昨今、日本企業の海外進出が加速し、国内でも外国人材の活用が注目される中、企業の人事部門が抱える課題は複雑化しています。海外赴任者のビザ手配から現地での生活支援、そして外国人材受け入れの環境整備まで、国ごとに異なる手続きや制度への対応が求められています。
そうした状況下で、TOPPANトラベルサービスでは2017年から「海外人事サポート」事業を本格展開し、2025年にはヤマトとの提携による「グローバル人事コンシェルジュ」サービスを強化。これまでに400社以上の企業支援と700名を超える外国人材の受け入れをサポートしてきました。今回は同社の風間氏に、海外人事業務のアウトソーシングサービスの内容と導入企業の事例について詳しく伺いました。
トラベル事業をルーツに始まった「海外人事事業(赴任・受け入れ)」

ーーー「TOPPANトラベルサービス」について簡単にお伺いできますでしょうか?
風間様:
私は2003年にTOPPANトラベルサービスに入社しました。最初はBtoBの航空券手配など、企業向けのビジネストラベルコンサルテーションを担当していました。2010年頃になると、日系企業の海外進出が増加していく中で、「このような事業ができないか」と経営陣と相談し、旅行業界では初となる人事向けのアウトソーシング事業「海外人事サポート」の構想が生まれました。
実際には2006年頃から小規模ながら活動を始めており、私一人からスタートした事業です。ビジネストラベル関連のお客様からヒアリングを行ったところ、非常に反応が良く、この事業に可能性を感じ、最初は競合他社と協力する形で少しずつ展開していました。
2017年になると売上が順調に伸び、経営陣に掛け合って「事業部化」を実現しました。これまでに約400社以上の企業支援を行い、外国人材の受け入れに関しても累計で700名以上をサポートしてきました。2022年には外国人雇用管理者の資格も取得し、現在では企業向けのサポートだけでなく、厚生労働省や経済産業省のセミナーの運営なども担当させていただいています。
当社では現在、三つの主要事業を展開しています。
まず一つ目が「ビジネストラベル(BTM)事業」です。これは当社のコア事業として、外資系企業や日系企業向けに出張サポートを行っています。
二つ目が「MICE事業」です。MICEとは会議(Meeting)、報酬旅行(Incentive Travel)、学会(Convention)、イベント(Event)の頭文字をとった言葉で、企業の団体旅行や懇親会などのイベント企画・アレンジを担当しています。この部門もコロナ禍で影響を受けましたが、現在は好調な事業となっています。
そして三つ目が「海外人事事業」。この事業は2017年の事業部化以降、ほぼ全て右肩上がりで成長しています。特筆すべきは、コロナ禍においても売上が下がらなかったことです。水際対策が厳しかった時期にも、むしろその対応をサービスとして商品化したことで特需があり、テレビなどのメディアにも取り上げられました。現在は会社の事業の柱となっています。
ーーー「海外人事サポートサービス」と「グローバル人事コンシェルジュ」について詳しく教えていただけますか?
風間様:
「海外人事サポート」と「外国人材受け入れサポート」は2017年から提供しているサービスです。
「海外人事サポート」については、海外人事業務のDX化を推進するクラウドサービスを提供しています。このサービスには様々な機能が含まれていますが、特に赴任時にかかるタスク管理に力を入れています。例えば、ビザ申請であれば、書類回収から現地の労働許可申請、日本側の申請まで全てをタスク化し、赴任日から逆算したスケジュール管理を行います。
また、規定などの文書管理や、一時帰国などの労務管理も含めて、人事担当者が管理すべき事項を網羅したシステムとなっています。大手企業では、このようなシステムを活用して海外人事業務の一元管理と可視化が重要課題となっていますし、中小企業様では初めての基盤づくりから当社が介入する形で一気通貫でご支援しています。
「外国人材受け入れサポート」については、日本側での手厚いサポートを特徴としています。具体的には、銀行口座の開設や携帯電話の契約など、外国人にとって日本での生活立ち上げの部分をパッケージ化しています。
重要なのは、これが単なる通訳業務ではないということです。外国人が契約する際のハードルを下げ、リスクを低減することが目的です。日本企業が外国人材を初めて採用する際の入社までの環境設定を計画的に支援するサービスとなっています。
加えて、2025年1月にはヤマト運輸株式会社さんと戦略的業務提携を行いました。
提携の背景としては、ヤマトさんは引っ越しだけではない付加価値提供をしたいという思いがあり、一方我々も引っ越し業務をメインとしているわけではなく、業界特有の仕入れ価格や契約料金の面で課題がありました。
そこで、ヤマトさんと提携することで、我々は良い条件での仕入れが可能になり、ヤマトさんはより高い付加価値サービスを提供できるようになります。結果として顧客に対しより魅力的なサービス提供可能な体制構築を実現できました。
ーーー国によって手続きが異なる中でどのように管理されているのでしょうか?
風間様:
確かに国ごとに手続きは異なりますが、大きな枠組みで見ると、日本側からの申請と現地での労働許可という基本パターンは4つ程度に集約されます。この基本パターンに沿って、国ごとの必要書類や手続きの違いをシステム内でアレンジしています。
例えば、日本側での申請と現地の労働許可のプロセスを標準化し、その中で国ごとの必要書類を案内するという形で一元管理を実現しています。これにより、国が違っても同様のノウハウや仕組みでシステム化することが可能になっています。
また、受け入れサポートについても同様のアプローチをとっています。特に日本側での支援を手厚くしており、銀行口座開設や携帯契約など、生活の立ち上げに必要な手続きをパッケージ化しています。外国人が契約する際のハードルが高い部分に注目し、日本企業が外国人材を採用する際のリスクを最小限に抑えるサポート体制を構築しています。
ーーー今後のサービス展開の展望はいかがでしょうか?
風間様:
今後のサービス展開については、特に外国人材受け入れに関して「多角化」と「差別化」の両方を進めていく方針です。
「多角化」については、現在は高度人材(専門的・技術的分野の外国人材)を中心にサポートしていますが、今後はさらに幅広い雇用形態に対応していく予定です。例えば、学生インターン、外資系企業の経営層(エグゼクティブ)、短期的な出張・研修参加者、永住権取得者とその家族などです。
最近では、サッカー選手の外国人チームのようなスポーツ選手やeスポーツの選手・関係者向けのイベントビザなど、エンターテイメント系の短期的な興行ビザ手配も対応しています。このように、多様な形態の外国人材受け入れに対応していきたいと考えています。
「差別化」については、我々の強みであるビザ申請を中心に、在留資格に関するサービスをさらに強化していく方針です。行政書士と連携しながら、外国人雇用に関するアドバイザリーサービスを充実させていきます。
また、受け入れサポートのクラウドシステム化も進行中で、海外赴任サポートと同様に、タスク管理や進捗の可視化を実現するシステムの構築を目指しています。
「餅は餅屋」|ビザ申請のノウハウとワンストップ体制で効率化

ーーーどのような企業がサービスを導入されていますか?
風間様:
現在、約400社の企業様にサービスを提供していますが、海外赴任サポート(アウトバウンド)と外国人材受け入れサポート(インバウンド)では、導入企業の特徴が異なります。
海外赴任サポートでは、海外赴任者が50名以上いるような大手企業が多く導入しています。具体的には、医療機器メーカー、開発設計系の企業、建築関連、食品メーカーなど、海外展開を積極的に行っている日系企業が中心です。
大手企業では、トータルサポートの利用率が高いのが特徴です。導入プロセスとしては、最初はビザ申請のみの依頼からスタートし、徐々に関連業務も含めたトータルサポートに移行するケースが多いです。段階的に信頼関係を構築しながら、最終的には健康保険組合対応や福利厚生まで全ての業務をサポートする形に発展していくパターンが一般的です。
一方、最近では中小企業からの依頼も増えています。特に初めて海外進出や海外赴任を迎える企業向けに、規定作りなど基盤から一緒に構築するサービスを提供しています。単なる業務委託ではなく、海外赴任者をどのようにサポートするかという体制づくり全体を支援するアプローチが好評です。
外国人材受け入れサポートについては、同じ人事部門でも採用担当者がターゲットとなります。特に目立つのは、開発系エンジニアを採用する企業で、大手システム会社やメーカーなど技術開発が盛んな企業の支援実績が多くあります。
具体的な事例としては、インドや中国からのエンジニア招聘、ベトナム人のCAD設計者、建築分野での受け入れ、また製造業では貿易事務担当などの受け入れをサポートしています。このように、企業の業種や採用ニーズによって、サポート内容も多岐にわたっています。
ーーー受け入れ・送り出しの国はどのような傾向がありますか?
風間様:
海外赴任では、従来から中国とアメリカが圧倒的に多い状況が続いています。これは日本企業の海外進出先として両国が重要な市場であることを反映しています。
ただし、コロナ禍以降は「チャイナプラスワン」という考え方が広がり、中国一極集中からベトナム、マレーシア、フィリピンなどのアジア諸国に広がる傾向が見られます。リスク分散の観点から、複数の国に拠点を持つ企業が増えています。
また、今期において特筆すべきは、ヨーロッパ、特にドイツへの赴任が急増していることです。イギリスがEU(欧州連合)を脱退したことにより、従来イギリスに置いていたEU圏の拠点をドイツにシフトする企業が増えています。実際、ドイツ大使館ではビザ申請が増加し、処理能力を超える状況になっていると聞いています。
一方、外国人材受け入れについては、理系人材の国内不足を背景に、インドと韓国からの受け入れが非常に多くなっています。特にIT・技術系の人材は、この両国からの採用が目立ちます。
中国については、以前に比べてシェアが減少傾向にあります。背景としては、中国国内の賃金水準が上昇し、日本企業よりも高い報酬を提示するケースが増えていること、また円安の影響で日本の給与の相対的な魅力が低下していることなどが挙げられます。結果として、優秀な中国人材は自国内で就職するケースが増えています。
その他の国としては、ベトナムやカンボジアなど東南アジア諸国、さらには中東地域からの受け入れも増加しています。全体的にはアジア諸国が中心となっていますが、人材の多様化が進んでいると言えるでしょう。
ーーー競合他社との違いや御社の強みはどのような点にありますか?
風間様:
海外赴任サポート・受け入れサポート双方の市場において、異なる競争構図があり、競合他社も多様化しているのが現状と認識しています。
ただ、我々がお客様によく申し上げるのは「餅は餅屋」という考え方です。A社は不動産事業から派生したサービス、B会社は引っ越し事業からの展開、そして我々はトラベル事業からビザ申請に強みを持つというように、それぞれの出自による特徴があります。
各社がどの業務を自社の強みとして持ち、どの部分を外部委託しているかによって、サービスの特性が変わってきます。表面的には似たようなトータルサポートを掲げていても、実際の強みは異なるため、企業のニーズに合わせた選定が重要になります。
我々の強みは、トラベル事業を基盤としたビザ申請のノウハウです。行政書士と連携しながら、在留資格に関するアドバイザリーサービスを提供し、単なる手続き代行ではなく、企業の海外展開戦略に合わせたプロセス設計をサポートしています。
ーーーサービスの提供体制はどのようになっていますか?
風間様:
我々のサービス提供体制の特徴は、一人のスタッフが一人の雇用者(または赴任者)を一貫してサポートする「ワンストップ」の体制です。全てのスタッフは英語対応が可能で、基本言語は英語として本人とのコミュニケーションを行います。
人事担当者には進捗状況や実費費用の承認などを随時報告し、入社(または赴任)までの全ての窓口業務を担当します。内定者からの質問や相談にも全て対応し、計画的に入社に向けた準備を進めていきます。
引っ越し会社や不動産会社などのサプライヤーを取りまとめ、当社の担当者が前面に立って各種手続きを調整します。これは他社とは大きく異なる点で、通常ならタスクごとに担当者が変わり(ビザは行政書士、住居は不動産会社、引っ越しは引っ越し業者など)、内定者が複数の窓口と連絡を取る必要があります。
我々はワンストップ体制を敷くことで、情報の一元管理と内定者の負担軽減を実現しています。専門性は各分野の協力会社に頼りつつも、窓口は一本化することで、効率的かつ安心感のあるサポートを提供しています。
TOPPANトラベルで、海外人事業務のハードルは超えられる

ーーーリモートワークの普及がビジネスに与える影響はいかがでしょうか?
風間様:
確かに、ITの進化やグローバル化の進展により、物理的に日本に来る必要性が減少していく側面はあります。現在、日本でもデジタルノマドビザの制度が整いつつありますが、まだ企業での就労としては完全に適用できない部分もあります。こうしたリモートワーク環境の進化は、物理的な人の移動を前提とした我々のビジネスにとって課題となり得ます。
また、アメリカなどでは、現地法人設立前に人材を派遣する方法としてEOR(Employer of Record:雇用代行)が非常に一般的です。コロナ禍では多くの企業が米国企業のように「海外でのリモートワーク」を検討しましたが、税法上のリスクがあることから、日本ではEORというスキームはまだ馴染みが薄く、企業にご提案した際も「限りなくグレーに近い」という反応が多く、コンプライアンス面での懸念が残ってしまいますので、当社としても取り扱ってはいません。
一方で、コロナ禍を通じて見えてきたのは、「エッセンシャルワーカー」の重要性です。たとえばモノづくりの現場では、人が実際に目で見て、手で触れて品質を確認する必要があります。コロナ禍では出張者は大幅に減少しましたが、赴任者はあまり減少しませんでした。これは物理的な存在の必要性が依然として高いことを示しています。
今後は、デジタルノマドのような新しい働き方に対応するサービスを展開しつつも、実際に現地で働く必要のあるエッセンシャルワーカーのサポートも継続していくという、両輪のアプローチが重要になると考えています。
ーーー企業がサービスを導入する際の課題はどのようなものがあるのでしょうか?
風間様:
外国人材の受け入れにおいて、最も高いハードルとなるのがビザ申請です。専門的なノウハウが必要で、失敗すると予定通りに入社できなくなるリスクがあります。このノウハウ不足が、多くの企業にとって大きな課題となっています。
また、近年では銀行口座開設の難易度が上がっています。マネーロンダリング対策の審査が厳格化され、外国人が単独で銀行に行っても、口座開設を断られるケースが多いです。我々は銀行の支店長レベルと交渉し、確実に入社前に口座開設ができる体制を整えています。
社会保険の手続きも複雑化しており、役所での対応が厳しくなっています。こうした各種手続きを問題なく進め、スムーズな入社を実現するためのノウハウが企業側には不足していることが多いです。
海外赴任については、中小企業ではそもそも手続きの知識がないケースが多く、大手企業では手続きの一元管理や可視化、効率化が課題となっています。特にビザは国ごとに大きく異なり、労働に関する規制も変化するため、単なる手続き代行ではなく、プロセス全体のマネジメントが重要です。
また、近年では米国の政権交代などによりビザ制度が変更されることもあり、常に最新情報をキャッチアップする必要があります。我々はイミグレーションアドバイザリーサービスとして、他社事例を踏まえた実践的なアドバイスも提供しています。
さらに、人事業務の属人化も大きな課題です。特定の担当者にノウハウが集中すると、その人が異動や退職した際に業務が回らなくなるリスクがあります。我々は約1年かけて企業のプロセスを学び、マニュアル化することで、担当者が変わっても同じクオリティを維持できる体制構築をサポートしています。これは他社ではあまり行っていないサービスで、企業からの評価も高いです。
ーーー具体的な導入事例について教えていただけますか?
風間様:
いくつか代表的な事例をご紹介します。
まず、段階的導入の例として、ある企業では最初にビザ申請だけを依頼され、その後関連業務も含めたトータルサポートに移行したケースがあります。この企業では、海外人事担当者の残業時間が大幅に削減されるという効果が出ました。
別の企業では、海外赴任に伴う引っ越しコストのシミュレーションを行い、従来よりも安価な価格の仕入れを可能にしてコスト削減を実現しました。また、海外人事担当者が3名いたところを2名削減し、1名は制度設計などの戦略的業務に専念できるようになったという成果も出ています。
外国人材受け入れに関しては、人材紹介会社と連携して採用のPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを構築し、効率的な採用プロセスを確立したケースがあります。特にスピード感のある採用が必要な企業において、プロセスの標準化と効率化が実現できました。
また、自動車部品メーカーでは、企業内転勤による研修生の受け入れをサポートしました。1年間の受け入れ期間を4つのフェーズに分け、日本語研修、実地研修、雇用契約書の作成など、多岐にわたるサポートを提供しました。単なるタスク対応ではなく、受け入れ体制の構築から包括的にサポートしたケースです。
ーーー最後に外国人雇用を検討している企業へのアドバイスをお願いします
風間様:
多くの企業が、ビザ申請や受け入れ体制の構築に高いハードルを感じて、外国人雇用に二の足を踏んでいるケースが見受けられます。しかし、適切なサポートがあれば、実際には乗り越えられる壁になります。
我々のようなサービスを活用することで、「このようなプロセスで、このようにすれば入社が実現できる」という具体的な解決策を提示することができます。また、日本政府も外国人材の受け入れに積極的な姿勢を示しており、制度面でのサポートも充実してきています。
人材不足が深刻な日本において、外国人材の活用は今後ますます重要になってくるでしょう。私が海外人事業務に携わる中で感じるのは、外国人材のハングリー精神の高さです。日本人社員が入社後に安定志向になりがちな傾向と比べ、常に自分のキャリアをどう向上させるかを考える姿勢は、職場に良い刺激をもたらします。
外国人材の採用を検討されている企業には、まずはビザや受け入れ体制についての正確な情報を得ることをお勧めします。我々のようなサービスを活用し、人材紹介会社とも連携しながら、計画的に進めていくことで、外国人材の持つポテンシャルを最大限に活かすことができるでしょう。
編集後記
今回は、旅行会社から発展し、海外人事のトータルサポートを手がけるTOPPANトラベルサービスの風間様にお話を伺いました。
インタビューを通じて印象的だったのは、国ごとに異なる手続きやルールを体系化し、「餅は餅屋」の精神で独自の強みを発揮していることでした。
ビザの申請から銀行口座開設、生活の立ち上げまで、外国人材の受け入れには多くのハードルがあります。しかし風間様が語るように、このハードルは紹介したような、適切なサポートがあれば十分に乗り越えられるものです。
日本の人材不足が深刻化する中、外国人材の活用は今後ますます重要になるでしょう。外国人材のハングリー精神と意欲は、日本の企業文化に新たな刺激をもたらす可能性を秘めています。TOPPANトラベルサービスのような専門サービスを活用し、グローバル人材の力を最大限に引き出すことが、日本企業の新たな成長戦略となるのではないでしょうか。