【事例インタビュー 前編】製造業で外国人社員比率55%超え?! / 株式会社佐竹製作所 尾方社長

金属加工、センサ事業、継手事業、FA事業、海外人材活用コンサルティング事業と、製造業の枠組みに留まらない事業展開を続ける株式会社佐竹製作所。

生産現場のみならず本社スタッフに至るまで、グループ全体で外国人材比率が55%を超えるダイバーシティ組織を実現しています。

今回は、同社代表取締役の尾方社長に、外国人受け入れの背景から、製造業が抱える人手不足にどのように挑んできたのか、前後編に渡ってお伺いしてきました。

↓今回のインタビュー内容は、YouTubeにもアップロードしていますので、ぜひご覧ください!

株式会社佐竹製作
代表取締役社長 尾方 謙一

1991年、大学卒業後、ANA入社。14年間在籍し、国際事業で18カ国に出張。
Cargo事業で関西空港立ち上げ、国際マーケティング、ロンドン支店で欧州地区マネジャーなどを歴任。
2009年、佐竹製作所代表取締役に就任。金属加工・FA・センサ・継手・海外人材活用コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開し、増収増益を実現。
上海・バンコクなどのグローバルネットワークを構築し、外国人材中心の組織体制を構築している。

リーマンショックのタイミングで異業種から製造業の社長へ

写真_佐竹製作所尾方社長
株式会社佐竹製作所 尾方社長

ーー御社の事業概要をお伺いしてもよろしいですか?

当社は、昭和12年にナット・機械部品の製造工場として創業し、多品種・小ロット・短納期で提供してまいりました。現在では、金属部品を中心として、FA部品、機械装置部品、触覚センサ、人材紹介事業など幅広く事業展開するに至っています。

また、上海やタイをはじめアジアを中心とした海外拠点も積極的に設立し、自社製品の提供エリアを拡大させ、世界の生産設備産業に貢献できるように努めております。

特に、直近では製造業の人手不足という課題解決に対して、デジタル×外国人材の紹介を通じてお客様の人的課題解決に挑んでいます。

ーー尾方社長ご自身の自己紹介もお願いいたします

私自身は、元々ANAに新卒入社し、以来14年間、国際畑を歩んでいました。18ヵ国に出張し、関西空港の立ち上げや国際マーケティング、ロンドンには2年ほど駐在もしていました。

管理職として役職に就いたタイミングで、定年まで大企業で勤め上げるのが自分の人生だと感じていましたが、ある日義父から後継者がいないので、社長をやってくれないかと打診されました。異業種である製造業でいきなり社長職という全く予想していない展開でしたが、義父の後を引き継ぐことを決心しました。

入社してからは、リーマン不況で赤字が拡大するだけではなく、社内の環境(E-mailもネット環境もないなど)にあまりにも課題が多く、正直どん底の時代を経験しました。笑

ーー様々なご苦労があったのですね

はい。不採算事業を整理し、新卒を含めた人材採用を実施し、社内を若返らせることで組織体質を改善しました。さらに、製造のみならず、商社機能を拡大し、技術商社を目指したいと考え、下請けモデルを脱却。次世代の事業を創造するため、新規事業と海外展開に積極的にチャレンジする方向に転換するという明確な成長戦略を打ち出しました。

結果として、多々困難な状況を経験しましたが、業績に関しては右肩上がりの成長を果たすことができています。

技能実習生の雇用拡大で年間3,000万円の間接費用

(佐竹製作所のFA部品工場のある山形県飯豊町は人口約7,000人で過疎地認定されている)

ーーそんな中外国人の雇用に取り組まれますが、どういった背景があったのでしょうか?

当初は、埼玉や山形の生産拠点での雇用を目的に、技能実習生を受け入れました。今から10年ほど前ですかね。

きっかけは、弊社の顧客企業から、懇意にしている会社があるから使ってみないかと誘われたことが契機です。当時は、中小企業の製造業に外国人が関わるというのは聞いたことがなかったのですが、私の知っている山形の気質に一番近しい国として、タイ人の受け入れをトライアルという形でスタートさせます。

少子高齢化の影響と、特に山形という地方の性質上、人員確保には年々苦労し始めてきていたため、技能実習生の雇用人数はどんどん拡大していきました。結果、最も多い時期で、47名まで雇用していました。

ーー現在では特定技能の受け入れも積極的になさっているのでしょうか?

技能実習生の雇用人数が拡大するにつれ、監理費や研修費などの人件費以外の間接費用が年間で3,000万円と膨れ上がっていきました。正直、技能実習生を多く雇うとなると、あまりメリットがないと感じています。

新しく制度化された「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザで雇用していく方が、トータルで考えた時に、非常に効率的です。ここから、技能実習から他の就労ビザへと舵を切っていくこととなります。

ただ、特定技能へ移行するに伴い、外国人雇用のノウハウや知識が必要になってきます。

技能実習生のように、いわゆる転職もできないし、ブロックされた状態の雇用形態と違って一般雇用に近くなったという意味では、会社側の体制整備が必要だと考えています。

その代わり、やはり技能実習よりも自由度は増したという実感は強く感じています。

外国人雇用が大きな転換点に

写真_山形工場で働く特定技能外国人
山形工場で働く特定技能外国人

ーー初めて外国人を受け入れる際、現場から不安の声は上がらなかったでしょうか?

やはり山形の田舎の方なので、外国人が入ってくるところは珍しかったです。最初はどうしても物珍しい感じで現場も受け取っていたと思います。

特にタイの女性ということもあったので、生活における食糧(野菜やコメなど)や、あるいは着る物など、様々な支援をして立ち上がったのは覚えています。

ただ、金属加工で特に工作機械、大型の機械を操作するという意味では、女性の外国人が触るということは、今まで価値観としてもなかったことでした。そのため、外国人女性が大型機械を操作するというのは大きな価値観の転換点になりました。

特に、素人でセミオーダーの加工をするとなると、それなりの知識と経験が必要になってきます。いかに素人でも即戦力になれるのかという点で、デジタル化やシステムによって未経験でも加工できるようにシフトせざるを得ない状況になりました。これは、加工方法の転換という意味でも、外国人雇用が大きな転換点になったと思います。

ーー実際に受け入れてみて「ポジティブ面」と「ネガティブ面」はありましたか?

ポジティブという意味では、日本人だからとか、外国人だからハンディがあるとか、そういうことはなかったですね。一方、働く意欲という意味では、非常に高いと感じています。海外に来て、しかも母国語じゃない言葉で仕事をしていくことになるので、やはり甘い考えだけでは続かないですからね。

また、若い人材が確保できるという意味でも、大きなポジティブ要素だと感じています。特に山形だと、日本人に絞って採用すると、どうしても年齢層は高めになってしまいます。一方、外国人の年齢層は20〜30代が多いので、女性社員が増え、年齢も下がるとなると、職場に活気が出てきます。

あるいは、海外から外国へ来て、意欲高く働いている姿を見て、周囲が感化されることで職場全体としても前向きに行動するようになっている感じがします。

デメリットで言うと、手順書などで細かいところを日本語だけでなく母国語も混ぜてあげないと、本当の意味での浸透・理解ができていない場面がありますので、意識的なフォローが必要です。

居住に関しても住むに当たっての指導が必要だと感じています。特に弊社の工場がある山形は雪国になりますので、アジアから直接きた場合には当然、初めて見る方や寒さを経験される方も多いです。暖房や生活様式へのフォローなどは、余計に手間がかかると言えますね。

また、銀行の手続きや病院の診察など、日本語はある程度喋れますが、一定のフォローは必要です。弊社の場合はタイ人が多かったこともあり、タイ人の日本語の先生を雇用しました。常に日本語を学ぶ環境があるので、弊社で働く外国人はN2クラスの日本語資格を取得している社員が多いので、幸いにもコミュニケーションには苦労せずに済んでいます。

編集後記

今回の前編では、株式会社尾方社長に、外国人材の受け入れ背景から社内の変化についてお伺いしてきました。後編には、山形という地理的ハンデを抱えた中で、募集人数の3倍の応募を獲得した秘訣や外国人材雇用の募集から定着支援の内製化に至る具体的なお話をお伺いしています。製造業における外国人雇用という大変貴重な事例をお伺いしていますので、ぜひ後編もあわせてご覧ください。

後編はこちらから!

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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