この記事では、特定技能いわゆる「製造業3分野(素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業)」で従事できる業務内容や業務区分、受け入れ要件、試験内容など実際に雇用するまでの流れを解説していきます。製造業3分野での特定技能外国人の受け入れを検討されている企業様は、是非一度ご確認ください。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
特定技能「製造業(素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業)」とは?製造3分野が統合
特定技能「素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業」とは2019年4月に新たに創設された就労系在留資格「特定技能」の1つです。創設当初は、「素形材産業」、「産業機械製造業」、「電気・電子情報関連産業」の3つの分野が独立して存在し、製造3分野と称されていましたが、2022年5月に統合され、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という1つの分野になりました。
なお、「特定技能」は、人手不足の解消を目的として設けられたものです。在留資格「特定技能」制度が創設されたことで、日本国内において特に人手不足が深刻とされる産業分野において、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の活用が可能となりました。「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
特定技能「製造業3分野」が創設された背景
なぜ、特定技能に「製造業3分野」が認められたのでしょうか?
結論、就業者数の減少が続き、人手不足が深刻化しているからです。
経済産業省の発表した「2021年版ものづくり白書」によると、国内の製造業就業者数は2002年から2020年にかけて約157万人も減少しています。
そのうち34歳以下の若年就業者数の減少人数は125万人であり、若い人が特に減少していることが分かります。
特定技能外国人の人数
では、現状で、製造業分野における特定技能外国人は何人くらいいるのでしょうか?
詳細は以下でお伝えしますが、すでに多くの外国人が「特定技能」で就労を開始しており、優秀な人材の獲得競争が始まっているのが現状です。
こちらは、出入国在留管理庁が、定期的に公表している特定技能外国人の在留者数です。ご覧のとおり、2022年12月末時点で、特定技能全体で、130,915名滞在しております。同年6月末時点では、87,471名であったため、半年で4万名以上も増加しています。
製造業3分野では、2022年12月末時点で、27,725名が就労しております。2022年6月末時点では17,865名だったので、半年で約10,000名も増加してるのです。
日本政府がもっとも力を入れているという現状と、後に説明する技能実習からの切り替え、転職ができる点も踏まえると、今後も増加の一途を辿ることが予想されます。
製造業3分野で特定技能外国人が従事できる業務
製造業3分野において特定技能外国人が従事できる業務は、以下の3区分(①機械金属加工、②電気・電子機器組立て、③金属表面処理)となっております。
上記にあげた業務以外にも、日本人従業員が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することも可能です。想定される業務としては、例えば以下のものが該当してきます。
雇用形態は?派遣は可能?報酬は日本人と同じ?
雇用形態としては、直接雇用のみとなります。派遣形態での受け入れはできませんので、ご注意ください。なお、特定技能制度で派遣形態が認められているのは、「農業」と「漁業」分野のみとなっております。もし派遣形態で受け入れていることが発覚した場合、罰則として5年間の特定技能外国人の受け入れができなくなってしまいます。
報酬に関しては、同じ程度の技能を有する日本人が従事する場合と同等以上である必要があります。また、技能実習2号から移行する者を雇用する場合は、技能実習生時の給与を上回っていることが求められます。
特定技能外国人になるのは、後に詳しく解説しますが、「技能試験に合格した一定の経験・知識を有する者」、もしくは「技能実習2号・3号修了者」のため、3年もしくは5年程度の経験を積んだ日本人従業員に支給される金額と同等額が、報酬決定の目安となってくるためです。
雇用できる期間
製造業3分野は2023年5月現在、在留資格「特定技能1号」のみが対象となっているため、在留期間は最長で5年となってきます。
「特定技能2号」は在留期限がなく更新が認められる限り5年を超えても就労することができますが、現在のところ建設と造船・舶用工業の2分野のみとなっており、製造業3分野では5年を超えての就業はできません。
ただし特定技能2号の対象分野の拡大も前向きに検討されているため、近い将来製造業3分野においても長期的に雇用できるようになるでしょう。
受け入れ人数枠
製造業3分野の場合、特定技能外国人の受け入れ人数に制限はございません。
一方で、建設業と介護業に関しては日本人従業員の常勤職員数以下という人数制限が課されていますので、ご留意ください。
「特定技能」と「技能実習」では、なにが違う?
技能実習という制度をご存じの方は多いのではないでしょうか?
以下に「特定技能」と「技能実習」の違いを取りまとめました。
2つの制度はそもそもの設立目的が異なります。特定技能は、国内の人材不足を解消するために設けられた制度で、受け入れ外国人はあくまで「労働者」です。対して、技能実習は日本の技術を学んでもらい、それを帰国後母国の経済発展に役立ててもらうことが目的になります。つまり受け入れる外国人は、国際貢献を目的とした「研修生」なのです。
このように設立目的が異なるため、様々な違いが存在します。最たる例としては、技能実習では、「転職」という概念が存在しませんが、特定技能では同業種であれば無制限に転職が可能となっています。
「特定技能」と「技能実習」の違いについてより詳しく知りたい方は、「【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法」をご覧ください。
外国人材が満たすべき条件はある?
ここからは製造業3分野における特定技能の在留資格を取得するための要件について、お話していきます。
結論として、大枠で以下2つのいずれかの条件を満たした外国人が特定技能1号の在留資格を取得できます。
①試験に合格する。
特定技能になるためには、「製造業分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」に合格しなければなりません。
製造業分野特定技能1号評価試験
製造業分野における特定技能1号評価試験は、令和4年度までは、19の試験区分で実施されていましたが、令和5年度からは、新たな3区分(①機械金属加工・②電気・電子機器組立て、③金属表面処理)で実施予定です。
日本語能力試験
日本語能力試験は、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicの2つの内どちらかを受験し、それぞれ設けられた以下の合格基準に達する必要があります。
②「技能実習」から移行する
続いて、「技能実習」から移行するルートをみていきましょう。
技能実習2号を良好に修了することでも、特定技能の在留資格を取得することができます。
この場合、先に挙げた特定技能評価試験は免除されることになり、在留資格変更許可申請を実施することで、特定技能の在留資格を取得することが可能です。
技能実習から新3区分への移行関係は以下の表をご参照ください。対象業務区分に該当する作業名であれば、技能評価試験は免除されます。
いずれも、経済産業省「製造業における 特定技能外国人材の受入れについて」から抜粋しています。
特定技能外国人を採用するには?受入れ協議・連絡会への入会は必須?
次に特定技能外国人を受け入れる際、企業側が求められる要件についてご紹介します。
受け入れ機関としての基準を満たす
特定技能外国人を受け入れるにあたって、受け入れ機関である企業は、以下の基準を満たす必要があります。
支援体制に関する基準に関しては、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。
受け入れ機関の要件については、こちらの記事もあわせてご確認ください。
▶︎【特定技能における受け入れ機関(特定技能所属機関)】基準や義務などを紹介します!
製造業特定技能外国人材受入れ協議協議・連絡会に入会する
製造業3分野の場合、受け入れ企業は特定技能1号の在留資格申請前に経済産業省が組織する「製造業特定技能外国人受け入れ協議・連絡会」へ入会しなければなりません。
詳細は、こちらをご確認ください。
どんな事業所で受け入れできる?
当該、製造業3分野で受け入れ可能な事業所については、以下の表をご確認ください。
定技能外国人と雇用契約を結んだものの、自社の製造品目が上記の産業分類に当てはまっておらず、協議会に加盟できずに受け入れができなかったという企業様が続出しています。実際に自社が産業分類に適合するのかどうかよくわからない場合は、以下のメールアドレスにお問い合わせすることを強くおすすめします。
経済産業省 製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会 運営事務局
メールアドレス:seizo-tokuteigino-kyogikai-jimukyoku@sswm.go.jp
製造業3分野における定技能外国人の受け入れまでの流れ
特定技能外国人を受け入れるまでの流れなどを確認していきましょう。 国外から呼び寄せるパターンと、国内で転職するパターンとで若干流れが異なりますので、注意が必要です。
ステップ①:協議会・連絡会への加入
協議会・連絡会への加入については、加入できなかった場合に特定技能外国人の受け入れができなくなってしまいますので、まず自社が協議会に加盟できるかどうかを最初に確認することをおすすめします。
協議会への加入はこちらをご確認ください。
ステップ②:人材募集・面接
まずは外国人の募集を行い、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。
ステップ③:特定技能雇用契約の締結
無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。
ステップ④:1号特定技能支援計画の策定
次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。
特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上及び日常生活上の支援を行う必要があります。次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を誰が行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。
支援計画の策定に関しては、先にもあげた「登録支援機関」を活用することで、作成サポート及び義務的支援の実施まで委託することが可能です。
ステップ⑤:在留資格認定・変更申請
続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。
国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。
この時に用意すべき書類は大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます。
- 外国人本人に関する書類
- 受け入れ機関に関する書類
- 分野に関する書類
それぞれに該当する必要書類は多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のサイトをご覧ください。下にスクロールしていただくと、「在留資格認定証明書交付申請」、「在留資格変更許可申請」の箇所がでてくると思いますので、必要書類を確認し、過不足の無いようにご準備ください。
また、注意点として、すでに「特定技能1号」の在留資格を持っている方を受け入れる場合であったとしても、新たに「在留資格変更許可申請」が必須です。
そのため、特定技能有資格者であったとしても、入管からの許可がおりなければ、働き始めることはできないという点は覚えておきましょう。
ステップ⑥:ビザ申請
こちらは、国外から呼び寄せる場合のみ発生してくるステップになります。
無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。
ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは2-3週間程度が平均となっています。)
ステップ⑦:就業開始
無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。
特定技能外国人を雇用する費用はどのくらい?
最後に、特定技能外国人を雇用する際にかかる費用を確認していきましょう。
国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。
そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点は気をつけましょう。
また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。
初回の申請手数料のみならず、受け入れ後も毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに申請委託費用も発生してきます。
最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。
あくまで概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。
より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、「▶︎【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」をご覧ください。
まとめ
今回は特定技能の分野の中から製造業3分野を取り上げて、詳しくご紹介してきましたが、いかがでしたか。
当社は本文中でもご紹介した登録支援機関として、受け入れ企業様のサポートを実施しております。
支援計画策定や支援業務の代行は勿論、受け入れ後の定着支援や体制構築などもお手伝いさせていただいておりますので、ご興味ありましたら是非ご連絡ください。