外国人エンジニアが取得する必要がある在留資格とは
早速外国人労働者がエンジニアとして働くために取得する必要がある在留資格について、ご紹介していきます。
在留資格に関する基本的な概要については、以下の記事をご覧ください。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
在留資格①:技術・人文知識・国際業務
はじめに在留資格「技術・人文知識・国際業務」をご紹介します。
概要
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、日本の公的機関や企業との契約に基づいて行う
- 理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術・知識を要する業務
- 法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務
- 外国文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務
といった活動を行うための在留資格です。
「技術・人文知識・国際業務」における具体的な職種としては、機械工学などの技術者やプログラマーなどが挙げられます。
就労系在留資格の中でも比較的人数が多く、2021年6月末時点の人数は283,259人となっています。
在留期間の更新回数制限がなく、更新手続きさえクリアすれば、長期的に就業が可能です。
取得要件
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の「技術」領域における取得要件は以下の通りです。
学歴要件
従事予定の業務に関する知識や技術を学ぶ専門分野を専攻し、大学(短期大学や大学院)を卒業していること。
あるいは従事予定の業務に関連のある専門分野を専攻し、専修学校などを卒業した上で、専門士・高度専門士の称号が付与されていること。
実務経験要件
従事予定の業務について、10年以上の実務経験(大学などでの専攻期間含む)を持つこと。
報酬要件
日本人が同等業務において受け取ることになる報酬と同等以上の報酬を受け取ること。
勤務先の要件
勤務先の会社の経営が安定し、且つ今後も事業を継続することが見込まれること。
その他の要件
その他、十分な仕事量があることや適切な勤務場所が用意されていること、外国人エンジニア自身が素行不良でないこと、などが挙げられます。
家族帯同の可否
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の場合、家族帯同は可能です。
ただし配偶者や子供に限定され、両親や兄弟は含まれないことは留意しておきましょう。
技術・人文知識・国際業務については、以下の記事でも解説しています。
▶︎【技術・人文知識・国際業務とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格②:高度専門職1号ロ
続いて在留資格「高度専門職1号ロ」について解説します。
概要
2012年に設けられた高度人材ポイント制度において、70点以上を獲得した外国人労働者が取得できる在留資格が「高度専門職」です。
高度専門職には以下の3つの活動類型が設けられています。
- 高度学術研究活動:高度専門職1号イ
- 高度専門・技術活動:高度専門職1号ロ
- 高度経営・管理活動:高度専門職1号ハ
このうち高度専門職1号ロは、「技術・人文知識・国際業務」における「技術」と「人文知識」に相当する業務への従事が可能となっています。
つまり機械や電気系のエンジニア、プログラマーなどの職種に就くことができるわけです。
高度専門職1号ロも「技術・人文知識・国際業務」と同様に、在留資格の更新回数制限がないので、長期に渡って就業することができます。
また在留資格「高度専門職」は後程ご紹介する在留資格「永住者」への移行において優遇されており、一部の条件が緩和される点も見逃せません。
取得要件
高度専門職1号ロの取得要件は、先述の通り高度人材ポイント制度で70点以上獲得することです。
具体的には高度専門・技術活動分野の特性によって設けられた
- 年齢
- 学歴
- 職歴
- 年収
- 実績
- 日本語能力
などの項目ごとにポイントが付与されており、それらの合計が70を超える必要があります。
項目の詳細については多岐に渡るため、こちらの出入国在留管理庁のページをご参照ください。
家族帯同の可否
高度専門職1号ロも配偶者及び子供の帯同が認められています。
また年収が800万円などの一定の条件を満たした場合において、本人もしくは配偶者どちらかの親を呼び寄せることができます。
また年収が1000万円以上かつ、20万円/月以上の報酬を支払えることなどの要件を満たした場合は、家事使用人なども呼び寄せることが可能です。
高度専門職では、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶︎【高度専門職とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格③:身分系在留資格
次にご紹介するのは身分系在留資格です。
概要
身分系在留資格は身分に紐づく在留資格であり、「永住者」や「特別永住者」、「定住者」などが代表例として挙げられます。
ここでは在留資格「永住者」にフォーカスしてお話していきます。
在留資格「永住者」は就労系在留資格と異なり、活動制限がないため、どのような業務にでも従事することができます。
そのため機械設計や回路設計、プログラマーといった全てのエンジニア職種に就くことが可能です。
在留資格「永住者」は在留期間の制限もないため、更新手続きなども基本的に必要ありません。
取得要件
在留資格「永住者」の取得要件は以下の4つです。
在留期間
日本に原則10年以上継続して、在留していること。
素行善良要件
日本において、法律違反や税金の支払い滞納などがなく、素行が善良であること。
独立生計要件
日本において、独立した生計を営む上で必要な資産や技能を有していること、つまり生活保護などに頼ることなく、独立して生活していける能力を有していること。
国益適合要件
当該外国人の永住が日本にとって利益があると法務大臣が認めること
これら4つの要件を満たした上で、最終的に法務大臣の許可を得ることで在留資格「永住者」を取得することができます。
家族帯同の可否
在留資格「永住者」も基本的に配偶者や子供を呼ぶことが認められています。
また介護や介助が必要であったり、7歳未満の小さな子の養育が必要であったりする場合、本国から親を呼び寄せることが可能です。
在留資格④:特定活動
最後にご紹介するのは在留資格「特定活動」です。
概要
在留資格「特定活動」とは、「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」のことを指し、先に挙げた「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」等には該当しないような活動も認めている在留資格です。
特定活動には
- 出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
- 告示特定活動
- 告示外特定活動
の3つの種類が存在します。
このうち告示特定活動37号「情報技術処理者」が、一般企業においてエンジニア職として活動できるものになります。
ただし機械や電気系ではなく、IT系のエンジニアとしての就業に限られます。
特定活動の在留期間は最長5年となっているため、5年を超えて就業を希望する場合は、「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職1号ロ」などへの切り替えが必要になるでしょう。
取得要件
告示特定活動37号「情報技術処理者」の取得要件は以下の通りです。
外国人側の要件①
従事する業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を習得していること
- 当該技術もしくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業、もしくはこれと同等以上の 教育を受けている
- 当該技術又は知識に関連する科目を先行して、日本の専修学校の専門課程を修了した
- 10年以上の実務経験(大学や専修学校での専攻期間を含む)
外国人側の要件②
日本人が同等業務に従事する際に受ける報酬と同額以上の報酬を受け取ること
受け入れ企業の要件
- 情報処理に関する産業に属するものであること
- 情報処理に関する外国人の技術又は知識を活用するために必要な施設、設備などの整備が できている
- 在留に係る十分な管理体制を整備できている
家族帯同の可否
告示特定活動37号の場合、同じく告示特定活動38号が家族滞在のための在留資格として用意されています。
対象は扶養を受ける配偶者または子供です。
また告示特定活動37号の外国人労働者と同居し、その扶養に入っている両親、又は配偶者の両親の滞在を認める在留資格として、告示特定活動39号も設けられています。
特定活動については、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【特定活動とは】概要や種類、取得申請の方法などをまとめて解説
採用予定の業務によっては特定技能も視野に
ここまで外国人労働者がエンジニアとして就業する上で必要になる在留資格をお話してきましたが、採用予定の業務によっては、在留資格「特定技能」も視野に入れるべきでしょう。
特定技能とは
在留資格「特定技能」とは、2019年に新たに設けられた就労系在留資格です。
日本における人手不足の解消を目的とし、先に挙げた「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」などでは就業ができなかった単純労働とされる職種でも、外国人労働者の就業や雇用を可能としています。
特定技能には1号と2号という種類があり、それぞれ特徴が異なります。
特定技能で受け入れ可能な職種
特定技能制度において就労を認められているのは、日本においても特に人手不足が過酷とされている12の特定産業分野です。
そのうち製造3分野と呼ばれる製造3分野は、先に挙げた在留資格を取得したエンジニアほど専門的な業務には就けないものの、モノづくりに関わる業務に就くことができます。
- 素形材産業:鋳造・金属プレス加工、板金加工など
- 産業機械製造業:機械加工、プラスチック成形、電子機器組み立てなど
- 電気・電子情報関連産業:プリント配線基板製造、電子機器組み立てなど
上記のようにエンジニアと呼ばれる職種ではなく、どちらかといえば製造系職種になりますが、このような職種での受け入れも検討されているのであれば、特定技能外国人を視野に入れるのも一つでしょう。
特定技能の取得要件
特定技能の取得要件としては、各分野に応じた技能評価試験と日本語能力試験に合格することが挙げられます。
また技能実習2号修了者の場合、これらの試験が免除されるケースもあるため、よりスムーズに特定技能の在留資格を取得できるでしょう。
特定技能についてより詳しいことを知りたいという方は、以下の記事をあわせてお読みください。
▶︎ 特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
また技能実習から特定技能への移行についても押さえておきたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶︎【特定技能と技能実習比較】7つの違いと技能実習から特定技能への切り替え方法
その他のポイント
特定技能で外国人労働者を受け入れるにあたってポイントとなるのは、登録支援機関の存在でしょう。
特定技能で就業する外国人労働者に対しては、日本での就業や生活を安定させることを目的として、様々な支援を提供する必要があります。
具体的な支援内容としては
- 事前ガイダンスの提供
- 適切な住居の確保、生活に必要な契約に係る支援
- 生活オリエンテーションの実施
などが挙げられます。
これらの支援業務を代理で対応してくれる機関が、登録支援機関です。
また支援業務の代行だけでなく、在留資格の申請手続きなどのサポートも行ってくれるため、単独で外国人労働者を採用するよりも、より安心して採用活動に取り組むことができるのです。
登録支援機関については以下の記事もあわせて参照ください。
▶︎【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説
在留資格の申請手続き
最後に在留資格の申請手続きについて、2つのケースに分けて確認していきたいと思います。
来日してもらうケース
一つ目が外国人エンジニアに来日してもらうケースです。
海外で働いている外国人エンジニアを雇用して、来日してもらうことになる際に該当します。
この場合は在留資格認定証明書交付申請を実施することになります。
具体的には以下の流れで手続きを進めていくことになるでしょう。
ステップ①(企業側が対応)
必要書類を揃えた上で、管轄の出入国在留管理庁に在留資格認定証明書の交付申請を出します。
必要書類については、出入国在留管理庁のページをご参照ください。
ステップ②(企業側が対応)
在留資格認定証明書が公布された後、当該外国人エンジニアに対して送付することになります。
ステップ③(外国人エンジニア側が対応)
在外日本公館にて、外国人エンジニアが在留資格認定証明書などの必要書類を揃え、ビザ申請を実施
ステップ④(外国人エンジニア側が対応)
在外日本公館からビザが公布されたのち、日本の空港などでビザと在留資格認定証明書を提示し、無事来日となります。
既に在留しているケース
次に既に在留しているケースについてご紹介します。
このケースは既に日本で働いている外国人エンジニアを、転職で受け入れるパターンが中心となってくるでしょう。
この場合、当該外国人エンジニアの残りの在留期間によっては、在留期間更新許可申請が必要になります。
必要書類を準備した上で、管轄の出入国在留管理庁まで申請しましょう。
申請したあと、許可が下りるまで2週間から1か月程度掛かってくるため、申請中に在留期間が終わるなどがないように余裕を持って対応する必要があります。
その他の情報については、以下の記事でも解説しています。
▶︎【在留期間更新の基本】手続きの流れや必要書類などをまとめて解説
まとめ
今回は外国人エンジニアに必要な在留資格をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社はエンジニア含めた外国人労働者の人材紹介サービスなどを提供しており、採用手続きのサポートや受け入れ後の体制構築の支援まで対応しております。
「外国人エンジニアの採用に取り組みたいけど、どの在留資格にすべきか、どういう手続きが必要なのかわからない…」などのお悩みがある方は、是非一度お気軽にお問い合わせください。