【特定技能】フィリピン人の採用ルートは?メリット・デメリットや費用などをまとめて解説

この記事は、「特定技能制度においてフィリピン人の採用を検討している」、「フィリピン人の特徴や採用する上での注意点を押さえておきたい」という方に向けて、特定技能によるフィリピン人の採用ルートや注意点、費用などについてまとめて解説しています。特定技能制度によるフィリピン人の採用を検討されている方は、是非一度ご確認ください。

フィリピン人の特定技能の採用方法とその手順

まずは特定技能外国人として来日してくる外国人労働者のうち、フィリピン人がどれくらいいるのかを見ていきましょう。

以下の表は出入国在留管理庁が公表している、2023年12月末での特定技能外国人の国籍別・分野別のデータです。

特定技能1号在留外国人数
出典:出入国在留管理庁|特定技能在留外国人数の公表等

特定技能外国人の総数が208,425人に対し、フィリピン人は21,364人、割合は10.3%となっています。

産業別に見ると、造船・舶用工業分野における受け入れが最多となっている点が特徴で、この産業での特定技能外国人のうちフィリピンは54.5%と半数以上を占めています。

また、2022年12月末では特定技能のフィリピン人は13,214人だったことから、1年間で8,150人増えている状況です。

特定技能外国人を受け入れる場合、海外から呼び寄せるケースと日本に在留する方を受け入れるケースとがありますが、フィリピン人における両ケースの採用ステップを以下に見ていきます。

フィリピンからの採用ステップ

フィリピン国籍の方を、現地から、特定技能外国人として受け入れるためには、フィリピン側と日本側で一定の手続きが必要です。

手続きの流れについては以下の図の通りです。

フィリピン特定技能外国人に係る手続きの流れについて
出典:法務省|フィリピン特定技能外国人に係る手続の流れについて

フィリピンから特定技能外国人を受け入れる場合は、こちらの①~⑰のステップを踏んで日本に入国をしますが、フィリピン特有なものや特徴的なものを以下にて解説します。

一般的な特定技能外国人の受け入れステップは以下の記事に記載しておりますので併せてご覧ください。

在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!

移住労働者省(DMW)への登録

フィリピンの制度上、特定技能外国人の受け入れ機関(企業)は、必要書類(労働条件等を記載した雇用契約書のひな形、送出機関と人材募集・雇用に係る募集取決め、求人・求職票等)を在東京フィリピン共和国大使館又は在大阪フィリピン共和国総領事館の移住労働者事務所 MWO(旧POLO)に郵送し、所定の審査を受け、雇用主(特定技能所属機関)としてフィリピンの移住労働者省DWM(旧POEA)に登録される必要があります。

これは、フィリピンが自国の出稼ぎ人材を把握・保護するために、DMWを経由して出国をさせているためです。

MWOに書類を提出した後、受け入れ機関の代表者の方または委任された従業員がMWOにて英語で面接を受ける必要があります。この面接は登録支援機関などの外部の人間が代わりに受けることは認められていませんが、通訳の同席は可能です。

また、必要に応じてMWOによる受け入れ機関への実地調査が実施されることもあります。

提出書類と面接の結果、受け入れ機関がMWOにより自国民の雇用主として適正であると判断された場合、認証印が押された提出書類一式と推薦書が送られてきます。

受け入れ企業は、この書類を送り出し機関を通じてDWMに送付し、その後、受理・登録されるとともに求人情報が登録されてはじめて、フィリピン国籍の方の採用に着手することができるのです。

在留資格認定証明書の申請と査証発給申請の流れ

フィリピンから受け入れる場合の日本側の手続きで、受け入れ企業は、地方出入国在留管理官署に対し、特定技能に係る在留資格認定証明書の交付申請を行う必要があります。また、同証明書が交付された後、雇用契約を結んだ特定技能外国人に対し、同証明書の原本を郵送しなくてはなりません。

在留資格認定証明書を受け取った特定技能外国人は、在フィリピン日本国大使館へ提示の上、特定技能に係る査証発給申請を行います。

出国前の手続き:オリエンテーションや健康診断

こちらもフィリピンの制度上の決まりで、特定技能外国人として来日予定のフィリピン人は、本国の海外労働者福祉庁(OWWA:Overseas Workers Welfare Administration)が実施する出国前オリエンテーション受講する必要があります。 

なお、出国前オリエンテーションの受講申込みは、送り出し機関を通じて行い、受講申込時に交付された在留資格認定証明書が有効期限内である必要があります。

また、同様に、健康診断の受診も必要とされており、こちらも送り出し機関を通じて申込みを行います。

オリエンテーションも健康診断も半日程度で終わります。

フィリピン海外雇用証明書(OEC)の取得

OECは、フィリピン側の手続きが完了したことを証明する文書とされております。

特定技能外国人は査証を取得し、オリエンテーションと健康診断を受けた後に、送り出し機関を通じて、このOECの発行をDWMに申請・取得します。

OEC発行申請においても、在留資格認定証明書の有効期限内でなければなりません。

取得したOECはフィリピン出国時の出国審査で提示する必要があります。

日本国内でのフィリピン人の採用ステップ

次に、日本国内でのフィリピン人の採用ステップを見ていきましょう。

手続きの流れについては以下の図の通りです。

フィリピン特定技能外国人に係る手続きの流れについて
出典:法務省|フィリピン特定技能外国人に係る手続の流れについて

DWMへの登録、雇用契約の締結までの流れは本国から受け入れる場合と同様です。

それ以降で、日本国内で採用をする場合は、雇用契約を締結した特定技能外国人がが地 方出入国在留管理官署に対し、「特定技能」への在留資格変更許可申請を行う必要があります。この 在留資格の変更が許可されれば手続きは完了で、OECの取得も必要ありません。

特定技能への在留資格変更については、出入国在留管理庁のWEBサイト|在留資格「特定技能」をご覧ください。

特定技能フィリピン人を採用するメリット

ここでは、特定技能でフィリピン人を採用するメリットを見ていきます。

高い教育レベルと試験を通じた実力証明

まずメリットの1つに挙げられるのは、フィリピンの高い教育レベルです。

これは、フィリピンの高等教育機関が他の東南アジアの国と比べて多いことが大きく起因しています。

また、義務教育や中等教育も改善され、2012年にはこれまで10年間だった教育システムが12年間に変わっています。さらに、大学や職業訓練校も増加しており、これら機関に通う若者がどんどん増えているのが現状です。

また、フィリピンでは英語が公用語として扱われており、英語が話せる人が多いのも特徴でしょう。

フィリピン人の国民性

フィリピン人は基本的にフレンドリーな人が多いとされ、また陽気な性格を持っています。

見ず知らずの人とも気軽にコミュニケーションが取れ、初めての環境でも比較的すぐに溶け込める傾向が強いため、職場に馴染むのも早いでしょう。

国外労働に抵抗が少ない

国外労働に抵抗が少ないのもフィリピン人を採用するメリットです。

これは、フィリピンが出稼ぎ大国とも言われるほど、海外に出て働くことに抵抗感が少ないお国柄だからです。

約10人に1人が海外に居住しており、GDPの約10%が海外からのフィリピンへの送金です。2021年の出稼ぎ労働者ら在外フィリピン人からの送金額は349億ドル(約5兆2350億円)にのぼるほど、出稼ぎ労働者が多いのです。

ホスピタリティ精神が強いフィリピン人労働者

フィリピン人はホスピタリティ精神が強いことでも有名です。

南国ならではのフレンドリーさも相まって、初対面の人であっても親切にし、誰か困っている人がいれば手を差し伸べることを躊躇しません。

そのため介護や接客業などに対する適性は、他国の外国人労働者よりも高いと言えます。

特定技能で採用する際のデメリット

次は、フィリピンを特定技能で採用する際のデメリットや注意点について見ていきます。

フィリピンの送り出し機関との連携

フィリピン国籍の方を、フィリピンから特定技能外国人を受け入れる場合、フィリピンの制度上、フィリピン政府から認定を受けた現地送り出し機関を通じて人材の紹介を受けて採用活動を行うことが必須とされているので注意が必要です。

また、送り出し機関との間で人材の募集及び雇用に関する互いの権利義務を明確にした募集取決めの締結も求められています。

送り出し機関の詳細については以下の記事で解説しておりますので、併せてご覧ください。

送り出し機関は問題だらけ?認定要件や選び方を徹底解説します!

移住労働者省(DMW)への登録手続き

先述の通りですが、特定技能外国人の受け入れ企業は、雇用主(特定技能所属機関)としてフィリピンの移住労働者省DWM(旧POEA)に登録される必要があります。

世界一の出稼ぎ大国であるフィリピンは、海外就労するフィリピン人から送金される外貨が経済の底支えをする大事な財源になっています。そのため、フィリピン政府は、DWM(移住労働者省)、MWO(移住労働者事務所)、TESDA(技術教育技能開発庁)などを置き、優秀な人材の創出と管理、労働者権利の保護を一丸となって力を入れているのです。フィリピン政府認定の送り出し機関を経由しなくてはならないのもそのためです。

移住労働者省(DWM)への登録手続きについては、法務省の以下の資料をご覧ください。

法務省|~特定技能外国人の受入機関の方々へ~フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ

フィリピン人労働者の採用にかかる費用

ここからはフィリピン人労働者の採用にかかる費用について見ていきます。

送り出し機関に支払う手数料

フィリピンから新たに特定技能外国人を受け入れる場合、送り出し機関を経由することが必須なのは先述の通りですが、その際の費用についても見ていきます。

おおよそですが、特定技能外国人に関してフィリピンの送り出し機関に支払う手数料は、一人当たり50万円程度です。

この費用には、フィリピン側で必要な人材募集・選別費用、教育指導費用、ガイダンス費用、申請書類作成料、オリエンテーション費用、空港までの送迎費用が含まれていますが、DWM・MWO申請費用や渡航費などは含まれていません。

渡航に伴う経費

フライト料金などの渡航費も、かかる費用のひとつです。

ただ、この渡航費については、自費で外国人本人に負担してもらうことも可能です。ただ、自費負担だと応募が集まらない場合もあるため、多くの応募獲得を狙うのであれば受け入れ企業負担にすることをオススメします。

登録支援機関への外部委託費用

国籍に関わらず、1号特定技能外国人を雇用するには様々な支援が必要となります。

一定の条件をクリアしていれば自社でこの支援を行うことが出来ますが、基本的には登録支援機関に支援委託をすることになるでしょう。

この支援業務を登録支援機関へ委託する場合、委託費用として2〜3万円(月/一人当たり)程度掛かることになるでしょう。

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監修者
菅原 勇人
菅原行政書士事務所代表。埼玉県熊谷市生まれ。2017年早稲田大学大学院卒業後、建材商社へ入社。主に営業として、中小中堅の建設事業者への提案に従事。就労をしながら、行政書士や宅建など法務系資格を複数取得。現在は菅原行政書士事務所の代表として、約1,000件にも及ぶ申請取次業務に携わる。行政書士(埼玉県行政書士会所属 / 第24132052)
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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