最近、注目を集めている「特定技能」、この記事では、特定技能「ビルクリーニング業」で受け入れることができる業務分野や仕事内容、採用のステップから費用、試験情報まで徹底的に解説していきます。 技能実習生を既に雇用されていて、特定技能への移行を考えているなど特定技能外国人の雇用を検討されている事業者様は、ぜひご一読ください。
ビルクリーニング分野の現状と重要性
まず、ビルクリーニング分野の現状を見ていきます。
近年、ビルクリーニング業界では人手不足が深刻化しています。その背景には、少子高齢化による労働力不足や女性の社会進出、労働環境の悪化などの理由が挙げられます。
一方で、ビルクリーニングを必要とする建築物衛生法の適用対象となる特定建築物は年々増加をしている状況です。
少し前のデータではありますが、厚生労働省発表の資料によると、ビル清掃員の有効求人倍率は2.95倍と非常に高く、また特定建築物の数も増加傾向にあり、人手不足が著しい分野だということが分かります。
また、平成27年の国勢調査のデータによると、清掃員の37.2%を65歳以上の高齢者が占めている状況で、若年者の雇用が大きな課題となっています。
これらの人手不足や若年者雇用の課題解決のために、ビルクリーニング分野での特定技能外国人の受け入れは急務であると考えられています。
特定技能制度では、ビルクリーニング分野での外国人受け入れ目標数は制度開始からの5年間では20,000人、2024年4月からの5年間で37,000人となっていますが、現状は以下のグラフの通りです。
最新の集計である2023年12月末では、ビルクリーニング分野の特定技能外国人は3,520名しかおらず、特定技能全体の約1.7%程度にとどまっております。しかし、増加率で見ると大きな右肩上がりとなっていることもあり、今後この分野で特定技能外国人の受け入れ活性化が期待されます。
特定技能「ビルクリーニング」の概要
改めてになりますが、特定技能とは、日本の労働力不足への対策として、人手不足が著しい特定産業分野での外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された比較的新しい労働制度です。
「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
ビルクリーニング分野においても人手不足が著しいため、この特定技能の対象分野とされています。
特定技能「ビルクリーニング業」の在留資格を取得すれば、最大5年間、受け入れ要件を満たしているビルメンテナンス会社で勤務ができます。
業務内容は、事務所や学校、興行場、店舗など、不特定多数の人が利用する建築物の日常清掃や定期清掃業務のいわゆるビルクリーニング業務の他に、ホテル客室のベッドメイキングの従事も認められています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能には1号と2号の2種類があります。
2024年に特定技能1号に新規追加の4分野の介護分野は特定技能2号が設けられていないですが、ビルクリーニング分野を始めそれ以外の分野においては、特定技能2号の受け入れが可能です。
1号と2号の違いについては、その分野で有する技能レベルの違いだけでなく、現場を管理する者としての実務経験の有無などがあります。ビルクリーニング分野においては、特定技能2号になるためには、複数の作業 員を指導しながら従事し、現場を管理する者としての実務経験を2年以上積む必要があります。
特定技能2号になれば、在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も認められるため、外国人労働者にはとても魅力的な在留資格と言えるでしょう。
ビルクリーニング分野の業務内容
ここからは特定技能のビルクリーニング分野で従事できる業務内容について見ていきます。
これについては弊社YouTubeでも解説しておりますので是非ご覧ください。
実際に任せられる業務
特定技能「ビルクリーニング」で従事できる業務については、特定技能ビルクリーニングの運用要領では以下のように定められております。
技能試験により確認された、多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務
また、業務に従事する日本人が通常従事する こととなる関連業務を付随的に従事することも差し支えありません。表にすると以下の通りです。
先述の通り、いわゆるビルクリーニング作業以外にも客室のベッドメイキング作業も従事が可能です。また、関連業務のみを従事することは認められていないのでご注意ください。
特定技能2号においては、上記業務に複数の作業 員を指導しながら従事し、現場を管理する業務のほか、同業務の計画作成、進行管理 その他のマネジメント業務をすることも求められています。
特定技能1号の取得方法
それでは、ビルクリーニング分野の特定技能1号はどのように取得すれば良いのでしょうか。
ここでは、取得要件と取得方法について解説していきます。
ビルクリーニング分野に限らず特定技能1号の取得方法は以下の2パターンがあります。
ただ、②の場合は技能実習と特定技能の業務内容の相関性がないと認められません。
評価試験の合格
ビルクリーニング分野においては、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」に合格をする必要があります。
試験概要は以下の通りです。なお、試験の詳細は運営機関である公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のWEBサイトも併せてご確認ください。
- 試験運営機関:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
- 試験科目:判断試験20分(17問:40点)、作業試験12分(3問:60点)
- 合格基準:判断試験の60%以上、かつ作業試験が60%以上
- 試験実施国:日本、インドネシア、フィリピン、タイ、スリランカ、ミャンマー、カンボジア、ネパール
- 開催頻度:年に2回程度全国の会場で実施(海外試験は不定期)
- 申し込み:国内外ともに申込みはこちら
日本語能力試験は、日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basicの2つの内どちらかを受験し、それぞれ設けられた以下の合格基準に達する必要があります。
- 日本語能力試験:N4以上
- 国際協力基金日本語基礎テスト:A2以上
N4およびA2は、基本的な日本語を理解できるレベルと考えていただいて問題ありません。この他のレベルについては、こちらをご参照ください。
技能実習2号からの移行
特定技能の取得方法には、技能実習2号からの移行のパターンもあります。
これは、技能実習2号良好に修了した外国人は、先にあげた特定技能評価試験、日本語試験の2つの試験を受験することなく移行することが可能です。※ 良好とは、「技能実習計画を2年10ヶ月以上修了」している状態を指します。
ただし、ビルクリーニング以外の分野で技能実習2号を修了しても試験は免除されず、その場合は改めて特定技能評価試験を受験しなければなりません。
技能実習から特定技能への移行に関しては以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
▶【意外な落とし穴?】技能実習から特定技能へ移行するための手続き・注意点は?
ビルクリーニング分野評価試験の詳細
ここからはビルクリーニング分野の特定技能1号評価試験の詳細を見ていきましょう。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験実施要領によると、この試験は、
ビルクリーニング分野における初級の技能者が通常有すべき技能を有することを確認する観点から、ビルクリーニング職種・ビルクリーニング5作業の第2号技能実習修了相当の水準
とされており、この水準を満たすか否かを試験によって判断されます。
具体的には、
場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、作業手順に基づき、自らの判断により、 方法、洗剤および用具を適切に選択して清掃作業を遂行できるレベル
の水準が必要になってきます。
なお、各分野の特定技能評価試験については以下の記事で詳しく解説しておりますので、是非ご覧ください。
▶2024年最新版!特定技能評価試験の申し込み方法、スケジュールなど徹底解説!
受験資格
受験資格は、
- 試験日において、17歳以上
- 日本国内で受験する場合は、在留資格を有するもの
とされております。
国内受験においては、短期滞在などの在留資格でも受験可能です。
試験内容
試験は日本語(漢字にルビあり)による実技試験のみで、課題は判断試験と作業試験(作業1~3)の2つがあります。詳細は以下の通りです。
※判断試験で60%(24点)以上かつ、作業試験で60%(36点)の取得が必要。作業試験は10分の標準時間を超えると減点となり制限時間を超えると失格となる
判断試験は、床面の定期清掃作業(ドライブバフ)、ガラス面の定期洗浄清掃作業、洋式大便器の日常清掃作業の中から17問の出題があります。
例えば以下のようなものです。
作業試験は、床面の定期清掃作業(ドライブバフ)、ガラス面の定期洗浄清掃作業、洋式大便器の日常清掃作業の中から一部の作業を実際に行う試験となっています。
例えば、床面の定期清掃作業で言うと、
- 床面をダストクロス型モップで除塵
- ダストクロスモップを外し、小型ぼうきと文化ちりとりでゴミを回収
- 床面をモップで拭き作業
- 資機材を元の位置に戻す
などの作業を行います。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の詳細や過去問などはこちらからもご確認ください。
試験日程と会場
試験日程については、2024年8月16日現在で確定しているものはありませんが、国内では年2回程度の頻度で実施されています。海外の場合は開催国によって開催頻度はバラバラです。
会場は、
日本国内(北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、徳島、福岡)、インドネシア(ジャカルタ、バリ)、フィリピン、タイ、スリランカ、ミャンマー、カンボジア、ネパール
ですが、上記通り開催国によって試験の有無や頻度が異なるため、全国ビルメンテナンス協会のビルメンWEBにて最新情報を随時ご確認ください。
また、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、国内であれば定期試験を受験できない方向けの出張試験があります。試験会場や資材準備、人数などの要件がありますので、こちらもビルメンWEBよりご確認ください。
日本語試験について
次に、日本語試験について見ていきます。
日本語試験とは、その名の通り、外国人の日本語の能力を測る試験です。
この試験は、「日本語能力試験(JLPT)」もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の2つが存在します。ビルクリーニング分野に限らず、特定技能の取得に際してはどちらの試験を受けても問題ありません。
日本語能力試験
日本語能力試験(JLPT)は、国際交流基金と日本国際教育支援協会が運営しており、年間100万人以上が受験する世界最大規模の日本語試験です。
内容は、言語知識(文字、語彙、文法)・読解・聴解の3つの要素から日本語のコミュニケーション能力をはかるマークシート方式、180点満点のうち点数によって5段階に日本語レベルが分けられ、N1~N5と表現されます。
N1が最も日本語能力が高いレベル、N5が最も低いレベルとされ、特定技能取得ではN4(基本的な日本語を理解できるレベル)以上が必要です。
この試験は、日本だけでなく海外の各都市でも受験が可能で、日本では7月と12月の年2回の開催、海外では都市によって7月または12月のみしか開催されていないなどもありますので、こちらの日本語能力試験/JLPT公式サイト をご確認下さい。
申込方法については、日本では、インターネットでの申込みのみで最初にMyJLPTへの登録が必要です。海外都市の場合は、各都市の実施機関にて確認が必要です。
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、就労を目的として来日する外国人が日常生活でのコミュニケーションに必要な日本語能力を持っているかを判定する試験です。
内容は、文字と語彙・会話と表現・聴解・読解の4つの要素から日本語力をはかる、CBT方式で、250点満点で点数により、A1・A2・B1・B2・C1・C2の6段階に日本語レベルが分けられます。
A1が最も低いレベル、C2が最も高いレベルとされ、特定技能取得ではA2レベル以上が必要です。
こちらの日本語試験も日本国内外での受験が可能で、JLPTと比べても開催頻度が多いのが特徴です。開催日程などは、国際交流基金日本語基礎テスト/JFT-Basic公式サイトにてご確認ください。
申込方法は、国内外どちらもインターネットのみで、いずれにおいてもプロメトリックIDの作成が事前に必要ですので、詳細は併せて上記公式サイトをご確認下さい。
特定技能2号の取得方法
ここまではビルクリーニング分野の特定技能1号取得について見てきましたが、ここでは特定技能2号の取得方法について解説します。
ビルクリーニング分野の特定技能2号を取得するには、
- 「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」もしくは、「ビルクリーニング技能検定1級試験」に合格
- 現場管理の実務経験が2年以上あることの証明
の2つが必要です。
ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験は2024年度では、2024年5月・8月・11月、2025年3月に開催が予定されております。ビルクリーニング技能検定1級試験については、2024年度は8月のみで次回は2025年7月の予定です。現状は、どちらの試験も日本国内のみでの開催予定です。
特定技能2号については以下の弊社YouTubeも併せてご覧ください。
外国人材の採用方法と注意点
ここでは、特定技能ビルクリーニング分野で外国人材を採用する場合の注意点を見ていきましょう。
これはビルクリーニング分野に限らずですが、特定技能取得については、各試験に合格もしくは、技能実習2号を修了していれば、取得の要件は満たしていますが、以下のいずれかに当てはまる場合、在留資格申請で不許可になってしまう可能性が出てきますので、注意が必要です。
- 住民税、国民健康保険料の滞納がある
- 留学中、週28時間以上アルバイトしていた
- 留学中、学校を退学していたり、出席状況が悪い
これらは、元留学生を特定技能へ変更申請する場合です。
留学生は、資格外活動許可を取得することで、週に28時間までアルバイトをすることが可能ですが、それ以上働いてしまうと入管法違反になってしまいます。バレないだろうと思って週28時間以上アルバイトをしている方もいますが、「住民税の課税・納税証明書」から容易に確認可能で、このようにオーバーワークの場合は申請不許可になってしまいます。
その他、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を採用する場合の注意点を以下に記載します。
また、外国人雇用に関する基本から注意点までは以下の記事で詳しく解説していますので是非ご覧ください。
▶外国人雇用の基本!採用方法/メリット/手続き/注意点を徹底解説!
特定技能協議会への加入
特定技能外国人を受け入れた企業は、受け入れから4ヶ月以内に厚生労働省が組織する協議会へ加入しなければなりません。ビルクリーニング分野においては、「ビルクリーニング分野特定技能協議会」に加入する必要があるのです。
この協議会は、制度の適切な運用を図るため、関係機関の連携を強化するために設置されています。
受け入れ企業は、協議会からの調査(特定技能外国人の賃金台帳の閲覧やヒアリング)や各種協力要請に対して、対応しなければなりません。
協議会に加盟していないと、特定技能外国人の受け入れ停止処分となってしまいますので、必ず手続きを行う必要がある点はご注意ください。
加入方法などについては、こちらをご覧ください。
建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録
特定技能ビルクリーニング分野で外国人を採用するためには、「建築物清掃業」もしくは「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受ける必要があります。
この登録を受けるにあたって、物的・人的基準が設けられており、それぞれクリアする必要があります。
登録の手続きは、営業所の所在地を管轄する都道府県生活衛生担当部署に問い合わせると良いでしょう。登録が完了するまでは時間がかかる場合もありますので、特定技能外国人を受け入れる場合は早めの対応を心がけてください。
また、過去に登録を受けていたとしても、有効期限が6年のため期限切れになっていないかの事前確認は必須です。
詳細については、こちらの厚生労働省のWEBサイトをご覧ください。
受け入れ機関の要件を満たす
また、特定技能で外国人を受け入れる場合は、受け入れる企業側が以下の要件を満たす必要があります。
特に、支援体制に関する基準は、直近2年以内に外国人の受け入れ実績や生活支援の担当業務に従事した経験のある従業員がいない場合、満たすことができません。
その場合は、「登録支援機関」という第三者機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用を検討することをおすすめします。
登録支援機関については、以下の記事で詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。
▶【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説」
まとめ
今回は特定技能におけるビルクリーニング分野についてお話してきましたが、いかがでしたか。
先述の通り、ビルクリーニングは今後特定技能外国人受け入れの活性化が期待される分野です。人手不足に悩んでいるビルメンテナンス業の方は是非特定技能外国人の雇用をご検討ください。
また、当社は特定技能人材の紹介だけでなく、登録支援機関としても活動しており、支援計画の策定や支援業務の代行を行っております。
特定技能外国人を含めた外国人労働者の人材紹介、支援業務、入社後の定着、など少しでもご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。