外国人労働者の日本語能力の現状
はじめに、外国人労働者の日本語能力の現状について見ていきましょう。
日本で働くことになる外国人労働者の多くは日本語能力試験JLPTを受験しているので、その合格者のレベルを見てみることで、おおよその日本語能力の現状を推察できます。
2021年7月開催の各レベルの合格者数は以下の通りです。
- N1:合格者数37,516人/受験者数95,175人 認定率39.4%
- N2:合格者数48,181人/受験者数110,571人 認定率43.6%
- N3:合格者数37,118人/受験者数77,183人 認定率48.1%
- N4:合格者数20,552人/受験者数41,074人 認定率50.0%
- N5:合格者数8,042人/受験者数11,912人 認定率67.5%
- 合計:合格者数151,409人/受験者数335,915人 認定率45.1%
上記を見てみるとN1とN2を合わせると、合格者全体の56.5%に及ぶことがわかります。
N1やN2は様々な場面で使われる日本語を理解できるレベルとされているため、日本で働く外国人労働者の二人に一人程度の割合は、ある程度の日本語コミュニケーションが取れるレベルであると言えます。
ビジネス日本語能力テストBJTとは
ここからは本記事のテーマであるビジネス日本語能力テストBJTについてお話していきます。
ビジネス日本語能力テストBJTの概要
ビジネス日本語能力テストBJTとは、Business Japanese Proficiency Testの略で、ビジネス場面における日本語能力を測る実践的なテストです。
日本漢字能力検定協会が主催しており、1986年から日本を含めたアジア諸国で実施されています。
構成としては
- 聴解テスト
- 聴読解テスト
- 読解テスト
という3部構成となっており、全部で80問あります。
出入国在留管理庁では、在留資格の申請人に対する日本語能力の証明基準として、日本語能力試験JLPTと同じく広く認められています。(「特定活動(留学生の就職支援)」や「高度人材ポイント制」など)
ビジネス日本語能力テストBJTの特徴
ビジネス日本語能力テストBJTの特徴として、以下の点が挙げられます。
特徴①:各分野の専門家が作成したテスト
一つ目の特徴として挙げられるのは、「各分野の専門家が作成したテスト」であるという点です。
ビジネス関係者は勿論のこと、言語学や日本語教育、統計学等の各種専門家がテストの構成や得点の集計法について検討し、精度の高いテストを実現しています。
特徴②:合否がなく、その日に結果がわかる
また合否がなく、その日にすぐ結果がわかるという点も特徴として挙げられます。
ビジネス日本語能力テストBJTでは、テストのスコアから後ほどご紹介する6段階で評価される形になります。
特徴③:尺度得点による採点
ビジネス日本語能力テストは、正答1問に対して1点加算するという素点方式で採点していません。
問題の難易度が反映される換算式を用いて、尺度得点を算出することで、精度の高い測定結果を実現しているのです。
特徴④:いつでも・どこでも受けられる
またいつでも、どこでも受けられるという点も見逃せません。
ビジネス日本語能力テストBJTはほぼ毎日実施しているため、受験者の都合に合わせて会場や日時を選ぶことができます。
BJTと日本語能力試験JLPTの違い
先程冒頭にて触れた日本語能力試験JLPTはあくまで日常的な日本語能力を想定しているため、ビジネスにおける日本語能力は把握できません。
また、日本語能力試験JLPTのN1合格者であっても、ビジネス日本語能力テストBJTにおけるスコアにはバラつきがあることもわかっています。
これはビジネス日本語能力テストBJTの方が、より実践力の測定に重きを置いていることの証左とも言えるでしょう。
そのため、企業の面接時に、日本語能力試験JLPTよりもビジネス日本語能力テストBJTを重視する企業が増え始めています。
ビジネス日本語能力テストBJTのレベル目安
続いてビジネス日本語能力テストBJTの各スコアレベルの目安を確認していきましょう。
J1+
J1+は、どのようなビジネス場面でも日本語による十分なコミュニケーションを取ることができるレベルです。
日本語に関する正確な知識や運用能力があり、会議や商談、電話応対などで相手の話すことが正確に理解でき、社内文書などの内容も理解できます。
対人関係に応じた言語表現の使い分けも適切に実施でき、日本のビジネス慣習なども理解しています。
スコア600~800点がJ1+とされます。
J1
J1は幅広いビジネス場面で日本語による適切なコミュニケーションを取ることができるレベルとされています。
J1+と比較し、日本語知識や運用能力に一部課題が残りますが、意思疎通する分には支障はありません。
対人関係に応じた言語表現の使い分けもある程度でき、日本のビジネス慣習もおおむね理解しているレベルと言えるでしょう。
スコア530~599点がJ1レベルとして認定されます。
J2
J2は限られたビジネス場面において、日本語能力による適切なコミュニケーションを取ることができるレベルです。
日本語知識や運用能力に課題があり、意思疎通を妨げる場合もあることが想定されます。
対人関係に応じた言語表現については少しであればできますが、日本のビジネス慣習に対しての理解は一定に留まるでしょう。
J2はスコア420~529点を取った場合に認定されます。
J3
J3は限られたビジネス場面において、日本語によるコミュニケーションをある程度取ることができるレベルとされています。
日本語知識や運用能力に問題があり、意思疎通を妨げることも多くなるでしょう。
対人関係に応じた言語表現の使い分けは断片的にしか行えず、ビジネス慣習に対する理解にも課題が残ります。
スコア320~419点がJ3レベルとなります。
J4
J4は限られたビジネス場面において、日本語による最低限のコミュニケーションを取ることができるレベルです。
日本語知識や運用能力に問題が多く、意思疎通できるケースが少ないと言えます。
対人関係に応じた言語表現の使い分けはできず、日本のビジネス慣習に対する理解もほとんどないと言えるでしょう。
スコア200~319点がJ4として認定されます。
J5
J5は日本語によるビジネスコミュニケーションがほとんど取れないレベルとされています。
断片的な日本語知識しか持っておらず、運用能力は低いため、ゆっくり話された簡単な会話を部分的に理解できるレベルと言えます。
日常的な社内文書なども理解できない上、日本のビジネス慣習に対する理解もありません。
スコア0~199がJ5レベルとされます。
ビジネス日本語能力テストBJTのメリット
次にビジネス日本語能力テストBJTのメリットについて、採用企業と外国人労働者の二つの視点からご紹介していきます。
採用企業側のメリット
まずは採用企業側のメリットからご紹介します。
ビジネスにおける日本語能力を正確に把握できる
採用企業側のメリットは、「ビジネスの場面でもちゃんと日本語によるコミュニケーションが取れるか」という点の判断がしやすいことです。
日本語能力試験JLPTは日常的な場面における日本語能力がわかりますが、ビジネスレベルかどうかの判断がつきません。
しかしビジネス日本語能力テストBJTでは、ビジネスにおける敬語や謙譲語などの言語表現を理解しているかどうかも把握できるため、日本語能力を正確に判断しやすいと言えます。
国人労働者側のメリット
続いて外国人労働者側のメリットについて見ていきましょう。
就職活動に有利
外国人労働者側のメリットとして挙げられるのは、「就職活動に有利」であるという点です。
ビジネスにおける日本語能力を判断しやすいことから、日本語能力試験JLPTよりも、ビジネス日本語テストBJTを高く評価する企業も増えてきています。
そのためビジネス日本語テストBJTでJ1+やJ1などのレベルを認定されれば、日本における就職活動を有利に展開できるでしょう。
その他、高度人材ポイントにおけるポイント項目としても認定されているため、今後のキャリアにも有利に作用します。
ビジネス日本語能力テストBJTの受験方法
最後にビジネス日本語能力テストBJTの受験方法を簡単にご紹介しておきます。
申し込み方法
申し込み自体はインターネット上の専用サイトから以下のステップで行います。
ステップ①:BJTアカウントを登録
初めて受験する場合は、専用サイトでBJTアカウントを登録します。
ステップ②:会場と日時を選択
希望する会場と受験日・試験時間を選びます。
ステップ③:名前の確認と支払情報の入力
その後入力した名前がパスポートや在留カードの表記と同じであるかを確認し、最後に支払いに関する情報を入力します。
受験当日の流れ
当日の流れは以下のようになります。
ステップ①:本人確認書類の提示
申し込み時に利用した本人確認書類を2つ提示します。
ステップ②:写真撮影
成績認定書に表示するための顔写真の撮影が実施されます。
ステップ③:荷物を預け、入室
筆記用具などは会場から貸し出されるため、荷物は全てロッカーに預け、試験室に入室します。
ステップ④:コンピュータの操作方法の確認とNDAの同意
画面上の案内に従って操作方法を確認した後、秘密保持契約(NDA)に同意します。
ステップ⑤:受験開始
画面上の案内に従って、受験を開始します。
結果発表
試験を実施した当日にスコアレポートを受け取ることができるため、自分がどのレベルかをすぐに知ることができます。
受験日から3日後には、成績認定書が印刷できるようになります。
受験費用
ビジネス日本語能力テストの受験料は7,000円(税込み)となっています。
ただし上記の金額は日本で受験する場合のものとなっており、海外で受験する場合は異なるので、注意してください。
まとめ
今回はビジネス日本語能力テストBJTについて基本的な内容をお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は外国人労働者の人材紹介サービスを始め、外国人労働者への日本語教育や受け入れ体制の構築支援などのサービスも提供しております。
外国人労働者の採用や日本語教育などにご興味がある方は、是非一度お気軽にご相談ください。