知識・国際業務」の外国人を施工管理の業務に従事することを想定して雇用した場合、基本的には現場作業に従事させることはできません。
ただし、施工管理の業務を従事するための研修の一環として短期的に現場作業に従事させることは可能となっています。(あくまで短期的ですので、現場作業へ長期間従事させることはできません。)
現場作業できない理由は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の性質に、現場作業が合致していないためです。「技術若しくは知識を要する業務」と出入国在留管理庁に規定されているため、単純労働ではなく、一定の高度な技術・知識が必要となる業務に従事することが求められています。
また、出入国在留管理庁へ提出する「雇用理由書」という書面の中で、採用予定の外国人の「配属先」「実際に従事する業務内容」等を細かく記載し提出します。提出内容と異なる作業に従事していることを出入国在留管理庁などの行政機関側が把握した場合、不法就労助長罪など、罰則の適用対象となってしまいますので、ご注意ください。
もし、現場作業に従事する外国人労働者を採用したい場合は、「特定技能」若しくは「技能実習」の在留資格であれば可能です。詳細は以下の記事からご確認ください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
▶︎技能実習制度とは?受け入れ方法からメリット・デメリットまで基本を徹底解説
在留カードを確認する
最後に、在留資格の確認方法について解説していきます。
この在留カードを確認することで、外国人の方の在留資格を把握することが可能です。
在留カードとは在留資格の認定や変更、更新などの手続きの結果、在留許可を得た外国人が交付されるカードのことを指しています。外国人の方にとっては、身分証に匹敵するほど重要なもので、外出時には常に身につけている方がほとんどです。ただし、交付される外国人は3ヶ月以上日本に滞在することとなる中長期在留者に限り、短期滞在者には交付されない点は留意しておきましょう。
在留カードには、以下のような情報が記載されています。
・氏名
・生年月日
・国籍・地域
・住居地
・在留資格と在留期間
・就労可否
施工管理として雇用が可能な在留資格を有しているか、また、在留期限から逆算していつまで雇用可能かなど、必要な情報は在留カードを見るだけである程度確認することが可能です。
外国人労働者を雇用するには
ここからは外国人労働者を雇用するための手続きなどを中心にお話していきましょう。
雇用に関する手続きの流れ
まずは雇用までの流れを確認していきましょう。
ここでは「技術・人文知識・国際業務」にて雇用することを想定して確認していきます。
(身分系在留資格の方は手続不要で雇用可能です。)
ステップ①:募集
まずは募集を実施します。
人材紹介サービス会社やハローワーク、求人サイトなどを活用して、外国人労働者を募集しましょう。
ステップ②:選考・面接
次に応募者の選考と面接を実施することになります。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格において外国人労働者を雇用するのであれば、学歴要件や実務経験要件などがあるため、経歴情報はしっかりと確かめるようにしましょう。
ステップ③:内定と雇用契約書の締結
面接後、双方問題ないようであれば内定と雇用契約書の作成を実施します。
ここで作成する雇用契約書は、雇用する外国人労働者がその内容をしっかり理解できるように、母国語で記載したものも用意しておくと安心です。
ステップ④:在留資格申請の実施
雇用契約書の締結後、国外から新たに呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」を実施することになるでしょう。在留資格認定証明書交付申請に必要な書類については、後ほどご紹介します。
国内在住者を採用する場合は、「在留資格変更許可申請(留学など他の在留資格から変更する必要がある場合)」もしくは「在留期間更新許可申請(すでに技術・人文知識・国際業務を保有しているが、在留期限が迫ってきている場合)」が必要になってきます。
ステップ⑤:ビザ申請の実施
国外から新たに呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書交付後、その証明書を当該外国人へ送付します。
在留資格認定証明書などの必要書類を揃えて、外国人労働者側で在外公館にてビザ申請を実施することになります。
ステップ⑥:来日・就業開始
ビザ申請が無事許可されれば、来日可能となり、無事就業を始めることができます。
在留資格申請から許可が降りるまでは、大体1ヶ月〜2ヶ月程度時間がかかります。また、国外から呼び寄せる場合、ビザの申請に関しては2-3週間ほどを見積もっておきましょう。
手続きに必要な書類
それでは、申請に必要な書類についてみていきましょう。
在留資格認定証明書交付申請の場合
在留資格認定証明書交付申請を実施するにあたっては、以下のような書類が必要となってきます。詳細はこちらの出入国在留管理庁のページも合わせてご参照ください。
・在留資格認定証明書交付申請書
・写真
・返信用封筒
また、以下の表において、いずれかのカテゴリーに属するかによって、必要となってくる書類が変わってきますので、自社がどこのカテゴリーに該当するかをご確認ください。
※ ⑧の対象企業については、こちらを参照してください。
※ ⑨の対象企業については、こちらを参照してください。
在留期間更新許可申請の場合
更新の手続きは、必要書類を用意した上で出入国在留管理庁に対し、在留期間更新許可申請を実施することになります。更新のタイミングとしては、在留期限の3ヶ月前から末日までとなっていますので、余裕を持って申請しましょう。
在留期間更新許可申請で必要になる書類についても、取得申請時と同様に、自社がどこのカテゴリーに該当するかを事前にご確認いただく必要があります。
カテゴリーを確認した上で、以下の書類が必要となってきます。
①在留期間更新許可申請書
②パスポート・在留カード
③外国人本人の証明写真
④上記カテゴリーに該当することを証明する文書(証券取引所に上場していることを証明する文書や法定調書合計表など)
以下はカテゴリー3もしくは4に属する企業のみ提出が義務付けられています。
⑤住民税の課税証明書及び納税証明書(非課税の場合は非課税証明書)
詳しくはこちらの出入国在留管理庁のページも合わせてご参照ください。
雇用における注意点
施工管理においては「技術・人文知識・国際業務」の場合、取得要件が設けられています。
先述した学歴や実務経験要件の他、報酬要件や雇用元企業の経営の安定性といった、多数の要件が設けられているのです。
そのため事前にどのような要件が設けられているのか、その要件を満たせそうか、といった点を把握した上で、雇用に取り組むようにしましょう。
外国人労働者を雇用する際に遵守すべき主な法律
最後に外国人労働者を雇用する上で遵守すべき主な法律をご紹介します。
労働基準法
労働基準法は外国人労働者にも適用されます。
つまり労働時間の上限や休憩・休日に関するルール、時間外労働の上限なども日本人と同じように適用されることになるのです。
なお労働基準法は就業規則よりも上位の効力を有しているため、仮に就業規則において労働基準法以下の内容を規定したとしても、無効となります。
また労働基準法には罰則規定が設けられており、重いものであれば「1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金」が科されるので注意してください。
出入国管理及び難民認定法
出入国管理及び難民認定法とは、日本に入国あるいは日本から出国する全ての人の出入国や、日本に在留する外国人の在留の公正な管理などを目的に制定された法律です。
一般的には入管法と呼ばれています。
在留資格に関しての上陸許可基準などを設けている法律であるため、外国人労働者を受け入れる場合、入管法の内容も押さえておく必要があるでしょう。
出入国管理及び難民認定法の詳細については、こちらのページをご確認ください。
雇用対策法
雇用対策法も押さえておきましょう。
雇用対策法では外国人労働者の適正な雇用管理を目的として、外国人労働者雇用に関する基本ルールを定めています。
雇用対策法における外国人労働者雇用のポイントとして、押さえておくべきは外国人雇用状況の届出です。
外国人労働者を雇用する場合は、外国人雇用状況の届出が義務付けられています。
もし届出を怠った場合、30万円以下の罰金の対象となるので注意しましょう。
まとめ
今回は施工管理に従事できる在留資格などをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は本文中でもご紹介した「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ外国人労働者を含め、人材紹介サービスを展開しております。
施工管理の外国人労働者の受け入れを検討されている方は、是非お気軽にご相談ください。