外国人にも休業手当は適用される?その疑問に分かりやすくお答えします!

外国人労働者も休業手当などは適用される

まず結論から言えば、外国人労働者にも休業手当などは適用されます。

外国人労働者が日本で働く以上、基本的には日本の労働関連法令が適用されることになるのですが、休業手当を規定している労働基準法も当然適用されることになるのです。

つまり日本人社員に適用されるものは、基本的に休業手当含めて適用されると考えていただければ間違いありません。

ここからは休業手当の概要や支払いが必要なケースなどを解説しつつ、適用される給付金なども併せて確認していきたいと思います。

休業手当とは

まずは休業手当の概要といった、基本的な内容についておさらいしていきましょう。

休業手当の概要

休業手当とは、雇用主側の責任で従業員を休ませた場合、その従業員に対して支給される手当のことです。

休業手当は労働基準法を根拠としており、具体的には以下のように規定されています。

“第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。”

使用者の責に帰すべき事由とは、従業員が働ける、働く意思を持っているにもかかわらず、使用者である雇用主(企業)の都合で休ませるケースを指しています。

あくまで使用者の責任によって生じた休業に紐づく手当であるため、労働義務がない休日や労働意思がないストライキなどに関しては適用対象外となる点は覚えておきましょう。

なお、外国人労働者に関与する法令に関しては、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【外国人労働者の雇用時に押さえておくべき法律】労働基準法などを簡単解説

休業手当を支払う必要があるケース

休業手当を支払わなければならないかどうかのポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

  • ポイント①:会社都合で休業させる
  • ポイント②:休業日が休日でない
  • ポイント③:従業員に労働意思や労働能力がある 

これらのポイントを踏まえて、どのようなケースで休業手当が適用されるのか、もう少し具体的に見ていきましょう。

具体的な適用ケース

  • 経営悪化による仕事量の減少を起因とした休業
  • 資材などの不足による作業の一時中断
  • 工場設備や機械などの欠陥、検査などによる休業
  • 行政勧告による操業停止
  • 作業に必要な従業員が足りなくなった場合の作業中断
  • 親会社の経営不振の影響による休業 

上記のようなケースであれば、基本的には雇用主である企業は休業手当を支払う必要があります。

企業側から指示した休業であっても、以下などが原因であれば、いわゆる「使用者の責に帰すべき事由」には該当しません。

  • 自然災害
  • コロナウイルスの発生
  • 公共交通機関の利用ができない

一方で、「自然災害ではないが、雨天を理由に現場作業ができないため、休日とした場合は休業手当の支給対象となるか?」というご質問をいただくケースもあります。こういった場合は、「振替休日」を利用したり、「屋内での別作業を命じる」などの対応が可能であるため、一律に「欠勤」とするのは正しくない場合もあります。

判断に困るケースが発生した場合は、管轄の労働基準監督署に確認し、対応を検討することをお勧めいたします。

休業手当の対象者

次に休業手当の対象者についても確認しておきたいと思います。

休業手当は先ほど触れた通り労働基準法に規定されているため、労働者として業務に従事する従業員は全て対象となります。

つまり正社員やパート、アルバイトや契約社員、派遣社員といった雇用形態も関係なく、日本で働く外国人労働者も当然対象となるのです。

ただし派遣社員については、派遣労働者を受け入れる派遣先企業ではなく、派遣労働者と雇用関係を結んでいる派遣元企業に対して支払い義務が生じます。

また正式に採用していない内定者であっても、もし労働契約が成立していた場合、労働基準法が適用されることになり、自ずと休業手当の対象となる点は注意が必要です。

休業補償との違い

休業手当と似ている言葉として休業補償があります。

しかし休業手当と休業補償は異なる概念ですので、ここで確認しておきましょう。

休業補償とは労災保険の補償の一つであり、仕事中に生じた怪我や病気が原因で働くことができなくなった労働者に対して、国から支払われるものになります。

つまり休む理由が「会社都合」であれば休業手当となり、「仕事中の怪我や病気」であれば、休業補償となるわけです。

また金額を算出する計算式なども異なりますので、休業補償についてはこちらの厚生労働省のページをご確認ください。

休業手当の支給額算出方法

続いて休業手当の支給額算出方法について、簡単に確認していきましょう。

休業手当の支給金額

休業手当の支給金額の定義は、労働基準法第26条に求めることができます。

“使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。”

この規定文にある、平均賃金の60/100(60%)以上が支給金額となるわけですね。 

平均賃金とは

休業手当を算出するためには、平均賃金をどのように算出するかも把握しなければなりません。

平均賃金とは、手当や減給、保障などの制限額を算出する際に基準とする賃金を指し、計算式としては以下のようになります。

平均賃金の計算式

平均賃金=事由が発生した日以前の3か月間の賃金総額÷3か月間の暦日数

ここでいう賃金総額には通勤手当や年次有給休暇の際の賃金、時間外手当といった金額も含まれる形になります。

休業手当の算出方法

それでは改めて休業手当の算出方法を確認してみましょう。

休業手当の計算式

休業手当=(事由が発生した日以前の3か月間の賃金総額÷3か月間の暦日数)×60% 

この計算式に「賃金総額:75万円、暦日数:93日」というサンプルを入れて計算してみると以下のようになります。

  • 休業手当=(75万円÷93日)×60%=4838円 

ここで得られた4838円は一日あたりの休業手当となり、実際にはこの金額に休業日数をかけた金額が支給されるというわけです。

外国人労働者に休業手当を説明する際のポイント

近年、SNSを初め、外国人労働者を取り巻くさまざまな法令やニュースが出回っており、中には不正確な情報も多く散見されます。

こういった誤った情報に触れ、会社に対して休業手当等を要求してくる外国人労働者とトラブルになってしまっている事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。

そういった問題を防ぐため、ここでは厚生労働省が発行している「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」を参照・引用して休業手当を説明する際のポイントをご紹介していきます。

説明時のポイント

まず外国人労働者に対して休業手当を説明する際に押さえておくべきポイントについて、確認しておきます。

外国人労働者は会社から休業を指示された際、生活が不安定になることに対して強い不安を覚える方もいれば、先に触れた通り、誤った情報から会社に対して不信感を抱く方もいらっしゃいます。

そのため

  • 休業手当の概要や適用されるケース
  • いつから補償が受けられるのか
  • どのくらいの補償が受けられるのか

の3点を明確にして説明することが求められます。 

説明の際はできるだけ簡単な日本語、あるいは外国人労働者の母国語などで説明すると安心と言えるでしょう。

また、必要に応じて書面に書き起こした上で、後から振り返れるようにしておくことも大切です。 こういった書面があることで、後のトラブル時にしっかりと会社としても説明をしているという記録書類として活用することも可能になります。

休業手当以外に外国人労働者に適用される給付金

最後に休業手当と関連して、外国人労働者に適用される給付金などについて、ご紹介しておきます。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、新型コロナウイルス感染症やその蔓延防止の措置による影響で休業した労働者のうち、休業手当を受けることができなかった人に対して支給されるものとなっています。

コロナの影響により、

  • 時短営業などで勤務時間が短くなった
  • シフト日数などが減少した

といった方も申請可能となっています。 

申請手続きや必要な書類、金額などといった詳細については、こちら厚生労働省のページをご確認ください。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは新型コロナウイルス感染症の影響によって、事業活動の縮小が余儀なくされた際、従業員の雇用維持を図るために雇用調整(休業)を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものとなっています。

雇用保険被保険者に対する休業手当が助成金対象となるため、基本的に外国人労働者であっても助成対象となります。

詳細についてはこちらの厚生労働省のページをご確認ください。 

年次有給休暇

仮に会社都合での休業となり、休業手当を受けることができても、おおよそ給与の6割程度の金額となってしまいます。

その点休業を年次有給休暇扱いとすれば、給与の満額が支給されることになるので、こちらの方が金額面では安心することができるでしょう。

年次有給休暇の付与条件は

  • 入社から6か月経過
  • その期間の労働日の8割以上出勤

となっており、付与条件を満たせば年10日付与されます。 

年次有給休暇は外国人労働者も当然条件を満たせば付与されるので、上手く活用してもらいたいところです。

傷病手当

怪我や病気をした際の補償として先ほど休業補償をご紹介しましたが、休業補償はあくまで業務上の怪我や病気に対する補償です。

業務外のけがや病気については、傷病手当の対象となります。

傷病手当は、怪我や病気が理由で働けなくなってから、3日の待機期間を経て、4日以降で仕事に従事できなかった日に対して支給されます。

3日目までは支給対象とならないのでその点は注意しておきましょう。

まとめ

今回は外国人労働者にも休業手当が適用されるのかという疑問へお答えする形で、休業手当の概要や算出方法などをご紹介してきましたが、いかがでしたか。

外国人労働者を雇用している企業の方は、是非休業手当が適用されることを念頭に置きながら、適切な補償を提供してあげましょう。

また当社は外国人労働者を専門とした人材紹介サービスを提供するとともに、受け入れるための体制構築支援や考え方・ノウハウなどの提供を実施しております。

外国人労働者の雇用に取り組んでみたい方は勿論、外国人労働者の管理などでお困りの方は、是非一度お気軽にお問い合わせください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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