【事例インタビュー 後編】製造業で特定技能の支援を自社内製化!? / 株式会社佐竹製作所 尾方社長

前編では、株式会社佐竹製作所での外国人雇用の背景から、受け入れ後の社内の変化についてお伺いしてきました。

今回この後編では、同社が山形という地理的ハンデのある中、多数の応募を獲得できている理由を深掘りし、その後、製造業でありながら外国人の活用コンサルティングを立ち上げた背景に至るまでお伺いしていきます。

なお、YouTubeでは尾方社長へのインタビューを動画形式で公開していますので、ぜひご覧ください!

株式会社佐竹製作
代表取締役社長 尾方 謙一

1991年、大学卒業後ANA入社。14年間在籍し、国際事業で18カ国に出張。
Cargo事業で関西空港立ち上げ、国際マーケティング、ロンドン支店で欧州地区マネジャーなどを歴任。
2009年、佐竹製作所代表取締役に就任。金属加工・FA・センサ・継手・海外人材活用コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開し、増収増益を実現。
上海・バンコクなどのグローバルネットワークを構築し、外国人材中心の組織体制を構築している。

あらゆる施策を実施し「雪国」「地方工場」のハンデを克服

写真_山形工場(佐竹製作所)

ーー山形という地方において募集枠の3倍の応募がくるとお伺いしましたが、何か他社と違う意識していることはありますか

弊社の場合、「雪国」「地方の工場」という点が、かなりハンデになります。普通に募集をしていても、都市部の求人に勝ち目がありませんので、最低限、都市部と変わらない給与水準にするというのは意識しています。

さらに、社宅の完備と社宅の費用負担、バスでの送迎など、多くの福利厚生を取り入れ、維持していくことを心がけています。

特に、家族で来られる方、いわゆるもうすでに特定技能の方だとか就労ビザの方は、家族ぐるみの転勤・赴任になりますので、プライベートにおける会社のバックアップが必要な方も多いと思います。弊社の場合は工場内に託児所を設けているので、夫婦で働いてお子様は託児所で預かるという、家族ぐるみで就労できる体制が取れています。

その他、あらゆる施策を試し、効果があったものは極力維持するように努めています。全ては、地理的ハンデを克服することと、入社いただいた社員に長く働いてもらいたいと本気で思っているからですね。

短期間での人員増強に外国人雇用〜支援までを内製化することで対応

写真_佐竹製作所_山形工場で働く特定技能外国人
山形工場で機械操作をする特定技能外国人

ーー特定技能の支援を内製化されていますが、実行しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

現在弊社は、外国人の募集から申請、内定後の義務的支援に至るまで、全て自社で対応しています。今に至る契機となったのは、2020年の新型コロナウイルス感染症ですね。このコロナ禍において、東南アジアの海外工場がロックダウンの影響でストップしてしまいました。サプライチェーン・生産インフラが停止してしまったため、部品の供給が止まり、生産が滞るといった現象が発生しました。

そういった中でも、『海外で生産がストップしているものを国内で応援生産をしてほしい』という、お客様のニーズが強くありました。

こういった背景から、お客様からいただく生産オーダー数によっては、加工者の人数を1-2ヶ月で30人程度増やさなきゃいけないという事態に陥りました。やはり、この人数を短期間に集めるとなると、日本人や地元山形だけだと到底追いつきません。

一方で、この短期間で大量人数の採用を可能にしていくのが、外国人社員の雇用、特に自社体制での募集・採用活動になってきます。

外部の人材エージェントや登録支援機関に委託して募集していくという選択肢もありましたが、いちいち面接の調整や書類申請のやりとりをしているとなると、なかなかスピード感持って配属させることができません。

自社機能として、メーカーに必要な要件を満たした人材を定義し、SNSでのリクルート活動を行い、面接・内定フォローの連絡をする。この社内で募集〜面接までを一貫してやっていくという『機動力』は、圧倒的だと思います。

かつ、ビザの申請や各種役所手続きまでも社内で内製化することによって、通常外部にお願いしている配属までの待機期間と比較すると、社内の方が圧倒的に早く、スムーズに手続きが進められます。

短期間でまとまった人数を確保し、最短で配属させるという意味で言うと、内製化したことはものすごく大きなメリットがあったと思います。

内製化で得た経験・ノウハウを製造業へ還元するために新会社を設立

新会社設立は金属産業新聞でも紹介されている

ーー特定技能の内製化を実現させるだけではなく新会社も設立されていますよね?

内製化をする過程で、山形という不人気エリアにおいて、19名の採用人数に対し279名の集客を実現しました。また、外国人材はすぐに転職してしまうと言われていますが、弊社の雇用継続率は98%を達成することができています。

山形工場をはじめとする工場現場での作業員の確保はもちろん、神田の本社におけるいわゆるバックオフィス人材や営業マンに至るまで外国人活用を進めています。

気がついたら、社内の外国人比率が55%を超えるという状況になりました。製造業では、なかなかないダイバーシティを実現できていると思います。

もちろん、最初からうまくいったわけではありません。様々な失敗や試行錯誤の賜物によって実現できていることは言うまでもありません。

一方で、弊社の供給元、仕入れ先もしくは販売先の顧客、お客様の工場等でも、散々人手不足で困っているということは聞いていました。中には、人手不足が原因で社内の生産体制を維持できず、供給が滞っているといったケースも散見されます。

この製造業界全体が抱えている『人手不足』という課題解決をするために、自社で実践してきた外国人材の募集ノウハウを提供し、貢献するため、新会社の設立に至っています。

ーー新会社では具体的にどんな事業を行っているのですか?

弊社の新会社『ファクトリーラボ』は、外国人の活用コンサルティングサービスを提供しています。

東南アジアを初め、タイ・ベトナム・インドネシアなど、各国拠点及び強いパイプを活かすことで、様々な外国人の採用と紹介ができる会社になっています。

特に、メーカーによる、メーカーのための人材紹介になりますので、佐竹製作所自身が経験したノウハウをもとに製造業に人材を提供できるという意味では、他の会社に比べて、より細かいサービス提供ができると自負しております。

スピード感ある人材の安定供給、あるいは採用後のフォローアップという意味でもいわゆる企業の中に入った後の製造業ならではのノウハウもありますので、そういった意味で提供した紹介先の企業様にもきめ細かくフォローできるかと思いますので、ぜひ活用していただければと存じます。

FAシステムと外国人材の提供を通じて「ものづくり産業」へ貢献する

写真_佐竹製作所_特定技能外国人
社員同士の仲もよく、明るい職場になっている

ーー外国人比率も多く新会社も設立された今、佐竹製作所が目指す今後のビジョンを教えてもらえますか?

弊社のように、製造屋をやっている企業、中でも国内の設備部品を製造する分野においては、あらゆる企業で十分に人手が確保できていないと言う現状があります。

弊社もその中の一社ではありますが、この人手不足という難題から脱却するために、弊社の行ってきた大きな苦労は2つあります。

まず、手作業の人海戦術がなかなか維持できないという現実。製造業では、経験や匠の技がなくても、あるいは人海戦術でまとまった人数が確保できなくても、生産できる体制構築をする必要性に迫られています。そういった生産改革・生産性アップができる仕組みとなってくると、デジタル化・システムによるものづくりは避けて通れません。

特に弊社の場合、大量生産の部品(装置部品)を製造していますが、その装置部品というのは、オーダーメードで1個作りと言うケースが多くあります。そのオーダーメード部品の手作業部分をいかに減らし、システムによって知識と経験がない中でも作れる、簡単に作れていくという仕組みづくりができてくると、省人化、いわゆる少ない人数で生産することが可能になってきます。

弊社は、FA、いわゆるファクトリーオートメーションを実現することで、システム化を推し進めることができました。この自社での経験をもとに、他社にも提供・提案していくことで、製造業全体の基盤を強くしていきたいです。

あと、もう一つはFAにより省人化を推し進めても、そのFA機械を操作する人数ですら、なかなか確保できないという企業様もいらっしゃると思います。特に弊社の場合はバックオフィス、いわゆるCADの設計や購買要員、営業マンなど、本来日本人でしかありえないと思われるポジションまで海外人材を登用しています。

その必要最小限の人材を外国人活用すると言う提案をし、定着支援に至るまで総合的にサポートできる、メーカーによるメーカーのための人材紹介事業を確立していきます。

製造業の基盤をさらに強くしていくと言う意味では、システム(FA)と人材(外国人材)の二軸で製造業全体に提案し、人手不足に貢献できる省人化モノづくり企業へと佐竹製作所を発展させていくことが、私のビジョンですね。これからは、そういう意味でものづくり産業への貢献がさらに広がればいいなと思っています。

ーーありがとうございました!

編集後記

今回は、前後編にわたり、佐竹製作所の尾方社長にお話をお伺いしてきました。地方企業様にとっては、地理的ハンデを負っている中で、どのように人材を募集していくのかという大変貴重なケーススタディとなったのではないでしょうか。また、製造業全体における人手不足という難題に、省人化×外国人材の活用という新しい切り口でチャレンジされています。ぜひ製造業の企業様は、同社並びにファクトリーラボにお問い合わせしてみてください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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