近年、AIなどのさまざまなデジタル技術の進化が著しい一方で、とくにITエンジニア不足が問題となっています。現在にいたっても解消のメドはたっておらず、海外から優秀な外国人エンジニアを採用する企業が増加傾向です。
本記事では、外国人ITエンジニアを採用する際に必要となる在留資格の取得要件から、メリット・デメリット、採用時のポイントと注意点を解説しています。

外国人採用で技術力の高いIT人材を確保できる
少子高齢化の影響で、優秀なエンジニアを国内だけで確保するのは難しくなっています。しかし、海外ではIT教育が充実しており、高度なITスキルをもつ人材が豊富です。
発展途上国ではトップ大学や大学院を卒業しても、母国での就職機会が限られています。先進国で就職を希望する優秀なエンジニアも存在し、日本企業にとって人材を確保しやすい状況といえるでしょう。
外国人ITエンジニアの採用は、エージェント会社を活用することでスムーズに人材確保できます。IT人材不足の解決策として、検討してもよいでしょう。
なお、日本人エンジニアの採用が難しくなっている状況や採用のポイントについては、以下の記事でも詳しく解説されておりますので、ぜひ参考までにご覧ください。
▶︎SESエンジニアの採用は難しい?採用戦略のポイントを解説! | SES業務管理の統合ツール Fairgrit®公式サイト
外国人ITエンジニアを採用するメリット
外国人ITエンジニアを採用するメリットについて解説します。具体的には以下のとおりです。
- 質の高い若手ITエンジニアを確保できる
- グローバルな視点を導入できる
- 最先端の技術をもつ人材を確保できる
- 助成金や補助金を活用できる
質の高い若手ITエンジニアを確保できる
メリットのひとつが、質の高い若いエンジニアを確保できる点です。少子高齢化が急速に進む日本においては、IT人材不足は喫緊の課題となっています。
アジア各国から日本へ就労に訪れる在留外国人は、平均年齢が若い傾向にあります。技人国ビザでもっとも多いベトナムで33.1歳、近年伸びているネパールで27.6歳、インドネシアでは31.5歳です。
アジア圏は自国内のIT需要が高くなく、好条件で就職がしにくい状況があります。若くて優秀なITエンジニアは先進国へ流れやすいことから、日本でも確保しやすいといえます。
グローバルな視点を導入できる
外国人ITエンジニアの採用によって、新たな視点やアイデアを得ることもできます。多国籍であるほど異なる意見や考えが生まれやすく、グローバルな視点を取り入れやすいといえます。
また、会社全体の活性化につながる点も、外国人ITエンジニアを採用するメリットです。複数言語を話せる人材を確保することで、海外進出への可能性が広がります。
異なる文化・価値観をもつ人材が加わることで、コミュニケーションを社内外問わず活性化できるでしょう。
最先端の技術をもつ人材を確保できる
AIを活用した機械学習・VR/AR・ブロックチェーンなど、最先端技術への注目度が高まっています。これらの技術に精通したITエンジニアは海外には多く、優秀な人材を確保できるチャンスがあります。
引き続き、日本ではスキルの高いIT人材が不足している状況です。国内で確保が難しいITエンジニアを、海外人材を採用することで解消できるでしょう。
助成金や補助金を活用できる
外国人ITエンジニアを採用することで、さまざまな助成金・補助金を活用できます。
たとえば、厚生労働省より提供される「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」では、外国人労働者の定着を目的に環境整備をおこなうことで、経費の半分が助成されます。
参考:厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
ほかにも、「ものづくりマイスター・ITマスターによる実技指導」など、IT人材向けの支援もあります。制度を活用することで、採用コストを抑えながら優秀なIT人材を確保しやすくなるでしょう。
参考:厚生労働省 若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)

外国人ITエンジニアを採用するデメリット
外国人ITエンジニアを採用するうえで、いくつかデメリットもあります。具体的には以下のとおりです。
- 言語の壁
- 文化・習慣の違い
- 採用コストが余分にかかる
- 早期離職の可能性がある
言語の壁
言語の問題は、外国人採用のもっとも大きな壁といわれています。高い技術力があっても、語学が伴わなければ意思疎通ができず、業務にも大きな影響をあたえます。
簡易的な業務であれば、翻訳アプリなどで乗り切れるでしょう。しかし、日常的なコミュニケーションが取れないと、社内でも孤立や既存社員への混乱を招くおそれがあります。
外国人ITエンジニアを採用する場合は、社内で言語学習の機会を設けるなど、サポート体制を整えることも重要です。
文化・習慣の違い
仕事に対する考え・取り組み方・ルールは、国によって異なります。外国人を採用する際は、文化・習慣の理解を深めましょう。日本では当たり前の文化・習慣であっても、外国人には疑問や不安につながることがあります。
- 給与の支払い(月末締め・月末払い)
- 名刺交換
- メールの挨拶文
- 書類の捺印
日本の文化・慣習は押し付けず、理解をうながすことが大切です。必要なものは説明をし、丁寧なコミュニケーションをはかりましょう。
採用コストが余分にかかる
外国人の採用は、日本人を採用するよりもコストがかかります。たとえば、海外人材エージェントへの利用料や、在留資格の取得手続きが必要です。海外在住のITエンジニアを採用する場合は、渡航費や日本での生活費などもかかります。
また、社内体制を整えるうえでのコストも加味しておかなければなりません。海外のIT人材を採用する場合は、国内人材の採用よりもコストがかかるイメージをもちましょう。
早期離職の可能性がある
諸外国は、日本に比べて転職サイクルが早い傾向です。リクルートワークス研究所の調査によると、転職経験者のうち、3年未満で転職者の割合が日本は5割強である一方で、タイ・インドネシア・マレーシアなどのアジア圏は約7〜8割と高くあります。
参考:Global Career Survey:分析報告書「アジアの『働く』を解析する」
外国人ITエンジニアが就職した場合においても、言語・文化の壁で職場に馴染めず、早期離職する可能性があります。採用する際は、海外人材も定着しやすい環境を目指しましょう。
外国人ITエンジニアの採用手続き・流れ
外国人ITエンジニアの採用手続きには手順があります。具体的な流れは以下のとおりです。
- 求める人材のイメージを決める
- 求人募集をおこなう
- 選考プロセスを進める
- 内定・受け入れ準備
- 就業開始と各種届出の提出
1.求める人材のイメージを決める
まずは、求めるスキルや業務を具体化しましょう。人物像が定まっていないと、人材エージェント企業から紹介を受けた際に、ブレが生じミスマッチが起こる可能性があります。
どのような人物像を採用したいか、スキルや業務は具体的になにか、言語レベルはどのくらい必要なのかなど、できる限り明確に設定しましょう。
2.求人募集をおこなう
次に、求人募集をおこなう準備をしましょう。主な募集方法は人材紹介会社の利用、もしくは既存社員・知人から紹介をもらうリファラル採用の2パターンです。
人材紹介会社には、サービス形態がふたつあります。求職者と企業の条件をマッチングさせる「一般紹介型」と、紹介会社の保有データから企業に合う人材を引きあわせる「サーチ型」に分かれます。
3.選考プロセスを進める
続いて、選考プロセスを進めましょう。在留資格から言語能力や業務スキルが備わっているかを確認します。能力と業務の相性・労働条件・人柄なども、あわせてチェックしましょう。
カルチャーフィットについては、国籍・文化の違いを踏まえたうえで、職場に馴染めそうかを見極めましょう。
4.内定・受け入れ準備
採用が決まれば、雇用契約書の締結など採用に向けた手続きを進めましょう。雇用契約書を用意する際は、相手の語学力にあわせて母国語で記載された書類を用意できるとよいでしょう。
すでに国内在住の人材であれば、必要に応じて在留資格(就労ビザ)の変更手続きや更新手続きをおこないます。海外からの人材であれば、在留資格取得の申請手続きが必要です。
就業可能な在留資格については、以下の3つに区分されます。
- 技術・人文知識・国際業務
- 高度専門職1号ロ
- 身分系在留資格
技術・人文知識・国際業務
「技術・人文知識・国際業務」は、外国人ITエンジニアにもっとも多い在留資格です。エンジニア・オフィスワーカーとして働く場合に必要になります。ITエンジニアにおいては、「技術」の分野が該当します。従事できる職種例は以下のとおりです。
- 機電系エンジニア(機械設計や回路設計などに従事)
- システムエンジニア(アプリケーションやシステムなどを開発)
- プログラマー
- 情報セキュリティエンジニア など
また、在留資格の主な取得要件に学歴・実務経験・報酬などがあります。従事予定の業務に関連するかではない点に注意しましょう。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の詳細については「技術・人文知識・国際業務とは?技人国ビザの職種一覧や許可/不許可事例も!」の記事にて解説しておりますので是非ご覧ください。
高度専門職1号ロ
高度専門職とは、高度なスキル・知識を有する外国人労働者が取得できる在留資格です。高度専門職は1号・2号に分けられ、活動に応じて3種(イ、ロ、ハ)に区分されます。
ITエンジニアの場合は、高度専門職1号ロに該当し、営業・マーケティングといった業務にも従事できます。
在留資格「高度専門職」の詳細については「【高度専門職とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説」の記事にて解説しておりますので是非ご覧ください。
身分系在留資格
身分系の在留資格とは、「日本人の配偶者等」・「永住者」・「永住者の配偶者等」・「定住者」であることを示す在留資格です。就労制限がなく、どのような業務にも就くことができます。
日本での連続在留期間・就労期間・年収・素行など、定められた条件を満たすことで取得可能です。
在留資格「永住者」については「日本で永住者になるには?在留資格「永住権」とは何か、帰化との違いや取得方法・条件を解説!」の記事で詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。
5.就業開始と各種届出の提出
最後に、就業開始にあたって各種書類を提出します。採用人材がスムーズに業務へ取りかかれるように、サポートも適宜おこないましょう。
一般的な採用と同様に、雇用保険の取得や社会保険の手続きが必要です。外国人労働者の場合は、「外国人雇用状況の届出」も提出しましょう。
外国人ITエンジニアを採用するポイント
外国人ITエンジニアを採用する際のポイントを5つ解説します。採用企業・求職者の双方が満足できる雇用体制を目指しましょう。
- 文化や価値観の違いに配慮する
- 業務適性・語学力を見極める
- 学歴と職歴の関連性を確認する
- 受け入れ体制を整備する
文化や価値観の違いに配慮する
外国人労働者は、日本と異なる文化・習慣のなかで育っています。価値観の違いに理解がないと、思いがけないトラブルになる可能性があります。考えを尊重し、違いに寄り添う姿勢を心がけましょう。
日本語が流暢でない外国人労働者もいます。業務を説明する際は、話す速度を抑えたり、身振り・手振りをくわえるなど、コミュニケーションも工夫しましょう。
業務適性は備わっているか見る
言語能力・カルチャーフィットにくわえて、業務適性を確認することも重要です。言語能力を優先した結果、業務内容とのミスマッチが生じ、早期離職につながるケースがあります。実務経験・技術スキルが自社の業務に適するか、正しく見極めましょう。
また、認定試験の結果がよい外国人求職者のなかには、会話レベルが低いことがあります。日本語能力を確認する際は、面接時などに対話形式でも確認できる機会を設けましょう。
学歴と職歴の関連性を確認する
外国人を採用する場合、学歴と職歴に関連性があることが望ましいです。理由は以下のとおりです。
- 業務遂行能力を見極められる
- 在留資格の申請時の採用理由しやすい
在留資格を申請する際は、採用理由を入国管理局に説明します。学歴・職歴に関連する採用理由であれば、在留資格の取得がスムーズでしょう。
受け入れ体制を整備する
ITエンジニアに限らず、外国人労働者を受け入れるには、公的な手続きや社内体制の構築など、さまざまな準備が必要です。受け入れ後も、サポートをおこなう必要もあるでしょう。
また、外国人雇用は、日本人と異なる準備や体制構築が必要です。たとえば、在留資格申請などの各種届出や入社前の事前説明、日本での生活面のサポートなどもできるとよいでしょう。
外国人ITエンジニアを採用する際の注意点
外国人ITエンジニアを採用する際は、以下に注意しましょう。次章より詳しく解説します。
- 在留資格の確認をおこなう
- 兵役の有無を確認する
- 同一労働・同一賃金を守る
- 労働条件や業務内容を丁寧に説明する
- レイシャルハラスメントに注意する
在留資格の確認をおこなう
外国人求職者の在留資格をしっかり確認しましょう。内容によっては就労できなかったり、制限がある場合があります。
また、違反した状態で就業を続けると、不法就労・不法滞在によって罰せられる可能性があります。在留資格の確認に不安がある場合は、人材紹介会社に支援を依頼しましょう。
在留資格については「在留資格ってなに?ビザとの違いや取得方法、29種類まとめて解説!」の参考記事もぜひ合わせてご覧ください。
兵役の有無を確認する
国籍によっては、兵役が義務付けられている場合があります。採用する際は、兵役の有無を確認しましょう。
入社後に兵役となることが発覚すると、長期休職や早期離職につながります。書類選考の段階で、兵役が必要な国籍かをチェックし、兵役がある場合は期間が終了しているかも確認しましょう。
同一労働・同一賃金を守る
外国人労働者も日本人と同様に、「同一労働・同一賃金」で雇用することが法律で決められています。雇用形態に関係なく業務内容が同じであれば、労働者に対しての賃金も同じ金額を支払うとする制度です。
外国人のみ低賃金で採用する行為は、違反となります。注意しましょう。
労働条件や業務内容を丁寧に説明する
労働条件や業務内容を丁寧に説明し、理解をうながしましょう。理解せぬまま、曖昧にしておくことはトラブルの原因です。
状況に応じて、労働条件明示書・雇用契約書・就業規則などの必要書類は、母国語で作成しましょう。
レイシャルハラスメントに注意する
レイシャルハラスメントとは、人種や国籍、民族といった違いを理由に相手を侮辱し差別する行為です。外国人だからという理由で業務内容を変えたり、不当な扱いをしてはいけません。
こうした問題は、事前に社内に情報を周知したり、研修等を実施したりして防止に努めましょう。またハラスメント窓口を設置し、周知しておくことも有効です。
外国人ITエンジニアへ採用アプローチする方法
外国人ITエンジニアの採用方法は2つあります。それぞれ以下より解説します。
- 外国人向けエージェントの活用
- リファラルによる採用
外国人向けエージェントの利用
「外国人向けエージェント」とは、企業と外国人ITエンジニアの間に入って採用をサポートする事業者を指します。活用するメリットは、採用工数が削減できることや、費用が成果報酬型であることです。
外国人エンジニアの募集対応は、すべて人材紹介サービス会社が担います。厳選された有望な候補者を紹介してもらえるため、応募から書類選考にかかる工数を大幅に削減できます。
また、成果報酬型であるため、採用が決まらない限りは費用の支払いは発生しません。くわえて、在留資格手続きの補助がある企業もあります。外国人ITエンジニアの採用がはじめての場合は、活用してもよいでしょう。
リファラルによる採用
リファラル採用とは、自社の社員などに求職者を紹介してもらう採用方法です。自社にすでに外国人ITエンジニアがいる場合は、知り合いに働きたい人がいないか聞いてみましょう。
もし、社内に外国人ITエンジニアがいない場合は、全社員に向けてヒアリングをおこなうこともひとつです。
海外ITエンジニアに目を向けて労働力不足を解消しよう
海外ITエンジニアの採用は、人材不足の解消だけでなく、企業にとって多くのメリットがあります。しかし、採用の際は入社後の意思疎通や在留資格の確認など留意点もあります。文化・習慣の違いに配慮し、適切な採用体制を構築しましょう。
弊社は、幅広い国籍の外国人材を紹介可能です。ITエンジニア職においても、数多くの実績がございます。ご紹介のほかにも、在留申請や受け入れ体制構築なども支援しております。お気軽にお問い合わせください。
