この記事では在留カードの基本や外国人雇用する際に確認するべきポイントについて解説しています。また、昨今急増している偽造在留カードについても、増加推移などの現状や法的なリスクに加え、見分け方に至るまでご紹介していきます。外国人労働者を雇用したいとお考えの方は、是非最後までご確認ください。
なお、YouTubeでも解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
在留カードってなんだ?
まずは在留カードとはそもそも何かについて、確認しておきたいと思います。
日本に滞在する外国人は「在留資格」が必要
在留カードの説明の前に、まず「在留資格」とは何かについて見ていきます。
在留資格とは、「外国人が日本に在留し、何かしらの活動を行うために必要となる資格」のことを指します。この在留資格は、日本に入国する前に、出入国在留管理庁へ必要書類を準備・提出・審査を経ることで取得可能です。
在留資格は「出入国管理及び難民認定法(入管法)」という法律によって定められており、活動の内容によって29種類の在留資格が存在しています。在留資格ごとに就労の可否、また可能であったとしても、従事可能な業務内容が細かく制限されていたりします。
例えば、「特定技能」や「技能実習」のような就労や実習を目的としており就労可能な在留資格や、「留学」のような本来は就労不可ですが、資格外活動許可というものを得れば制限付きで就労可能になる在留資格など様々です。
「在留資格」について詳しく知りたい方は「在留資格ってなに?ビザとの違いや取得方法、29種類まとめて解説!」の記事も併せてご覧ください。
在留カードって結局なに?パスポート、ビザとの違いは?
「在留カード」とは、日本に滞在する外国人のうち、中長期在留者に対し、上陸許可や在留資格の変更許可、在留期間の更新許可などの在留に係る許可に伴って交付されるカードのことを指しています。
出入国在留管理庁によると、中長期在留者の対象となる外国人の方は、以下の1〜5のいずれにも該当しない方となっており、
- 「3月」以下の在留期間が決定された人
- 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
- 特別永住者(特別永住者には「特別永住者証明書」が交付されます。)
- 「短期滞在」の在留資格が決定された人
- 「特定活動」の在留資格が決定された、台湾日本関係協会の本邦の事務所若しくは駐日パレスチナ総代表部の職員又はその家族の方
- 在留資格を有しない人
上記に該当しない方には全員「在留カード」が交付されることになります。
この在留カードは、初めて日本に上陸される外国人の方は、空港での上陸審査時に在留カードが交付されます。
また、既に日本に在住している方でも、転職に伴い在留資格を変更する際や、在留期間の更新をする場合などには、都度新しい在留カードが交付されることになります。各種変更や更新申請に関しては、管轄の出入国在留管理局へ、必要書類を準備した上で届け出ることで実施可能です。※ 申請に必要な書類等は、出入国在留管理庁HPをご覧ください。
ここで、よく間違えられる「ビザ」や「パスポート」との違いを見てみます。
「パスポート」は、自国民が外国へ渡航する際に必須で、渡航者の身分を示す重要な証明書です。また、国籍や身分の証明だけでなく、渡航者が海外で滞在する際に外国官憲への便宜供与と保護を依頼する公文書が記載されています。
「ビザ」は査証とも呼ばれ、海外現地にある日本の大使館や領事館が、日本に入国することを予定している外国人に発給する入国許可証です。
一方で、在留カードは、来日後の活動について規定した在留資格を有する中長期在留者に発行されるものです。
簡潔に言うと、
と言えるでしょう。
在留カードの携帯は必須なの
この在留カードは、常時携帯することが入管法23条2項によって義務付けられています。
また、入国審査官、入国警備官、警察官等から提示を求められた場合には、提示する必要があります。
夜間に警察官に職務質問され、在留カード不携帯を理由に補導されてしまうケースもあります。
在留カードを携帯していなかった場合は20万円以下の罰金、提示に応じなかった場合は1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられることがあります。外国人従業員の方には常に携帯するように指導しておいた方が良いでしょう。
また、パスポートを携帯しているかどうかにかかわらず、在留カードは常に携帯している必要がありますので、ご留意ください。
ただし、16歳未満の方については、在留カードの常時携帯義務が免除されていますので、在留カードを常時携帯する必要はありません。
在留カードにどんなことが記載されている?
在留カードに記載されている項目としては以下のような事項になります。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 在留資格
- 在留期間(満了日)
- 許可の種類
- 交付年月日
- 就労制限の有無
- カードの有効期限
以下は在留資格カードのサンプル画像です。
加えて、16歳以上の外国人の場合は先の内容に加え、顔写真も貼付けされています。
裏面には住居地を変更した際に新しい住居地が記載される欄や、資格外活動許可の内容、何かしらの申請を実施している場合、申請中であることが記載される欄があります。
外国人を雇用する場合は、不法就労助長罪に問われないよう、就労可能な在留資格がどうか、在留期間が切れておりオーバーステイではないかなどは必ず確認しましょう。
偽造在留カードってなに?
ここまでお話してきたように外国人労働者を雇用する上で、確認対象ともなる在留カードですが、残念なことに偽造されたものが出回っているのも事実と言えます。
偽造在留カードは外国人労働者の雇用に取り組んでいる企業にとっても、大きなトラブルに繋がる可能性があるため、現状や見分け方などを正しく理解しておくことが求められるでしょう。
そこでここからは、偽造在留カードにフォーカスしてお話していきます。
在留カードと偽造在留カードの確認方法/見分け方
偽造在留カードが出回っているとしても、一体どのように偽造在留カードを見分ければ良いのでしょうか?
以下法務省の資料を参考に、解説していきます。
在留カードには以下のように5つの偽変造防止対策がなされているため、それらを目視で確認します。
加工①:MOJの周りが緑色に変化する
在留カードを傾けることで、在留期間の下部にあるMOJの周りが赤色から緑色に変色するように加工されています。
加工②:左端部分がピンク色に変化
正規の在留カードはカードを上下に傾けることで、左端部分がピンク色に変化するように加工されています。
加工③:顔写真上のMOJが左右に動く
在留カードの顔写真上にはMOJのホログラムがあるのですが、在留カードを傾けることでそのMOJのホログラムが3D的に動くようになっているのです。
加工④:顔写真の下にあるホログラムの文字が反転
また顔写真の下にはホログラムの白黒文字が記載されているのですが、確度を90度変えると白黒文字が反転するようになっています。
加工⑤:カードの透かし文字
暗い場所で、表面から強い光を当てると、裏面に「MOJMOJ…」と透かし文字が浮かび上がります。
上記に記載したものは法務省が正式に公表しているものであり、もしこのような加工が見られない場合は偽造在留カードである可能性が高いので注意が必要です。
偽造在留カードは近年増えてきている
偽造在留カードが出回っているとはいえ、実際のところどれくらいの件数が発生しているのでしょうか。
以下のグラフを見てください。
上記のグラフは法務省が発行している犯罪白書を基に、当社で作成した偽造カードによる送致件数です。
グラフを見ると右肩上がりで年々増加していることがわかります。
外国人労働者の数も毎年増加しており、その分偽造在留カードの数も増えてきていると言えるでしょう。
偽造在留カードを見分けるアプリがある?
年々の増加と共に、偽造在留カードを作る技術も当然進化してきているので、先にご紹介した偽造防止加工の目視だけでは見抜けないケースもあるのも現状です。
そのため、2020年12月に出入国在留管理庁がリリースした「在留カード等読取アプリケーション」も有効に活用すると良いでしょう。
このアプリで在留カードに内蔵されているICチップの内容を読み取り、その在留カード自体が適切であるかを判断できるようになっています。
このアプリは無料で利用可能で、ダウンロードや操作マニュアルなどについては、こちらの出入国在留管理庁のページをご確認ください。
また、アプリの他に、出入国在留管理庁のWEBサイト「在留カード等番号失効情報照会」で、在留カード番号と有効期限などを入力すると、入力されたカード番号が失効していないかを確認することができます。
これらを活用し、在留カードが偽変造されていないかをしっかりと確認しましょう。
不法就労助長罪に要注意
ここまで在留カードの記載内容や偽造について解説してきましたが、外国人を雇用する際、もし在留カードの確認を怠ったり、就労資格がない外国人を働かせていると、企業は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
また就労可能な在留資格をきちんと理解せずに、就労資格がない外国人や就労制限外の業種や業務でも働かせた場合も同様です。
「就労不可だと知らなかった」「週28時間の上限は知らなかった」「単純作業NGは知らなかった」などの言い訳は通用せず、不法就労助長罪となった場合は、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
そうならないためにも、在留資格に対する理解と在留カードの確認はしっかりと行いましょう。
不法就労助長罪についてより細かく知りたい方は「【不法就労助長罪とは】成立要件や防止方法などをわかりやすく解説」の記事もご覧ください。
在留カードに関して企業が気をつけることは?
在留カードを持っていない外国人が面接に来たら?
前述の通り、在留カードは常時携帯することが義務付けられています。
在留カードを持っていない外国人が面接に来た場合は、この義務を果たしていない、もしくは不法滞在者の可能性もあります。
できる限り情報をヒアリングするなどし、必要があれば管轄の出入国在留管理庁または警察に通報しましょう。
在留カードの期限が切れている外国人は全員オーバーステイ?
在留カードを確認した際、在留期間満了日が過ぎていると、オーバーステイでは?と疑ってしまいますが、そうではないケースがあります。
一般的には、在留カードの表面に表示された有効期間が在留カードの有効期間となりますが、表面の在留期間の満了日までに、「在留資格変更許可申請」または「在留期間更新許可申請」をした場合には、その旨が在留カードの裏面に記載され、当該申請に対する処分がない限り、表面の在留期間の満了日から2ヶ月を経過する日まで有効となります。
カード裏面の右下(下図の赤枠箇所)に上記の記載があれば2ヶ月間はオーバーステイにはなりません。
また、在留資格「永住者」の方は在留期間の制限がないため、在留資格の更新は必要がありませんが、在留カードの有効期限は7年と決まっていますので、定期的に在留カードの更新が必要です。
雇用している外国人が在留カードを紛失したら?
雇用している外国人から在留カードの紛失や盗難の報告があった場合は、速やかに再交付の申請をさせましょう。
入管法第19条12では、「紛失、盗難、滅失その他の事由により在留カードの所持を失った中長期在留者は、その事実を知った日から14日以内に、再交付の申請をしなければならない」とされています。
再交付の申請は、必要書類を持参し、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署にて手続きをします。
原則として即日交付がされ、手数料はかかりません。
在留カードの再交付申請についての詳細は、出入国在留管理庁のWEBサイト|紛失等による在留カードの再交付申請をご覧ください。
また、同様に警察にも遺失届を出すようにしましょう。
偽造在留カードかもしれないと思ったら
もしも偽造在留カードかもしれないと思った場合の対処方法についてお話していきます。
偽変造在留カードの確認方法は前述の通り、5つの偽変造防止加工やアプリの利用で行い、偽変造の疑いがある場合は、雇用しないのはもちろん、速やかに通報をしましょう。
通報先は、最寄りの出入国在留管理庁に連絡をしてください。電話以外にもメールでも可能です。また、併せて警察にも通報をしましょう。
「自社で雇用しなければいい」というわけでなく、そこで通報しなければ別の企業で不法就労のリスクが生じてくるため、必ず通報するようにしましょう。
再入国時には在留カードが必要?
在留資格をもつ中長期在留者外が日本国外へ出国し、1年以内の再入国する場合、在留カードを出国時に提示すれば、同じ在留資格で再入国することができます。
これは入管法第26条の2の許可」「みなし再入国」と言います。
みなし再入国許可の有効期間は出国の日から1年以内ですが、在留期限が出国の日から1年経過する前に来る場合には、在留期限までとなります。
また、出国の日より1年以内に再入国がないと、在留カードの有効期限が失効してしまうため、その場合は在留資格を取り直す必要があります。
もし雇用している外国人に1年以上の国外出張をしてもらう場合は、みなし再入国許可ではなく、「再入国許可」を取得してから出国する必要があります。
もし1年以内の予定であっても、新型コロナウイルスのような感染症拡大など不測の事態で帰国予定日に戻れないこともあるため、1年近く国外に出る場合は再入国許可を取得するのが良いでしょう。
まとめ
今回は在留カードについてお話してきましたが、いかがでしたか。
外国人労働者を雇用するにあたって在留カードの存在は、企業にとっても不法就労などのリスクを下げるために重要と言えます。
是非この記事を参考にしていただき、偽造在留カードを持った外国人労働者を雇わないよう対策していただければ幸いです。