・ダイバーシティマネジメントとは何かについて知りたい
・ダイバーシティマネジメントの取り組みの具体例を知りたい
この記事は冒頭のような方に向けて、ダイバーシティマネジメントの概要やメリット、具体例などをわかりやすく解説していきます。
ダイバーシティマネジメントについて基本を押さえたい方は、是非ご一読ください。
そもそもダイバーシティとは
はじめにダイバーシティとはそもそも何かについて、確認しておきましょう。
ダイバーシティとは
ダイバーシティとは「多様性」を意味し、年齢や性別、人種や宗教、価値観などが異なる多くの人の集まりを表す言葉でもあります。
ダイバーシティの考え方はアメリカから始まりました。
1964年の「公民権法」が成立したことを契機に、人種差別の撤廃や雇用面においても機会均等が義務付けられましたことにより、マイノリティの方々の採用が進められます。しかし、当時の企業にとっては、訴訟に対する防衛の側面が強く、必ずしも積極的に取り組んではいなかったようです。
1980年代になり、人種や性別、価値観などの「違い」に価値を置くという考え方が広まります。これが、今日における「ダイバーシティ」の始まりとなります。
日本では少子高齢化による生産年齢人口の減少にあたり、女性はもちろん、障がい者や外国人労働者などの多岐に渡る人材を登用することを指して用いられています。
参考:東洋経済「ダイバーシティって何?(第2回)- ダイバーシティの歴史的展開と企業のかかわり」
ダイバーシティの種類
ダイバーシティを考えるときに重要になってくるのが、「目に見えるもの」と「目に見えないもの」の以下2つの属性を分けることができる、という点です。
・種類①:表層的なダイバーシティ
表面上に現れており、第三者から見たときにわかりやすい多様性のことを指します。
具体例としては、「年齢、性別、人種、国籍、身体的特徴」などが該当します。
・種類②:深層的なダイバーシティ
それぞれの人の内面にある多様性であるため、しっかりとコミュニケーションを取らなければ判断できないものが多いことが特徴的です。
具体的には「価値観、スキル、趣味、宗教、コミュニケーションスタイル、LGBTQ」などが挙げられるでしょう。
わかりやすい表層的なダイバーシティだけではなく、深層的なダイバーシティも合わせて高めなければ、本当の意味で多様性を確保しているとは言えないので、注意が必要です。
インクルージョンとの違い
ダイバーシティとセットで扱われることが多い概念として「インクルージョン」というものがあります。
インクルージョンとは直訳すると「包括・包含」という意味を持つ言葉です。
ビジネスにおいては、仕事に参画したり貢献したりする機会を、企業のあらゆる社員が平等に得ることができる状態であると考えられています。
ダイバーシティと合わせると「多様な人材を受け入れ(ダイバーシティ)、それらの人材の能力を活かすための機会を平等に提供する(インクルージョン)」といった考え方に繋がります。多様な人材が企業で活躍するためには、ダイバーシティもインクルージョンも双方欠かせない重要なキーワードとなっています。
ダイバーシティマネジメントとは
ここからはダイバーシティマネジメントについてお話していきます。
ダイバーシティマネジメントとは
ダイバーシティマネジメントとは、人材の多様性を、経営や組織強化に活かしていこうとする取り組みのことです。
後に説明しますが、さまざまな時代背景から、企業は多様な労働者の受け入れを迫られるようになります。結果として、ダイバーシティマネジメントに成功した企業では、多様な労働者受け入れに伴い、さまざまな相乗効果を得られている、ということがわかってきました。
日本国政府としても、ダイバーシティ及びダイバーシティマネジメントの推進のため、さまざまなツールを用いて、企業経営の支援に取り組んでいます。
ダイバーシティマネジメントが必要な理由
ダイバーシティマネジメントが必要となった背景としては主に以下の3点が挙げられます。
理由①:少子高齢化による人手不足
日本では少子高齢化により、1995年以降、年々生産年齢人口が減少しています。この深刻な人手不足に対応するには、女性や高齢者、または外国人労働者など、多様な人材を活用しなければ、到底解決できない状況になっております。
理由②:価値観の多様化
2000年代初頭に登場したSNSやインターネットの発展に伴い、日本にいながら海外の文化や価値観などに触れる機会が急激に増加しました。日々大量の情報に触れることが可能になったことで、人々の持つ「働き方への価値観」や「消費に対する価値観」もどんどん変化してきています。
理由③:ビジネス規模の拡大
技術革新による競争激化や少子高齢化に伴う国内市場の縮小に伴い、海外市場に対して積極的に事業展開していく企業が増加してきています。また、海外に進出するのみならず、国内事業者にとっても、インバウンド需要に伴う外国人顧客の獲得が急務になってきています。
海外へ事業展開・インバウンド需要を獲得するには、当然ながらその国の価値観やニーズなどを踏まえた上で、ビジネスを展開する必要があり、必然的にダイバーシティへの理解や活用も必要になってきます。
上記の必要性に迫られた結果、多様なバックグラウンドをもつ人材を多様な働き方で雇用することになります。多様性が高まれば高まるほど、収集がつかなくなり、社内に混乱が生じる可能性も出てきます。そこで、多様性を生かしながら、組織力を強化するための取り組みとして、ダイバーシティマネジメントの手法を取り入れる企業が増えてきています。
日本におけるダイバーシティマネジメントの現状
とはいえ日本では、まだまだダイバーシティマネジメントが浸透していないのが現状と言えます。
その原因としては、下記のようなものがあげられます。
・「男は外で働き、女は家を守る」といった旧時代的な考えが根深い
・女性の社会進出のための支援がまだまだ不十分(待機児童問題や育休取得)
・外国人労働者の活用に対して消極的(言葉の壁や宗教への理解不足)
とはいえ生産年齢人口の減少は止めることはできず、このままいけば人手不足は加速する一方でしょう。また、ビジネスのグローバル化もますます進んでいくので、より多様な人材を確保し、ビジネスチャンスを拡大していかなければ、市場において淘汰されてしまいかねません。
そのためダイバーシティマネジメントに取り組み、女性や外国人労働者を含めた多様な人材を活用していくことは、日本の企業にとって急務なのです。
ダイバーシティマネジメントのメリット・デメリット
続いてダイバーシティマネジメントのメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
メリット
メリット①:人材の確保ができる
女性はもちろん、外国人労働者や障がい者、シニア層などは働く機会を得たいと思いながらも、環境や体制の不備などを理由に働くことを断念している人たちがいます。
リモートワークの推進やフレックスタイム制の導入、育児休暇や介護休暇等の制度を備えておくことで、上記のように就労機会を逃してしまっている人材に働いてもらうことが可能になります。
このように、多様な人材が働きやすい環境を整備し、ダイバーシティマネジメントにより維持することが可能になれば、その能力を十分に発揮してもらうことができ、人手不足の解消に繋がることは間違い無いでしょう。
また、若年層に対しても、多様な働き方を実現している会社としての認知を獲得できるので、より幅広い年齢層に対して企業イメージ向上及び採用アプローチも可能になります。
メリット②:業績が向上する
多様な人材が集まることで新しい視点や考え方が生まれ、イノベーションが促進されることがボストンコンサルティンググループが実施した調査結果でも明らかになりました。
この調査では、世界1,700社を超える企業を対象にしており、「ダイバーシティが高まれば、企業のアイデアや選択肢の幅が広がることにより、イノベーション能力が向上し、財務業績の向上につながる」という結論に至っています。
多様な人材が集まり、ダイバーシティマネジメントにより様々な視点や観点をイノベーションへ繋げることができれば、多様化する消費者ニーズに常に対応していくための土壌が出来上がり、結果として業績向上へ貢献することが可能になると言えるでしょう。
参考:2020年代の勝利を目指して 経営上の必須課題としてのダイバーシティ
メリット③:企業価値が向上する
多様な人材が働くことで、従業員満足度が向上し、結果として従業員が高いパフォーマンスを発揮できるようになることも期待できます。
2021年6月には、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が改定され、企業に社員の多様性を求めるようにもなりました。企業価値の向上につながるとして、投資家が企業に対してダイバーシティを以前にも増して求めるようになってきています。
デメリット
デメリット①:社内における理解を得る必要がある
まずダイバーシティマネジメントに取り組むに当たって、社内の理解を得る必要があります。
そもそも、なぜダイバーシティを推進する必要があるのか、その具体的な背景と必要性について常に一般従業員へ啓蒙する場を設ける必要があります。会議や社内報などを活用し、常に会社からのメッセージを届ける地道な取り組みをしていくことが大切です。
一方、管理職については、多様性が増すことによる社内の混乱や対立、衝突に対してどのように対処するべきか、悩むケースも多々あるかと思います。そのため、より実践的なダイバーシティマネジメントの研修等を実施することが重要となってきます。研修を通じて、多様性が増すことによる不安の解消及び、実際にダイバーシティマネジメントが機能した際のメリットを知ることで、取り組みの動機付けにもなります。
ここの前提としての社内理解を得られないと、絵に描いた餅になってしまうので、一番重要といっても過言ではないでしょう。
デメリット②:社内環境の整備に工数がかかる
多様な価値観を持つ人材が多くなれば、それぞれに応じた管理方法が必要となり複雑化してきます。
まず多様な働き方を必要とするので、介護休暇や育児休暇などの制度設計及び導入が必要になってきます。リモートワークや時短勤務を推進するのであれば、出勤・退勤のシステムやリモートワークに必要な環境構築を社員にどこまで負担してもらうのかなど、考慮しなければなりません。
また、外国籍社員の増加に対応するため、社内マニュアルの他言語対応や、中には社内の公用語を日本語から英語に変更する企業まで存在します。
さらに、時短勤務者や障害者雇用など多様な属性をもつ従業員が増えるほど、どのように従業員を評価するべきかという点も大切になってきます。
変数が増える分、そこに対応する制度やシステムを構築する必要があり、皆が平等で公平に気持ちよく働ける環境を準備するのはかなり骨の折れる作業になってきます。
デメリット③:成果が出てくるまでに時間がかかる
上記デメリット①と②にあげた通り、そもそもダイバーシティマネジメントを導入するまでに工数がかかってきます。
社内の多様性を確保したとしても、すぐに成果につながるとは限りません。下手をしたら、ダイバーシティマネジメントに失敗し、社内崩壊する可能性すら秘めています。そうなった際に、リカバリーするためには再度社内理解から制度改革などを実施するだけで数年単位で時間がかかってしまうでしょう。
そのため、経営層がダイバーシティマネジメントを軌道に乗せるためには、時間がかかるものだという認識をもつことと、しっかりと組織改革にコミットメントをする必要があると言えるでしょう。
ダイバーシティマネジメントの具体例について
ここからはダイバーシティマネジメントにおける具体例をご紹介します。
外国人労働者雇用における例
外国人労働者雇用にあたっては、以下のような取り組みが例として挙げられます。
ポイントとしては、外国人社員への文化的行事(一時帰国や旧正月など)に対する配慮と同時に、日本人社員へも異文化に対する研修等を実施していくアプローチが大事になってきます。
・日本特有のマナーや独自の社内制度に関するオンボーディングの実施
・社内の業務マニュアル等の他言語化
・外国人社員へ日本語学習支援の実施
・日本語能力試験等の合格に対してインセンティブを設計する
・日本人社員向けに、異文化コミュニケーション研修を実施する
・礼拝のための休暇時間や旧正月期間の特別休暇などの社内制度の構築、
母国への一時帰国のため、長期休暇制度の導入
・携帯電話の契約や引越しに伴う住居契約等、生活に関するサポート制度の構築
障がい者雇用における例
次に障がい者雇用における取り組みの例を見ていきましょう。
・車椅子を利用する方向けに、オフィスをバリアフリー化する
・視覚障がい者向けに、音声によるマニュアルや点字によるマニュアルを手配する
・聴覚障がい者には電話対応などを免除する
・研修などを実施する際、視覚障がい者には音声テキストを準備したり、聴覚障がい者にはノートテイカーを手配したりする
女性活躍における例
続いて女性活躍における例を見ていきましょう。
・女性社員にヒアリングを実施し、管理職を目指したいと考えている女性社員をピックアップし、管理職候補として育成を実施する
・「妊娠や出産・育児」といったライフイベントに合わせて、男女ともに適切な働き方ができるように在宅勤務制度や福利厚生制度を充実させる
・広報のイベントや面接などの採用活動で、女性社員から積極的に発信してもらう
・妊娠や出産を控える女性社員に対して、活用できる制度などを分かりやすくまとめた資料を手配する
・保育園に預けられないことなどに起因して復帰できないという悩みを解消すべく、社内に託児スペースを新たに設ける
まとめ
今回はダイバーシティマネジメントをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
近年特に注目を集めている一方で、実際に取り組むとなるとかなり工数がかかるため、なかなか踏み切れていない企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
弊社は外国人労働者の人材紹介から定着支援まで一括でご支援させていただいており、外国人雇用をきっかけにしたダイバーシティ推進に一定の強みを持っています。
外国人労働者活用によるダイバーシティ推進をご検討されている方は、是非一度お気軽にご相談ください。