外国人労働者の在留資格
外国人労働者が日本で働くには、その活動内容に応じた在留資格を取得する必要があります。
就労が認められた在留資格は全部で29種類存在しており、以下3つの大枠のカテゴリ分けがなされます。
- 就労制限がないもの
- 就労可能だが、一定の制限を受けるもの
- そもそも就労ができないもの
就労制限がない在留資格は、「永住者」や「定住者」などといった身分系在留資格が代表的です。
対して、就労可能だが、一定の制限を受ける在留資格は「技術・人文知識・国際業務」などに代表される就労系在留資格となります。
そもそも就労ができない在留資格には、「留学」や「家族滞在」などが該当してきます。
※「資格外活動許可」を取得することで、週28時間までなら、アルバイトが可能になります。
本記事のテーマである「企業内転勤」は、就労可能だが、一定の制限を受ける在留資格になります。いわゆる「就労ビザ」に企業内転勤は該当することになります。
なお、在留資格の基本的な概要については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
在留資格「企業内転勤」とは
まずは在留資格「企業内転勤」の基本的な内容から確認していきましょう。
在留資格「企業内転勤」の概要
「企業内転勤」とは、日本に本店や支店などといった事業所を持った公私の機関の外国にある事務所の職員が、日本の事業所に期間を定めて転勤して、就労するための在留資格となっています。
具体的な業務については後述しますが、簡単に言えば、外国にある事務所からの転勤者のための在留資格というわけです。
2021年6月末時点で10,735人在留しており、専門的・技術的分野の在留資格の中では5番目の規模を誇ります。
在留資格「企業内転勤」に該当する範囲
「企業内転勤」における転勤に該当する範囲についても押さえておく必要があるでしょう。
具体的には、以下の4つのパターンとなります。
転勤パターン①:本店と支店間の異動
一つ目のパターンは本店と支店間の異動です。
本社や本店と呼ばれる事務所から、支店や支社、営業所といった事務所への異動、又はその逆のパターンは「企業内転勤」の対象となります。
転勤パターン②:親会社と子会社間の異動
二つ目は親会社と子会社間の異動というパターンです。
親会社から子会社へ、又は子会社から親会社への異動は「企業内転勤」の対象となります。
ここでいう親会社と子会社の関係とは、親会社が子会社の議決権の過半数を有している場合のことを指します。
ちなみに子会社の子会社、親会社から見れば孫会社との間の異動もコチラのパターンに該当することになるでしょう。
転勤パターン③:子会社間の異動
子会社間の異動も転勤パターンの一つとなります。
子会社同士での移動や孫会社間の異動は「企業内転勤」の対象です。
原則ひ孫会社間の異動は企業内転勤の対象とはなりませんが、親会社がひ孫会社まで一貫して100%出資している場合、親会社の子会社と見なすことができるので、ひ孫会社間の異動も対象として扱われます。
転勤パターン④:関連会社への異動
最後は関連会社への異動です。
関連会社への異動も「企業内転勤」の範囲内に該当します。
関連会社とは、議決権の20%以上を有している会社のことを指しますので、その点は留意しておきましょう。資本関係がないと、企業内転勤として関連会社への異動は認められないということになります。
関連会社間の異動や、親会社と「子会社の関連会社」間の異動は、「企業内転勤」の対象にはなりません。
在留資格「企業内転勤」で従事できる業務
「企業内転勤」で従事できる具体的な業務についても確認していきましょう。
出入国在留管理庁の定義では「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動、もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事する活動」としています。
つまり、「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に従事することができるわけですね。
例えば、機電系エンジニアやシステムエンジニア、マーケティングや営業職、デザイナーや起業勤めの語学教師といった業務が考えられるでしょう。
仮に、企業の経営管理に従事するため、取締役として日本へ転勤する場合は、企業内転勤ではなく、在留資格「経営・管理」の取得をまずご検討ください。
一方で、工場のライン作業など、単純労働には従事させることができませんので、注意しましょう。もし、単純作業での外国人材受け入れをご検討されている場合は、特定技能で呼び寄せることをご検討ください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
在留資格「企業内転勤」の在留期間
「企業内転勤」の在留期間は5年、3年、1年又は3か月としています。
上記の在留期間から、転勤計画に応じて在留期間が決定されることになります。
また転勤計画の変更などに伴い、在留期間の更新も可能となっています。
「在留期間の更新」については、以下の記事で手続きの流れ等をあわせてご覧ください。
▶︎【在留期間更新の基本】手続きの流れや必要書類などをまとめて解説
家族帯同の可否
「企業内転勤」で在留する外国人労働者は、家族を帯同することが可能です。
外国人労働者本人の配偶者又は子供に限りますが、在留資格「家族滞在」が取得可能となっているのです。
対して外国人労働者の両親や配偶者の両親、兄弟やその他親族の帯同は認められていません
在留資格「技術・人文知識・国際業務」との違い
「企業内転勤」で従事できる業務は、「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務であると先ほどお話しましたが、これら二つの在留資格にどのような違いがあるのか気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「企業内転勤」と「技術・人文知識・国際業務」とは異なり、主に以下の4点が大きく異なります。
- 日本における活動が一定の転勤期間を定めた活動であること
- 転勤した特定の事務所においてしか業務に従事できないこと
- 直近で1年以上、海外の本店・支店・事業所で「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務経験を有していること
- 「技術・人文知識・国際業務」に求められる学歴要件がないこと
- 雇用契約を新たに締結する必要がない(同一法人内での異動に限る)
企業内転勤では、例えば、基本給を外国本社が支払い、残りの各種手当等を日本側の支店が支払うというような報酬支払いが可能です。(その際、合計の給与額が日本人と同等額以上である必要があります。)
なお、「技術・人文知識・国際業務」については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
▶︎【技術・人文知識・国際業務とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格「企業内転勤」の取得要件
ここからは在留資格「企業内転勤」の取得要件についてご紹介します。
取得要件
「企業内転勤」を取得するにあたっては以下のような要件を満たす必要があります。
- 「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に従事すること
- 直前1年以上海外の事務所において「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に従事していたこと
- 海外事務所との関係性を立証できること
- 日本人社員と同等の報酬・給与を得ること
- 受け入れ企業の経営状態などが安定していること
- 外国人労働者に素行不良などがないこと
要件1〜3は企業内転勤特有のものですが、要件4〜6については、その他の就労系在留資格にも見られる要件になっています。
不許可になるケース
企業内転勤の不許可になるケースとして考えられるのは、先に挙げた転勤の範囲を超えてしまった場合が挙げられるでしょう。
例えば、業務提携をしている企業を、関連会社として認識してしまうなどのパターンが考えられます。
先程関連会社は議決権の20%以上を有する会社であるとお話しましたが、業務提携をしている企業はあくまで提携を結んだだけであって、互いの議決権を譲渡しているわけではなく、互いに独立した会社として付き合っていく形になります。
そのため、業務提携している企業との間の転勤については、「企業内転勤」の対象とはなりませんので注意しましょう。しっかりと資本関係の有無があるのか確認した上で申請する必要があります。
在留資格「企業内転勤」の取得申請
次に在留資格「企業内転勤」の取得申請について確認しておきたいと思います。
手続きの流れ
取得申請における手続きの流れとしては以下のようになります。
ステップ①:在留資格認定証明書の交付申請
まず出入国在留管理庁に対して、在留資格認定証明書の交付申請を実施します。
認定証明書交付に係る処理期間はおおよそ1〜3か月ほど掛かることになります。
ステップ②:在留資格認定証明書を外国人労働者に送付
その後交付された在留資格認定証明書を外国人労働者まで送付します。
ステップ③:当該外国人がビザ申請を実施
次に外国人労働者側で、送付された在留資格認定証明書を含めた必要書類を準備し、在外日本公館にてビザ申請の実施をしてもらうことになります。
ステップ④:来日、就労開始
無事ビザが交付されれば、来日することができ「企業内転勤」として就労開始となります。
取得申請に必要な書類
「企業内転勤」の在留資格認定証明書交付申請に必要な書類については、上場しているかどうかや源泉徴収税額が1,000万円以上といった、条件によるカテゴリーによって異なります。
全カテゴリー共通となる書類は
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 写真
- 各カテゴリーに該当することを証明する文書
となっています。
カテゴリー別の資料については、こちらの出入国在留管理庁のページも併せてご確認ください。
更新の手続き
「企業内転勤」の在留期間を更新する場合は、以下の書類を揃えた上で、在留期間更新許可申請を実施することになります。
- 在留期間更新許可申請書
- 写真
- 在留カードの提示
- 資格外活動許可書の提示(同許可書の交付を受けている場合に限る)
- パスポートあるいは在留資格証明書の提示
- パスポートあるいは在留資格証明書の提示ができない場合、その理由を記載した理由書
- 申請取次者が代理申請する場合、身分を証する文書などの提示
- 日本での活動内容に応じた資料
日本での活動内容に応じた資料については、こちらの出入国在留管理庁のページをご参照いただければと思います。
在留資格「企業内転勤」の外国人労働者を採用するには
最後に在留資格「企業内転勤」の外国人労働者を採用する方法について、簡単に確認していきましょう。
ヘッドハンティングは可能
海外に事務所を設立して、現地で外国人労働者を採用してから「企業内転勤」で呼び寄せるには、時間も手間もかかってしまいます。
そのため「企業内転勤」の外国人労働者を採用する場合は、他社で働いている当該外国人のヘッドハンティングをする方が現実的でしょう。
ヘッドハンティングをする場合、「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更許可申請を実施する必要がありますが、海外事務所を設立してから採用に繋げていくアプローチよりも短い期間で採用することができます。
ヘッドハンティングの際の注意点
ただしヘッドハンティングにあたって注意すべき点が一つあります。
それはヘッドハンティング後に取得することになる「技術・人文知識・国際業務」と、「企業内転勤」の取得要件が異なるという点です。
「企業内転勤」では、直近1年程度「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務に従事していることが要件となりますが、「技術・人文知識・国際業務」に関しては、実務経験10年以上が求められるのです。
そのためヘッドハンティングしようとしている「企業内転勤」の外国人労働者が、「技術・人文知識・国際業務」の要件を満たしていない場合は、採用することができません。
「企業内転勤」の外国人労働者をヘッドハンティングする場合は、この点を十分に留意して取り組むべきでしょう。
まとめ
今回は在留資格「企業内転勤」について詳しくお話してきましたが、いかがでしたか。
「企業内転勤」は既に海外に事務所を設けていたり、海外の会社と親会社や子会社、関連会社としての関係を持っていたりする場合に有効な在留資格ですが、最後にご紹介したとおりヘッドハンティングによる採用も可能となっています。
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