外国人を雇用されている企業様は必見!この記事では、外国人労働者が退職する際に必要な手続きや必要書類などを解説していきます。日本人と同様の手続きに加えて外国人特有の手続きもありますので、ぜひ最後までご確認ください!
外国人の退職手続きは日本人と違う?
外国人が退職する際の手続きは、日本人とは異なるのでしょうか?
結論、異なります!
ただ、
- 原則、日本人が退職する場合と同じ手続きが必要
- 追加で、外国人労働者特有の手続きが必要
という認識で問題ありません。
また、外国人労働者本人が実施すべき手続きもあり、この手続きを実施しないと「転職ができない」というケースも発生しかねません。
ここからは、外国人労働者が退職する際に対応すべき事について、全体像を押さえるため、それぞれのカテゴリーに分けて、どのような手続きがあるのか詳しく見ていきましょう。
なお、外国人労働者の転職時の手続き(主に在留資格の申請等)については、「【外国人が転職する際の手続き】ケース別にわかりやすく解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
受け入れ企業が実施するべき退職手続き
まずは、退職する外国人の受け入れ企業側が実施するべき退職手続きについて確認していきましょう。「日本人と同様の手続き」と「外国人特有の手続き」にカテゴリー分けした上で解説していきます。
全体像は以下の表の通りとなっております。
日本人と同様の退職手続き|離職票の交付等
最初に、日本人と同様の手続きについてみていきましょう。
1.源泉徴収票の交付
まず必要な手続きとして挙げられるのは源泉徴収票の交付です。
源泉徴収票とは、
「1年間に企業からどれくらいの給料が支払われ、所得税をいくら納めたか」
が記載された書類のことを指します。
外国人労働者が退職した場合、確定申告や転職先での年末調整に必要となるため、源泉徴収票を交付しなければなりません。
源泉徴収票は所得税法によって事業主に交付が義務付けられています。そのため仮に本人から請求されなくとも、退職後1か月以内に交付することが求められるのです。
もしこの法令に違反して交付しなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金が科されることになります。
2.健康保険の被保険者証の回収
次に挙げられる手続きは健康保険の被保険者証回収です。
健康保険の被保険者証とは、一般的に言われる、健康保険証を指します。
外国人労働者であっても条件を満たしている場合、健康保険に加入する必要があります。そのため退職の際は健康保険を含めた社会保険から脱退する形になります。
つまり、退職日の翌日からは健康保険は利用できなくなるわけです。
そのため、退職後も既存の健康保険を利用してしまわないように、健康保険証を退職日当日までに回収する必要があります。
また、回収した健康保険証は、退職後5日以内に健康保険組合に送付しましょう。万が一外国人労働者が健康保険証を紛失していた場合は、被保険者証回収不能・減失届を提出する必要がありますのでご注意下さい。
3.健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届の提出
外国人労働者が退職してから5日以内に、健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届を、事業所を管轄している年金事務所もしくは、健康保険組合まで提出しなければなりません。
このタイミングで回収した健康保険証(紛失している場合は被保険者証回収不能・減失届)を添付して提出することになります。
届出様式などは、こちらをご覧ください。
4.雇用保険の資格喪失手続き+離職票の交付
雇用保険の資格喪失の手続きに関しては、以下の2つ書類をハローワークへ提出しなければなりません。
- 「雇用保険被保険者資格喪失届」
- 「離職証明書」(離職票が必要な場合のみ)
退職する外国人労働者が「離職票」を必要としていない場合は離職証明書の提出は不要ですが、資格喪失の手続きが完了後に離職票を必要とする場合などもありますので、基本的には2つとも必要と考えて問題ありません。
離職証明書の提出有無に関わらず、退職日の翌日から起算して10日以内に事業所を管轄するハローワークまで提出が必要なため、スケジュールには注意しましょう。
手続きの際に添付する必要書類は以下の通りです。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 出勤簿又はタイムカード
- 退職辞令発令書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 離職理由が確認できる書類(退職届など)
- 離職証明書(離職票が必要な場合)
雇用保険被保険者資格喪失届に関しては、在留カード番号記載様式(様式第4号)での提出が必要のためご注意下さい。
また、前述の通り、退職時に離職票の交付を希望されない場合でも、後に希望するケースは多いため、離職証明書も併せて提出することを忘れないようにしてください。
なお、離職証明書は、2023年6月現在で、様式のダウンロードサービスはありませんので、所轄のハローワークに取りに行く必要があります。
離職票は、離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出した後、10日程度でハローワークから企業に届きます。離職票を求められた際は、届いた離職票を退職者に送付をしましょう。
5.住民税の手続き
住民税は、会社が従業員へ支払う給与から天引きし市町村に納付する「特別徴収」が原則とされています。
そのため、外国人労働者が退職すると特別徴収ができなくなるため、市町村に届け出をしなければなりません。
届け出ることで、退職者あてに住民税の通知が郵送され、退職者自身で住民税を納入することになります。
その後、就職して再度特別徴収になる場合は、新たな就業先が特別徴収継続の届出を提出します。
- 提出書類:給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書
- 提出期限:退職後すみやかに
- 提出先:退職時の居住地の市町村
- 提出方法:持参または郵送
前年中に転居している場合は転居前と後の2カ所に届ける必要や、1月から5月に退職する場合には住民税は一括徴収する必要があるので注意しましょう。
外国人特有の退職手続き|雇用状況届出等
続いて外国人労働者特有の退職手続きについて見てみましょう。
特有の手続きは大きく「外国人雇用状況の届出」「退職証明書の交付」の2つですが、不要なケースもあるのでそれらについて紹介していきます。
1.外国人雇用状況の届出
雇用対策法(平成19年10月1日施行)に基づき、外国人を雇用する事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」、「公用」及び特別永住者を除く)の雇入れ及び離職の際に、「外国人雇用状況の届出」を義務づけています。
これらの届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
届出の方法については、退職する外国人が「雇用保険被保険者(雇用保険加入者)」か否かで対応が異なります。
① 退職者が「雇用保険の被保険者となる」外国人の場合
この場合における外国人雇用状況届出は「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出で兼ねることができるため、別に外国人雇用状況の届出をする必要はありませんが、前述の通り、外国人労働者在留カード番号記載様式での届出が必要です。
重複しますが、在留カード番号記載様式の雇用保険被保険者資格喪失届についても、退職後10日以内に提出する必要がある点は変わりないので、忘れずに対応しましょう。
在留カードってそもそも何?と言う方については、「在留カードとは?確認すべきポイントや偽造在留カードとの違いを解説!」の記事もあわせてご確認ください。
②退職者が「雇用保険の被保険者とならない」外国人の場合
こちらは、外国人雇用状況届出書(様式第3号)の提出が必要です。
届出様式はハローワークの窓口で配布しているほか、厚生労働省ホームページからダウンロードすることもできます。
提出は、当該外国人が勤務する事業所施設(店舗、工場など)の住所を管轄するハローワークへ退職月の翌月の末日までに行う必要があります。
それぞれ、詳細に関しては厚生労働省HP「外国人雇用状況の届出について」や「外国人雇用のルールに関するパンフレット」をご覧ください。
2.退職証明書の交付
企業側は外国人社員に退職証明書を交付する必要があります。
外国人労働者が転職する場合、出入国在留管理庁に対して、以下のような在留資格の手続きを行います。
- 在留資格変更許可申請
- 在留期間更新許可申請
- 就労資格証明書交付申請
これらの手続きを実施するための必要書類として、退職証明書が求められるのです。
そのため外国人労働者が退職後帰国する場合を除いて、忘れずに交付するようにしましょう。
なお、退職証明書には決まった様式がありません。一般的に以下のような記載内容となっています。
退職時に外国人本人が実施する手続きはある?
次に外国人労働者本人が対応すべき手続きについて確認していきましょう。
所属(契約)機関に関する届出
外国人労働者本人が対応すべき手続きとして挙げられるのは、所属機関に関する届出です。
所属機関というのは、外国人の方を受け入れている又は受け入れようとする日本の公私の機関等(企業、学校等の教育機関等)を指し、
外国人労働者は退職時や転職などの際に、管轄の地方出入国在留管理官署までこの所属機関の変更に関する届出を提出しなければなりません。
退職の場合の届出事項は以下の通りです。
- 活動機関から退職した年月
- 退職した活動機関の名称及び所在地
また、この届出は、離職などの事由が生じた日から14日以内に行う必要があります。
外国人労働者側がこの手続きを認識していなかったり、忘れてしまったりするケースも多く、行わなかった場合は在留資格の更新時に支障が出てしまうこともあるため、企業側から本手続きが必要である旨やどのように実施すればいいのかを本人に説明してあげると安心でしょう。
所属機関に関する届出は以下の図のとおりオンラインでも実施が可能となっています。届出書類等の詳細はこちらの出入国在留管理庁HPをご覧ください。
在留資格の更新・変更
続いて必要なのが、在留資格の期間更新や変更のための手続きです。
転職予定にも関わらず残りの在留期間が短くなっている場合、在留期間更新許可申請を実施する必要があります。
加えて、転職後の職種が、現在外国人労働者が保有している在留資格で許可された範囲外の職種である場合、在留資格変更許可申請をしなければなりません。
注意点として、特定技能や特定活動46号など、職種の有無に関わらず、転職時に必ず在留資格変更許可申請をしなければならない在留資格も存在します。
これらの申請については、基本的に外国人労働者本人が対応すべきものではありますが、雇用する企業が代理人として申請することもでき、多くの場合企業側も手伝うことになるでしょう。
在留資格についての基本的な事項に関しては、「【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説」をあわせてご覧ください。
また転職を伴う在留期間更新を実施する場合、事前に就労資格証明書交付申請をしておく方がスムーズに手続きを進めることができます。
詳細につきましては、「【就労資格証明書とは】メリットや交付申請の方法を簡単解説」をぜひあわせてご覧ください。
特定技能外国人が転職により別の企業に移籍する場合については、「【特定技能における転職】転職ができる条件や手続きなどをまとめて解説」をご確認ください。
失業給付金(失業手当)の申請
こちらは、全ての方が対象になるわけではありません。あくまで、失業給付金の申請が必要な外国人の方が実施する手続きです。
先にも出てきた雇用保険は、外国人も加入が必須であるため、もちろん、失業給付金の支給対象となってきます。ハローワークにて失業給付金の申請をすることで、給付金を受け取ることができるでしょう。
ただし、雇用保険の加入期間が12か月以上あることが条件です。加入期間が12か月未満の場合は失業給付金の申請ができない点は注意しましょう。
母国に帰国する場合の手続き
こちらに記載の内容は、外国人労働者が退職後に母国に帰国する場合に該当してきます。
脱退一時金の手続き
まず、国民年金や厚生年金の脱退一時金を請求することができます。
脱退一時金とは日本国籍を持っていない外国人労働者が、老齢年金の受給資格となっている10年を満たさずに帰国する場合に、既に納めている年金保険料の一部を返金支給してもらう制度です。
もし一時的に帰国した後、再び来日して働く予定がある場合は日本における年金受給資格を満たせる可能性があるため、脱退一時金の請求手続きはする必要がありません。
帰国した後、再度日本で暮らことがないのであれば脱退一時金の請求をしておく方がよいでしょう。
脱退一時金に関しては、「【外国人の脱退一時金とは】概要や種類、手続きの方法をわかりやすく解説」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
住民税の支払い
住民税は、1月1日の居住地の市町村で、前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して課税されます。つまり、外国人が年度の途中で帰国しても、1月1日の時点で住民登録があれば、その年の住民税を納める義務があります。
外国人労働者は、退職後に帰国する場合、残りの住民税を一括して給与や退職金から徴収してもらうことができます。(退職が1〜5月は、希望の有無に関わらず一括徴収されます)
もし、出国までの間に住民税を納めることができない場合は、日本に居住する方の中から納税管理人を選任し、残りの住民税の支払いを実施する必要が出てきます。詳しくは、こちらの総務省HPをご覧ください。
銀行口座の解約
忘れがちなのが、銀行口座の解約です。
仮に銀行口座の預金が0円になっていたとしても口座解約手続きが必要です。
口座の解約は、各行の窓口に通帳・キャッシュカード・在留カード・印鑑などを持参する必要があります。
解約せずに10年以上(ゆうちょ銀行は5年)放置されると、預金は休眠預金になり、利用できなくなる可能性もあります。
ただ注意しなくてはいけないのが、携帯、水光熱などの公共料金、クレジットカードの利用料金...など、引き落としの予定がある場合、引き落とし前に銀行口座を解約しないように注意しましょう。
料金が未払いのままになると、将来日本でクレジットカードの申込や、住宅ローンの申込、携帯電話の契約ができなくなる可能性があります。
住民票の転出届
今後日本に暮らす予定のない外国人は、帰国前に、帰国日を証明する書類(航空券など)、在留カード、パスポートなどの身分証明書を持っていき、居住地の市・区役所に転出届の手続きを行う必要があります。
住民票転出届の手続き期間は居住地により多少異なりますが、帰国する日の約2週間前から提出が可能です。
転出届の手続きを行わずに帰国した場合、帰国後も住民税や年金、国民健康保険料を請求されたり、年金の脱退一時金を受け取れなかったりする可能性があるので、帰国前に必ず手続きを行いましょう。
同時に、マイナンバーカードやマイナンバー通知カードの返却も実施するようにしましょう。マイナンバー自体は、新しい番号が付与されることはないので、もし将来的に再度日本へ来日することが予想される場合は、マイナンバーカードが返却されますので、大切に保管しておく必要があります。
退去など生活全般の手続き
1.賃貸契約(住居)の解約
日本の賃貸借契約は、一般的に、退去日の1~2ヶ月前に退去告知をする必要があるため、帰国が決まった際は速やかに退去予定日を管理会社に連絡をしましょう。
退去告知が遅れた場合、住んでいなくても家賃の請求をされる場合があります。
2.電気、水道、ガスの停止
電気、水道、ガスの使用停止の手続はインターネットや電話で簡単にできます。
停止申込みの際に「お客さま番号」が必要なことが多いため、用意しておくと良いでしょう。
また、立ち会いが必要な場合もあるため、退去日が決まったら速やかに停止の手続きをしましょう。
3.携帯電話、インターネットの解約
携帯電話、スマホ、インターネットの解約手続きも必要です。
口座引き落としやクレジットカード支払いになっている場合、それぞれの解約前に利用料金の精算を忘れないよう注意しましょう。
外国人が退職する際の注意点は?
外国人労働者の退職に伴う手続きについてお話してきたところで、最後に注意点について簡単に確認しておきましょう。
退職届の回収をする
こちらは、日本人の場合と同様ですが、自己都合退職の場合は、必ず外国人本人から退職届を回収するようにしておきましょう。
過去、自分から退職を申し出たのに、転職活動がうまくいかず、別の在留資格へ変更するために「会社都合で解雇された」と入管に申し出たりする方がいらっしゃいました。
あまりないケースではありますが、コンプライアンス的にも、退職者(日本人も同様)からは必ず退職届は回収しておいた方が良いでしょう。
退職後、3ヶ月で就労系在留資格(ビザ)が失効する可能性がある
就労系の在留資格の場合、その名の通り「就労すること」が目的の在留資格となります。
そのため、自己都合での退職後、3ヶ月以上無職の状態が続いたり、何も活動していないと判断された場合は、就労ビザが失効する可能性があります。
退職した外国人は、次の職を見つけるのに3ヶ月のリミットがあるという点は、受け入れ企業側でも把握しておきましょう。
退職後はアルバイトはできる?
現在保有する在留資格の活動範囲内であれば、アルバイトは可能になります。ただし、「技術・人文知識・国際業務」などの場合は、在留資格で認められた範囲外の業務(例えば、配達員やコンビニのレジ打ちなど)は基本的に認められませんので、注意が必要です。
こういった行為をしていると、仮に次の職場が見つかったとしても、入管から在留状況が不良と判断され、ビザ更新ができなくなってしまう可能性があります。
一方で、会社都合での解雇などを理由に退職した場合は、生計を立てるために、資格外活動が認められるケースがあります。また、転職活動を希望する場合は、在留期間が到来したとしても、「特定活動」という別のビザへ変更し、在留が認められるケースもあります。
まとめ
今回は外国人労働者の退職手続きについてお話してきましたが、いかがでしたか。
外国人労働者を雇用している場合、どこかのタイミングで退職の手続きをする必要が出てくるでしょう。
その際は是非この記事を参考にしていただければ幸いです。
また、当社は外国人材特化の紹介会社として活動しています。
特に、特定技能制度を利用した外国人の採用をご検討されている方や技術・人文知識・国際業務などの高度人材の募集をご検討されている企業様は、ぜひこちらのお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。