特定技能とは?
特定技能は、2019年4月に設けられた比較的新しい在留資格で、特に人手不足が深刻な分野での外国人労働者の受け入れを目的としています。従来の「技術・人文知識・国際業務」などの従来の就労系在留資格とは異なり、人手不足の解消を目的として設けられた経緯があり、単純労働を含めた職種でも外国人労働者の受け入れを可能としました。特定技能は、単純労働を含む幅広い職種に対応しています。
「特定技能」の概要について知りたい!という方はこちらの記事をご確認ください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
特定技能外国人が受け入れ可能な分野
特定技能によって外国人労働者を受け入れることができる分野は、日本において特に人手不足が過酷とされる以下の産業分野に限定されています。
【特定技能外国人の受け入れ分野】
①介護
④建設
⑤造船・舶用工業
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑫外食業
今回は上記の分野の中から、造船・舶用工業を取り上げてご紹介していきたいと思います。
特定技能における造船・舶用工業分野の概要
まずは特定技能における造船・舶用工業分野の概要について確認しておきましょう。特定技能の「造船・舶用工業」は、2019年4月の出入国管理法の改正により新たに設けられた在留資格であり、特に人手不足の解消を目的としています。この制度により、外国人特定技能人材の採用が可能となり、造船業界における即戦力として期待されています。
造船・舶用工業業界の現状
先程特定技能において外国人労働者を受け入れ可能なのは、人手不足が特に過酷な分野であるとお話しましたが、造船・舶用工業も当然人手不足が過酷な状況となっています。
国土交通省が特定技能制度の設立の際に発行した「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」によると、造船・舶用工業分野における主な職種の2017年度の有効求人倍率は以下のような状況でした。
- 溶接(金属溶接・溶断工):2.5倍
- 塗装(塗装工):4.3倍
- 鉄工(鉄工、製缶工):4.21倍
- 仕上げ(めっき工、金属研磨工):4.41倍
- 機械加工(数値制御金属工作機械工):3.45倍
- 電気機器組み立て(電気工事作業員):2.89倍
このように人手不足は深刻となっており、このままの状態で推移すれば、2023年においては22,000人程度の人手不足が生じるとされているのです。この状態を改善するため、造船・舶用工業の業界においても外国人労働者の受け入れを積極化していくに至ったと言えるでしょう。また、特定技能制度の導入により、過去の技能実習生としての経験を持つ人材が即戦力として活躍できるため、企業はよりスムーズに必要な人材を確保できることが期待されています。特に、技能実習生から特定技能へと移行させるシステムが整備されていることから、今後もこの分野の外国人採用がますます広がるでしょう。
従事できる業務
それでは造船・舶用工業分野において、特定技能外国人が従事できる業務にはどのようなものがあるのでしょうか。「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」によると、具体的な業務として以下の業務が挙げられています。
- 溶接(手溶接、半自動溶接)
- 塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
- 鉄工(構造物鉄工作業)
- 仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
- 機械加工(普通旋盤作業、数値制御旋盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
- 電気機器組み立て(回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業)
また、日本人が通常行うこととなる関連業務にも従事可能です。一方、関連業務のみに従事させることは認められていませんので、あくまで上記を主たる業務として行う必要があります。
さらに、特定技能制度により、造船・舶用工業分野においては即戦力として活躍できる人材が求められるため、特に技能実習生を経験した外国人がスムーズに業務に移行できる環境が整っています。
雇用形態・報酬
造船・舶用工業分野における特定技能の雇用形態と報酬についても、確認しておきたいと思います。雇用形態については、直接雇用かつフルタイム勤務の正社員が原則となります。そのため派遣社員としての受け入れはできません。
また報酬についてですが、同等業務に従事している日本人社員と同等以上の報酬を支払う必要があります。もちろん、その他手当に関しても、日本人と差別なく支給することが求められています。
さらに、特定技能人材の報酬は業界の人手不足を踏まえ、必要な技術や経験に応じた適切な賃金が設定されることが重要です。特に、造船・舶用工業分野では、専門的な技術や知識が必要とされる職種が多く存在するため、報酬水準もそれに見合った額とすることが求められます。また、雇用契約や条件については、労働契約法や関連法令に基づく透明性が求められ、これを守ることで特定技能人材が安心して働く環境が整います。このように、雇用形態や報酬に関する適切な取り組みは、外国人労働者の定着を促進し、業界全体の競争力を高める鍵となります。
雇用できる期間
特定技能には特定技能1号と特定技能2号という在留資格が設けられており、特定技能1号は5年が在留期限の上限となっていますが、特定技能2号は在留期間の通算上限がありません。
造船・舶用工業分野においては特定技能2号が認められているため、一定の条件を満たすことができれば、実質無期限で日本に在留することが可能になります。ただし特定技能2号へ移行するためには、高度な技能を求められる試験に合格しなければならず、誰でも特定技能2号へと移行できるわけではございませんので、ご注意ください。この特定技能2号の制度により、造船・舶用工業の業界では、長期的な人材確保が期待されます。そのため、特定技能1号から2号への移行がスムーズに行えるよう、企業は受け入れ体制を整える必要があります。特定技能2号に移行した場合、技能実習制度から移行した人材に対しても支援を行うことで、持続的な雇用関係を築くことが可能となります。これは業界全体の競争力向上にも寄与するため、非常に重要なステップとなるでしょう。
受け入れ人数
造船・舶用工業分野における特定技能外国人の受け入れ目標としては、2019年から5年間で13,000人となっています。企業ごとの上限人数はありませんが、造船・舶用工業分野全体として13,000人が上限となっています。
上記のグラフを見ると、特定技能「造船・舶用工業」の受け入れ人数は、2022年6月の2,776人に対して2024年6月は8,507人と2年間で4,000人も増加しました。
特定技能制度の導入により、過去に技能実習制度を経てきた人材が即戦力として活躍できるほか、企業側も多様な人材を受け入れることで競争力を向上させることができるメリットがあります。今後、特定技能外国人の受け入れが進むことで、造船・舶用工業の発展や日本国内の労働市場の健全化が図られると考えられます。
特定技能外国人を雇用する際の費用目安
ここまで造船・舶用工業分野に関する概要について確認してきましたが、最後に特定技能外国人を雇用する際の費用目安について確認しておきたいと思います。
特定技能外国人を雇用する場合、日本人社員と同等以上の報酬を支払う必要がある上、以下のような費用も別途掛かってくることが多くなります。
具体的には、雇用契約の締結に伴う法的手続きや、在留資格の取得にかかる手数料、さらに住居の提供にかかる費用、保険や年金の支払い、そして必要な支援を行うための管理費用などが考慮されます。
特定技能外国人を雇用するまでにかかる費用
- 海外から呼び寄せる場合に必要な送り出し機関への手数料
新たに呼び寄せる場合は、送り出し機関を通さなければいけません。 - 人材紹介への手数料
紹介手数料は、年収の◯◯%というところもあれば、単純に1名あたり◯◯円といったケースもございます。 - 在留資格申請に関する委託費用
在留資格「特定技能」を取得するため、出入国管理庁へ申請する必要があります。書類の作成及び申請取次を行政書士法人・登録支援機関に委託する際に発生する費用となります。
特定技能外国人の雇用開始後にかかる費用
- 登録支援機関への支援委託費用
就労開始後に発生する費用です。
特定技能人材への義務的支援を登録支援機関に委託した場合に、1名単位で発生してきます。 - 在留資格更新申請に関する委託費用
在留許可を受けたとしても、1年に1度在留期間更新のため、出入国管理庁へ更新申請する必要があります。
ざっくりとした費用イメージとしては、以下のようになるでしょう。
※ 送り出し機関や人材紹介会社、登録支援機関によって変動します。
各費用イメージ
- 送り出し機関への手数料:20~40万円(海外から呼び寄せる場合)
- 人材紹介会社への手数料:30〜90万円(年収の10〜30% - 理論年収300万円想定)
- 在留資格申請に関する委託費:10~20万円
- 登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円(一人当たり2~3万円/月)
- 在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円
さらに、受け入れ企業に求められる費用は年々変動する可能性があるため、常に最新の情報を取得することが重要です。特定技能外国人を受け入れる際のコストを総合的に考慮し、各種費用をしっかりと予算に組み込むことで、適切な人材を確保し、長期的な雇用関係を築くための基盤が整います。また、送り出し機関や登録支援機関との良好な関係を築くことで、スムーズな受け入れが可能となり、双方にとってメリットの多い協力体制が築けるでしょう。
造船・舶用工業分野における特定技能の在留資格を取得するには
続いて造船・舶用工業分野において、特定技能の在留資格を取得するための条件を解説していきます。
特定技能評価試験をクリアする
特定技能評価試験は技能試験と日本語能力試験の2つの試験で構成されています。
技能試験とは、特定産業分野における知識や技能を有しているかを判断するための試験であり、造船・舶用工業分野における技能試験は、一般財団法人日本海事協会が運営しています。業務に関連する専門的な知識や技術が問われる実技試験であり、受験者は実際の作業を通じて能力を示す必要があります。
という6つの分野に分かれて実施され、それぞれ学科試験と実技試験が設けられています。
特定技能評価試験については、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
▶︎2024年最新版!特定技能評価試験の申し込み方法、スケジュールなど徹底解説!
日本語能力試験は以下の2つの内いずれかを受け、それぞれ設けられた合格基準に達する必要があります。
- 日本語能力試験JLPT
国際交流基金と日本国際教育支援協会が設立した日本語試験であり、特定技能においてはN4以上に合格することが求められます。
詳細は日本語能力試験公式HPをご確認ください。 - 国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basic
国際交流基金が主催する日本語試験で、特定技能の在留資格を取得するには、A2レベル以上に合格する必要があります。
詳細については国際交流基金日本語基礎テスト公式HPを併せてご参照ください。
日本語能力試験は日本での就労や生活を円滑に行うためのコミュニケーション能力を測る試験で、一定の日本語レベルを有することが求められます。
この2つの試験に合格することが、特定技能の在留資格取得の第一歩となるため、外国人労働者にとって事前の準備や学習が非常に重要です。
技能実習2号を良好に修了
もう一つ挙げられる条件が技能実習2号を良好に修了するというものです。
造船・舶用工業分野における技能実習2号を良好に修了していれば、特定技能評価試験は免除となり、在留資格変更許可申請を実施することで、特定技能の在留資格を取得できます。
しかし他分野の技能実習2号を修了していても特定技能評価試験は免除とならず、改めて受験する必要があるという点は留意しておきましょう。
また、技能実習を経て特定技能に移行する際は、実習中に得た技術や知識を活かすことができるため、外国人労働者にとっても非常にスムーズな移行が期待されます。この経歴を持つことで、特定技能者としての就労がより円滑に行えるようになり、日本の造船・舶用業界で即戦力として活躍するチャンスが広がります。
造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れるには
次に造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れる際、企業側に求められる要件などについてご紹介していきます。
受け入れ機関としては、労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していることが求められます。また、過去1年間に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないことや、行方不明者を発生させていないことも重要な条件となります。
受け入れ機関としての基準を満たす
まず必須となるのは受け入れ機関としての基準を満たすことです。
この基準は造船・舶用工業分野に限らず、全ての特定産業分野共通のものとなっており、具体的には以下のような基準が設けられています。
その他、支援体制に関して満たすべき基準や、雇用契約上満たすべき基準などもあり、全ての条件を満たして初めて特定技能外国人の受け入れが可能となるのです。
支援体制に関する基準に関しては、登録支援機関に委託することで基準を満たしたこととみなされますので、もし基準を満たすことができなかった場合は、登録支援機関の活用をご検討ください。
登録支援機関については、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
▶︎【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説
また、特定技能外国人の受け入れに向けた取り組みとして、企業は定期的に出入国在留管理局と連携を取り、法令遵守の状況を確認しながら、透明性のある運用を行うことが重要です。このような取り組みによって、企業は長期的に信頼できる人材を確保し、事業の安定した運営に寄与することができます。
造船・舶用工業分野特有の要件を満たす
上記の受け入れ機関としての基準に加え、造船・舶用工業分野特有の要件も満たす必要があります。
造船・舶用工業分野特有の要件としては、以下の4点が挙げられます。
- 国土交通省が設置する「造船・舶用工業分野特定技能協議会の構成員となること
- 協議会に対し、必要な協力を行うこと
- 国土交通省又はその委託を受けたものが行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと
- 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合、要件①~③を全て満たす登録支援機関に委託すること
造船・舶用工業分野における特定技能外国人の受け入れの流れ
最後に造船・舶用工業分野で特定技能外国人を受け入れる際の流れや必要な書類などについて確認していきましょう。
受け入れまでの流れ
受け入れの流れとしては、基本的に以下のステップを踏むことになります。
ステップ①:人材募集・面接
ステップ②:特定技能雇用契約の締結
ステップ③:1号特定技能支援計画の策定
ステップ④:在留資格認定・変更申請
ステップ⑤:就業開始
ステップ⑥:造船・舶用工業分野特定技能協議会へ加入
ステップ③の1号特定技能支援計画の策定、その計画に基づく支援業務については、先述の要件を満たした登録支援機関への委託が可能となっています。 またステップ⑥については、特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に実施する必要があります。これにより、受け入れ機関は特定技能外国人に対し、必要な支援や情報提供を行うことが求められます。さらに、受け入れの際には、支援計画の内容を具体的に設定し、外国人が安心して働ける環境が整っているか確認することが重要です。特に、言語の壁を克服するための日本語教育や、生活に必要な情報の提供なども計画に組み込むことで、外国人労働者が早期に職場に馴染む手助けとなります。
受け入れに必要な書類
特定技能外国人を受け入れる場合、主に在留資格に関する諸申請と協議会への加入手続きが必要となります。各手続きの詳細が記載されているページをご紹介しておきますので、ご参照ください。
海外から呼び寄せるケース
海外から外国人を呼び寄せる場合は出入国管理局にて在留資格認定証明書交付申請をする必要がございます。
申請では、雇用契約書、支援計画や特定技能の評価試験の合格証明書を提出する必要があります。特に、受け入れ機関がしっかりとした計画を策定し、国土交通省が設置した協議会に参加することによって、申請手続きがよりスムーズに進むことが期待されます。
これらの手続きを適切に行うことで、特定技能外国人が安心して日本で働く基盤が整えられ、業界全体の労働力供給が強化されることにも繋がります。
また、詳しい申請方法や申請書類についてはこちらをご参照ください。
国内に在留している外国人労働者を受け入れるケース
すでに国内に在留している外国人を受け入れる際は、入国管理局にて在留資格変更許可申請をする必要がございます。
また、詳しい申請方法や申請書類についてはこちらをご参照ください。
協議会への加入
海事:造船・舶用工業分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) - 国土交通省
造船・舶用工業分野における人手不足の解消に向けた取り組み
近年、造船・舶用工業分野では深刻な人手不足が課題となっています。この問題の解決に向けて、特定技能制度の導入や外国人労働者の受け入れが促進されています。
これにより、労働力を強化し、業界全体の活性化を図る取り組みが進められています。
まとめ
今回は特定技能における造船・舶用工業分野を取り上げてお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は登録支援機関として活動しており、支援計画策定や実施を代行させていただいております。また特定技能外国人を含めた外国人労働者の人材紹介サービスも行っておりますので、特定技能外国人の雇用に取り組みたい方は、一度お気軽にご相談ください。
特に、今後の受け入れ人数の増加が見込まれている中で、私たちの専門知識と経験を活かし、スムーズな人材の受け入れをお手伝いさせていただきます。