不法就労とは
初めに不法就労とはそもそも何かについて確認していきたいと思います。
不法就労とは
不法就労とは、本来就労が認められていない外国人が業務に従事することです。
詳細は後ほどお話しますが、そもそも就労が認められていない在留資格で就労した場合や、在留資格で許可された範囲を超えた活動に従事するなど、違法な状態で就労することを指します。
近年外国人労働者の人数が増加する中で、意図的に不法就労を目論む外国人労働者も残念ながら一定数存在しているのです。
そもそも、在留資格って何?という方は、以下の記事で基本的な概要をご確認いただけます。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
不法就労にあたるケース
不法就労にあたるケースを詳しく見ていきましょう。
ケース①:不法滞在者の就労
一つ目のケースは不法滞在者の就労です。
不法滞在者とは不法入国者や、在留期限が切れているにも関わらず違法に滞在している外国人のことを指します。
こういった不法滞在者が就労した場合、不法就労に該当します。
ケース②:就労が認められていない在留資格での就労
二つ目のケースは就労が認められていない在留資格での就労です。
短期滞在や文化活動、留学、家族滞在といった在留資格は原則就労が認められていません。
そのため、これらの在留資格を有する外国人が就労した場合は、不法就労となってしまいます。
ただし「文化活動」と「留学」、「家族滞在」については、資格外活動許可を得た場合に限り、1週間に28時間までの就労が可能になります。
▶︎【在留資格における資格外活動許可とは】要件や申請方法などをわかりやすく解説
ケース③:許可された活動範囲外の活動をする
就労が認められている在留資格であっても、許可された活動範囲を超えて就労した場合は、不法就労となります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持った外国人労働者が、事業経営を実施する場合は許可範囲外となるため、不法就労となるのです。
不法就労助長罪とは
ここからは本記事のテーマである不法就労助長罪について詳しくお話していきます。
不法就労助長罪とは
不法就労助長罪とは、不法滞在者を雇用したり、許可された範囲外の業務に従事させたりした場合に問われるものです。
不法就労助長罪はその事実を仮に知らなかったとしても、適用されることになります。つまり、先にあげた不法就労に該当してしまった外国人のみならず、その外国人を雇用した企業にも罰則・罰金が課されてしまうということです。
また、ただ単に自社で雇用するだけでなく、不法滞在者などに業務発注した場合も不法就労助長罪に該当する点は注意が必要でしょう。
不法就労助長罪の成立要件
では、どういった場合に不法就労助長罪が成立するのか、明確な成立要件について確認しておきましょう。
出入国管理及び難民認定法(入管法)の第七十三条の二には、不法就労助長罪の成立要件として以下のような記載があります。
- 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
- 外国人に不法就労活動をさせるために、これを自己の支配下においた者
- 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関し斡旋した者
この3つのいずれかに当てはまる場合、不法就労助長罪が該当してくるわけです。
2に関しては意図して不法就労させるケースになりますが、1と3については意図せず該当した場合でも適用される形になります。
先程お話した業務発注は3に該当することになります。
不法就労助長罪の近年の摘発推移
不法就労助長罪の近年の摘発件数はどのようになっているのでしょうか。
以下のグラフを見てください。
上記は法務省が発表している「入管法違反事件について」という資料を基に、当社が作成したものです。
グラフを見てみると、2016年から2019年にかけて不法就労事件の件数は増加傾向にあることがわかります。
2020年に件数が減少しているのは、コロナの影響で外国人労働者の新規入国者数が例年よりも増加しなかったことが理由として考えられるでしょう。
不法就労助長罪の処罰対象
処罰対象は、前述の通り、「不法就労を行ってしまった外国人本人」と「不法就労をさせた・斡旋した企業」が対象となります。
繰り返しになりますが、故意であった場合はもちろん、不法就労の事実を知らなかった場合でも、不法就労助長罪は適用されますので、要注意です。
不法就労助長罪の罰則規定
不法就労助長罪に問われた場合の罰則規定についてもお話しておきます。
まず、外国人本人には、以下の3つのケースに応じて刑事処分として罰則が適用される可能性があります。その他、行政処分として、退去強制(強制送還・国外追放)の対象にもなり得ます。
- 不法滞在者が就労していた場合
3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金 - 資格外活動違反のうち、「専ら行っていると明らかに認められる者」
3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金又は併科 - 単に資格外活動許可を得ずに報酬や収入を得てしまった場合
1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは200万円以下の罰金又は併科
不法就労者を雇用した法人に対しても、3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金又は併科されることになります。先述の通り、基本的に不法就労の事実を知らなかった場合でも、上記の処罰を免れることはできません。
不法就労助長罪の検挙事例
続いて不法就労助長罪の検挙事例について、ご紹介します。
ここでは警視庁が発表している「組織犯罪の情勢」から引用してご紹介していきたいと思います。
事例①(引用:令和2年における組織犯罪の情勢)
“人材派遣会社社員の日本人の男らは、令和元年7月から令和2年10月にかけて、「技能実習」等の在留資格で入国したベトナム人の男女らを水産加工会社に派遣し、働かせていた。
令和2年11月までに、ベトナム人の男女らを雇用していた日本人の男5人を入管法違反(不法就労助長)で、ベトナム人が作業員として働くことを知りながら日本人の男らにあっせんしたベトナム人の男1人(不法残留)を入管法違反(不法残留、不法就労あっせん)で、作業員として働いていたベトナム人の男女5人(不法残留)を入管法違反(旅券不携帯、不法残留)で逮捕した。“
事例②(引用:令和元年における組織犯罪の情勢)
“電気設備会社経営の日本人の男は、令和元年5月から同年9月にかけて、「短期滞在」の在留資格で入国した中国人の男らを電気工事作業員として働かせていた。
同年9月までに、中国人の男らを雇用していた日本人の男1人を入管法違反(不法就労助長)で、作業員として働いていた中国人の男6人(不法残留)を入管法違反(不法残留、資格外活動)で逮捕した。“
事例③(引用:令和元年における組織犯罪の情勢)
“日本語学校経営の日本人の男らは、平成31年4月から令和元年6月にかけて、「留学」の在留資格で入国したベトナム人の男らを、就労可能時間を超えて自らが経営する産業廃棄物処理場等で働かせていた。
令和元年11月までに、ベトナム人の男らを雇用していた日本人の男女5人を入管法違反(不法就労助長)で、作業員として働いていたベトナム人の男2人(留学)を入管法違反(無許可活動)で逮捕した。“
不法就労助長罪を防ぐためにできること
ここまで不法就労助長罪についてお話してきましたが、ここからは不法就労助長罪に該当しないためにすべきことについて、確認していきましょう。
入管法のポイントを押さえる
初めに挙げられるのは入管法のポイントを押さえるという点です。
不法就労助長罪は出入国管理及び難民認定法、つまり入管法において成立要件が定められていることは先ほど確認しました。
こういった成立要件を押さえ、どういったケースになった際に不法就労助長罪に該当してくるのかをまず認識しておくことが重要になるでしょう。
また採用しようとしているポジションに該当する在留資格、あるいは既に雇用している外国人労働者の在留資格において、許可された範囲をしっかりと把握することもポイントになります。
特に在留資格における活動範囲については、経営者や人事部門だけでなく、現場で外国人労働者と働くことになる社員も簡潔に法律の内容・ポイントを把握しておくことが求められるでしょう。過失のないよう、しっかりと社内に周知させておくことが大切です。
在留カードを確認する
続いて挙げられるのは在留カードを確認するということです。
採用活動において面接を実施することになりますが、その際在留カードを確認することが非常に重要になります。
在留カードを確認する際のポイントとしては、在留資格の種類や就労制限の有無、在留期間等が挙げられます。
これらの情報を事前にしっかり確認しておくことで、本当に雇用することができるのかどうかを判断することができるでしょう。 具体的な確認方法については、こちらの法務省のYouTube動画をぜひご参考になさってください。
在留資格と資格外活動許可を確認する
また在留資格と資格外活動許可を確認することも重要です。
二つ目でご紹介した点とも重複しますが、採用しようとしている外国人労働者の在留資格を確かめ、その在留資格で自社の希望する業務に従事することができるかを確認することは、不法就労助長罪を防止するために欠かせないプロセスになります。
また資格外活動許可についても確認しておく必要があるでしょう。
特に、留学生などをアルバイトで雇用しようと考えている場合は、在留カードの裏面において資格外活動許可欄を確かめることがポイントです。
▶︎【外国人アルバイトの雇用】ポイントや手続き、正社員登用の方法までご紹介
マイナンバーを確認する
在留資格や資格外活動許可は在留カードをチェックすることで把握することができますが、昨今偽造在留カードを利用した不法入国などの事例も増えています。
そこでマイナンバーが役に立ちます。
外国人であっても、日本に3か月以上滞在することが決まっている外国人であれば、マイナンバーが付与されます。
日本で働こうとする外国人労働者であれば、3か月以上の在留期間を許可されていることが多くなるため、マイナンバーも保有しているはずです。
つまり、しっかりと在留手続きを踏んで入国していればマイナンバーを保有しているため、在留カードと合わせてマイナンバーも確認することで、不法入国者でないことを確かめることができます。
逆に雇用の際にマイナンバーの提出を拒んだ場合は、不法滞在者である可能性が高いので、出入国在留管理庁まで通報するなどの対応を検討すべきでしょう。
▶︎【外国人労働者のマイナンバー】基本知識や注意点をまとめて解説
在留期限をしっかりと管理する
在留カードやマイナンバーも確かめた上で、特に問題なく雇用し、働きだした後でも不法就労助長罪のリスクは残っています。
それは在留期間切れです。
外国人労働者本人はもちろんのこと、雇用している企業側も在留期間を適切に管理し、更新が必要な時期が訪れれば、更新手続きを適切に実施しなければなりません。
もしこれらを怠り、知らず知らずのうちに在留期間が切れていたとなれば、当然不法就労助長罪に問われる形になるため、在留期間の管理も徹底して行うことが重要なのです。
▶︎【在留期間更新の基本】手続きの流れや必要書類などをまとめて解説
まとめ
今回は不法就労助長罪をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は最後にご紹介した外国人労働者に特化した人材紹介サービスを提供しております。
在留資格申請のサポートや関連知識を提供させていただくことは勿論、受け入れ体制構築の支援も対応致しますので、ご興味ありましたら是非お気軽にご相談ください。