2019年の制度開始から在留資格取得者数が右肩上がりに伸び続けている「特定技能」。
この在留資格には1号と2号の区分がありますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、この特定技能1号と2号の違いや、特定技能2号取得の条件などについて詳しく解説していきます。
特定技能の概要
特定技能制度とは、
日本の労働力不足への対策として、特定産業分野の12分野14業種(現在は16分野)で、外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された制度
です。
この制度に基づき発行される在留資格は「特定技能」で、人手不足が著しい、現在は、16の特定の分野において即戦力となる一定の専門性と技能と日本語能力を有する労働者に対して発行されます。
特定技能は、技術・人文知識・国際業務といった、従来の就労系在留資格ほどの高い専門性を求められず、単純労働での受け入れが可能なため、国内の人手不足の解決策として注目を集めています。
特定技能には1号と2号という区分があり、まずは特定技能1号でスタートし(最大5年間)、一定の要件を満たし、特定技能2号に移行できれば在留期間の制限なく日本で働くことができます。
特定技能1号の対象分野は以下の通りです。
既存12分野
①介護 ②ビルクリーニング ③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
④建設 ⑤造船・舶用工業 ⑥自動車整備 ⑦航空 ⑧宿泊 ⑨農業 ⑩漁業
⑪飲食料品製造業 ⑫外食業
新規追加4分野
⑬自動車運送業 ⑭鉄道 ⑮林業 ⑯木材産業
※新規分野の受け入れ開始時期は未定
特定技能2号とは
特定技能1号は、各分野で即戦力となる「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」が可能と認められた外国人に対して発行さますが、特定技能2号は「熟練した技能を有する業務」に従事可能な外国人に発行される在留資格です。
特定技能1号と同様に、技能水準要件として技能試験の合格が求められますが、それ以外にも、実務経験などの基準があります。
実務経験は各分野によってポイントは異なりますが、例えば、外食業においては、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての実務経験が要件とされています。建設業においては、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験が要件とされているのです。
介護には特定技能2号がない?
特定技能2号の対象分野は後述しますが、特定技能1号で対象となっている「介護」分野は、2024年7月現在、特定技能2号の対象となっておりません。
この理由としては、専門的・技術的分野の在留資格「介護」があり、特定技能2号と同様に無期限就労、家族帯同が認められていることが考えられます。
特定技能2号は拡大中?
特定技能2号は、2022年以前は「建設」と「造船・舶用工業」の2分野に限られていました。
しかしながら、特定技能1号の在留期限が5年間で、2019年初期から特定技能で在留している外国人の期限が迫っていること、本来は日本の労働力不足の解決が目的であることなどから、2023年に対象分野を11分野まで拡大しました。
特定技能2号の分野拡大については弊社YouTubeチャンネルでも解説をしておりますので、是非ご覧下さい。
特定技能2号で従事できる業種は?
特定技能2号の対象11分野は、以下の通りです。
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
先述の通り、介護分野以外の既存11分野が対象となっております。
特定技能1号で新規追加となる4分野については、1号での受け入れ開始時期も未定のため2号で対象になるかも未定ですが、恐らく同様に追加されると考えてよいでしょう。
特定技能1号と2号の6つの違いについて
ここでは、特定技能1号と2号の違いについて解説していきます。
まず、おおまかに見ると以下のような違いがあります。
このなかでも注目すべき6つの違いについて以下で解説していきます。
①在留期間の違い、永住権を取得できる可能性も!
まず在留期間の違いは、特定技能1号は通算(上限)が5年間に対して、特定技能2号は更新をし続ければ上限なしに在留が可能です。
このため、在留期間更新を続ける限りずっと日本に在留が可能で、それにより、永住権取得で最も大きな要件である「引き続き10年以上本邦に在留している」を満たすため永住権を取得することも可能になります。
特定技能1号においては、その在留期間は永住権取得要件(10年間)にカウントが出来ないため、永住権を取得することが出来ません。
永住権取得については以下の記事で詳しく解説しておりますので、是非併せてご覧下さい。
▶永住権はどうやって取得できる?条件や永住者、帰化との違いについても解説!
②技能水準の違い
先述の通り、特定技能2号は1号と比べて高いレベルの技能水準が必要です。
例えば、外食分野においては、運用要項で以下のように規定されています。
1号:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)
2号:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)及び店舗経営
飲食物調理、接客、店舗管理は1号と同様です。
店舗経営とは、店舗をトータルで管理するために必要な調理、接客、店舗管理業務以外のもの(例:店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務等)を指し、店舗経営の業務について、トータルで管理できる技能水準が必要ということになります。
③支援の必要性
1号特定技能外国人へは、出入国在留管理庁が定める以下の10項目の支援が義務化されています。
また、受け入れ時には、この10項目の義務的支援内容を具体的に書類に記載した「支援計画書」の策定が必須です。
一方で、2号特定技能外国人に対しては、この支援計画の策定や実施は不要です。
特定技能外国人への支援を委託する登録支援機関や、支援内容の詳細については以下の記事をご覧下さい。
▶登録支援機関の役割って何?特定技能外国人への支援内容や選び方を解説!
④家族帯同の可否
特定技能1号と2号では、家族を帯同できるかどうかという点も異なります。
1号の場合は家族帯同は認められていませんが、在留期間の制限がなくなる2号は条件さえ満たせば配偶者と子供に限り、家族帯同が可能となっています。
家族帯同ができるかどうかは、外国人にとって日本で長く働けるかどうか決める重要な項目と言ってよいでしょう。
⑤日本語能力試験の有無
特定技能1号は、技能実習からの移行の場合を除き、技能試験と併せて日本語能力をはかる試験の受験と、それによる一定水準の日本語能力が必須です。
一方、特定技能2号は、漁業と飲食分野では日本語能力試験N3以上が必要ですが、他分野においては日本語能力の試験は不要です。
⑥試験実施の違い
特定技能1号の技能試験は、分野によって実施頻度は異なりますが、国内外で定期的に開催されています。
一方、特定技能2号の技能試験は、現状で宿泊分野は海外での試験予定が公表されていますが、他の分野においては国内のみで実施されている分野もあれば、まだ試験情報も出ていない分野など様々です。
試験情報については、出入国在留管理庁のWEBサイト「試験関係」や、特定技能総合支援サイト、各試験運営機関のWEBサイトより確認が可能です。
特定技能試験については以下の記事も併せてご覧下さい。
▶2024年最新版!特定技能評価試験の申し込み方法、スケジュールなど徹底解説!
特定技能2号の取得条件
ここまでご覧いただいた方は、特定技能1号を経て2号を取得するのはご理解いただけているかと思いますが、では、特定技能2号はどのように取得すれば良いのでしょうか?
ここでは、特定技能2号の取得条件について見ていきます。
特定技能2号取得の流れ
特定技能2号取得の流れは大まかに以下の通りです。
特定技能1号になるルートは2つありますが、どちらにせよ特定技能1号を取得した後に特定技能2号に必要な各分野ごとの実務経験を積む必要があります。
これらの実務経験を積みながら、もしくは積んだ後に、各分野ごとに定められている特定技能2号の試験を受験し合格する必要があります(漁業と外食分野は日本語能力試験N3以上も必要)。
特定技能2号取得するためには試験の合格が必要
先述の通り、特定技能2号を取得するためには各分野で定められた試験に合格する必要があります。
どれだけ実務経験を積んでいても試験に合格をしない限り特定技能2号にはなれないのです。
参考までに、公表されている範囲でジンザイベースがまとめた特定技能1号と2号のおおよその試験合格率は以下の通りです。
分野によってのバラツキはあるものの、特定技能2号の試験合格率は1号の半分程度と低いです。
最長5年という特定技能1号の在留期間のうちに、この試験の合格と実務経験を積む必要があると考えると、特定技能2号取得は少しハードルが高いようにも思えるでしょう。
特定技能1号から2号への移行する上での注意点とは?
ここからは特定技能1号から2号へ移行する上での注意点を見ていきましょう。
まず1つ目は、特定技能1号の最大5年という在留期間中に特定技能2号に移行できないリスクがあるということです。
その理由は大きく2点で、
- 試験合格要件以外に、一定期間の実務経験要件があること
- 2号技能試験の実施回数や合格率が低いこと
です。
したがって、受け入れ側の企業としては、特定技能1号で在籍している5年間にいかに試験と実務経験の要件を満たせるよう教育と育成していけるかが非常に大切なポイントとなってくるでしょう。
特定技能1号の取得直後から雇用をしている外国人であれば、2号を見据えて経験を積ませることは出来ますが、国内転職者として採用した1号特定技能外国人の場合は、そもそも残りの在留期間中に実務経験要件を満たすことが出来ないなどもあるでしょう。
そのため、1号特定技能外国人の受け入れの際には在留期間と特定技能2号への移行意思があるかなどは必ず確認しましょう。
そして注意点の2つ目は、特定技能2号取得後は人材流出のリスクが1号と比べて非常に高くなることです。
2023年12月末時点で、特定技能1号の在留外国人は約20万人いるのに対し、特定技能2号においては37人しかいません。
まだ、特定技能2号の試験等が始まって間もないこともありますが、1号と比べて2号外国人が希少な存在なのは明らかでしょう。
一定期間の管理者水準の実務経験や日本語能力があること、在留期限の上限がないことなどは雇用する側から見ても魅力的となるため、獲得競争が激化することも考えられます。そのため、特定技能2号の給与相場は自ずと上がってくるでしょう。
1号特定技能外国人の2号移行を検討している場合、彼らの2号移行後の給与面を含む社内でのキャリアアップをしっかりと考え、本人と共有するなど、優秀な外国人材が流出しないための対策も必須となります。
特定技能2号の注意点に関しては弊社のYouTubeでも解説をしていますので是非ご覧下さい。
特定技能2号は受け入れ人数の制限がある?
特定技能1号は介護、建設分野を除けば、1企業での受け入れ人数の上限はありません。
特定技能2号は、介護分野は対象外ではありますが、建設分野においては1号と異なり受け入れ人数の制限はありません。
受入れ人数の制限がなくなるメリットはあるものの、先述の注意点なども併せ、より人材の獲得と確保が激化していくと考えてよいでしょう。
特定技能2号の今後の展望
2019年4月に始まった特定技能制度ですが、制度開始当初は建設と造船・舶用工業の2分野のみが対象であった特定技能2号は11分野まで拡大されました。
また2023年からは実際に特定技能2号の技能試験も始まり、まだ少数ではありますが、特定技能1号から2号へ移行をする外国人が出始めています。
在留期限の上限がないこと、家族帯同が認められることは外国人労働者にとってはとても重要なことであるため、特定技能2号を希望する外国人は多く、2号取得者は今後も右肩上がりで増えていくことでしょう。
特定技能外国人を長期的に雇用し続けたいと考えている企業は、特定技能1号から2号へ移行することを見据えた上での採用と、外国人材育成の社内体制を整えるなどの対策を始めて見ることをおすすめします。
まとめ
この記事では、特定技能2号について1号との違いなどを中心に解説してきましたが、いかがでしたか?
特定技能2号の受け入れは少しずつ始まっており、今後も人数はどんどん増えていくことは確実でしょう。
また、技能実習制度の廃止が確実となっている今、特定技能への注目はどんどん増えております。
当社は特定技能外国人の紹介から支援などをワンストップで行っておりますので、特定技能2号への移行を見据えた外国人雇用を検討したい、そもそも特定技能をこれから検討したい、、、などがありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。