日本人のみの採用では、将来的な人材確保に不安を感じた|社会福祉法人同塵会様

介護業界における人材不足が深刻化する中、関東圏で福祉事業を展開する社会福祉法人同塵会。同法人が運営する特別養護老人ホームサンバレーでは、約100名の従業員のうち10名が外国人材として活躍しています。

特徴的なのは、2011年という比較的早い段階から外国人材の採用に着手し、計画的な人材育成を進めてきた点です。また、文化や習慣の違いを活かしながら、より豊かな介護サービスの提供を実現しています。

今回は和田施設長に、外国人材との協働がもたらした変化や、多文化共生の職場づくりに向けた取り組みについてお話を伺いました。また、同施設で就労する特定技能外国人スレスタさんにもインタビューを実施しましたので、ぜひご覧ください。

日本人のみの採用では、将来的な人材確保に不安を感じた

ーーーまずは和田さんの自己紹介と事業概要をお伺いしてもよろしいでしょうか?

和田施設長:

特別養護老人ホームサンバレーの施設長を務めております和田と申します。

介護福祉の専門学校を卒業後、同塵会にケアワーカーとして入社いたしました。約10年間介護福祉士として勤務した後、施設課長を経て、現在はサンバレーの施設長を務めております。

私どもの同塵会は、高齢者・障害者・児童の各分野で福祉事業を展開しており、全23事業を運営しております。その内訳は、特別養護老人ホーム8施設、地域福祉を担う地域プラザ6施設、そしてグループホームと保育園を合わせて8施設となっております。

私が所属するサンバレーは特別養護老人ホームです。老人ホームには様々な種類がありますが、特別養護老人ホームは要介護度3以上の重度の方を主な入居対象とする施設です。

ーーーサンバレーの施設では何名の方が働いていらっしゃいますか?

和田施設長:

サンバレーでは約100名、大体95名から100名ぐらいで従業員数は推移しております。

外国籍の職員は現在は10名です。看護師が2名、ケアワーカーの正社員が6名、パートの職員が2名、合計10名です。

ーーー外国人職員はいつ頃受け入れを始めたのですか?

和田施設長:

当法人における外国人材の採用は2011年から開始し、当施設のサンバレーでは2015年から取り組みを始めました。

当初は看護留学生の採用からスタートしましたが、2015年以降は看護師の研修生をはじめ、ケアワーカーの技能実習生特定技能人材など、様々な制度を活用しながら継続的に採用を進めております。

ーーー外国人を採用するに至った経緯は何かあったりしますでしょうか?

和田施設長:

当法人が外国人材の採用に踏み切った背景には、日本全体の人口減少に対する懸念がありました。特に横浜市では特別養護老人ホームの増設計画が進められており、施設数の増加に伴う介護士不足が予測されたことから、日本人のみでは将来的な人材確保に不安があると判断いたしました。

また、介護職への応募者数は年々減少傾向にあり、私自身が学んだような介護福祉の専門学校や大学などの専門教育課程も減少しております。教育機関自体の減少により、必然的に介護分野への就職希望者も減少している状況にあります。このような状況から、外国人材の採用を進めています。

ーーー現在はどの国籍の方を雇用されているんでしょうか?

和田施設長:

サンバレーでは全部で5か国、中国とミャンマーとネパール、インドネシア、フィリピンの5カ国の方が働いてくれてます。

ーーーその方たちとは文化の違いなどの問題はありましたか?

和田施設長:

当初は文化的な違いについて懸念がございましたが、実際の業務において大きな支障は生じておりません。むしろ、日々の対話を通じて異文化への理解が深まり、日本人職員側から積極的に情報を吸収できているんじゃないかと感じています。

加えて、採用開始時には言語面での不安が大きく、また宗教や習慣の違い、さらには入居者様からの受け入れに関する懸念もございました。しかしながら、実際に外国人材を受け入れてみますと、当初の不安は杞憂に終わりました。

この成功の最大の要因は、外国人スタッフ一人一人の努力と熱意にあります。日本語の習得に真摯に取り組む姿勢はもとより、介護の基本である「優しさ」や「笑顔」を大切にする姿勢が、文化や言葉の壁を超えて、入居者様との信頼関係構築に大きく貢献しています。このような彼らの献身的な努力の結果、当初抱いていた不安はすぐに解消されました。

当初の懸念が、組織全体の成長に繋がる”好機”へ

出典:同塵会HP|サンバレーで開催されたクリスマス会の様子
出典:同塵会HP|サンバレーで開催されたクリスマス会の様子

ーーー外国人と働いて大変だった点などはありましたか?

和田施設長:

業務上の大きな支障は特段ございません。確かに言語面での課題はありますが、私たちも効果的な伝達方法を工夫し、チームの一員として受け入れる姿勢を持って接することで、外国人材を特別視することなく、自然なコミュニケーションを築くことができております。

また、必要に応じて翻訳アプリケーションなどの補助ツールも活用しておりますが、何より大切なのは相互理解を深めようとする意思であり、その点において大きな障壁を感じることはありませんでした。外国人スタッフの積極的な学びの姿勢と、日本人スタッフの受容的な態度が、円滑なコミュニケーションのベースになっています。

ーーー驚いたことや失敗談などはありますか?

和田施設長:

業務外での興味深い経験として、日常生活における文化の違いを発見する機会が数多くございました。例えば、日本では当たり前とされている牛乳の保管方法一つを取っても、文化的な違いが表れることがあります。日本人にとっては購入後すぐに冷蔵保存することが常識である一方、牛乳をあまり飲用しない文化圏出身のスタッフからは「母国では牛乳を冷蔵庫で保管する習慣がない」といった話を聞くことがあります。

こうした文化的な違いの発見があるからこそ、互いの文化への理解を深めるより良いコミュニケーションを生む契機となってると感じています。

ーーーコミュニケーションなどで直面した問題はありましたか?

和田施設長:

外国人スタッフは非常に熱心に取り組んでくれているものの、時として意思疎通が十分でないと感じる場面もございます。そのような際は、ジンザイベースさんにご協力いただき、通訳を介した正確な情報伝達や意図の確認を行うことで、比較的早期に課題を解決することができております。

ーーー利用者様や他の従業員様のご反応はいかがでしたか?

和田施設長:

入居者様からは当初、外国人スタッフとのコミュニケーションに不安を示される場面もございました。しかしながら、実際の交流が始まってからわずか1~2週間程度で、「日本語が上手ですね」「よく頑張っていますね」といった好意的な評価をいただけるようになりました。

このように入居者様からの理解が早期に得られたので、私たちスタッフとしても大きな安心感となりました。

ーーー他の職員さんの反応はいかがでしたか?

和田施設長:

むしろ外国人スタッフとのコミュニケーションを通じて、いかに分かりやすく伝えるか、日本語の使い方をより明確にするにはどうすべきかといった点について、私たち日本人スタッフも学ぶ機会を得ることができました。また、相手の理解度を確認しながら説明を進めるなど、指導力の向上にもつながっております。

当初は様々な懸念もございましたが、逆にそれらを力に変えることができ、むしろ組織全体の成長につながる好機にできたのではと感じています。

ーーー今後の展開についてお聞かせください

和田施設長:

今後も人材確保の観点から、引き続き外国籍の方々との協力関係を維持・強化してまいりたいと考えております。その一環として、長期的な就労を促進するため、ICTの活用による業務記録の効率化など、業務上の負担軽減に取り組んでおります。また、新人スタッフが直面する可能性のある課題を事前に把握し、その解決策を講じることで、スムーズな業務導入を支援しております。

単に介護業務への興味から入職されても、継続的な就労に結びつかなければ本質的な解決にはなりません。そのため、長期的なキャリアビジョンを描いていただけるような職場環境の整備に注力しております。さらに、外国籍スタッフの増加に伴い、今後10年を見据えた人材育成計画として、リーダー職への登用やキャリアアップ支援など、より体系的な教育・育成プログラムの構築を検討しております。

ーーー最後に人手不足でお困りの企業様に向けて一言お願いします

和田施設長:

外国人材の採用をご検討されている法人様におかれましては、できるだけ早期に取り組みを開始されることをお勧めいたします。人材不足が顕在化してからの対応では遅きに失する可能性があります。当法人におきましても、代表の先見性により早期に取り組みを開始できたことが、現在の安定的な人材確保につながっております。

外国人材の採用に少しでもご関心をお持ちであれば、まずは準備段階から着手されることが望ましいと考えております。採用から育成まで一定の時間を要することを考慮すると、計画的な取り組みが成功への鍵となります。

ーーー本日はご貴重なお時間をいただきありがとうございました!

将来は介護福祉士を取得し、家族と共に日本で仕事をしたい

ーーーいつ日本に来たんですか?

スレスタさん:

私は2014年7月に初来日し、2019年7月に一度母国へ帰国いたしました。その後、約2年間母国で過ごした後、再び来日いたしました。

ーーー2014年に日本に来たときは学生ですか?

スレスタさん:

そうですね。留学生で日本語学校で日本語を学び、専門学校ではビジネスを勉強していました。

ーーーそれはもうネパールで介護の勉強をしたっていうんですか?

スレスタさん:

介護の専門教育はネパールで受けておりませんが、帰国前に日本で介護資格試験に挑戦し、合格することができました。

これは、以前から介護に強い関心を持っており、自分で学習を継続してきた結果であると考えてます。

ーーーいろんな国がある中でなぜ日本を選んだんですか?

スレスタさん:

安全な国とか、自分のお父さんが結構前から日本にいらっしゃるので、妹さんとか、おじいさんとおばあさんの家族がいますので。ご家族は日本にいらっしゃるんですね。もうみんないる感じです。私のお母さんと弟以外は大体ここにいます。

ーーー日本語の勉強っていつからしたんですか?

スレスタさん:

当初の日本語はネパールにいる時の2013年に開始し、まず5ヶ月間勉強した後、日本に来ました。

現在は日本語能力試験N1に合格し、会話は問題ないです。ただし、漢字はまだまだ難しいので、すべての文字を読むことはできません。話を聞いて理解する方が得意ですね。特に日常会話については、問題ないかなとは思います。

ーーーいろんな仕事があると思うんですけどなんで介護を選んだんですか?

スレスタさん:

介護を選んだのは、家族や自分のおじいさんとおばあさんの小さいときからお世話していたので、お年寄りと関わる仕事の方が自分に合うかなと思って介護を選びました。

介護の仕事をしていて楽しいですね。特に、感謝の言葉をもらった時ですね。『ありがとう』とか、『助かった』とか、『話聞いて安心です』って言われたとき、私ちゃんとやれてるかなと思って嬉しいですね。利用者様からちょっと褒められたり、感謝の気持ちを伝えられたときです。

ーーー逆に大変だなって思うときってありますか?

スレスタさん:

私は介護に興味があるから全然思ってないですね。全然大変じゃないです。自分の仕事は介護ですが、仕事はどれでも大変と思いながらやるから、全然大変と思わないです。

ーーー介護の1日の流れってどんな感じなんですか?

スレスタさん:

介護のシフトは毎日同じじゃないです。早番、日勤、遅番、夜勤があるためです。

早番のときは早く来て薬チェックして、そのあとご飯配る時間がありますね。日勤だとバイタルとか測って、おむつ交換とかお風呂の入浴介助とかあります。夜勤は薬等をチェックして、ご飯の介助を行います。

働く時間は毎日バラバラなので、1ヶ月があっという間に過ぎていきますね。

ーーー入浴とか大変とか抵抗があるとか思うんですけど?

スレスタさん:

仕事だから全然思わないですね。これは私の仕事ですから。周りの人や友達からは大変そうだといっぱい聞いてますけど、私は全然感じてないです。

友達からはすごいストレスになるよって言われますが、私は仕事の中に入ったら仕事のことしか考えません。逆に仕事が終了したら、自分のことを考えるようにしています。

もう仕事は仕事、プライベートはプライベートという風に考えていますので、そこまでストレスには感じていませんね。

休日は早めに起きて、ちょっとお祈りします。私はヒンドゥー教なので、お祈りがすごい好きだから、太陽が出たら太陽に向かってお祈りします。

ーーープライベートとかで日本に来てから困ったこととかっていうのはありますか?

スレスタさん:

一番困るのは漢字が読めないときや、言葉がわからないときです。

ただ、正直他は困ることがないですね。

日本人の方もすごく優しく丁寧で、初めて来たとき道に迷ってたから、ちょっと聞いて行く場所まで、私の行くところまでちゃんと教えてくれたので「すごい親切だなあ」と感じました。

ーーー最後に将来の目標とかってありますか?

スレスタさん:

私は介護に興味があるので、ずっと日本で介護をして、介護福祉士を取得したいですね。介護福祉士を取って、家族と共にずっと日本で仕事したいです。

編集後記

今回取材させていただいた特別養護老人ホームサンバレー 和田施設長の言葉の中で、特に印象的だったのは「困ってからでは遅い」という先見性のある視点です。介護業界全体が人材不足に直面する中、早期から外国人材の採用に取り組み、計画的な人材育成を進めてこられた姿勢は、多くの示唆に富んでいます。

また注目すべきは、当初懸念されていた文化や言語の違いが、むしろ職場を活性化させる要因となっていた点です。外国人スタッフの真摯な学習姿勢と、日本人スタッフの受容的な態度が相まって、より豊かな職場環境が築かれています。特に、入居者様からの温かい評価は、多文化共生の可能性を示す好例といえるでしょう。

介護需要の増加と労働人口の減少が続く中、外国人材との協働は避けては通れない課題となっています。その意味で、同塵会様の取り組みは、介護業界における多文化共生の一つのモデルケースとして、大いに参考になるのではないでしょうか。

介護施設での外国人材受け入れについては「外国人介護士の採用方法とは?4つの在留資格別メリット・デメリットを徹底解説」の記事でも詳しく解説していますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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