【事例インタビュー】日本人はいらないと現場担当者が言うくらい、外国人社員はハングリー精神旺盛です / 株式会社翔和様

埼玉県越谷市にてバケットコンベアの製造・販売を手がける株式会社翔和。「日本人の採用は諦めている」と語る田中社長は、現在「特定技能外国人」を3名雇用しています。今回は、特定技能の前から外国人社員を受け入れ、すでに現場レベルでダイバーシティの考えが浸透している同社の取り組みをお伺いしてきました。

社員はみんな、外国人に慣れてしまいました

株式会社翔和様の本社工場
株式会社翔和様 本社工場

ーー貴社の事業概要についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

弊社では、バケットコンベアと呼ばれる特殊なコンベアを自社ブランドとして製造・販売しています。コンベア事業がメインですが、舞台用照明器具・コンクリート関連事業も展開しています。

過去、舞台用照明器具とコンクリート関連事業が弊社の売り上げの6-70%を占めていましたが、照明用器具の製造・販売に関しては欧米や中国にグローバルマーケットを握られていますし、コンクリート関連事業も建設会社さんが手がけるようになり、頭打ちになってきています。

こういった背景があり、現在は、ちょっとニッチなバケットコンベアの事業へ主軸を移しています。このバケットコンベアは、物流倉庫にあるような、ベルトで水平に動くものではなく、垂直運動を伴ってものを運べるコンベアとなので、ちょっと特殊なものとなっています。食品関係の会社さんや化学メーカーさんなどで導入いただいていますね。

ーー田中社長の簡単なご経歴もお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?

大学卒業後、日航プラントという会社に入社しました。その会社では、半導体ウエハーや液晶を洗浄する、「超純水」と呼ばれる特殊な水を扱う配管設備のラインや配置計画を設計する仕事に従事していました。有名どころだと、シャープの亀山工場や韓国に3-4ヶ月出張してサムスンの工場設計・SVなどに携わっていたりしました。

1社目の会社に3年くらい勤めた後、翔和の前身だった会社に転職します。ちょっと大きめな町工場って感じで、当時は舞台照明でトップのシェアを誇る会社の子会社でした。

ただ、親会社が2000年に民事再生法を適用されてしまい、親会社と子会社の関係を解消することになってしまいました。

やっぱり残された従業員は困るわけじゃないすか。そんなこんなで翔和っていう会社ができました。当時は初代社長が経営を担っており、2000年の途中で私がバトンタッチしてからもう23年になりますね。

ーー外国人雇用は特定技能を受け入れる前からやられていましたか?

弊社は、昔から外国人社員を雇用していました。

最初は、日系二世の方を雇用していました。また、当時台湾の会社と付き合いがあって、そこの関係者から紹介してもらった台湾人(現地の理系大学卒業者)や工場近くの大学で学んでいる中国人留学生をアルバイトとして働いてもらい、そのまま大学卒業と同時に正社員として入社してもらったりしています。今、その中国人社員は管理部門及び通訳業務に従事しています。

その他、永住権を持っている方もいますね。永住権を持っていれば、就労・在留期限の制限なく働いてもらえますからね。人数的には、設計部門に2名(台湾・スリランカ)、管理部門に中国の方が1名、現場にベトナム人の特定技能が3名と永住権を持っている中国人の方が1名となっています。

正直、弊社の社員はみんな外国人に慣れてしまいましたね。

ーー社長から見て、業務のパフォーマンス的にはどうですか?

結構、お国柄は出るかもしれませんね。

台湾・スリランカの方はなんとなくのんびりしていますね。一方、中国の2名は両極端で、真面目でうるさいのと、何となくのんびりしているのと毛色が違いますね。ベトナムの方は、とにかくハングリーです。傭兵部隊みたいな感じです笑。

ーー外国人、特に技能実習/特定技能の受け入れをご決断された背景は何かあったんでしょうか?

元々、会社の将来展開を構想した時に、いずれベトナムを初めとした東南アジア諸国との貿易ができないかと考えていました。

そうなると、やはり現地の方とのコミュニケーションを取れる体制を築いておかないといけないので、ベトナム人の技能実習生の受け入れをスタートします。ただ、2名のベトナム人技能実習生を雇用したのですが、1名ホームシックになってしまい、途中帰国してしまいました。

これがきっかけで、急遽特定技能の方を1名採用しようという流れになります。最終的に、1名特定技能の方を雇用し、その方が友達も紹介したいとのことでもう1名、合計3名のベトナム人(今は全員特定技能)を雇用することになります。

ーー日本人の採用はどうですか?

日本人の採用は基本的に諦めてますね。

なかなか集まらないっていうのもありますし、数年前には「やる気のある若者を集めて紹介します」っていう人材紹介会社にお願いしたこともあります。ただ、やっぱり難しいですね。入社してから、すぐに辞めてしまいました。

現場の担当者は「もう日本人はいらない」と言うくらい、外国人社員はハングリー精神旺盛です

バケットコンベアの写真
本社工場で製造されるバケットコンベア

ーー貴社は複数の登録支援機関を活用されていますが、違いなどあったりしますか?

現在はジンザイベースを含めて3社の登録支援機関とお付き合いしています。弊社の3名の特定技能は全員異なる支援機関に委託している状態になっています。

様々な背景があってこの形になっているのですが、やはり支援機関ごとの色は異なってきますね。規模の大小関係なく、スピード感や担当者の質など、良い面もあれば悪い面もあるので、一概に「ここが違う」というのはなかなか難しいですね。

ただ、強いていうならば、ジンザイベースさんはコスト面は結構安いですね。一方、やれることは基本自社で対応してくださいっていうスタンスな印象です笑。

ーー外国人の受け入れ時、現場からの抵抗はなかったというお話でしたが、実際はどうでしたか?

これは、現場の社員含めて、本当に何もなかったんですよね。

むしろ、現場の担当者が「もう日本人はいらない」と言っているくらいです。やっぱり、教育してもなかなか続かなかったりするのですが、一方で外国人の方はハングリーに業務へ取り組んでいただけるので。

また、元々外国人の方を雇用していた経験があるので、結構慣れてしまっていますし。

やはり今の時代、日本人だけだとなかなか回っていかないと思うんで、弊社の考えとしても、国籍関係ないよねっていう感じで現場まで浸透できていますね。

ーー逆にネガティブなことはあったりしますか。

日本語を覚えようという意欲に差がありすぎている点ですかね。

同時に、評価制度を構築することが大変ですね。やっぱり、外国人の方にとって、お金って結構重要じゃないですか。だからこそ、目に見える形の評価制度がないと、不満を買っちゃいますよね。

例えば、日本語だと、JLPTを受験されるケースが大半じゃないですか。ただ、このJLPTって、現場で全く役に立たないんですよね。N2の方でも、ろくに会話できない人はたくさんいますからね。正直、JLPTは聴解と筆記が中心となっていますが、やっぱり職場で一番大事なのは会話ですよね。

弊社では、自社負担で週末に家庭教師を雇って希望者に日本語教育しています。よくあるパターンとして、自分が遊びたいから、積極的に日本語を勉強しないという方が多いので。

入社5年目になるベトナム人は、JPNTを取ってませんが、家庭教師の先生にお願いして日本語会話のテストを別に実施しています。質問をし、そこに対する返答に応じて評価するってやり方です。しっかりと評価制度にも加えて、会話能力を中心にした日本語能力を起点に評価する形で運用しています。

ーー外国人が定着する上で、気を付けているポイントなどはありますか?

特に何かを意識して取り組んでいるわけではないですが、大前提として弊社の社員はみんな面倒見がいいんですよね。

特に、外国人の方だと、生活する上でも例えば病院行くってだけでも困るじゃないですか。弊社の場合、私から指示を出すみたいなこともなく、みんな率先して色々と手伝ってあげたりとかしているんですよね。

また、有給休暇の取得率は、去年の実績で79%でした。弊社の場合は、原則2日前までに有給休暇の申請をするとほぼ100%取得できています。まあ、最初は1ヶ月帰国したいから帰らせてくれみたいな依頼がベトナム人からあったりしましたが、最初の1回だけ特例で認めて「次からは有給の範囲内で取得するように」と言っています。

ーーありがとうございました!

自分が働く会社を自ら選択できるのは、技能実習時には想像できませんでした

ベトナム人社員のホアンさんの写真
ベトナム人社員のホアンさん

ーー日本に来る前はどんなことをしていましたか?

高校卒業後は、マレーシアに6年ほど在住していました。溶接の仕事で、日本でいう技能実習制度みたいな形でした。なので、今はベトナム語に加えて、マレーシアの公用語であるマレー語、日本語の3ヶ国語を話せるようになりました。

ベトナムへ帰国後は、3年ほど機械加工の仕事を経験し、その後技能実習生として日本へ行くこととなります。

ーーどうして日本に来ようと思いましたか?

日本はすごい国だと思っていました。経済や文化などとても発展していて、いろいろなことが学べると考えました。

また、元々マレーシアで働らいたこともあるので、他の国はどんな感じか、ちょっと気になってもいました笑。

2019年に、技能実習生として来日し、受け入れ企業で溶接や板金の作業をしていました。窓枠などを製造していましたね。

ーー特定技能になる時、不安だったことはありますか?

転職する時は、結構不安でしたね。

特定技能になるときに、技能実習で仕事をしていた会社を辞めて、新しい会社へ行くことになるので。特に、人間関係やどんな会社で入社後に仕事についていけるのかなど、考えるとキリがありませんでした。

ーー実際に特定技能になってみて、どうでしたか?

入社後はすぐに先輩社員とも仲良くなれて、不安もなくなりました。まだまだ仕事になれていないので、これからもっと頑張らないといけないですね。

また、技能実習の時に比べると、だいぶ楽になったと感じています。給料は上がりましたし、翔和は自分の能力に応じて昇給やボーナスがもらえる点もすごい魅力的だなと感じています。

もっとも大きいのは、転職ができることですね。自分が働く会社を自分で選択できるっていうのは、技能実習の時には想像もできませんでした笑。翔和みたいに、しっかりと能力に応じて昇給が実現できる会社を選べるようになったのは、本当に大きな変化だと思います。

ーー最後に、将来の目標・夢を教えてください!

ちょっとプライベートな話になってしまいますが、帰ったら結婚したいですね笑。

一方で、正直いつまで日本で仕事するか決まっていませんが、日本で長く働き、たくさん稼ぎたいと考えています。ベトナムへ帰国したら、家を購入して、安定した仕事をしたいですし、もしお金があれば、自分のお店を作るか、経験を活かして機械加工の会社を作りたいとも考えています。

ーーありがとうございました!

編集後記

今回は、株式会社翔和の田中社長とベトナム人社員のホアンさんにインタビューをさせていただきました。日本語能力を起点にした評価制度や、現場までダイバーシティの考え方が浸透している同社のお話は大変参考になりました。また、ホアンさんの話では、特定技能では「転職ができる」と言うのは、やはり外国人側にも大きなインパクトを与えていることが伺えます。

弊社では、「特定技能」を希望するベトナム人、ミャンマー人、インドネシア人、ネパール人と多国籍の人材紹介が可能となっております。特に、製造業で外国人雇用にご興味ある方は、ぜひこちらの問い合わせフォームからご連絡をお待ちしております。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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