近年、AIなどの様々なデジタル技術の進化が著しい一方で、IT人材、特にエンジニア不足が問題となっています。
経済産業省の報告書によるとIT需要構造の変化によりIT人材が不足していることが明らかになっており、日本国内でなく、海外から優秀な外国人エンジニアを採用する企業も増えております。
この記事では、外国人エンジニアの採用について、メリットや注意点、具体的なビザ(在留資格)の種類や採用方法などを中心に紹介していきます。
外国人エンジニアを採用する理由
昨今では、外国人エンジニアを採用する企業が増えてきております。
海外現地の日系企業が現地の外国籍エンジニアを雇用するだけではなく、日本国内の企業が外国籍エンジニアを採用することも急増しているのです。
このように、なぜ外国人エンジニアを採用する企業が増えているのか、について見ていきましょう。
日本におけるITエンジニアの需要増加
現在、日本におけるITエンジニアをはじめとするIT人材の需要は増加傾向にある一方、日本のIT人材は減少しており、人材不足が深刻化する可能性があります。
経済産業省のIT人材需給に関する調査の報告書(みずほ情報総研株式会社が委託調査)によると、2030年でのIT人材の需給ギャップは以下の通りとされています。
需要の伸び率を3つのパターンで分けていますが、2030年時点でのIT人材不足は、約16万~79万人とされています。
このように、日本におけるIT人材需要の増加による人材確保が困難になってきており、国内人材だけでなく外国人のITエンジニアを採用する企業が増えてきているのです。
以下は、出入国在留管理庁が公表しているデータをもとに、当社でエンジニア系職種で働くために必要な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもつ外国人数をグラフにしたものです。
2021年12月で少し前年より減少はあったものの、ITエンジニア職種で最も一般的な技人国ビザの外国人は4年半で約12万人も増えていることが分かります。
質の高いIT人材の確保
IT人材の不足からこれまで通りに国内で優秀なエンジニアを確保するのは難しいですが、IT教育が充実している他国の人材はまだまだ質の高いIT人材が日本国内よりも確保がしやすいです。
海外現地でトップの大学や大学院を卒業しても、なかなか母国でエンジニアとしての働き口が少なく競争率が高くなってしまうため、環境や文化、報酬などの観点から先進国でエンジニアをする選択をされる外国人が増えているのは事実です。
そのため、人材紹介会社などを利用すれば、比較的容易に優秀な外国人エンジニアを採用できるのです。
外国人エンジニア採用のメリット
ここでは外国人エンジニアを採用するメリットを見ていきます。
質の高い若手ITエンジニアの確保
重複しますが、まず大きなメリットは質の高い若いエンジニアが確保できる点です。
周知の通り、少子高齢化が急速に進んでいる日本においては、2024年の平均年齢が49.9歳(CIA The World Factbookより)と、世界で第3位の高齢国で、世界平均の30.6歳と比べてもその高さが分かります。
一方で、日本に就労にくるアジア各国の平均年齢は若く、技人国ビザで最も多いベトナムは33.1歳、近年伸びているネパールやインドネシアは、それぞれ27.6歳、31.5歳と非常に若いことが分かります。
2023年12月末時点で日本に在留している外国人で見ても、20代が全体の約32%と最も多く、アジア各国の若い人材が母国ではなく環境や条件の良い日本に働きにきているのです。
また、先述の通り、IT教育を受け母国の大学や大学院を卒業しても、自国内では先進国ほどIT人材の需要が高まっておらずエンジニアとしての働き口が少ないため、優秀で若いエンジニアは先進国に流れる傾向もあり、結果として日本でも質の高い若い外国人エンジニアを確保しやすいのです。
グローバルな視点の導入
外国人エンジニアを採用することで、これまで日本人にはなかった新しい視点やアイデアを得られることもメリットです。
より多国籍であればあるほど、環境や文化などの違いから、様々な意見や考えが生まれることでしょう。
また、英語が母国語もしくは一般的に話せる方が多いなど、日本人と比べても英語
が堪能な人材が多いのもメリットと言えるでしょう。
会社の国際化と活性化
視点やアイディアなど商品開発に関わる点だけでなく、会社全体のグローバル化と活性化につながるのもメリットです。
英語をはじめ複数言語を話せる人材が多く在籍することで、海外進出などの可能性も広がりますし、海外進出の際に現地責任者を任せたり、外国人エンジニアの母国での独立を支援し、提携したりすることで、スムーズに海外展開に取り組めるでしょう。
また、特にIT企業や建築の設計事務所(CAD等を活用した図面制作企業)では、東南アジア等の国外にオフショア開発拠点を設ける事例も近年増えてきています。そういった際に、日本の本社に日本語・文化に精通した外国人社員が在籍していることで、現地国との間のコミュニケーションやマネジメントを円滑に進めることができるようにもなるでしょう。
外国人エンジニアを採用する際の注意点
メリットの一方で、外国人エンジニアを採用する際の注意しなくてはならない点がいくつかあります。
特に在留資格には注意が必要で、在留資格毎に就労できる業務が決まっているため、エンジニアとして就労できる在留資格も決まっています。
その他の注意点と併せて以下に見てきましょう。
受け入れ体制の整備
エンジニアに限らず、外国人労働者を受け入れるには、公的な手続きから社内体制の構築まで、様々な事前準備が必要となってきます。また、受け入れ後に関しても、適切なサポートを適宜実施していく必要があります。
そのため、外国人労働者を雇用する場合、日本人を雇用するのとはまた違った観点からの準備が必要となる点は、しっかりと認識し社内で体制整備をしておきましょう。
具体的には、在留資格申請などの各種届出に関することや、入社前の事前説明、入社後の業務に対する教育・マネジメント体制の整備などは最低限必要で、できる限り日本での生活面のサポートなどもできる体制を整えられると良いでしょう。
文化・価値観の違いに注意
外国人労働者は、日本人とは異なる文化や習慣のなかで育ってきているため、価値観の違いなどからすべてを日本に合わせるのは難しいでしょう。
そのため、異文化や価値観の違いに対する理解がないと、思いがけないところでトラブルになってしまうことも考えられます。
相違点が当然あることをきちんと理解し、コミュニケーションを図っていくことが大切です。
また、文化や価値観以外にも言語の壁は大きいです。特に日本語は敬語や、同じ言葉でも様々な言い回しがあり、外国人は苦労するでしょう。そのため日本語が流暢ではない外国人労働者には、
- 簡単な言葉に言い換える
- 話す速度をゆっくり簡潔に
- 身振り手振りで伝える
など、コミュニケーションには気を遣ってあげるようにしましょう。
外国人社員とのコミュニケーションの取り方についての詳細については、弊社YouTubeでも解説しておりますので是非ご覧ください。
ビザ取得と更新の手続き
外国人エンジニアは、一般的には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当します。さらに、学歴・職歴・年収等に基づく「ポイント制」による評価により高度人材と認められる場合には 「高度専門職1号ロ」の在留資格でも就労が可能です。
これらの在留資格の場合、在留資格申請や更新は企業側から行う必要があるため、それらの各種申請をサポートできる体制は整える必要があるのでご注意ください。
外国人エンジニアのビザ申請について
外国人がエンジニアとして就労可能なビザ(在留資格)は、「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職1号ロ」「永住者・特別永住者・定住者などの身分系在留資格」のいずれかです。
それぞれについて、以下に見ていきましょう。
「技術・人文知識・国際業務」
外国人エンジニアで最も多い在留資格は「技術・人文知識・国際業務」です。この在留資格は、エンジニアやオフィスワーカーとして働く場合に必要な在留資格で、一つの在留資格でありながら、「技術」「人文知識」「国際業務」という3つの異なる分野での就労予定者を対象としています。
エンジニアにおいては「技術」の分野に該当します。
技術分野での従事可能職種の具体例をあげると以下の通りです。
機械設計や回路設計などに従事する機電系エンジニア、アプリケーションやシステムなどを開発するシステムエンジニア、プログラマー、情報セキュリティエンジニア、、、など
また、この在留資格の主な取得要件は、学歴・職歴が従事予定業務と関連があるかの学歴要件や実務経験要件、報酬要件などがあります。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の詳細については以下の記事にて解説しておりますので是非ご覧ください。
▶技術・人文知識・国際業務とは?技人国ビザの職種一覧や許可/不許可事例も!
高度専門職1号ロ
高度専門職とは、高度なスキルや知識を有する外国人労働者が取得することができる在留資格です。
高度専門職は1号と2号がありますが、1号においては、その活動に応じた3つの種類(イ、ロ、ハ)が存在し、より優遇された高度専門職2号が設けられています。
エンジニアは高度専門職1号ロに該当し、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動」のための在留資格とされており、技人国ビザにおける「技術」や「人文知識」に相当する活動と重複しており、エンジニアや営業、マーケティングといった業務に従事できます。
また、この高度専門職の取得要件には、高度人材ポイント制度というものがあります。
これは、学歴・職歴・年収・年齢などの様々な項目による加点方式のポイント制度で、このポイントの合計が70点以上に達した場合、高度専門職1号の在留資格が取得できます。
在留資格「高度専門職」の詳細については以下の記事にて解説しておりますので是非ご覧ください。
身分系在留資格
身分系の在留資格とは、「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」の在留資格を指します。
これらの在留資格を持っている外国人は就労するにあたって制限がなく、どのような業務にも就くことができます。
身分に準じて与えられる在留資格で、取得要件はその身分を満たすか否かですが、「永住者」のみ日本での連続在留期間、就労期間、年収要件、素行要件などを満たすことで取得が可能です。
在留資格「永住者」については以下の記事で詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。
▶日本で永住者になるには?在留資格「永住権」とは何か、帰化との違いや取得方法・条件を解説!
外国人ITエンジニアの採用方法と企業のアプローチ
最後に、外国人ITエンジニアの採用方法について有効な2つを見ていきましょう。
外国人向けエージェントの利用
まず一つ目にご紹介する方法は「外国人向けエージェントの利用」です。
簡単に言うと、外国人専門の人材紹介サービスで、企業と外国人エンジニアの間に入り、適切なマッチングをサポートしてくれます。
この利点は「採用工数が削減できること」と「費用が成果報酬型」であることでしょう。外国人エンジニアの募集対応は全て人材紹介サービス会社が実施する上、有望な候補者を厳選して企業に紹介してくれるため、応募から書類選考に係る工数を大幅に削減できます。
また成果報酬型であるため、採用が決まらない限り一切費用を払う必要がなく、無駄なコストは省くことができるでしょう。
また、これらの利点に加え、在留資格手続きなどのサポートを行ってくれる会社もあり、初めて外国人エンジニアの採用に取り組むのであれば、人材紹介サービスの活用がオススメです。
弊社はミャンマー・ベトナム・ネパール・インドネシア・台湾・韓国…と幅広い国籍の人材紹介が可能です。もし、外国人エンジニアの採用をご検討であれば是非弊社にご相談ください。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員などに求職者を紹介してもらう採用方法のことを指します。
自社に既に外国人エンジニアがいるのであれば、その外国人エンジニアに「知り合いに働きたいという人はいないか」を聞いてみましょう。
またエンジニアに限らず外国人労働者は、母国を同じくする人同士でコミュニティを形成していることが多く、そういったコミュニティを利用して求職者を探すことはとても有効です。
もし社内に外国人エンジニアがいないのであれば、全社員に対して「知り合いに該当しそうな人材がいないか」を尋ねてみるのも一つでしょう。
外国人のリファラル採用については、以下の記事でも詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
▶︎【外国人労働者のリファラル採用の基本】メリットやポイント、注意点などを解説
まとめ
今回は外国人エンジニアの職種や採用方法などをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は、幅広い国籍の外国人材の紹介が可能で、エンジニア職種においても数多くの実績がございます。
さらに、紹介以外にも在留申請や受け入れ体制構築の支援などもしておりますので、ご興味ありましたら一度お気軽にお問い合わせください。