外国人労働者の活用の現状
まずは外国人労働者の活用の現状などについて簡単に見ていきましょう。
外国人労働者の現状
日本では1995年以降生産年齢人口が年々減少し続けている一方で、外国人労働者の数は増加傾向にあります。
以下のグラフを見てください。
これは厚生労働省が発行している外国人雇用状況の届出状況まとめから抜粋したものです。
2008年以降右肩上がりで増加していることが見て取れるでしょう。
特に2012年から2016年にかけて急激に増加し、2021年10月末時点においては約173万人もの外国人労働者が在留しているのです。
現在はコロナの影響で増加率こそ低減しているものの、増加傾向にあることには変わらず、今後も増えていくことが予想されています。
外国人労働者の雇用メリット
それでは外国人労働者を雇用する際のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
メリット①:貴重な若手人材を確保しやすい
一つ目のメリットは若手人材を確保しやすいという点です。
日本では労働人口の減少によって、20代後半~30代にかけての若手人材を確保するのは難しい状況にあります。
その点、来日する外国人労働者の平均年齢は30代半ばであることから、比較的若手人材を確保しやすいと言えるでしょう。
メリット②:高いスキルや知識を有する人材も多い
また高いスキルや知識を有する人材が多い点も見逃せません。
外国人労働者が日本で働くには就労が認められている在留資格を取得する必要があります。
これらの在留資格を取得するには、豊富な実務経験や知識などが必要であるケースが多いことから、来日する外国人労働者は高いスキルや知識を有していると言えるのです。
なお、在留資格については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
▶【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
メリット③:自社内にはない視点やアイデアを得ることができる
自社内にはない視点やアイデアを得ることができる点もメリットと言えます。
外国人労働者は日本人とは生まれ育った環境や文化、それに基づく考え方や価値観は当然異なってきます。
そのため自社メンバーにはない発想やアイデアを出すことができるケースがあるため、課題解決などの際に活躍してもらえる可能性があるのです。
外国人労働者の労務管理におけるポイント
ここからは本記事のテーマである外国人労働者の労務管理のポイントについて、確認していきましょう。
なお、外国人労働者に適用される各種法律については、以下の記事に網羅的にまとめていますので、以下読み進めていく前にぜひ一度目を通してみてください。
▶︎【外国人労働者の雇用時に押さえておくべき法律】労働基準法などを簡単解説
ポイント①:在留資格と契約期間
まず一つ目のポイントは在留資格と契約期間です。
先述の通り、外国人労働者が日本で働くためには在留資格を取得する必要があります。
在留資格には、許可された活動内容や在留期間といったものが紐づいており、それをしっかりと理解した上で管理していかなければなりません。
在留資格は一部の例外を除き在留期間が定められているため、在留期限が迫ってきたタイミングで、在留期間の更新許可申請の手続きも実施する必要があるでしょう。
また在留期間は雇用契約期間とも密接に関わることになります。
正社員として採用する場合、在留期間と雇用契約期間はイコールにはなりませんが、契約社員などの形態で採用する場合は、在留期間と雇用契約期間の整合を図る必要があるケースもあるでしょう。
この辺りは雇用形態や状況に応じて、適切に設定することをオススメします。
なお在留期間については、以下の記事で詳しく解説していますので、この機会にぜひご覧ください。
▶︎【在留期間更新の基本】手続きの流れや必要書類などをまとめて解説
ポイント②:賃金などの労働条件
続いては賃金などの労働条件についてです。
まず外国人労働者の労務管理を行う上で、日本人と同様に労働基準法が適用されるという点は必ず押さえておかなければなりません。
要するに、最低賃金は勿論、労働時間の制限も存在するわけです。
当然8時間を超えて勤務してもらう場合、割増賃金を支払う必要もありますし、年休も支給しなければなりません。
つまり、外国人労働者を雇用する場合、日本人と同様の条件で雇用する必要があると言えます。
特に賃金については在留資格取得における条件となっていることが多く、具体的には同様の業務に従事する日本人従業員と同等以上の賃金を支払うことが求められるのです。
どうしても外国人労働者は低賃金で雇用できるというイメージが先行しがちですが、外国籍であることのみを理由に、日本人よりも低い賃金を設定することはできません。もちろん、賞与や昇給、福利厚生などの賃金以外の労働条件についても、差別的な扱いをしてはいけません。
ポイント③:雇用契約書と労働条件の明示
次に挙げるのは雇用契約書と労働条件の明示です。
外国人労働者を雇用するとなった場合、雇用契約書の締結や労働条件の明示をすることになるでしょう。
この際、その外国人労働者が雇用契約や労働条件の内容を、本当に理解できているかどうかは非常に重要なポイントになります。
もし外国人労働者が雇用契約や労働条件についてしっかりと理解できていない場合、後々トラブルにも繋がりかねず、最悪の場合退職されてしまう可能性もあるでしょう。
そういったことを防ぐには、雇用契約書と労働条件を確実に明示する必要があります。
具体的には外国人労働者でも理解できる簡単な日本語で表記したり、母国語や英語で記載した分を用意したりすることがポイントになるのです。
また、ただ単に雇用契約書や労働条件について記載した書面を渡すだけでなく、口頭でも詳しく伝えた上で、不明な点がある場合はすぐに質問してもらえるような機会を設けるというのも一つでしょう。
こういった地道な手順を踏んでおかないと、単に退職されてしまうだけではなく、法廷論争に発展してしまうケースもありますので、十分に注意しましょう。
ポイント④:業務内容と業務指示
業務内容と業務における指示の出し方についても、触れておきたいと思います。
外国人労働者を雇用する場合、日本人を雇用する以上に業務内容に注意する必要があります。
外国人労働者が日本で働くには、従事予定の業務内容に適応した在留資格を取得することが求められるのです。
それぞれの在留資格には活動範囲が定められており、許可された活動範囲を超えた業務に従事してしまうと不法就労に問われます。
不法就労に該当した場合、外国人労働者だけでなく、雇用している企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるのです。
このような事態に陥らないためにも、人事部門だけでなく現場社員も外国人労働者の在留資格の内容をしっかりと把握するとともに、適切な業務指示を実施することが重要になるでしょう。
不法就労助長罪は以下の記事で詳しく解説しています。外国人受け入れをご検討されている企業様は必ず確認しておきましょう。
▶︎【不法就労助長罪とは】成立要件や防止方法などをわかりやすく解説
ポイント⑤:就業規則や労務慣行
就業規則や労務慣行についてのポイントも確認しておきます。
就業規則は企業で業務に従事する上で守るべきルールなどを定めたものであるため、全てを覚える必要こそありませんが、重要なポイントは把握し、必要に応じて参照するといったように活用されます。
当然外国人労働者にとっても重要な資料の一つになるわけですが、就業規則などの企業の資料は難しい日本語が用いられていることも多く、外国人労働者にとってはわかりづらい資料になりがちです。
そのため
- 外国人労働者向けに簡単な日本語で記載したもの
- 重要なポイントのみを抜粋して母国語で記載したもの
などを別で用意しておくことが重要になります。
また労務慣行といった、就業規則などには記載されていないものの、暗黙のルールと化している情報についても明文化した上で、外国人労働者にも共有しておくという点も忘れず対応する必要があるでしょう。特に日本のローコンテクスト文化は外国人にとっては馴染みが薄いため、暗黙のルールに関してはしっかりと明確化しておきましょう。
▶︎異文化コミュニケーションって何?よくある問題からポイントまでを解説!
なお、就業規則については、常時10名以上の労働者を雇用している場合は作成・届出が義務付けられていますので、外国人雇用の有無に関わらずご注意ください。
ポイント⑥:労災保険・社会保険
続いてご紹介するのは労災保険や社会保険についてのポイントです。
外国人労働者であっても、一定の条件を満たすことで労災保険や社会保険に加入させる必要がある点は注意しましょう。
社会保険における健康保険や厚生年金保険への加入条件は以下となります。
- 常時雇用されている従業員(正社員)
- 週または月の所定労働時間が、常時雇用されている従業員の4分の3以上
また、
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定月額賃金が8.8万円以上
- 学生以外
- 1年以上の継続勤務が見込まれる
- 従業員が501人以上の事業所
といった条件に当てはまる場合は社会保険に加入させなければなりません。
労災保険は社会保険のように労働時間などの条件が設けられておらず、基本的に日本の企業で働く全ての労働者が加入する必要があります。
当然外国人労働者も例外ではないので、漏れのないように対応することが求められますし、労災が発生した場合、外国人労働者もしっかりと所定の手続きを踏む必要があります。手続き等については、ぜひ以下の記事をご参照ください。
▶︎【外国人労働者の安全衛生教育の基本】各労災への対応ポイントや教材もご紹介
ポイント⑦:健康診断
ポイントの最後にご紹介するのは健康診断です。
外国人労働者も日本人と同様に、入社時に健康診断を受けてもらう必要があります。
また年に1回の健康診断も受診してもらわなければなりません。
もし健康診断を受けさせることを忘れてしまうと、労働安全衛生法に違反することになり、労働基準監督署から是正勧告を受けるといったリスクが生じてしまいます。
そのため外国人労働者に対しても、健康診断の必要性をわかりやすく説明した上で、入社時と毎年の受診を忘れないように対応していくことが重要になるのです。
在留資格によっては来日前に健康診断を受ける必要があるものなどもあるので、その点も留意しておきましょう。
補足:留学生アルバイトの雇用におけるポイント
労務管理におけるポイントの補足として、留学生アルバイトの雇用におけるポイントをご紹介します。
留学生をアルバイトとして雇用する場合、資格外活動許可を有しているかを確認する必要があります。
本来在留資格「留学」は就労が認められていませんが、資格外活動許可を得ることで週28時間までの就労が認められるようになるのです。
そのため留学生アルバイトを雇用する場合、資格外活動許可を有しているかを在留カードなどで確認するようにしましょう。
また就労時間も週28時間以内に抑える必要がある点も注意しなければなりません。
特にこの週28時間という制限は、アルバイト一つ当たりの制限ではなく、その他のアルバイトを併せた制限となります。
つまり、他社で週10時間働いている場合、自社で働いてもらえるのは週18時間までとなるというわけです。
この制限を把握しておらずに、週28時間を超えた就労に従事させると、先に挙げた不法就労助長罪に該当するので注意してください。
資格外活動許可については、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【在留資格における資格外活動許可とは】要件や申請方法などをわかりやすく解説
外国人労働者の労務管理上の注意点
最後に外国人労働者の労務管理上の注意点について、併せて確認しておきましょう。
文化の違いを理解する
一つ目は文化の違いを理解するという点です。
外国人労働者は生まれ育った環境や文化が日本人とは異なります。
そのため当然それに基づく価値観や考え方も異なるので、日本では当たり前とされていることでも、外国人労働者にとってそうではないというケースは往々にしてあるのです。
だからと言って日本の文化や価値観を一方的に押し付けるのではなく、文化や価値観の違いを理解し、お互いに尊重しあう関係性を築いていくことが重要になります。
不法就労に注意する
もう一つの注意点は不法就労です。
先程も何度か触れましたが、在留資格で許可されている活動範囲を超えて就労してしまうと不法就労となります。
不法就労に該当した場合、外国人労働者だけでなく、雇用している企業側も不法就労助長罪に問われることになるのです。
不法就労助長罪は、企業側がその事実を認識している・していないに関わらず適用されるため、「知らなかった」では済みません。
不法就労助長罪に該当した場合、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金を科されることになるので、十分に注意しましょう。
以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
▶︎【不法就労助長罪とは】成立要件や防止方法などをわかりやすく解説
まとめ
今回は外国人労働者の雇用における労務管理のポイントについてお話してきましたが、いかがでしたか。
外国人労働者を雇用する際は、日本人を雇用する以上に注意すべき点も多いですが、人手不足が問題となっている日本において、貴重な労働力となることは間違いありません。
そのため、しっかりと労務管理のポイントを押さえた上で、外国人労働者の雇用に取り組んでみてください。
また当社は外国人労働者を専門としている人材紹介サービスを提供しておりますので、もしご興味ありましたらお気軽にご相談ください。