建設業の人手不足が深刻化している昨今、2023年4月には人手不足倒産が過去最多となり、業種別ではサービス業とならんで建設業が一位となっています。この記事では、人手不足を解消するために、建設業で外国人を採用するために必要な在留資格や採用の流れ、受け入れ方法、メリット・デメリットなどを徹底的に解説していきます。建設業で外国人を雇用したいとお考えの方は是非最後までご覧ください。
建設業で雇用可能な在留資格
外国人が建設業で働くためには、在留資格いわゆるビザが必要です。これがないにもかかわらず、就労させてしまうと受け入れ企業は不法就労助長罪に問われる可能性があるので、注意が必要です。
在留資格とは?
そもそも、在留資格って何?ということろですが、在留資格とは、外国人が日本に在留した上で、何かしらの活動を行うために必要となる資格です。
出入国管理及び難民認定法(入管法)によって規定されており、2023年6月現在において29種類の在留資格が存在しています。
そして、建設業で雇用な可能な就労資格は、以下のとおりです。
- 留学・家族滞在
- 身分系在留資格資格
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能実習
- 特定技能
留学・家族滞在|アルバイトとして雇用可能
初めにアルバイトとして雇用する際に、対象となる主な在留資格から見ていきましょう。
留学
一つ目の在留資格は留学です。
留学は日本に訪れる外国人留学生が、取得することになる在留資格のことを指します。
留学は基本的には就労をすることはできませんが、資格外活動許可を得ることで、週28時間以内の就労が可能となります。
この週28時間以内という制限は、アルバイト先ごとに設けられるわけではなく、全てのアルバイトでの合計時間が対象となるため、留意しておきましょう。
つまり、別の企業で既にアルバイトとして週10時間働いている場合、自社で働いてもらうことができるのは週18時間までとなるのです。
以下の記事でも「留学」について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
▶︎【在留資格「留学」とは】申請の流れなど基本的な概要を解説
家族滞在
家族滞在とは、日本で働いている外国人労働者などの配偶者や子供が取得する在留資格となっており、原則就労は認められていません。
ただし先ほどご紹介した留学と同じく、資格外活動許可を得ることで業務に従事することが可能となります。
週28時間以内という制限は変わらないため、アルバイトでの雇用が妥当となるでしょう。
家族滞在については、以下の記事もご参照ください。
▶︎在留資格「家族滞在」で働けるって本当?制限や取得要件などを解説!
身分系在留資格|就労制限がない
身分系の在留資格とは、以下の在留資格のこといい、日本人と同じように制限なく就労することができます。
身分系在留資格の中でも永住者は在留期間が無制限となっており、在留期間の更新手続きなども不要となるため、管理工数なども削減しつつ長期的に雇用することができます。
技術・人文知識・国際業務|期間の制限なし
建設業界において正社員として外国人労働者を雇用する場合、メインの在留資格となりうるのが「技術・人文知識・国際業務」でしょう。
技術・人文知識・国際業務は、「技術」と「人文知識」、「国際業務」という3つの分野を包括した在留資格で、大学等の教育機関で学んだ内容と入社後の業務内容に関連性が求められます。
建設業においては、工学部や建築学科等を卒業した理系人材を「現場監督」や「CADオペレーター」などで雇用するケースが一般的となっています。
一方で、建設現場での足場組み立て、左官作業などの現場作業には従事させることができません。現場作業ではなく、ホワイトカラー寄りの業務内容でしか在留資格の許可が降りないという点は要注意です。「大学等の教育機関で学んだ高度な知識を業務に生かす」という在留資格の性質があるため、単純作業とみなされてしまう現場作業には従事させることができなくなっています。
在留期間の更新が認められる限り、日本に在留することが可能なため、定着さえすれば、中長期的に雇用を継続させることのできる在留資格と言えるでしょう。
その他、以下の記事でも「技術・人文知識・国際業務」について解説していますのでぜひご覧ください。
▶︎【技術・人文知識・国際業務とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
技能実習|最長5年間の就労が可能
技能実習とは、開発途上国を中心とした諸外国から技能実習生を迎え、その技能実習生へ技能などの移転を図ることで、その国の経済や技術の発展に貢献することを目的として設けられた在留資格です。
技能実習では従事できる作業が以下のとおり限定されています(1号のみの場合は省略)。
(22職種33作業)
技能実習には最長でも5年という在留期間の制限が設けられているため、長期に渡る雇用はできない点は留意しておくべきでしょう。
ただし、技能実習から特定技能への移行を行えば、長期的な雇用が可能となります。
「技能実習」について、その他の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。▶︎技能実習制度とは?受け入れ方法から注意点まで基本を徹底解説
特定技能
特定技能は日本における人手不足の解消を目的として、2019年4月に創設された新しい就労系在留資格です。
建設業で特定技能外国人が従事できる業務は以下のとおり3区分に別れております。
業務区分【土木】
業務の定義:「指導者の指導・監督を受けながら、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等」
業務区分【建築】
業務の定義:「指導者の指導・監督を受けながら、建築物の新設、増築、改築、若しくは移転又修繕若しくは模様替えに係る作業等」
業務区分【ライフライン・設備】
業務の定義:「指導者の指導・監督を受けながら、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業等」
特定技能「建設」には、1号と2号があり、1号は最長で5年間までしか働くことができませんが、2号になると、期間制限なく働くことができます。そのため、技術・人文知識・国際業務と同じく、長期的に雇用することが可能です。
「特定技能」については、以下の記事でより詳細を解説していますので、ご覧ください。▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
おすすめの在留資格|特定技能
留学・家族滞在|身分系
では、どの在留資格で雇用するのが良いか見ていきましょう。①留学・家族滞在については、週28時間以内という制限があるので、アルバイトで雇用する以外は、難しいでしょう。②身分系については、日本人と同じように就労が可能となっていることから、人気の職種での就労を希望する傾向があり、建設業で雇用するにはハードルが高いといえます。
技・人・国|技能実習|特定技能
技・人・国は、長期的に雇用することができる点がメリットですが、現場作業ができないというのと、専門の実務経験などがないと雇用できないという点がデメリットとして上げられます。
技能実習は、比較的導入しやすい制度ですが、従事可能な作業が細かく定められている点、日本語能力が低い外国人が大半という点がデメリットとしてあげられます。
特定技能は、日本語能力試験及び技能試験を突破した外国人のみに許されたものなので、技能実習生よりも基礎能力は高いといえるでしょう。また、「土木」「建築」「ライフライン設備」と各分野の中の作業であれば、どの作業でも従事うじ可能なので、幅広い分野で人手不足を解消することが可能です。
一方で、特定技能1号であれば、5年の就労制限があるという点がデメリットであるといえます。しかし、特定技能2号に合格しさせすれば、就労期間の制限なし、実質的には永久的に日本で就労することが可能となっております。
以上から、特定技能1号で雇用育成し、特定技能2号に移行するというルートがおすすめです。
外国人雇用のメリット
では、外国人雇用のメリットをみていきましょう。
人手不足の解消
建設業における有効求人倍率は、以下のとおり非常に高くなっております。
- 建築・土木・測量技術者:6.55
- 建設躯体工事の職業:10.68
- 建設の職業:5.07
- 電気工事の職業:3.49
- 土木の職業:6.40
そのため、既に、日本人を雇用することは困難と言える状況であり、外国人雇用は、直接人手不足の解消につながります。
社内の活性化
外国人の多くは、母国にいる家族のために日本で就労しています。その姿は、日本人社員にも良い影響を与えることでしょう。
彼らの姿勢や情熱は、日本人社員に勇気やモチベーションを与え、社内の活気を高め、活性化につなげることができます。
業績の向上
多様な人材が集まることで新しい視点や考え方が生まれ、イノベーションが促進されることがボストンコンサルティンググループが実施した調査結果でも明らかになりました。
この調査では、世界1,700社を超える企業を対象にしており、「ダイバーシティが高まれば、企業のアイデアや選択肢の幅が広がることにより、イノベーション能力が向上し、財務業績の向上につながる」という結論に至っています。
多様な人材が集まり、ダイバーシティマネジメントにより様々な視点や観点をイノベーションへ繋げることができれば、多様化する消費者ニーズに常に対応していくための土壌が出来上がり、結果として業績向上へ貢献することが可能になると言えるでしょう。
参考:2020年代の勝利を目指して 経営上の必須課題としてのダイバーシティ
外国人を雇用のデメリット
続いて、外国人を雇用する際のデメリットについてみていきましょう。
採用手続きに工数がかかる
外国人を雇用する場合、日本人の場合と比較して工数がよりかかってきます。ビザの手続きであったり、雇用後の定期的な届出など必要な手続きに多くの時間が割かれることになります。しかし、これらの手続きについて、特定技能制度を活用した場合は、登録支援機関へ委託することができます。
言葉の壁|労災の危険も
一番のデメリットは、言葉の壁です。特定技能の場合、基本的な日本語能力はありますが、やはり、現場での略語であったりニュアンスなどは伝わることが難しいことが多いです。
安全管理に関する指示が伝わらなかったり、理解できない場合には、最悪労働災害が発生する可能性もあります。
この点については、厚生労働省が各言語でテキストを出していますので、こちらを用いて、事前に教育することが求められます。
▶︎職場の安全ガイド
外国人を雇用する際の注意点
では、実際に外国人を雇用する際の注意点をみていきましょう・
不法就労助長罪
不法就労助長罪とは、本来働く資格を持っていない外国人や在留期間を越えて滞在している外国人を働かせたり、許可された活動範囲外の活動をさせてしまったりした際に問われるものです。
不法就労助長罪は、その事実を知っている・知っていないに関わらず、受け入れ事業者側に責任が問われることになり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されます。
不法就労にあたるか否かについては、事前に在留カードを確認することで防ぐことができます。
在留カードとは?
在留カードとは在留資格の認定や変更、更新手続きを実施して許可を得た際に、外国人が交付されるカードのことです。
この在留カードには外国人に関する重要な情報が多く記載されているため、外国人にとっては身分証にも匹敵するほど、重要なものとなっています。
外国人労働者を雇用する際は、特に以下の4点を確認するようにしましょう。自社で雇用できる外国人かどうかを判断するために必要な情報になります。
なお在留カードは中長期滞在者(3ヶ月以上の滞在者)に限り交付されるもので、短期滞在者(3ヶ月未満の滞在者)には交付されません。
資格外活動許可については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。▶【在留資格における資格外活動とは】要件や申請方法などをわかりやすく解説
不法就労助長罪については、以下の記事もあわせて確認しておきましょう。▶︎【不法就労助長罪とは】成立要件や防止方法などをわかりやすく解説
申請が不許可になるケースがある
在留資格に関する申請は、手続きをすれば必ず許可されるわけではなく、不許可になるケースも往々にしてあります。
書類の不備を理由として不許可になる場合や、そもそも取得予定の在留資格の上陸許可基準を満たしていないことを理由とした不許可などが代表的です。
時間や費用をかけて選考を行い、雇用契約まで締結したにもかかわらず、不許可になっては元も子もありません。
そのような事態にならないためにも、事前に在留資格を確認し、書類の不備がないようにしっかりと準備しましょう。
給与などは日本人と同等
外国人雇用と聞くと、低賃金で雇用することができると考えている企業様はたくさんいらっしゃると思いますが、現在は、日本人と同等の給与や手当を付与しなければ、在留申請が通らなくなっています。
特定技能の場合は、同じ業務をする日本人の賃金台帳も含めて出入国在留管理局へ提出するため、日本人よりも給与水準が低い場合、合理的な理由を説明しなければいけません。説明できない場合には、不許可となってしまうので、注意が必要です。
建設業で外国人労働者を採用するまでの流れは?
では、実際に外国人を採用するまでの流れをみていきましょう。
募集
まず募集から行うという点は日本人と変わりません。
- 求人広告サービスの活用
- 自社サイトでの募集
- SNSでの告知
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
上記のような手法を駆使しつつ、自社の求人情報を外国人労働者に訴求していくことになります。
選考~雇用契約の締結
募集の結果外国人労働者から応募が得られた場合、書類選考や面接などを実施していくことになるでしょう。
外国人労働者を採用する場合、取得・変更予定の在留資格の要件となる学歴や実務経験などを入念に確認することが重要になります。
また後程ご紹介する不法就労助長罪の対象とならないために、在留カードにおいて在留資格の種類や就労制限の有無、在留期間、資格外活動許可などを確認することも求められます。
特に問題もないということであれば内定を出し、雇用契約の締結をしましょう。
雇用契約書は、雇用する外国人労働者がその内容を十分に理解できるように、母国語で書かれたものを用意しておくなどの配慮が必要です。
在留資格申請
雇用契約を締結した後は、いよいよ在留資格に関する申請を実施することになります。
在留資格の申請は国内在住者を採用する場合と、国外から呼び寄せる場合に分けてお話していきたいと思います。
国内在住者を雇用する場合
まず国内在住者を雇用する場合から見ていきましょう。
国内在住者を雇用する場合は、以下いずれかの申請手続きが必要です。
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
例えば、現在留学生の外国人材を特定技能で採用する場合などは、在留資格を「留学」から「特定技能」へ変更する必要があります。
また採用予定の業務において、すでに他社で正社員として働いている外国人労働者を転職者として受け入れる場合、タイミングによっては在留期間更新許可申請が必要になるケースがあるでしょう。
各申請の詳細や必要な書類などについては、以下のページからご確認ください。
- 在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁HP)
- 在留期間更新許可申請 (出入国在留管理庁HP)
なお、資格外活動によるアルバイトを雇用する場合は、在留資格関連の申請は必要ありません。
国外から呼び寄せる場合
対して国外から呼び寄せる場合、在留資格認定証明書交付申請を実施することになります。
在留資格認定証明書は、外国人労働者が来日する際に行う査証申請に必要となるもので、在留資格認定証明書が交付された後、当該外国人まで郵送する必要があるのです。
国内で手続きが完結する在留資格変更や在留期間更新の手続きと比べ、国外への資料送付や外国人労働者の査証申請などがある分、手続き全体としての時間はより長くなるという点は覚えておきましょう。
在留資格認定証明書交付申請の詳細については、以下のページをご確認ください。
- 在留資格認定証明書交付申請(出入国在留管理庁HP)
就労開始
在留資格認定証明書交付申請から、外国人労働者による査証申請が無事終われば、ようやく来日可能となり、就労開始となります。
就労開始後に押さえておくべき手続きとして、以下2点挙げられます。
- 労働保険・社会保険への加入
- 外国人雇用状況届出
外国人雇用状況届出については、雇用した日の翌月10日までに、管轄のハローワークもしくは専用システムにて届出を行う必要があります。もし届出を怠った場合、30万円以下の罰金対象となるので注意してください。
また外国人労働者も基本的には所得税や住民税の対象になることも覚えておきましょう。
外国人雇用状況届出については、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【外国人雇用状況届出とは】手続き概要や様式、提出方法などを解説
まとめ
今回は建設業において外国人労働者を雇用する際に、対象となる在留資格や採用における基本的な流れなどを中心にお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は外国人労働者に特化した人材紹介サービスを提供しており、本文でもご紹介した「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」といった外国人労働者の採用を支援させていただいております。
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