昨今、業務委託等、正社員以外の雇用形態が注目を集めていますが、就労ビザで働く外国人も副業やアルバイトに従事できることをご存知でしょうか?本記事では、外国人労働者が副業・アルバイトを行うための条件や注意点、資格外活動許可などについて、詳しく解説していきます。
また、YouTube動画においても解説動画をあげていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
外国人労働者は副業・アルバイトできるの?
結論として、外国人労働者も一定の条件を満たしていれば副業やアルバイトが可能です。
外国人労働者にも日本人と同じように「本業とは別に稼ぎを得たい」と考える方もいらっしゃると思います。
ただし、無条件に副業やアルバイトができるわけではありません。日本で働く外国人は、「在留資格」によって、副業やアルバイトの可否が大きく制限されますので注意する必要があります。
前提として、「在留資格」の確認が必須
「在留資格」とは、外国人が日本に在留し、何かしらの活動を行うために必要となる資格のことを指します。
これは、出入国管理及び難民認定法によって規定されており、日本での活動の種類によって29の在留資格に分かれます。取得要件や在留期間、就労制限の有無など、在留資格ごとに細かい運用ルールが異なります。
上記は在留資格の一覧表ですが、このうち「就労が認められている在留資格」は19種類あります。
巷では、よく「就労ビザ」と呼ばれることがありますが、厳密には「就労ビザ」という名前の在留資格はありません。あくまで、「企業内転勤」や「高度専門職1号ロ」、「特定技能1号」など、就労が認められた在留資格の総称となっております点はご注意ください。
結論、「在留資格で認められている活動許可の範囲内」であれば、特に就労ビザにおいては副業・アルバイトができるケースが大半です。
ただし、就労ビザであったとしても、副業・アルバイトが認められていない在留資格があるということと、副業時に従事可能な業務内容が在留資格ごとに異なるという点についてはご留意ください。
例えば、就労ビザの一つである、在留資格「技能実習」や「特定技能」については、就労が認められている在留資格にも関わらず、副業や他社におけるアルバイトは一切認められておりません。
そのため、面接時には、しっかりと外国人の所持している「在留カード」を確認し、どの在留資格を取得しているのか、またその在留資格では副業やアルバイトが認められているのかは、事前に確認しておく必要があります。
補足として、活動制限のない「身分・地位に基づく在留資格」を持っている外国人については、副業・アルバイトの制限等は一切ございません。
規定の業務範囲内なら副業・アルバイトは可能
先述の通り、「在留資格で認められている活動許可の範囲内」であれば、就労ビザにおいては副業・アルバイトができるケースが大半です。
例えば、ITエンジニアとして企業で働いている外国人の場合、就労系在留資格の一つである「技術・人文知識・国際業務」を有しているケースが多いです(この「技術・人文知識・国際業務」は、就労ビザの中でも最もポピュラーな在留資格の一つのため、例として取り上げさせていただきます)。
この場合、当該外国人が、別の企業でITエンジニアとして勤務する場合などは、副業・アルバイトが認められます。
一方、同じ外国人が、副業で飲食店の現場でホール・キッチン等の単純労働をすることは認められません。なぜなら、外国人が大学や専門学校で学んできた知識や職務経験、母国の文化や言語などと関連しない業務の場合は、「技術・人文知識・国際業務」で認められる業務範囲ではないと判断されるからです。
その他、「高度専門職」の在留資格保持者であれば、そもそも複合的な活動が認められているため、「技術・人文知識・国際業務」と同様、本業と関連がある業務であれば、副業が認められます。
「資格外活動許可」を取得すれば、規定外でも副業・アルバイトが可能に?!
「就労ビザ」を持っている方のうち、規定外の業務で副業・アルバイトをすることはできないのでしょうか?
加えて、そもそも「就労が認められていない在留資格」では、絶対にアルバイトをすることはできないのでしょうか?
実は、「資格外活動許可」というものを取得することによって、副業・アルバイトが認められるケースがあります。
ここでは、その「資格外活動許可」について見ていきましょう。
資格外の業務活動は「資格外活動許可」が必須
先述の通り、就労ビザで規定された業務範囲内であれば副業アルバイトは可能ですが、規定された業務範囲外(資格外)の活動(副業やアルバイト)をする場合においては「資格外活動許可」が必要になります。
以下は在留カードのサンプル画像ですが、裏側④の部分を見ることで、資格外活動許可の有無を確認できます。
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を有しITエンジニアとして企業に務めている外国人が、土日だけ在留資格「技能」の活動範囲にあたる調理師として働くケースなどは、資格外活動許可が必要になります。
注意点として、この資格外活動許可には以下2つの種類が存在しますのでご留意ください。
包括許可による資格外活動
包括許可による資格外活動とは、1週間に28時間以内の収入を伴う事業を運営する活動、または報酬を受ける活動のことを指します。いわゆるアルバイトのような働き方を想定した資格外活動許可となります。
個別許可による資格外活動
個別許可による資格外活動とは、包括許可の範囲外の活動について許可申請があった場合や、就労資格を有する外国人労働者が他の在留資格に該当する活動を行う場合に、許可される資格外活動のことを指します。
先ほどの「技術・人文知識・国際業務」でありながら、土日に調理師として働く場合は、在留資格「技能」で認められる活動範囲に該当してきますので、個別許可を取得する必要性が出てきます。
また、本業に支障がない時間や場所での範囲内でしか資格外活動は認められませんので、先ほどの「技術・人文知識・国際業務」の事例のケースで、週4日調理師として働き、週2日のみITエンジニアとして活動する、などといった働き方は認められません。
「留学生」や「家族滞在」の外国人はアルバイト可能?
本来就労が認められていない「留学生」や「家族滞在」の在留資格保有者については、資格外活動の「包括許可」を取得することでアルバイトすることが可能になります。
この場合は、1週間に28時間以内であれば、アルバイトをすることが可能になります。
留学生アルバイトについては、ぜひこちらの記事についても合わせてご覧ください。
ボランティア業務は資格外活動許可は必要ない
これまでは報酬が発生する副業・アルバイトについて述べてきましたが、報酬が発生しないボランティアなどは「資格外活動許可」は必要なく、無条件に取り組むことができます。
また、たとえ報酬があったとしても、臨時の報酬などであれば、資格外活動許可の対象とはなりません。
具体的には以下のような報酬は、資格外活動許可がなくても受け取ることができます。
外国人労働者が副業・アルバイトをする際の注意点
ここからは、外国人が副業・アルバイトをする際の注意点と、雇用する企業側の注意点についても見ていきます。
会社の就業規則で副業OKか確認する
これらは外国人労働者に限った話ではありませんが、本業の雇用先企業がそもそも副業がOKなのか、会社の就業規則で確認をしましょう。
転職サイト「duda」の調査によると、副業が認められている会社の割合は全体の25.3%と多くなく、49.8%の会社が副業を禁止しています。
また、外国人を雇用する企業側においても、彼らが可否の確認せずに副業を行ってしまう可能性もあるため、採用時に自社の副業可否や何が副業にあたるかなどを伝えておくことが大切です。
収入次第で確定申告が必要
続いての注意点は、収入次第では確定申告が必要となることです。
会社に勤務されている方であれば、外国人であっても原則会社側で年末調整を実施してくれるので、自身で確定申告を行う必要はありません。
しかし、副業をしている場合、その副業収入の金額によっては確定申告の対応が必要となるケースがあるのです。
具体的には20万円以上の収入が副業で発生した場合、確定申告をしなければなりません。
確定申告は用意しなければいけない書類なども多く、何をどこに記入すればいいのか、わかりにくいという一面があります。
そのため、確定申告が必要にならないレベルまで副業収入を抑えるのも一つの選択肢でしょう。
不法就労助長罪に注意する
もっとも注意が必要なのが、「不法就労」や「不法就労助長罪」にならないかです。
副業・アルバイトや、掛け持ちなどで不法就労になる場合は以下のようなケースが考えられます。
また、この場合は、範囲外の従事をさせた企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
そうならないように、副業・アルバイトとして外国人を雇用する際は、企業側も外国人が有する在留資格を確認し、それらが副業が可能かどうか、資格外活動許可が必要かどうかをしっかりと確認する必要があります。
具体的には以下の点を確認するとよいでしょう。
- 従事予定の業務内容が、資格外活動許可がなくても問題ない就労ビザか
- 従事予定の業務内容が、資格外活動許可が必要な場合は許可を得ているか
- 従事させる業務内容が、就労ビザの外国人が従事できる業務か
- 「特定技能」「技能実習」の在留資格ではないか
- 留学生などの場合は、資格外活動許可を得ているか、掛け持ちなどで包括許可範囲以上の労働時間にならないか
また、昨今は偽造在留カードも増えているため、在留資格を確認する場合は偽造されたものではないか、必ず確認が必要です。
在留カードには偽変造防止の加工がされているため、以下の項目をチェックしましょう。
また、出入国在留管理庁からは、偽造カードを見分けるアプリも公開されておりますので、無料で偽造の有無をチェックすることも可能です。
仮に、在留カードの偽造や本人の虚偽などで不法就労の事実を知らなかった場合であっても、不法就労助長罪は3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金が課されるので細心の注意が必要です。
資格外活動許可の申請方法
ここでは、資格外活動許可の申請方法について見ていきます。
資格外活動許可を受けるための条件
資格外活動許可を得る上では、以下のような条件を満たす必要があります。
副業のために個別許可を得ようとする場合、上記全ての条件をクリアする必要があります。
申請の流れ
資格外活動許可を得るための申請の流れとしては以下のようになります。
ステップ①:必要書類の準備
まずは申請に必要な書類を準備します。
必要な書類については、後ほどご紹介します。
ステップ②:申請
必要書類の準備ができ次第、管轄の出入国在留管理庁にて資格外活動許可申請を実施することになります。
ステップ③:許可の通知
申請が許可された場合、許可された旨が記載されている通知書が郵送されてきます。
申請から許可の通知が来るまで、おおよそ2週間から2か月程度掛かる点は留意しておきましょう。
ステップ④:資格外活動許可証の交付
その後資格外活動許可証が交付されることになります。
申請についての詳細はこちらのページも併せてご確認ください。
資格外活動許可に必要な書類
資格外活動許可申請に必要な書類は以下の通りです。
- 資格外活動許可申請書
- 当該申請に係る活動の内容を明らかにする書類
- 在留カードを提示
- パスポート又は在留資格証明書を提示
- パスポート又は在留資格証明書を提示できない時は、その理由を記載した理由書
- 身分を証する文書などの提示(申請取次人が申請を提出する場合)
なお、申請にあたって手数料は掛かりません。
逆にアルバイト雇用前提で就労ビザを取得できるのか?
ここまでは、就労ビザを有している外国人の副業としてアルバイト雇用をするケースについて見てきましたが、一方で、アルバイト雇用前提で就労ビザを取得するのは可能なのでしょうか?
結論から言うと、アルバイト雇用の場合、就労ビザの取得は非常に難しいでしょう。
理由としては、就労ビザは外国人が中長期的に安定して雇用されることを前提に取得できる在留資格で、その継続性や安定性を証明するために、1つの勤務先でフルタイムで働き、同じ業務を行う日本人と同程度の報酬である必要があるからです。
外国人が就労ビザを取得するためには、フルタイムの正社員か長期の契約社員として雇用する必要があります。
アルバイト形態の場合、単純作業や肉体労働が中心になるケースが多い一方で、就労ビザでは、単純労働が認められていないケースが大半です。
ただし、唯一就労ビザにおいて、単純労働が認められている在留資格が存在します。それが、2019年4月に新たに創設された在留資格「特定技能」です。
「特定技能」であれば、単純労働や肉体労働がメインの分野、例えば飲食店、ホテル、建設業などの業種でもフルタイムでの正社員雇用が可能です。
もしブルーワーカーの人材不足でお悩みの企業様は、特定技能外国人の雇用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は外国人労働者が副業をするための条件や注意点を中心にお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は外国人労働者の方の就職を支援しており、様々な企業のお仕事を紹介させていただいております。
少しでもご興味ありましたら、一度お気軽にご相談ください。