この記事は「特定技能制度においてミャンマー人を採用したい」、「ミャンマー人の特徴や採用する上での注意点を知りたい」という方に向けて、特定技能におけるミャンマー人の受け入れの流れや注意点、採用に掛かる費用などを解説していきます。特定技能におけるミャンマー人の採用を検討している方は、是非ご一読ください。
また、弊社が運営するYouTubeチャンネル「ぐろーばる採用TV」では、ミャンマー人社員に聞いた日本で働くミャンマー人の特徴について解説しておりますので是非こちらもご覧ください。
日本に在留するミャンマー人の人数はどうなっている?
まずは外国人労働者のうち、どのくらいミャンマー人が日本に在留しているのか、その割合について確認してみましょう。

最新の集計によると、2024年6月末の在留外国人は3,588,956名でした。そのうち、ミャンマー人は110,306名と全体の3.1%を占めており、8番目に在留者数が多くなっています。
一方、在留資格「特定技能」に絞った際にミャンマー人が何名在留しているは以下のデータをご覧ください。

こちらも2024年6月末時点での特定技能外国人の在留者数になりますが、全体で251,594名に対し、ミャンマー人は19,058名と全体の約7%を占めております。前年2023年6月末時点では、8,016名しかおらず、全体に占める割合についても約4%でしたので、約2倍近く増加していることが伺えます。
また、分野別で見ると介護分野が最も多くなっており、外食・食品製造と続いています。後ほど解説しますが、ミャンマー現地では特定技能評価試験が5職種しか開催されていないため、受け入れ分野ごとにばらつきが生じています。
特定技能制度の基本情報については「在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
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ミャンマー現地情勢(クーデター)の影響で来日者が急増中
ミャンマー人の来日が急増している背景には、ミャンマー国内の情勢悪化があります。
ミャンマーは大統領を元首とする共和制国家でしたが、2021年のミャンマークーデターにより軍事政権となり、その結果、ビジネスや人の移動が制限されました。
それにより、ミャンマーに進出していた外資系企業の撤退なども相次ぎ、失業率の向上や大卒者の就職難、大学中退者の急増などに繋がっています。
その結果、現地で大学進学を考えていた優秀な若者たち等が国外に流れており、特定技能で日本に来日するケースも増えているのです。
徴兵令によって男性の出国が停止に?
日本に来日するケースが増えている一方で、ミャンマー人を採用する際には、何点か注意しないといけない事項があります。
まず、徴兵制の兼ね合いで、ミャンマー現地の18歳〜35歳の男性については、就労目的での国外出国が禁止されています。
元々、23歳〜31歳の男性が対象となっていましたが、2025年に入ってから年齢層が拡大されました。実際に弊社が対応していた20歳のミャンマー人男性についても、日本及び現地国における全ての出国手続きが完了していたにも関わらず、空港の出国ゲートで止められてしまうという事態も発生しています。
こうした状況は当面続く見通しのため、新たにミャンマー現地から採用を検討されている企業様はご注意ください。
ミャンマー人のパスポート更新に問題がある?
2023年末、ミャンマー現地の軍事政権が国外在住のミャンマー人から税金を徴収するという政策を発表しました。
月収額に応じて税率が変わり、月収20万円以上の方は2%、最低納税額は月1,000円との報道もあります。
納税を怠っている場合は、パスポートの更新が受け付けられなくなる等の対応が取られる可能性があります。
参考:ミャンマー在外国民の課税問題から見える『責任あるビジネス』の実践と対話の重要性
特定活動を利用した失踪は改善された?
ミャンマー本国の情勢を踏まえ、ミャンマー人への緊急避難措置が出入国在留管理庁から実施されております。
何らかの理由で在留期限を迎えたものの、本国への帰国を望まない方については、一定の条件の下、「特定活動」という在留資格を付与し、日本に在留継続できる救済措置となっております。
ところが、ミャンマー人の対象者への特定活動の在留資格認定は比較的寛容な審査になっていたことからも、技能実習1号で来日し、途中当該「特定活動」を申請すれば在留許可がすぐ認められるという、誤用・濫用が頻発。
結果として、来日・失踪し、すぐに転職を繰り返すというイメージが一部の技能実習受け入れ企業で蔓延し、ミャンマー人採用を控える企業も続出しておりました。

そういった背景から、2024年10月1日、緊急避難措置の「特定活動」の運用方針が変更になっています。
それまでは技能実習中でも変更できていましたが、技能実習期間中については、特定活動への変更を認めない形へ。結果として、誤用・濫用の件数は減ってきている印象です。
そのため、「ミャンマー人=すぐ失踪・転職」というイメージは、過去の話としてご認識いただければと思います。
ミャンマーの現状については、弊社運営のYouTubeチャンネル「ぐろーばる採用TV」においても、現地で日本語学校を経営する大樹日本語学校加藤様をお招きして詳しくお伺いしています。ぜひ併せてご覧ください。
特定技能制度でミャンマー人を採用するメリット
在留資格「特定技能」を持つミャンマー人を採用するメリットについて見ていきましょう。
①平均年齢が若く学力が高い
ミャンマー人の平均年齢28.2歳(2019年中間年人口調査)と日本48.6歳と比べても非常に若いです。また、0~14歳の割合が27.2%と多く、65歳以上の高齢人口は6.4%と少ないため、今後も若年層の労働力の増加が期待されます。
その一方で、国内の内戦等の影響で、大学に進学したのにも関わらず学校に通えない若者が増えています。彼らは大学を中退せざるを得なく、中退して海外に行くケースが多いです。
同様に大学を卒業した優秀な層も国内情勢悪化を鑑みて海外で就職先を見つけるケースも多く、結果的に若くて学力が高いミャンマー人が日本で増えているのです。
②就労意欲が高い
ミャンマー人は比較的勤勉な特徴があります。
また、学生たちは自身の進路や稼ぎの可能性を広げるために、高校卒業時に行われる「セーダン試験」と呼ばれる試験で高得点を目指し勉学に励みます。
しかし、ミャンマーは農業国でもあり、さらに前述の通りの国内情勢悪化から、若い学生のなかで国外で働くという選択肢も身近になっています。
学力の高い若者は、日本をはじめとする賃金の高い海外で働きたいという高い就労意欲をもっているのです。
③介護職・外食業を希望する人材が多数
先述の通り、特定技能のミャンマー人に最も人気な分野は、介護・外食分野です。
ミャンマーは約9割が仏教徒とされており、仏教の教えとして「他人のために重労働を行うことで徳を積む事ができる」という考え方があるため、自ら進んで介護や外食、宿泊などの直接的に他人のためになる職種を望む傾向があるのです。
加えて、現地国における試験開催分野・頻度についても、介護・外食が比較的多いため、こういった業種の企業は優秀なミャンマー人の採用を比較的円滑に実施できると言えるでしょう。
④仏教徒が90%を占めている
先述の通り、ミャンマー人は90%近くが仏教徒で占められています。
そのため、日本文化圏とも親和性が高く、宗教を理由として食事の制限やお祈り等は特に気にする必要がありません。
そういった理由からも、介護・飲食業界での就労者数が増えている一つの要因になっていると言えるでしょう。
弊社運営のYouTubeチャンネル「ぐろーばる採用TV」では、実際に日本で働くミャンマー人へのインタビュー動画を公開していますので、ぜひ併せてご覧ください。
特定技能制度でミャンマー人を採用するデメリット
一方で、デメリットも見ていきましょう。
①スマートカード(海外労働許可証:OWIC)の取得等の申請に時間がかかる
まずひとつは、他の国と比べて申請書類が多く時間がかかることです。
例えば、受け入れ企業はミャンマー政府認定の送り出し機関を通じて、ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)の承認・許可を取る必要があります。
また、ミャンマー人が日本で就労する場合、日本での在留資格認定を受けると同時に、ミャンマー出国前に海外労働身分証明カード(OWIC)と呼ばれるスマートカードをMOLIPに申請・発行をしてもらう必要があります。スマートカードは全てのミャンマー人が国外就労をする際に必要なものです。
このスマートカードは、発行に2週間から数ヶ月を要すると言われています。
在留資格認定証明書の有効期限が3ヶ月なので、在留資格認定証明書が発行されたミャンマー人は3ヶ月以内に来日しなくてはなりませんが、スマートカードの発行手続きを事前に行っていなかった場合、在留資格認定証明書の有効期限が切れてしまう可能性もあるのです。
こちらの詳細については、後ほど、採用までの流れの部分でも詳しく解説します。
②送り出し機関を必ず通す必要がある
特定技能で現地からミャンマーを受け入れるには、ミャンマーの制度上、ミャンマー政府から認定を受けた現地の送り出し機関を通じて、人材紹介や雇用契約の締結を実施する必要があります。
ミャンマー政府が認定している送り出し機関については、出入国在留管理庁|ミャンマーに関する情報の「ミャンマーの送り出し機関(PDF)」(英語表記)から確認ができます。
③軍事政権で一定年齢の男性が出国禁止に
繰り返しになりますが、直近で外国での就労を希望するミャンマー人男性の渡航許可証の発行が一時的に停止されています。
また、2024年2月には国民の強制徴兵を可能とする人民兵役法を施行しており、徴兵の対象は18~35歳の男性と、18〜27歳の女性とされました。
そのため、ミャンマー国内から特定技能外国人を受け入れる場合は、女性の雇用が今はオススメです。
④国外試験を実施していない業種での採用が難しい
こちらも既出にはなりますが、ミャンマーでは実施されている試験が以下の5職種に制限されています。
- 介護
- 外食
- 農業
- 建設
- 宿泊
さらに、建設業と農業は受験者数が少なく、特に建設業に至っては合格率もそこまで高くありません。宿泊業については、受け入れを希望する企業の求人が少ない(在留者数の統計データから、宿泊業界全体として特定技能の活用が進んでいません)ため、試験に合格したとしても日本へ行ける可能性はかなり低いでしょう。
そのため、ミャンマー人を国外から呼び寄せる場合は、基本的に「介護」や「外食」の合格者が中心となるでしょう(他の職種と比べると、試験の受験者数や合格者数の桁が違います)。当該2つの分野以外の企業は、他の国籍者の雇用を検討した方が、多数の応募者数を確保できますので、ご留意ください。

特定技能でミャンマー人を採用する際にかかる費用
ここでは、特定技能でミャンマー人を採用する際にかかる費用について見ていきます。
かかる費用は大きく分けると以下の通りです。

教育・訓練費用
特定技能外国人を雇用する際には、日本語学習の支援が義務とされており、それらの費用は受け入れ企業側が負担します。特定技能外国人からこの費用を徴収することは出来ません。
渡航費用
ミャンマーからのフライト料金などの渡航にかかる費用です。この費用に関しては、本人に自費負担をしてもらうことも可能ですが、自費負担の場合、求人に応募が集まらないこともあります。良い人材を採用したい場合は、できる限り受け入れ企業が負担しましょう。
送り出し機関への手数料
ミャンマー国内から呼び寄せる際、送り出し機関を通した採用が必須で、この場合は送り出し機関への手数料が発生します。
この手数料は、ミャンマーの政府の発表だと、上限が1500米ドルと定められています。
基本的には、外国人本人が支払う手数料とされていますが、ミャンマーの経済状況を考慮すると受け入れ企業が支払う方が良いでしょう。
その他、特定技能外国人を採用する際に発生する費用については「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
特定技能でミャンマー人を採用するまでの流れ
ここからは特定技能でミャンマー人を採用する流れを見ていきます。
ミャンマーから呼び寄せる場合と、国内に在留している方を採用する場合とで異なるので、それぞれ以下にて解説します。
ミャンマーから呼び寄せる場合
ミャンマーから呼び寄せる場合については、以下のフローチャートの通りです。

ミャンマーから特定技能外国人を受け入れる場合は、こちらの①~⑰のステップを踏んで日本に入国をしますが、ミャンマー特有なものや特徴的なものを以下にて解説します。
求人票の許可申請と承認
ミャンマーの特定技能人材を受け入れる場合は、受け入れ企業はミャンマー政府認定の送り出し機関を通じて、ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)へ求人票の提出と承認許可を受ける必要があります。
後に、認定送り出し機関は、MOLIPの承認・許可を得た求人票を基に適当な人材を募集し、受け入れ企業はこの送り出し機関から人材の紹介を受けて特定技能に係る雇用契約を締結します。
在留資格認定証明書の申請
受け入れ企業は、地方出入国在留管理官署に対し、特定技能に係る在留資格認定証明書の交付申請を行い、その交付を受ける必要があります。
認定証明書の交付を受けた企業は、雇用契約を締結した外国人へこの認定証明書を郵送します。
在留資格認定証明書の交付申請については出入国在留管理庁|在留資格「特定技能」をご参照ください。
スマートカード(OWIC)の発給申請
特定技能外国人として来日予定のミャンマー人本人は、ミャンマーの制度上、海外で就労する場合にはMOLIPにスマートカード(OWIC)の申請を行います。
それと同時に、受け入れ企業から送られてきた在留資格認定証明書をミャンマーの日本大使館に提示し、特定技能に係る査証発給申請を行います。
これらの手続きを行い、日本での上陸審査の結果、上陸条件に適合していると認められれば、在留資格が付与され日本に入国ができます。
また、スマートカードはミャンマー出国時に提示が必要です。
日本に既に在留しているミャンマー人を採用する場合
既に日本に在留しているミャンマー人を採用する場合は、比較的シンプルで、
- 雇用契約の締結
- パスポートの(更新)申請
- 在留資格変更許可申請
の3つを行います。
雇用契約の締結は、送り出し機関を経由する必要はありません。
パスポートの更新は、ミャンマー人本人が日本のミャンマー大使館にて行います。
在留資格変更許可申請については、原則本人が行う必要があります。
特定技能外国人の採用の流れや手続きについては「【特定技能外国人の採用方法】募集から採用までの流れ・費用などを徹底解説!」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ
今回は特定技能制度においてミャンマー人を採用するケースについて解説しましたが、いかがでしたか。
弊社には、ミャンマー人スタッフが常駐しており、募集から受け入れ後のサポートまで母国語で対応することが可能です。
もし、特定技能外国人を雇用したい!ミャンマー人の採用をしたい!という方は、是非以下のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
