特定技能「建設業」とは?
特定技能「建設業」とは、2019年4月に新たに創設された就労系在留資格「特定技能」の対象分野(業種)の1つです。これにより、建設分野の現場業務などにおける単純労働での外国人雇用が可能となりました。
また、特定技能制度開始時から特定技能2号の対象分野となっていたため(他分野も2023年に拡大)、既に他分野に先駆けて2号特定技能外国人が出ており注目を集めています。
なお、「特定技能」は、人手不足の解消を目的として設けられたもので、建設業においても人手不足が著しいのは言わずもがなですが、特に就業者の高齢化が顕著です。
では、現状建設分野における特定技能外国人がどれくらいいるのか、以下に見てみましょう。
この表は、出入国在留管理庁が、定期的に公表している特定技能外国人の在留者数です。
ご覧の通り、2024年6月末時点で、特定技能全体では251,594名の外国人が在留しています。そのうち、建設分野では31,853名が就労しており、全体の12.7%にあたります。昨年同月時点では、建設分野の特定技能外国人が18,429名だったので、1年間で13,424名も増えている現状なのです。
なお、特定技能「建設業」については、弊社YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
特定技能「建設業」で働ける職種
それでは、特定技能「建設業」で働ける具体的な職種を見ていきます。
現在、特定技能「建設業」では、以下の3区分で就労可能です。
そして、以下のとおり各業務区分ごとに従事可能な業務内容が定められていますが、区分内であれば、他の業務も行うことが可能(例えば、業務区分「土木」で特定技能外国人を受け入れた場合、型枠施工はもちろん、コンクリート圧送の業務にも従事可能)です。
それぞれを一般社団法人「建設技能人材機構」のWEBサイトを参考に、
- 業務の定義
- 主な業務内容
- 想定される関連業務
以下に紹介します。
①土木
業務の定義:
指導者の指導・監督を受けながら、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等
主な業務内容:
その他、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業など
想定される関連業務:
① 原材料・部品の調達・搬送
② 機器・装置・工具等の保守管理
③ 足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
④ 足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
⑤ 清掃・保守管理作業
⑥ その他、主たる業務に付随して行う作業
②建築
業務の定義:
指導者の指導・監督を受けながら、建築物の新築、増築、改築、若しくは移転又修繕若しくは模様替えに係る作業等に従事
主な業務内容:
その他、建築物の新築、増築、改築若しくは移転、修繕、模様替又は係る作業
想定される関連業務:
① 原材料・部品の調達・搬送
② 機器・装置・工具等の保守管理
③ 足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
④ 足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
⑤ 清掃・保守管理作業
⑥ その他、主たる業務に付随して行う作業
③ライフライン・設備
業務の定義:
指導者の指示・監督を受けながら、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業等に従事
主な業務内容:
その他、ライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業
想定される関連業務:
① 原材料・部品の調達・搬送
② 機器・装置・工具等の保守管理
③ 足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
④ 足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
⑤ 清掃・保守管理作業
⑥ その他、主たる業務に付随して行う作業
特定技能1号と2号の違い
では、特定技能「建設業」で外国人労働者は、何年働けるのでしょうか?
特定技能「建設業」では、1号と2号という2つ区分のが存在し、以下の表のとおり、1号では5年、2号では更新が認められる限り、無期限での就労が可能です。
そのため、2号の場合は、1号では認められなかった、家族帯同が可能になるなど、外国人にとっては、かなり魅力的な制度となっています。
なお、1号は現場の作業員、2号は現場の班長や監督と考えていただいて問題ありませんが、特定技能1号から2号へ移行するには複数の建設技能者を指導しながら、作業をしつつ、工程を管理する班長(監督者)としての一定の実務経験と、技能検定1級に相当する建設分野特定技能2号評価試験(もしくは技能検定1級)に合格しなければならず、ハードルはかなり高い点は留意しておきましょう。(参考:一般社団法人建設技能人材機構「いちからわかる!建設分野の特定技能外国人制度 第一章 05.特定技能2号とは」)
特定技能1号取得の要件
ここからは、特定技能1号の取得要件について見ていきます。
特定技能1号の取得ルートは大きく分けると以下の2通りあり、建設分野においても同様です。
それぞれ以下に見ていきましょう。
①試験に合格
最も一般的な取得ルートは、建設分野における特定技能1号評価試験と日本語能力試験の2つに合格して取得するルートです。それぞれの試験について見ていきます。
特定技能評価試験
建設分野における特定技能1号評価試験は、「建設分野特定技能1号評価試験」で、国交省が定めた建設分野特定技能評価試験実施要領に従い、学科試験および実技試験により行います。試験概要は以下のとおりです。
この技能評価試験は、建設分野3区分(土木、建築、ライフライン・設備)ごとに実施されており、出題は全て日本語です。
区分ごとのサンプルテキスト、試験の申し込み方法については、一般社団法人建設技能人材機構のWEBサイトに掲載してありますので、興味ある方はご確認ください。
また、特定技能評価試験については以下の記事で詳しく解説しておりますので、是非ご覧ください。
▶2024年最新版!特定技能評価試験の申し込み方法、スケジュールなど徹底解説!
日本語試験の種類
日本語能力試験は、「日本語能力試験(JLPT)」もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の2つが存在します。どちらの試験を受けても問題ありません。どちらの試験も国内外で行われており、インターネットから申込みが可能です。
それぞれ特定技能1号取得基準が設けられており、以下の通りです。
②技能実習から特定技能への移行
続いて、「技能実習」から移行するルートをみていきましょう。
特定技能「建設業」を取得するには、建設分野の技能実習2号を良好に修了から特定技能へ移行する方法もあります。
建設分野において、技能実習2号(在留期間:3年)を良好に修了または技能実習3号(在留期間:5年)の実習計画を満了した元技能実習生は、建設分野における一定の技能を身につけており、日本語に関しても技能実習2号修了者は3年(3号であれば5年)の日本滞在により一定水準クリアしているということで、先にあげた技能試験や日本語試験を受けることなく、特定技能1号へ移行することが可能です。
しかしこの場合は、技能実習生時に従事していて作業・業種に対応する特定技能分野・区分へ移行に限られ、技能実習時と別の区分については、その区分の建設分野特定技能1号評価試験の合格が必須です。例えば、技能実習時に「型枠施工」に従事していた方が「ライフライン・設備」で特定技能に移行する場合などがそうです。ただし、技能実習修了者であれば、日本語試験は免除されます。
技能実習から特定技能への移行については、以下の記事にて詳しく説明しておりますので是非ご覧ください。
▶【意外な落とし穴?】技能実習から特定技能へ移行するための手続き・注意点は?
特定技能2号取得の要件
次に特定技能2号の取得要件について見ていきます。
前述の通り、特定技能1号の取得については2つのルートがありますが、特定技能2号取得方法においては「1号からの移行」のみに限定されています。
建設分野において特定技能1号から2号へ移行するには、
①建設分野特定技能2号評価試験、もしくは技能検定1級に合格すること
②班長として、複数現場において建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験
の2つを満たす必要があります。②においては、上記に対応する能力評価基準がない場合、「就業日数(職長+班長)が3年(勤務日数645日)以上であること」が必要な実務経験とされております。
特定技能2号の取得については以下の記事もで解説しておりますので、併せてご覧ください。
▶特定技能1号と2号の違いは?特定技能2号取得の条件や試験について解説!
外国人材を受け入れるための手続き
次に、建設分野において特定技能外国人を受け入れるための手続きを見ていきます。
国土交通省による建設特定技能受入計画認定を受ける
まず、建設分野にて特定技能外国人を受け入れる場合、受け入れ企業は特定技能外国人への報酬などを記載した、建設特定技能受入計画の認定を国土交通省から受ける必要があります。
この認定を受ける際の主な審査基準は以下の通りです。
①同一賃金同一労働であること(同一技能日本人同等以上の報酬がある)
②報酬支払いが月給制かつ口座振込であること
③建設キャリアアップシステムに登録していること
④受け入れ企業の常勤社員総数を1号特定技能外国人が超えないこと
また、上記以外にも、
- 建設業許可の取得
- 一般社団法人建設人材機構(JAC)への加盟またはJAC正会員団体への加入
- 一般財団法人建設技能振興機構(FITS)の巡回指導を受ける
などの建設業独自の基準があります。
これらの詳細については、一般社団法人建設人材機構(JAC)のWEBサイトをご覧ください。
支援体制の義務を果たす
建設分野に限らず、特定技能外国人を受け入れる場合、受け入れ機関である企業は以下の基準を満たす必要があります。
支援体制に関する基準に関しては、直近2年以内に外国人の受け入れ実績や生活支援の担当業務に従事した経験のある従業員がいない場合、満たすことができません。
この場合、「登録支援機関」という第三者機関に支援を委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用も是非ご検討ください。
外国人材の受け入れにかかる費用
最後に、特定技能外国人の受け入れにかかる費用について見ていきます。
具体的な費用の例
建設業における、特定技能外国人雇用のおおよそな費用について、海外から呼び寄せる場合と国内で採用する場合を比較しながら見ていきましょう。
先述の通り、建設業では、JACの賛助会員かJAC正会員企業へ加盟する必要があり、団体ごとに年会費が発生します。
さらに、特定技能外国人1名につき、受け入れ負担金をJACへ支払う必要があり、この負担金は、以下の表のとおり、受け入れ方法によって額が異なります。
さらに、在留資格認定・変更申請や在留期間更新許可申請の書類作成及び申請取次を行政書士・登録支援機関に委託する際には、その手続き費用が発生します。
また、特定技能人材への義務的支援を登録支援機関に委託した場合にも、一人当たり数万円の支援委託費用が発生してきますので、建設業に関しては多くの間接費用が発生してくると言わざるを得ないでしょう。
まとめ
今回は特定技能の中でも建設分野をテーマとしてお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は、創業当初から国内外各国の外国人材を建設業の方々に数多くご紹介しております。また、特定技能における登録支援機関としても建設業のお客様のサポート実績が多数あります。
特定技能外国人の雇用に取り組みたい、一度話を聞いてみたいという方は、お気軽に以下問い合わせフォームからご連絡ください。