2019年の制度開始から在留資格取得者数が右肩上がりに伸び続けている「特定技能」。この在留資格には1号と2号の区分がありますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、特定技能2号の概要、1号との違い、試験と実務経験要件、取得することのメリットなど詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
在留資格「特定技能」とは?
在留資格「特定技能」は、日本の労働力不足への対策として、外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された制度です。
現在、人手不足が著しい以下16業種で外国人労働者を雇用することができ、即戦力となる一定の専門性と技能と日本語能力を有する労働者に対して発行されます。
特定技能の創設以前では、現場での単純労働での受け入れが困難でしたが、特定技能では従事することができます。そのため、特定技能制度を活用した人手不足の解消が注目を集めています。
2024年6月末時点では約25万人の在留者数がおり、今後5年で82万人まで在留者数を増やすと政府目標が掲げられていることからも注目度の高さが伺えます。

特定技能については「在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!」の記事で基本的な概要を網羅的に解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
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特定技能は1号・2号の2種類存在する
この特定技能には1号と2号という区分があり、まずは特定技能1号でスタートし(最大5年間)、一定の要件を満たすことで特定技能2号に移行することができます。
ただし、特定技能「介護」のみ、特定技能2号が認められておりません。理由としては、介護福祉士国家試験に合格することで、在留資格「介護」という、特定技能2号とは別の在留資格を取得することができるためです。
介護分野における外国人労働者の受け入れについては「外国人介護士の採用方法!4つの在留資格ごとのメリット・デメリット総まとめ」の記事も併せてご覧ください。
ちなみにですが、2024年6月末時点での特定技能2号の在留者数は153名となっており、まだまだ少ないのが現状となっております。

ただ、特定技能1号の在留者数の増加数を鑑みるに、特定技能2号の取得者数は今後右肩上がりで増加していくことが見込まれます。
特定技能1号と2号の違いは?
それでは、特定技能1号と2号の違いについて、見ていきましょう。
ざっくりと表でまとめると、以下のような違いがあります。
上記に加え、別途特定技能1号と2号の注目すべき違い・ポイントを以下個別に解説していきますので、ぜひご覧ください。
① 在留期限の上限が異なる(永住権取得の可能性も)
まず在留期間の違いは、特定技能1号は通算(上限)が5年間に対して、特定技能2号は更新をし続ければ上限なく日本に在留が可能な点です。
このため、在留期間更新を続ける限りずっと日本に在留が可能で、それにより、永住権取得で最も大きな要件である「引き続き10年以上本邦に在留している」を満たすため永住権を取得することも可能になります。
なお、特定技能1号においては、その在留期間は永住権取得要件(10年間)にカウントが出来ないため、特定技能1号を満了するのみでは、永住権を取得することが出来ません。
② 家族の帯同が可能になる
特定技能1号と2号では、家族を帯同できるかどうかという点も異なります。
1号の場合は家族帯同は認められていませんが、在留期間の制限がなくなる2号は条件さえ満たせば配偶者と子供に限り、家族帯同が可能となっています。
家族帯同ができるかどうかは、外国人にとって日本で長く働けるかどうか決める重要な項目と言ってよいでしょう。
③ 試験の実施状況と受験方法が異なる
特定技能1号の技能試験は、分野によって実施頻度は異なりますが、国内外で定期的に開催されています。
一方、特定技能2号の技能試験は、現状で宿泊分野は海外での試験予定が公表されていますが、他の分野においては国内のみで実施されている分野もあれば、まだ試験情報も出ていない分野など様々です。
試験情報については、出入国在留管理庁のWEBサイト「試験関係」や、特定技能総合支援サイト、各試験運営機関のWEBサイトより確認が可能です。
特定技能の試験については「2024年最新版!特定技能評価試験の申し込み方法、スケジュールなど徹底解説!」の記事も併せてご覧下さい。
④ 求められる技能水準と日本語能力が異なる
特定技能2号は、1号と比べて高いレベルの技能水準が求められます。
例えば、外食分野においては、運用要項で以下のように規定されています。
- 1号:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)
- 2号:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)及び店舗経営
2号において追加されている「店舗経営」とは、店舗をトータルで管理するために必要な調理、接客、店舗管理業務以外のもの(例:店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務等)を指し、店舗経営の業務について、トータルで管理できる技能水準が必要ということになります。
また、特定技能1号は、技能実習からの移行の場合を除き、技能試験と併せて日本語能力をはかる試験の受験と、それによる一定水準の日本語能力(N4以上)が必須です。
一方、特定技能2号は、漁業と飲食分野では日本語能力試験N3以上が必要ですが、他分野においては日本語能力の試験は不要です。
⑤ 登録支援機関の支援が必要なくなる
1号特定技能外国人へは、出入国在留管理庁が定める以下の10項目の支援が義務化されています。

また、受け入れ時には、この10項目の義務的支援内容を具体的に書類に記載した「支援計画書」の策定が必須です。
一方で、特定技能2号に対しては、この支援計画の策定や実施は不要です。すでに5年近く特定技能1号としての就労・日本在住経験を有するため、特段第三者からの支援・サポートは必要ないと判断されています。そのため、在留資格申請についても、必要書類の削減が可能になりますし、登録支援機関の活用も不要になると言えるでしょう。
特定技能外国人への支援を委託する登録支援機関や、支援内容の詳細については「登録支援機関の役割って何?特定技能外国人への支援内容や選び方を解説!」の記事をご覧下さい。
特定技能2号は外国人側にメリットがある?
結論、特定技能1号や今後特定技能になろうとする外国人材の大半は、特定技能2号の取得を目指しています。
先にも挙げたように、家族帯同が認められていたり、10年以上の在留により永住権が取得できたり等、大きなメリットが存在するためです。加えて、10年の滞在もせずとも、更新が認められる限り日本に在住ができる特定技能2号だけでも、十分魅力的と言えます。
日本以外の諸外国では、家族の呼び寄せや永住許可を与えるのに、高いハードルを課している国がほとんどです。そんな中、日本の特定技能2号については、細かい経歴等を一切度外視した上で、特定技能2号評価試験をクリアしてしまえば永住に近しい身分が保証されますので、外国人材から見た時に、かなり魅力的であると言えるでしょう。
弊社が運営するYouTubeチャンネル「ぐろーばる採用TV」では、特定技能外国人へのインタビューを公開しております。実際に、特定技能2号を目指している外国人材が多いことがご理解いただけると思いますので、ぜひ併せてご覧ください。
特定技能1号から2号へ移行するための条件・取得要件は?
ここまでご覧いただいた方は、特定技能1号を経て2号を取得するのはご理解いただけているかと思いますが、では、特定技能2号はどのように取得すれば良いのでしょうか?
ここでは、特定技能2号の取得条件について見ていきます。
特定技能2号評価試験に合格する
先述の通り、特定技能2号を取得するためには各分野で定められた試験に合格する必要があります。
どれだけ実務経験を積んでいても試験に合格をしない限り特定技能2号にはなれないのです。
参考までに、公表されている範囲でジンザイベースがまとめた特定技能1号と2号のおおよその試験合格率は以下の通りです。
分野によってのバラツキはあるものの、特定技能2号の試験合格率は1号の半分程度と低いです。
最長5年という特定技能1号の在留期間のうちに、この試験の合格と実務経験を積む必要があると考えると、特定技能2号取得は少しハードルが高いようにも思えるでしょう。
分野ごとに定められた要件を満たす
特定技能2号の試験に合格する以外にも、実務経験などの基準が分野ごとに個別に定められています。
実務経験は各分野によってポイントは異なりますが、例えば、建設業においては、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験が必要となっています。
外食業においては、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての実務経験が要件とされています。
外食業に関しては、管理職に近い領域の実務経験が求められるに加えて、日本語能力試験N3の合格も求められます。
これらの実務経験の有無は、特定技能2号評価試験の申込時に、前職含めてどのような業務を担ってきたのか、その経歴書等を添付して提出することが必須になっており、確認がなされます。
そのため、分野によっては、単純に試験の対策をしているだけではなく、計画的にマネジメントに近しい領域の業務経験を積ませていく必要があると言えます。
特定技能2号を取得するまでの流れ
以下は、外務省HPからの出典になりますが、特定技能2号取得の流れが取りまとめられています。

特定技能1号になるルートは2つありますが、どちらにせよ特定技能1号を取得した後に特定技能2号に必要な各分野ごとの実務経験を積む必要があります。
これらの実務経験を積みながら、もしくは積んだ後に、各分野ごとに定められている特定技能2号の試験を受験し合格する必要があります(漁業と外食分野は日本語能力試験N3以上も必要)。
なお、以下の動画は弊社運営のYouTubeチャンネル「ぐろーばる採用TV」の動画ですが、実際に特定技能2号の取得を支援してきた弊社支援担当者に流れを聞いておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
特定技能2号を取得するためには費用がかかる?
結論、特定技能2号を取得するには、費用がかかります。
まず、試験を受験するのに費用が発生するケースが大半です。中には、試験受験後、合格証明書を発行するのにも手数料が発生する分野も存在します。以下に表として取りまとめておりますので、ぜひご参照ください。
加えて、特定技能2号の在留資格を申請する際に、必要書類の作成を行政書士等に委託する場合は、別途申請費用が発生してきます。先ほどの合格証明書はこの特定技能2号の申請時に必要となってきますので、必ず発行する必要がある点はご留意ください。
特定技能2号に関する注意点は?
ここからは特定技能1号から2号へ移行する上での注意点を見ていきましょう。
特定技能2号の試験は企業が申し込む場合が多い
特定技能1号の試験については、外国人本人が自由に申し込みをする形が一般的です。
ただし、特定技能2号の試験申し込みについては、特定技能外国人本人ではなく、企業が実施しなければならないケースが大半です。
各種試験運営団体HPからマイページ登録を行い、希望日程を申請する流れが一般的ですが、一部の分野については「実務経験証明書・誓約書」を作成・提出する必要があったりしますので、注意が必要です。
もしすでに特定技能1号を雇用している企業様については、「うっかり特定技能2号の試験申し込みを忘れてしまった」ということがないよう、ご留意ください。
実務経験は、2年以上という制約が設けられている
一部の分野においては、特定技能2号取得時に「管理・指導の実務経験」を求められるケースがありますが、多くは2年以上という期間設定がなされています。
そのため、既存の特定技能外国人に対しては、計画的に育成を行った上で、然るべきポジションを与えていく必要があるでしょう。
加えて、異業種から自社へ転職してくる特定技能1号外国人を採用する際には、残りの在留期限がどのくらい残っているのか確認する必要があります。
例えば、農業で3年間就労した方を飲食店で雇用する場合は、飲食店で就労できる残りの在留期限が2年となってしまいます。こういった場合、求められる実務経験を十分に積ませることができず、結果として特定技能2号の申請時に不許可になってしまう可能性もあります。
そのため、中途で特定技能外国人を採用する場合や残りの在留期間を考慮した上でのキャリア構築をしていくことが必須と言えるでしょう。
前職勤めていた企業との関係性構築が大切
実務要件については、前職での実務経験も含めることができます。そのため、現職において1年しか管理・指導経験がなかったとしても、前職で1年近く同様の経験があれば、要件自体は満たすことが可能です。
ただし、実務経験を証明するため、前職企業が作成した証明書を提出してもらう必要があるケースが存在します。そういった場合に、退職時に何かしらの理由で揉めてしまっている方については、連絡すら取れない・証明書を提出してもらえないといった事態になりかねません。
外国人本人としては、なるべく辞める際のマナーは守るべきですし、その上で企業側から前職企業へ連絡を入れる等、一定のフォローも必要になる点は注意しましょう。
特定技能2号取得後の転職に気をつける
今まで見てきた通り、特定技能2号を取得する人材は、特定技能2号試験合格に加え、分野によっては管理・指導の実務経験を積んでいる方や日本語能力試験N3以上等のハードルを乗り越えた人材が中心になっています。
一定期間の管理者水準の実務経験や日本語能力があること、在留期限の上限がないことなどは雇用する側から見ても魅力的となるため、獲得競争が激化することも考えられます。そのため、特定技能2号の給与相場は自ずと上がってくるでしょう。
そのため、特定技能2号取得者に対して、適切な待遇を確保しないと、すぐに他の企業へ転職されてしまう可能性は、特定技能1号よりも高くなると言えます。
そうした事態を防ぐためにも、特定技能2号移行後の給与面を含む社内でのキャリアアップをしっかりと考えた上で本人と共有するなど、優秀な外国人材が流出しないための対策も必須となります。
まとめ
この記事では、特定技能2号について1号との違いなどを中心に解説してきましたが、いかがでしたか?
特定技能2号の受け入れは少しずつ始まっており、今後も人数はどんどん増えていくことは確実でしょう。
また、技能実習制度の廃止が確実となっている今、特定技能への注目はどんどん増えております。
当社は特定技能外国人の紹介から支援などをワンストップで行っておりますので、特定技能2号への移行を見据えた外国人雇用を検討したい、そもそも特定技能をこれから検討したい、、、などがありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
