特定技能外国人は転職が可能であることをご存じでしょうか。この記事では特定技能外国人が転職する際に必要な条件や手続き、注意点について、分かりやすく解説しています。特定技能外国人の雇用を検討されている方は是非一度ご確認ください。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
結論、特定技能外国人は転職が自由にできます!
前提として、冒頭でもお伝えしたとおり、特定技能外国人は自由に転職することが可能です。
この特定技能制度は、国内の人手不足の解消を目的に、2019年4月に設けられた在留制度です。日本において特に人手不足が深刻であるとされている12の特定産業分野において、単純労働を含む職種での外国人労働者の受け入れを認めています。
こういった設立背景や制度趣旨から、外国人労働者の就労や活用の幅を広げるために、ある一定の条件を満たしている場合において転職を可能としています。
特定技能制度について基本から整理したいという方は、「特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説」も併せてご確認ください。
特定技能外国人が転職するタイミングは?
特定技能外国人は、転職するタイミングや自己都合か企業都合かで多少注意するべきポイントが異なります。
自己都合退職
特定技能外国人は、日本人労働者と同じく自分の都合でいつでも退職することが可能です。技能実習制度であれば、3年間は転職することができませんが、特定技能にその制限は一切ありません。
基本的には、現企業で就労をしつつ、水面下でSNSなどを活用しながら転職活動を行い、無事に内定をもらってから退職意向を伝えてくるケースが大半でしょう。
一方で、手続き的な部分で言うと、新たな受け入れ企業からの協力を得ながら在留資格変更許可申請を実施しなければならないため、特定技能外国人にとっては多少転職ハードルが高くなっているのは事実です。(後に詳しく解説していきます。)
企業都合の退職
こちらは、いわゆる倒産や解雇など、特定技能外国人の責任ではなく、受け入れ企業側の都合での退職を意味します。
よく、出入国在留管理庁の運用要領では「非自発的転職」とも記述されていますが、こういったケースの場合、受け入れ企業側で特定技能外国人が次の職を見つけるための支援を実施しなければならないと定められています。具体例を上げると、ハローワーク(公共職業安定所)や民間の人材紹介事業者を紹介したり、失業給付や保険関係の行政手続きのサポートのことを指しています。
もちろん、登録支援機関に支援を委託している場合は、上記のサポートを全て委託することが可能ですが、一定の協力は必要になってくるでしょう。
「技能実習」から「特定技能」へ移行するタイミング
技能実習生は、以下の要件を満たすことで特定技能へ移行することができます。
この時、元々技能実習時に実習をしていた受け入れ企業ではなく、別の企業へ転職することが可能です。
ただし、要件に記載の通り、技能実習時と同じ業務内容が一致していなければ、移行することができません。こちらに関しては、後ほど詳しく解説していきます。
特定技能外国人が転職する際、何か要件はある?
特定技能外国人は、実は何の制限もなく転職ができるわけではありません。外国人本人はもちろん、受け入れ企業側も満たすべき要件がありますので、確認しておきましょう。
特定技能外国人側の要件
まず、転職先企業が元の企業と同じ業種・産業分野であった場合は、そのまま転職することが可能です。
一方で、元の企業と異なる業種・産業分野へ転職する場合は、該当分野の特定技能評価試験に合格する必要があります。
例えば、宿泊業で働いていた方は、同じ宿泊業の企業へ無試験で転職できますが、外食業の企業へ転職する場合は、外食業の特定技能評価試験を受験し、合格しなければなりません。
また、農業や建設など、一部の業種・産業分野では、「区分」という概念が存在します。
例えば、建設業であれば「土木」「建築」「ライフライン・設備」という3つの業務区分が存在し、それぞれ独自の試験を設けています。建設業「土木」で働いていた人が「ライフライン・設備」を営む企業へ転職するには、「ライフライン・設備」の特定技能評価試験に合格している必要があるのです。
同じ業種・産業分野での転職か、そうでないか、同じ業種・産業分野であっても、区分が異なる場合は改めて該当の特定技能評価試験を受験し、合格しなければならないという点は押さえておきましょう。
特定技能の試験については、「【特定技能で働くために必要な試験とは】試験の種類や概要、合格率などを解説」の記事でも解説していますので、併せてご確認ください。
特定技能外国人を受け入れる企業側の要件
まず、大前提として、12の分野のいずれかに自社の事業が該当していることが必須です。この分野該当性を判断するために、分野ごとに独自の基準が設けられているケースが大半(例えば、建設業であれば「建設業許可」を取得していなければならないなど)で、在留資格申請時に確認されることとなります。
また、全分野共通事項として、以下の大枠3つの受け入れ基準が課されています。
支援体制に関する基準はなかなか厄介ですが、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。
登録支援機関については「【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説」の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
特定技能外国人が転職する時の手続きは?
続いて、特定技能外国人が転職する時の手続きについて見ていきましょう。
すでに「特定技能」だったとしても、ビザ申請(在留資格申請)が必須!
大前提として、特定技能外国人が転職する際には、すでに「特定技能」の在留資格を持っていたとしても、受け入れ企業を変えるごとに新たに「特定技能」の在留資格変更許可申請を実施しなければなりません。
特定技能は、指定書に記載の定められた機関(企業)で定められた活動のみを行うことができます。この指定書は、特定技能外国人のパスポートに貼り付けられており、特定技能の在留資格が許可された際に入管から発行されます。
このため、特定技能外国人は転職するたびにこの指定書を取り直す必要があるため、都度「特定技能」の在留資格変更許可申請を実施しなければならないのです。
また、特定技能の在留申請以外にも、「所属(契約)機関に関する届出」を退職した日から14日以内に最寄りの入管へ外国人本人が提出(オンラインでも可)する必要があります。詳しくは、出入国在留管理庁HPに概要と申請書のデータがダウンロードできるようになっておりますので、もし届出を失念している方がいらっしゃった場合には、届出を促してあげると良いでしょう。
在留期限がギリギリの場合は「特定活動(4ヶ月・就労可)」へ!
特定技能の在留資格申請は、一度なさった方であればお分かりいただけると思いますが、外国人本人・受け入れ企業双方ともに、多数の書類を取り寄せ、申請書類を作成する必要があります。
万が一、転職希望外国人の在留期限が迫っている場合、すぐに対応しきれず、在留期限がきれてしまう場合もあります。
こういった場合を見越して、入管は特例として「特定活動(4ヶ月・就労可)」という在留期間4ヶ月の在留資格へ変更し、その期間中に特定技能の申請書類を準備・申請することを認めています。(詳しくはこちらの出入国在留管理庁HPをご覧ください。)
この「特定活動」は、許可された場合、受け入れ予定企業で就労することも可能です。(ただし、この特定活動として活動していた期間は、特定技能の在留期間5年に合算される点はご留意ください。)
必要となる書類も、以下の4点のみですぐにご準備できるかと思いますので、在留期限ギリギリの方がいらっしゃった場合は、ぜひ一つの選択肢としてご検討ください。
旧受け入れ企業が実施する手続きは?
旧受け入れ企業においても、実施しなければならない手続きがあります。日本人と同様の手続き(社会保険や労働保険関係の手続きなど)は割愛させていただきます。
最寄りのハローワークへの「外国人雇用状況の届出」
こちらの手続きは、外国人が入退社した際に必要となってきます。
以下の期日までに、最寄りのハローワークもしくは厚生労働省管轄のオンラインシステムを利用して外国人雇用・離職の状況報告をする必要があります。
- 雇入れの場合:翌月の10日まで
- 離職の場合:翌日から起算して10日以内
届出を怠ってしまった場合は、30万円以下の罰金が課されてしまう可能性がありますので、忘れずに対応するようにしましょう。詳しくはこちらの「【外国人雇用状況届出とは】手続き概要や様式、提出方法などを解説」も併せてご覧ください。
出入国在留管理庁への「随時届出」
特定技能で特に注意しなければならないのは、この「随時届出」です。
具体的には、以下の3つの書類から、該当するものを事由発生から14日以内に管轄の入管へ提出することとなります。
書類の様式や記載方法等については、出入国在留管理庁HPから確認することが可能です。
どのくらいの期間で特定技能外国人は転職できる?
先にも説明した通り、特定技能外国人は転職するたびに「在留資格変更許可申請」を実施しなければなりません。
この申請には、まず書類の準備に1〜2週間、申請してから許可が下りるまで3週間〜1ヶ月半近くの期間を要するというのが弊社の体感です。
そのため、早くても1ヶ月、遅くても2ヶ月は入社するまでに時間がかかってくると認識しておくべきでしょう。(特定技能外国人は、在留資格変更許可申請が認められない限り、新たな受け入れ企業で就労することができません。)
一方で、「特定活動(4ヶ月・就労可)」の場合は、早くて2週間、遅くても1ヶ月以内には許可が下りてくるでしょう。特定技能の在留資格変更許可申請と比べると、比較的スムーズに許可が下りてきます。(ただし、その後は特定技能の在留資格変更許可申請の準備をしなければならないため、遅滞なく手続きを進めていく必要があります。)
特定技能外国人の転職についての課題・問題点は?
特定技能外国人は転職ができる一方で、制度面での問題や転職に至るまでのプロセスなど、様々な問題が発生してくることも事実です。ここからは特定技能外国人の転職に存在する問題点についてご紹介していきます。
直前・いきなり転職の申し出をされる場合がある
日本人であれば、退職する30日前に会社側へ申し出をするという習慣は一般的かと思います。
しかし、特定技能外国人の中には、「新しい転職先が見つかったので、明日から辞めます」というように、直前にいきなり転職の申し出をされるケースも実際にあります。
あまりにも直前すぎて、最悪の場合、シフトや現場の調整に慌てるのみならず、外国人本人と揉めてしまい、後味の悪い退職になってしまうこともあるでしょう。
こうならないよう、面接や入社前の事前ガイダンスにて、雇用契約の内容や退職時の報告タイミングについてはしっかりと伝えておくと良いでしょう。
自己都合退職時には、アルバイトができない
また特定技能外国人は自己都合による退職をした場合、アルバイトが禁止されています。
会社の倒産といった受け入れ企業側の都合による退職や特定活動の申請をした場合を除いて、転職期間中及びビザ申請中のアルバイトができないのです。
特定技能外国人は給与のいくらかを母国の家族へと送金しているケースも多く、貯金額もそこまで高くないでしょう。
在籍中の転職活動を強いられるのはもちろん、申請期間中の生活費を賄うことができず、友人から借金したり等、別の問題が発生してくる可能性もあります。
職種によっては、業務時間の兼ね合いでそもそも面接に参加できない、といったケースも発生してくることが予想されるため、外国人材側にとっては大きなハードルとなっているといえるでしょう。
引き抜き自粛規定の存在
特定技能外国人の大都市圏への集中回避に対する対応を名目として、「造船・舶用工業」や「介護」、「建設」といった複数の産業分野から引き抜き自粛要請が出されています。
何をもって引き抜きとなるのか、明確に定義されているわけではありませんが、こういった規定がある以上特定技能外国人の流動が多少滞ることは間違いありません。
在留資格申請が不許可になった場合、帰国する必要がある
また転職には在留資格の変更申請が必要になりますが、その申請がもし不許可になった場合、一旦帰国しなければなりません。
帰国となれば、再度日本で働くためには、改めて在留資格の認定申請をはじめとした入国手続きをしなければならないのは勿論、就職を希望する企業とのコンタクトも遠隔になってしまいます。
そういったリスクが存在することから、なかなか転職に乗り出すことができないという特定技能外国人は、一定数いらっしゃるでしょう。
悪質なブローカーの介在
よく弊社に問い合わせをいただく外国人材から、「手数料はいくら必要ですか?」と質問されることがあります。
もちろん、現行の特定技能制度では、外国人本人から弊社のような登録支援機関や人材紹介会社が手数料を徴収することは禁止されています。
しかし、海外現地の送り出し機関や個人で活動しているブローカーが外国人本人へ日本の企業を紹介する見返りとして数万円の手数料を徴収していることが実際には発生していることが伺えます。
こういった問題も、今後どうやって撲滅していくかを業界をあげて検討していく必要があるといえますし、受け入れ企業としても面接時に無用な費用を負わされている方がいるというのは頭の片隅に入れておくべきといえるでしょう。
特定技能外国人の転職・退職を防止するポイント
転職ができるという点は、外国人材にとって多くの選択肢を提供することになるので、とても良いことだと思います。
一方で、企業側にとっては、せっかく在留資格申請に時間をかけて配属した特定技能人材に、すぐに転職されては困ってしまいます。
そこで、最後に特定技能外国人の転職や退職を防止するポイントについて簡単にお話しておきます。
ポイント①:正当な待遇と評価
一つ目のポイントは正当な待遇と評価です。
特定技能外国人に限った話ではありませんが、外国人労働者は日本人以上に賃金や待遇についてシビアに考えています。
業務の責任や負担を踏まえて、適正な賃金・待遇を設定しなければ、転職や退職のきっかけとなってしまうわけです。
また正当な評価を受けていないと感じてしまっても、業務に対するモチベーションが下がり、結果として転職などの方向にシフトしてしまうでしょう。
そのため日本人労働者と同じく、公正な基準で適切な評価を実施した上で、昇給や昇格などの待遇改善も実施していく必要があると言えます。
ポイント②:適切な教育係の存在
また適切な教育係の存在も、特定技能外国人の定着には欠かせません。
特定技能外国人を雇用する際、事前ガイダンスや生活オリエンテーションなどといった様々な支援を実施することで、当該外国人の就業や生活を安定させる必要があります。
この当該外国人の就業の安定には、業務上の教育も影響があることは言うまでもありません。
そのため適切な教育係を配置することがポイントとなるのです。
そういった意味では、可能であれば当該外国人の母国語や、理解できる外国語を話せるスタッフを教育係につけることなどが望ましいでしょう。
またもし同じ出身国などの社員が既にいるのであれば、そういった人材に教育係を任せることで、業務は勿論精神面でのフォローもしやすくなると言えるでしょう。
ポイント③:受け入れ体制の構築
とはいえ雇用した特定技能外国人の母国語や理解できる言語を話せる人材がいるというケースは正直少ないでしょうし、同じ出身国の社員となればなおさらです。
そこで会社全体として受け入れ体制を構築することが重要になります。
受け入れに先立ち、特定技能外国人の母国の文化を学んだり、初歩的なレベルでもいいので当該外国人の母国語を学んだりすることも有効と言えます。
また特定技能外国人が入社した後は、定期的に日本語研修を実施することも重要です。
中には、徹底的にマニュアルを作り込み、母国語翻訳した上で特定技能外国人へ配布している企業も存在します。
このように全社や受け入れる部門全体で、積極的に受け入れ体制を構築していくことがポイントとなるでしょう。
まとめ
今回は特定技能外国人の転職をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
弊社は国内に在留している特定技能外国人の紹介サービスや、受け入れ体制の構築支援などを企業様に提供しております。
もし転職での特定技能外国人の受け入れを検討されているのであれば、一度こちらのURLからお気軽にご相談ください。