外国人労働者の雇用を検討されている方の中には、外国人留学生に注目している方もいらっしゃることでしょう。
そこでこの記事では外国人留学生の現状を踏まえつつ、採用のメリットや手続き、効果的な募集の取り組みなどをまとめてご紹介していきます。
外国人留学生の採用に取り組みたい方は、是非一度ご確認ください。
外国人留学生の在留・就職状況はどうなっている?
初めに外国人留学生の現状について、確認していきましょう。
外国人留学生の人数は右肩上がりで増えています!
まず外国人留学生の人数推移について、見ていきましょう。
独立行政法人日本学生支援機構(以下、「JASSO」)が発表している2022年度外国人留学生在籍状況調査結果では、留学生の推移は以下のグラフのようになっています。
この通り、2022年5月1日時点で外国人留学生数は231,146人で、2019年度以降は新型コロナウイルスの影響で減少してはいますが、2000年以降でみると右肩上がりになっています。
特に、2008年以降の増加は急激で、2008年では123,829人であった留学生が2016年では239,287人に伸び、2019年には312,214人と11年間で約19万人も増加をしています。
この留学生増加の背景には、先進国である日本が周辺諸国から人気であるだけでなく、2008年に日本政府が掲げた「留学生30万人計画」があります。
これは「日本のグローバル戦略を展開する一環として、2020年を目処に留学生受け入れ30万人を目指す」というものです。この計画に基づき、日本留学への動機付けから環境づくり、卒業後の社会の受け入れ促進、、、などを行ったことが留学生の急増に繋がりました。
ここで、国地域別の留学生数を見ると、以下の表の通りです。
ご覧の通り、中国が最も多く10万人を超えており全体の約45%を占めており、次にベトナム、ネパールとなっており上位5カ国は全てアジアの国です。また、地域別で見てもアジア地域からの留学生が93.0%、欧州・北米地域からの留学生が合わせて4.6%となっています。
外国人留学生の卒業後の進路はどうなっている?!
次に、外国人留学生の卒業後の進路について見ていきます。
出入国在留管理庁が公表しているデータでは、2022年(令和4年)において、留学生が日本の企業などへの就職を目的に行った、在留資格変更許可(就労ビザへの変更許可)者は33,415人となっており、国籍別、就職先の業種で見ると以下の通りです。
国別で見ると留学生の数と同様に、中国が最も多く10,182人(30.5%)、次いでベトナム、ネパール、スリランカ、韓国の順となっており、アジア諸国で31,988と全体の95.7%を占めています。(アジア、欧州、北米で約99%を占めているため他地域は割愛)
また、在留資格別でも「技術・人文知識・国際業務」が全体の86.3%を占めています。
業種別で見ると、製造業が7,131人(15.2%)、非製造業が39,505人(84.4%)となっています。
さらに、具体的に見ると、製造業のなかでは、金属製品が1,284人(2.7%)、食料品が956人(2.0%)と上位、非製造業では、卸売業・小売業が9,025人(19.3%)、学術研究、専門・技術サービス業が3,943人(8.4%)と上位を占めています。
※複数の項目にチェックがあったものは重複して計上しているため業種別の許可数の合計は冒頭に記載した在留資格許可者数と一致しません
また、一方で、外国人留学生・就職者は近年増加しているにも関わらず、日本国内で就職を希望する留学生は全体の約55%程度、さらに、実際に日本で就職をした留学生は卒業生全体の約40%程度の推移に留まっており、大半の留学生が母国へ帰国しているのが現実です。
理由は様々ですが、「外国人留学生向けの求人が少ない」「日本の就活の仕組み、やり方が分からない」「日本語の適正、能力試験が難しい」などの留学生サイドの理由や、就職先を見つけても就労ビザへの在留資格変更ができなかったなどの問題もあるのです。
アルバイトで働く留学生の実態はどうなっている?
留学生を雇用する方法のひとつに、彼らの在学中にアルバイトとして雇用をする方法があります。コンビニや飲食店ではよく目にする留学生アルバイトですが、実態はどのようになっているのでしょうか。
JASSOが2022年9月に発表した「令和3年度 私費外国人留学生生活実態調査 概要」によると、留学生の収入は仕送り、アルバイト、奨学金などが主で、「アルバイトをしている」と回答した学生は全体の70.4%と、多くの留学生がアルバイトに従事しています。
また、その職種を見ると、「飲食業」が35.0%と最も多く、次いで、「営業・販売(コンビニ等)」が30.2%、「工場での組立作業」が6.1%、「ティーチングアシスタント・リサーチアシスタント」が5.6%となっています。
ここまでみてきた通り、外国人留学生が在学中はアルバイトとして「飲食」「販売」を中心とした業種で多く働いており、卒業後については、ハードルはあるものの、「製造業」「卸売・小売業」等を中心に活躍していることが伺えます。
人口減少が激しい日本において、貴重な労働力として重宝されているのが実態と言えるでしょう。
外国人留学生を採用するメリットはある?
ここでは外国人留学生を採用するメリットをいくつか挙げてみたいと思います。
日本の生活やルールをすでに理解している
日本で生活をしたことがない外国人を海外から呼び寄せて雇用するのは、就労ビザ取得のハードルや、雇用後の日本への環境や文化・習慣などに馴染むのにもある程度の時間が必要です。苦労して雇用したにも関わらず、日本の環境に適応できず帰国してしまうケースなどもあるでしょう。
その点、外国人留学生であれば、大学であれば4年間、専門学校であれば2年間(日本語学校も含めると更に)程度の在留経験があり日本の生活には慣れています。また、前述の通り、多くの留学生がアルバイトを通して日本社会で働くための最低限のルール(慣習)なども理解しているため、雇用後もすぐに新しい環境に適応してくれる可能性が高いでしょう。
また、在留資格に関する申請を国内でのやり取りで完結できるので、スムーズに行える点も大きなメリットでしょう。
日本語+母国語のバイリンガル・トリリンガルが基本
留学生であれば、母国語はもちろんですが、大学や専門学校に通っており日本語も話せるため、2言語話せるバイリンガルが大半です。
また、日本と違いー般的に英語を話せる方が多い国であったり、母国における難関大学を卒業したような留学生は、英語も堪能なことが多いです。実際に、弊社でも、面接でトリリンガルの外国人材に出会うことは少なくありません。
留学生の卒業後の職務として、「翻訳・通訳」が全体の16.1%を占めるのも理解ができるでしょう。
言語面においては、一般的な日本人よりも圧倒的に高スペックであることが伺えます。
海外進出や外国顧客の対応時に大きく活躍
これから販路や市場拡大のために海外進出を検討している企業にとっても、留学生は貴重な存在でしょう。特に現地の留学生であれば、その国独自の慣習やある程度のビジネスマナーなども把握しており、強い戦力となるでしょう。
また、前述の通り、基本はバイリンガルで、トリリンガルの留学生も少なくないため、母国以外の海外進出でも活躍してくれる留学生は多いでしょう。
外国人留学生って、新卒で採用できるの?
外国人採用においてはメリットが大きい留学生ですが、新卒で採用するにはどうすればよいのでしょうか。
外国人雇用には「在留資格」について知っておくべき
外国人を採用・雇用する上では「在留資格」についての知識は必要不可欠です。ここで簡単におさらいしておきましょう。
在留資格とは、「外国人が日本に在留し、何かしらの活動を行うために必要となる資格」のことです。
これは「出入国管理及び難民認定法」によって定められており、日本で行う活動によって29種類の在留資格に分かれています。
また、29種類の在留資格ごとに就労の可否、就労可能な場合は、従事可能な業務内容などが細かく制限されています。違反した場合、「不法就労助長罪」が適用され、罰則を受けてしまうリスクもあるのです。
そのため、外国人を雇用する際は、本人が有している在留資格は何か、就労可能か、従事する業務内容が在留資格範囲内なのか、などをしっかりと確認する必要があります。
外国人留学生を新卒で雇用するケースで言えば、「留学」の在留資格のままでは雇用ができず、就労ビザに在留資格変更することが必要です。
代表的な2つの就労ビザについて以下に記載します。
「留学生」→「技術・人文知識・国際業務」で採用するパターン
まず1つ目は、留学生(在留資格「留学」)の卒業後に「技術・人文知識・国際業務」へ在留資格変更をするパターンです。
「技術・人文知識・国際業務」は最も一般的な就労ビザで、2022年においては在留資格変更する留学生全体の86.3%(2022年)がこの在留資格に変更しています。
「技術・人文知識・国際業務」とはざっくりと言うと、エンジニアやオフィスワーカーとして働く場合に必要な在留資格です。
一つの在留資格でありながら、技術・人文知識・国際業務の3つの分野での就労予定者を対象としており、それぞれ対応業務も異なります。また、それぞれの頭文字を取って「技人国(ギジンコク)」とも呼ばれています。
一例ですが、職務例としては以下の通りです。
留学生がこの技人国ビザへ切替をする要件として最も重要なのが、学歴(職歴)と職務内容の関連性があることで、さらに、業務内容に「専門性」が求められることも重要です。そのため、専門知識、技術を必要としないような「単純作業」が主となる業務は認められていません。
また、留学生本人が住所地管轄の地方入国管理局などで申請するのが原則です。
卒業後の4月から働きたいという場合は、入社3ヶ月前に本人が卒業見込証明書を大学などから取得をし、企業側は「労働条件通知書もしくは雇用契約書」などの必要書類を用意し、入国管理局の審査を受けなければなりません。
在留資格変更にかかる審査期間は、概ね、申請受理後1ヶ月〜3ヶ月とされておりますが、新卒で4月から雇用する場合など、入社が多い時期などの前は混みあう可能性がありますので、それらも見越した早めの申請が必要です。
こちらの入国管理庁HPもぜひ合わせてご覧ください
「留学生」→「特定技能」で採用するパターン
次に、近年取得者が増えている「特定技能」で採用するパターンについて見ていきます。
特定技能は就労ビザの1つで、日本の労働力不足への対策として、特定産業分野の12分野14業種で外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された比較的新しい在留資格です。
これにより、先の技人国ビザでは就労が認められていない、例えば、外食業・建設業・農業・宿泊業・製造業など、日本国内では充分な人手確保が難しい業種において、単純労働を含む作業に従事させることが可能になりました。
この特定技能で認められている分野は以下の通りです。
さらに、この在留資格は「特定技能1号」「特定技能2号」の2つの区分があり、特定技能1号を経て、「長年の実務経験等により身につけた熟達した技能」が認められれば「特定技能2号」への変更が可能です(現在、「介護」分野のみ特定技能2号の対象外)。
取得の要件としては、一定以上の日本語能力(N4以上)と各分野で設けられている技能評価試験の合格が必須ですが、留学生において言えば、日本語能力は問題なくクリアしているでしょうし、学歴と就労業務の関連性や専門性が求められないのも特徴です。
また、技人国のような学歴要件もないため留学生に関わらず雇用が可能なのも魅力のひとつでしょう。
一方で、特定技能特有の職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援実施義務というものがあり、その「支援計画の作成」など、在留資格変更にはやや複雑な面もあります。
そのため、留学生を特定技能で雇用する場合は、専門家や外国人材専門の紹介会社などを利用することをおすすめします。
外国人留学生のアルバイト採用には制限があるって本当?!
先述の通り、JASSOの調査では留学生の約70%がアルバイトに従事していますが、実は留学生をアルバイトとして雇用するにはいくつかの制限があります。
まず、留学生が持つ在留資格「留学」(留学ビザ)は就労が認められていません。これは、留学ビザが日本で学業をするための在留資格であるためです。
しかしながら、出入国在留管理庁に「資格外活動許可」を申請し、許可を得ることで週28時間以内の範囲でアルバイトが可能(になります。
この資格外活動許可を得られれば、風俗営業等を除き、仕事や働く時間帯に制限なく就労が可能(週28時間以内に限る)です。
また、学校が定める夏や冬の長期休業期間などは、1日8時間・週40時間までの就労が認められています。
上記ルールに違反した場合は、罰則が課されるだけでなく就労ビザへの在留資格変更の際に悪影響がでるため、外国人留学生をアルバイトで雇用する際は必ず「資格外活動許可」を取得しているかを確認しましょう。
外国人留学生を採用する時に注意しておくべきポイントは?
ここからは外国人留学生を採用する時に注意しておくポイントについて紹介していきます。
在留資格の確認を怠ると、「不法就労助長罪」に。。
留学生を在留資格変更し雇用する場合だけでなく、外国人を雇用する際は、必ずどの在留資格を持っているか、就労業務が在留資格範囲内なのかを確認する必要があります。
もし、在留資格で認められた範囲外の業務をさせた場合は、不法就労助長罪が適用される可能性があります。これは在留資格の確認を怠っており不法就労の事実を知らなかった場合も同様です。
実際に、以下のような不法就労助長罪の逮捕事例もあるので注意してください。
企業法務ナビ|調理の在留資格ない外国人を違法に働かせた疑い、「ジャパンチキンフードサービス」社長ら逮捕
アルバイト雇用時には「資格外活動許可」と「週28時間ルール」に注意
留学生をアルバイトとして雇用する際は、「資格外活動許可」の確認と、就労可能時間の「週28時間ルール」に注意しなくてはなりません。
資格外活動許可については、在留カードの裏面の資格外活動許可欄で確認ができますので、面接時に必ず確認をしましょう。
週28時間ルールに関しては、もう少し注意が必要で、具体的には以下の通りです。
万が一、資格外活動許可を取得していない留学生を就労させたり、週28時間以上働かせた場合は不法就労助長罪に問われる可能性があります。
知っていてルールを破るだけでなく、確認不足や知らなかった場合も処罰の対象となります。
実際にこのルールを破り逮捕された事例もありますので十分に注意してください。「朝日新聞デジタル(2022年11月15日)|ラーメンチェーン「もっこす」社長を逮捕 留学生を働かせすぎた疑い」
受け入れ体制・報酬設定を誤ると早期離職へ
特に初めて外国人アルバイト・社員を雇用される企業様に多いのが、「受け入れ体制の不備」及び「早期離職」です。
日本人的にはセーフと思われる対応をそのまま外国人社員に適用することで、大きな不信感につながり、入社3ヶ月・6ヶ月等で早期に離職され、結果として「もう外国人は採用したくない」なんていうことをおっしゃる企業様は非常に多いです。
例えば、「面接時に説明していたポジション・業務内容が入社後に変わってしまった」、「年功序列制度・曖昧な評価基準」「外国人と日本人で明確に待遇格差がある」なんていうことが見受けられる場合、高確率で早期離職に繋がってしまうでしょう。
また、「背中をみて覚えろ」的な指導方針も、基本的には外国人社員の混乱を招くのみで、多くのトラブルを発生させてしまう可能性があります。
逆の見方をすると、手順がわかるマニュアルベースでの新人育成や明確な評価基準・評価制度を運用する等、受け入れ体制をしっかりと構築することができれば、既存社員からのリファラルで採用経費をかけずに多くの外国人社員を雇用することができる可能性があります(実際に弊社でも60%の新入社員が既存外国人社員からのリファラル採用です)ので、ぜひご検討ください。
外国人留学生を採用するにはどうしたら良い?!
最後に、外国人留学生を採用する方法についていくつか紹介します。
採用媒体の活用
最も一般的なのは、日本人採用と同様に採用媒体の活用です。
大手採用媒体や外国人専門の採用媒体の求人掲載は、一定数の応募を比較的容易に獲得できます。
しかし、採用媒体によって費用、応募数、応募者のレベルがバラバラであったりと、サイトの選定が難しく、かつ、希望通りの人材が確保できない場合もあります。
人材紹介会社の活用
次は人材紹介会社の活用です。
紹介会社は求人票のサポートから求める人材を集め、面談の設定などをしてくれます。また、近年は外国人材専門の紹介会社も増加傾向にあります。さらには、業界特化型(ブルーワーク、製造業、エンジニア特化など)の外国人材専門紹介会社も増えてきました。
このような外国人材専門の紹介会社は、希望にあった外国人材を見つけるだけでなく、在留資格申請・変更等のサポートまで行っているケースもあり安心です。
初めて外国人を雇用する企業や、できるだけ早く採用したい等の場合におすすめでしょう。
弊社は外国人材の紹介からフォローまでワンストップでやっております。一度詳細を聞いてみたい、、、などございましたら、以下からお気軽にお問い合わせ下さい。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員やアルバイトに自身の知り合いや友人を紹介してもらう採用手法のことを指します。
既に自社で就労経験がある外国人からの紹介であるため、ミスマッチも防ぎやすく、採用コストも大幅に抑えられる特徴があります。
日本に在住している外国人は、SNSコミュニティなどのデジタルな繋がりも含め、出身国同士の横の繋がりがとても強いです。さらに、彼らが自ら就職先を探すハードルも高いのが現実です。
そのため、先述の通り、1名でも外国人を雇用し、しっかりと定着をしてくれれば、リファラル採用が活発化していく可能性は高いでしょう。
まとめ
今回は外国人留学生の採用をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は最後にご紹介した外国人労働者や留学生を専門に人材紹介サービスを提供しております。
在留資格申請のサポートは勿論のこと、採用後の定着率向上に向けたコンサルテーションも行っているので、少しでもご興味ありましたらお気軽にご相談ください。