【EPA制度とは】概要やメリット、制度を利用した外国人労働者の受け入れ方も解説

EPA制度とは

まずはEPAとは何かについて確認していきたいと思います。

EPA制度の概要と目的

EPAとは「Economic Partnership Agreement」の略称で、日本語訳すると経済連携協定となります。

外務省の定義によると以下のようになっています。

外務省によるEPAの定義】
“貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定”

要するに国や地域を限定して関税などの貿易障壁を撤廃することで、ヒト・モノ・カネ・サービスの移動を促進し、経済の結びつきを強めることを目的として定められた協定と言えるでしょう。

FTAやWTO、TPPとの違い

EPAと関連する概念として

  • FTA
  • WTO
  • TPP

という言葉があるため、それぞれ簡単にご紹介しておきましょう。

FTAとは

FTAとは、Free Trade Agreementの略称であり、自由貿易協定と訳されます。 

FTAは特定の国・地域間で、物品の関税やサービス貿易の障壁などを削減し、撤廃することを目的として定められており、位置づけとしてはEPAの一部に含まれる形になっています。 

WTOとは

WTOとはWorld Trade Organizationの略称で、世界貿易機関のことを指します。

WTOは貿易に関する様々な国際ルールを定めており、貿易課題への取り組みを実施していますが、モノやサービス、投資などの経済活動を対象としているEPAの方がより広範囲を網羅していると言えるでしょう。

TPPとは

TTPとはTrans-Pacific Partnership Agreementの略称で、環太平洋パートナーシップ協定と訳されます。

関税撤廃や人材交流といったテーマを扱うという意味では似た側面もありますが、EPAはあくまで二国間で締結されることが多い中で、TTPは多国間で連携するための協定という位置づけである点が異なると言えます。

日本におけるEPA制度の現状

日本におけるEPAの現状についても併せて確認しておきましょう。

2022年8月現在、日本は以下の国や地域とEPAを締結しています。

  • シンガポール
  • メキシコ
  • マレーシア
  • チリ
  • タイ
  • インドネシア
  • ブルネイ
  • ASEAN
  • フィリピン
  • スイス
  • ベトナム
  • インド
  • ペルー
  • オーストラリア
  • モンゴル
  • EU
  • イギリス

また現在交渉中となっているのは

  • トルコ
  • コロンビア

の2か国です。 

また韓国やカナダは交渉中断中となっています。

各国と締結しているEPAの内容については、こちらの資料に概要が記載されているので、ご興味ある方は是非併せてご確認ください。

EPA制度によって得られるメリット

ここまでEPAの概要についてお話してきましたが、ここからはEPAを締結することによって得られるメリットについてご紹介していきましょう。

メリット①:関税の削減や撤廃が可能

まず挙げられるメリットは関税の削減や撤廃が可能であるという点です。

関税がかかるとどうしてもモノやサービスを輸入する際に価格が高くなってしまい、価格競争において不利に働いてしまうケースがあります。

その点EPAで関税を削減したり、そもそも撤廃したりすることで、国・地域間での貿易などがより一層促進されることになるのです。

メリット②:輸入規制の撤廃が可能

続いて挙げられるのは輸入規制の撤廃が可能であるという点です。

EPAでは関税の削減や撤廃に留まらず、輸入規制を撤廃できるという特徴があります。

輸入規制が撤廃されることで、モノやサービスの流通がより活性化し、他国における販売の自由度も飛躍的に高まるのです。

メリット③:貿易の円滑化と投資の促進

貿易や投資の促進に繋がるという点もメリットと言えるでしょう。

モノやサービスの貿易には本来様々な手続きが必要ですが、EPAを締結することで、一部の手続きなどが不要となるため、貿易に掛かる工数やコストなどを削減できます。

またモノやサービスの取引が活性化することで市場も拡大し、結果として投資先としての魅力も上がることになり、投資が促進されるという効果も見込めるのです。

メリット④:労働者の確保が可能

メリットの最後に挙げられるのは、労働者の確保が可能ということです。

EPAではモノやサービスだけでなく、ヒトの移動も促進するという側面があり、一部の職種のみではありますが、外国人労働者の受け入れが可能となっています。

そのため人材不足が慢性化している今の日本企業にとって、貴重な人材供給源となることは間違いありません。

EPAを利用した外国人労働者の受け入れについては、次項から詳しく解説していきます。

EPA制度を利用した外国人労働者の雇用方法

それではEPAを利用した外国人労働者の雇用について、より詳しく解説していきます。

EPA制度による外国人労働者の受け入れ

EPAは二国間で締結される協定であるため、先述の通り対象国によって内容が異なります。

先に挙げた現在締結している国のうち

  • インドネシア
  • フィリピン
  • ベトナム

の3か国は、EPAにおいて人材の受け入れについて定めているのです。

これらの国から受け入れることができるのは

  • 看護師
  • 介護福祉士候補者

の2職種となっています。 

EPAで外国人労働者を受け入れるためには国際厚生事業団(JICWELS)を経由する必要があり、この機関以外の人材紹介サービス会社などにEPAを利用した外国人労働者の紹介を依頼することはできません。

EPAでの外国人労働者の受け入れが開始された2008年以降、着実に増加してきており、現状としては以下の表の通りとなっています。

図表_EPAを活用した外国人受け入れ者数推移
表引用:経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ概要 

EPA看護師とは

それではそれぞれの職種に分けて、概要や受け入れの流れなどについて確認していきます。
まずはEPA看護師から見ていきましょう。

概要と受け入れの流れ

EPA看護師とは、EPAに基づき日本の看護師国家資格を取得したインドネシア・フィリピン・ベトナム人のことを指します。

EPA看護師を受け入れる流れとしては、以下の通りです。

【受け入れの基本的な流れ】

  • ステップ①:マッチングと雇用契約締結
  • ステップ②:訪日前の日本語研修
  • ステップ③:訪日後の日本語研修と看護導入研修
  • ステップ④:病院で就労・研修の実施
  • ステップ⑤:看護師国家試験の受験
  • ステップ⑥:合格後、EPA看護師として就業可能 

上記はインドネシア人とフィリピン人における流れを示しており、ベトナム人の場合は訪日前の日本語研修が、マッチングや雇用契約締結の前に行われる形になります。

受け入れ要件

EPA看護師を受け入れる際、受け入れ機関や施設側にも以下の要件が求められます。

  • 看護学生の臨地実習に係る実習指導者が配置されていること
  • 看護師及び准看護師の人数が、入院患者の数が3又はその端数を増すごとに1以上であること
  • 看護職員の半数以上が看護師であること
  • 看護の組織部門が明確に定められていること
  • 看護基準が使用しやすいように配慮して作成され、常時活用されていること
  • 看護手順が作成され、評価・見直しが行われていること
  • 看護に関する諸記録が適正に行われていること
  • 過去3年間看護師などの受け入れにおいて虚偽の求人申請などの不正行為をしたことがないこと
  • 過去3年間に、EPAによる外国人労働者の受け入れに際する報告を拒否、あるいは不当に遅延したことがないこと
  • 過去3年間で、EPAの外国人労働者受け入れに際する巡回訪問への協力を拒んだことがないこと

EPA介護福祉士候補者とは

続いてEPA介護福祉士について見ていきましょう。

概要と受け入れの流れ

EPA介護福祉士候補者とは、EPAに基づき日本の介護福祉士国家資格を取得することを目的とした研修を受けながら就労するインドネシア・フィリピン・ベトナム人のことを指します。

EPA介護福祉士候補者の受け入れの流れは以下の通りになります。

【受け入れの基本的な流れ】

  • ステップ①:マッチングと雇用契約締結
  • ステップ②:訪日前に6か月間の日本語研修を受講
  • ステップ③:訪日後の日本語研修と介護導入研修
  • ステップ④:介護施設で就労・研修の実施
  • ステップ⑤:介護福祉士国家試験の受験
  • ステップ⑥:合格後、EPA介護福祉士として就業可能

EPA看護師と同じく、ベトナムから受け入れる際はマッチングと雇用契約締結の前に、日本語研修を受講する必要があります。

受け入れ要件

EPAによって介護福祉士候補者を受け入れる介護施設は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 介護福祉士養成施設の実習施設と同等の体制が整備されていること
  • 介護職員の人数が、法令に基づく職員などの配置基準を満たすこと
  • 常勤介護職員の4割以上が介護福祉士の資格を有する職員であること
  • 過去3年間に、EPAにおける介護福祉士などの受け入れにおいて、虚偽の求人申請などの不正行為をしたことがないこと
  • 過去3年間に、EPAによる外国人労働者の受け入れに際する報告を拒否、あるいは不当に遅延したことがないこと
  • 過去3年間で、EPAの外国人労働者受け入れに際する巡回訪問への協力を拒んだことがないこと

EPAで外国人労働者を雇用するメリット

各職種の概要を確認いただいたところで、EPAで外国人労働者を雇用するメリットについても押さえておきましょう。

EPAを利用した外国人労働者を雇用する最大のメリットとは、長期的に雇用ができるという点です。

EPAを利用して来日した看護師、介護福祉士それぞれの候補者が国家試験を取得すれば、在留期間を無制限に更新することが可能となっています。

そのため永続的に雇用することも可能であり、人手不足に苦しむ病院や介護施設にとって、有効な人材供給源となるのです。

外国人労働者を雇用するポイントと注意点

最後に外国人労働者を雇用する際のポイントと注意点について確認しておきましょう。

ポイント

外国人労働者を雇用するポイントとして、基本的なポイントと活用におけるポイントに分けてご紹介します。

基本的なポイントとしては以下の3点が挙げられます。

  • 日本人と同じ報酬水準で雇用する
  • 労働基準法が適用されることを理解しておく
  • 在留資格の範囲内の業務に従事させる 

活用のポイントとしては、以下の2点を押さえておきましょう。

  • 就業後も日本語教育を継続的に行う
  • 外国人労働者の持つ文化や価値観、考え方を理解して受け入れる

注意点

外国人労働者を雇用する際の注意点としては、不法就労が挙げられます。

不法就労とは、本来働く資格を持っていない外国人が就労する、あるいは在留資格で許可された範囲外の業務に従事することを指し、外国人労働者本人だけでなく雇用した企業側も責任が問われます。

その場合3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されてしまうのです。

この点は雇用や労務を管理する部門だけでなく、現場で共に働くメンバーも理解した上で、外国人労働者の雇用に望む必要があるでしょう。

まとめ

今回はEPAの概要やメリット、それに基づいた外国人労働者の雇用について、お話してきましたが、いかがでしたか。

EPAを活用した外国人労働者の受け入れは看護師や介護福祉士に限られています。

もしその他の職種で外国人労働者の受け入れをご検討の場合、様々な在留資格による受け入れが必要となります。

当社は外国人労働者を専門とした人材紹介サービスを提供しており、様々な職種の外国人労働者を企業様にご紹介しておりますので、少しでもご興味ありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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