2023年5月18日、福島県磐梯町との共催で「地方企業の救世主!?今こそ知りたい「特定技能」外国人」というテーマでセミナーを開催しました。今回は、登壇内容を編集した上でセミナーレポートとして公開いたしましたので、特に宿泊業・製造業の企業様はぜひ最後までご覧ください。
人口減少の歯止めが効かないという現状
まずはじめに、少子高齢化の推移というところですが、特にご覧いただきたいのが、15歳から64歳の一番元気に働ける年代の方々が急速に減少しているという現状です。そのため、人材獲得競争というのは、今後も加速していくことが考えられます。
現状、「人材をうまく採用できていない」、「昔より採用が厳しくなった」と思われている企業の皆様、大変多くいらっしゃると思います。
しかし、断言させていただきますと、このような状況が改善されることは一切ないと思っていただければと思います
福島県磐梯町においても、その状況は同じです。福島県全体でみても、磐梯町についても人口減少が進んでおり、その歯止めが効いていないのが問題点として挙げられます。
このような状況は、今後10年、20年は続いていくことが考えられます。
宿泊業においては特に人材難
宿泊業にフォーカスして見ていきますと、コロナ禍により就業者数が激減しており、アフターコロナでも、コロナ前の水準には戻ってきていないというのが現状です。
一方で、全国旅行支援などの影響で、宿泊施設利用者数は増えてきている状況です。
宿泊施設利用者数は増加傾向にあるにもかかわらず、宿泊業の従業員が不足しているという、深刻な状況が、今日本国内で起きている事実です。このような人手不足の穴を埋めるために、既存の従業員の方の負担増であったり、サービスを一部限定する等で対応しているようです。
製造業でも人材難|高齢化が深刻
製造業について見ていきますと、高齢就業者数は年々微増(直近は微減)、若年就業者数は直近で横ばいという状況です。しかし、人材について、全く足りていないということは、宿泊業と同様で、その穴はすでに引退された方を再雇用という形で現場で雇用して埋めているというのが現状です。
ロボットでも代替できない業務がある
宿泊業にも製造業にもいえることですが、人材が増えれば、今よりも業績をあげることができるという状況で、そのために何をすべきか。
デジタルを活用し、人がいなくても回る仕組みを作っていくという流れが全世界で言われていることですが、デジタルの力で全てを解決することはできません。
宿泊業や製造業の一部の作業については、ロボットで代替するのは困難であるという実情があります。
人材面における経営上のリスク
状況を整理させていただきますと、「就労者数が減少している」一部雇用調整として使っていた、「派遣の単価が上昇している」、「社員の高齢化」が、現状と今後の経営のリスクであるといえます。
一方でこの部分を解決できれば、企業の業績向上に繋がると考えていただければと思います。
このような人材不足という状況を打破していくために、外国人活用を進めていこうという流れが、日本全国で出てきているわけです。
日本における外国人施策の現状
外国人活用の状況は、日に日に変化しており、国として受け入れの緩和に向けて舵を切っております。そして、本年においては、抜本的に緩和される方向にあります。
就労系在留資格に「特定技能」1号と2号があります。1号は、通算で5年間就労することができ、2号は、無期限で就労することができます。
1号は、現在12業種あり、そのうちの「建設業」と「造船業」のみ2号があり、条件を満たせば、これらの2業種では、1号から2号へ移行することができるという制度です。
特定技能2号は、前述のとおり無期限で就労できることに加え、家族の呼び寄せができるなど、企業にとっても外国人にとってもありがたい仕組みになっております。そして、特定技能2号の業種が、介護を除く業種にも拡大される方向で、検討が進んでいるという状況です。
つまり、「建設業」「造船業」以外の業種でも、条件を満たせば、5年以上日本で就労することが可能になるわけです。企業様にとっても、外国人を雇用しやすくなると言っても良いでしょう。
コロナ禍でも外国人労働者は増加
外国人労働者の数は、増加傾向にあり、着目すべき点としては、コロナ禍においても増加しているという点です。
そして、各職種においても、外国人労働者が増加しており、製造業や宿泊業・飲食サービス業職種においては、非常に人気の職種となっているのも事実です。
人気の職種ということは、それだけ優秀な人材を選ぶことができる、すなわち、買い手市場という状況です。
そのため、多くの応募の中から優秀な方を選ぶことができる状況と考えております
周辺国における外国人受け入れ施策
ここまでで、日本人を採用できなくなって困った時に、外国人を採用しようと考えられている方もいらっしゃると思います。
ただ、そのような、悠長なことを考えている現状ではないということを説明させていただければと思うのですが、日本周辺のライバル国についても、同じように今人が足りなくなっている状況で、東南アジアの地域から人の誘致に動き出しています。
すなわち、外国人にとっては、日本以外にも選択肢が多い状況になっており、実際に日本よりも韓国や台湾に人材が流れている状況です。
ベトナムについては、オーストラリアと外国人就労に関する連携を開始したことから、今後ベトナム人にとっては、オーストラリアが一番人気になることが考えられます。こういった背景からいつまでも外国人材を選べるという状況は続かないと言えるでしょう。
企業の皆様におかれましては、日本人の採用に限定せずに、すぐに外国人雇用の検討が、今後の生存戦略として必須事項になってきます。
地方自治体の皆様におかれましても、今すぐに外国人労働者の誘致の取り組みを実施するべきです。
関係人口の増加の取り組みには様々なものがありますが、外国人労働者の誘致については、即効性のある方法だと考えております。
年々世界における日本の立ち位置は低下傾向にあります。今はまだ選ばれている状況です。今のうちに外国人材を確保していきながら、地方の企業及び地方全体が活性化していけば、結果として日本の国力の増強にも通じると考えております。
積極的な外国人活用の結果、磐梯町並びに今回セミナーに参加されている各事業者様の強化に繋がると思います。
宿泊業 / 製造業で就労可能な在留資格
ここからは、採用するための手続きのご紹介をさせていただきます。
外国人の雇用については、非常に細かいルールが設定されており、ルールを把握せずに、雇用に取り組んでしまうと、知らぬ間に法令違反を犯し、摘発されるというリスクがあります。
では、具体的にはどういっ たルールがあるのか?
前提 として外国人の方は日本で滞在する上で「在留資格」というものを取得しなければなりません。いわゆるビザと呼ばれるものです。
この在留資格は、現在、日本に30種類近く存在しており、それぞれの種類の資格で、従事できる業務が異なってきます。中には、就労自体制限されているもの、就労時間に制限があるものもあるので、外国人を雇用する際には、どの種類の資格が必要か、対象としている外国人はどのような資格を持っているかを把握しておく必要があります。
宿泊業と製造業で就労できる在留資格は、合計6つあります。概要を説明させていただきます
【特定技能1号】は、後ほど詳細を説明させていただきますが、今一番注目を集めている在留資格で、急激に増えてきている在留資格です。
【特定活動46号】 に関しまして、一部宿泊業や製造業でも従事されているケースがあると思います。しかし、特定活動46号を取得するためには、日本の四年制大学を卒業するのと同時に日本語能力試験N1という一番難しい試験に合格しなければなりません。
そして、この資格を有する方はオフィスワークを希望される方が多く、宿泊業や製造業での採用については、ハードルが高くなっております。
【技能実習】に関しまして、国際貢献を目的に東南アジア各国 から直接人材を呼び寄せて研修生として就労してもらうものです。
【留学】と【家族滞在】に関しては、基本的に就労ができない在留資格となっており ます。
ただ「資格外活動許可」というものを出入国在留管理庁から取得することで一週間に28時間までアルバイトができるようになっております。
そして、「身分系」と呼ばれる【永住者】であったり【日本人の配偶者等】という在留資格は、就労条件や在留期限に一切制限ないものになっております。
「身分系」は先程ご説明させていただいた「 特定活動46号」と 同様 に、オフィスワークを希望される方が大半 となっており、身分系の方を中心に集めるというのは、ハードルが高くなります。
以上から、「宿泊業」と「製造業」で 採用ターゲットとなる外国人は、主に【特定技能1号】、【技能実習】、【留学】の3つが現実的です。
技能実習制度の問題点
【技能実習】に関しては、国外から直接呼び寄せるパターンしか現状ありません。そのため、 初めて日本に来るという外国人の方が大半を占めています。一応、現地の送り出し機関という日本語教育をする機関で6カ月程度日本語を勉強してから来日してくるのですが、日本語レベルや教育レベルもピンキリで日本側でコントロールするのは、難しい部分があります。
さらに、この「送り出し機関」に多額の借金をして来日されるケースあり、転職ができないなど人権保護の観点からも、国際社会から今批判を浴びているような形のいわくつきの制度となっております。そして、直近で制度改正の議論が積極的になされているところというのが現状です。
留学生アルバイトのリスク|摘発の可能性も
また、留学生をアルバイトとして雇用する際のリスクというところですが、昨年11月にニュースになった事件を紹介させていただければと思います。
兵庫県でラーメンチェーンを展開している企業が、留学生を雇用していたのですが、週28時間を超えて労働をさせており、摘発されてしまいました。不法就労助長罪が適用されると、3年以下の懲役もしくは300万 円 以下の罰金が経営者に課されてしまいます。
留学生の方はダブルワークやトリプルワークをされている方がおりますので、自社以外の就労時間を把握するのは難しいといえます。しかし、これを把握せずに、就労させてしまい、結果として28時間を超えてしまった場合にも不法就労助長罪が適用される可能性がありますので、注意が必要です。
宿泊業における「技・人・国」の注意点
「技術・人文知識・国際業務」についてはどうなのか?と思われた方もいらっしゃると思いますが、宿泊業の企業様では注意が必要となっております。
この在留資格で認められた業務に従事させているか?という点が、昨今の出入国在留管理庁の審査で厳格化されてきております。 客室清掃や料理の配膳などの裏方業務については、基本的に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では従事できません。
現在、このような裏方業務でも在留資格の許可が下りている場合でも更新のタイミングで不許可になるケースも実際にありますので、注意が必要です。
このような背景から、「特定技能」という在留資格が注目を集めているという状況です。
特定技能制度の現状について
こういった背景から、【特定技能】が、 注目を集めてきております。特定技能の在留者数は、2019 年に創設されて以降、右肩上がりで増加してきております。2022年12月末時点で、既に13万人以上となっております。
このようなトレンドというのは、今後も続く見通しとなってきております。
受け入れ可能な業種に関しても、幅広く受け入れることができるようになっており、宿泊業、製造業でも受け入れ可能となっております。
製造業についても、右肩上がりで推移しており、昨年度までで約3万人近くの方が既に、特定技能という資格で、就労をしており、今後も増加していくような見通しとなっております。
宿泊業様に関しては、新型コロナの影響で、活用が進んでいないというのが現状です。
緊急事態宣言の解除であっ たりインバウンドの加熱に伴い、宿泊業の人手不足の状況はかなり逼迫してきておりますので今後急激に在留者数が伸びていく可能性は大いにあります。 実際弊社への問い合わせ数は、非常に増えてきております。
「特定技能」を取得するためには?
しかし、この【特定技能】については、取得するために一定の条件を満たさなければいけない形になっております。
まず 1つ目ですが、 業界ごとに実施される「技能評価試験」という試験に合格しなければ なりません。 宿泊業であれば、「フロント業務」 や「接客業務」などの問題が日本語で出題されるような構成となっておりますので、一定の業界知識を有したセミプロの方が特定技能の場合は対象といえます。
この試験は、国内だけではなく、ミャンマーやネパール、インドネシアなどの国外においても実施されております。
2つ目の条件としまして、日本語能力試験の受験が必要です。受け入れ企業様は、ここの語学力を非常に気にする点かと思いますが、日常会話程度は基本的には問題がないっていう方が中心となっております。ここで、注意が必要なのが、この日本語能力試験は筆記試験となっておりますので、会話力については担保されておりません。もし日本語を積極的に使用するポジションで採用したいと考えている企業様は面接の時に会話力をしっかりと確認することをおすすめします。一方で、総じて、思った以上に日本語力が高いというお声は、企業様から良くいただいております。
採用ルート
続いて採用ルートについて見ていきます。
特定技能は、国内外で試験を実施しておりますので、一定数国外にも有資格者の方がいらっしゃる ケースがあります。
そのため国内に既にいらっしゃる方のみならず、国外 にも在住している方に関しても、直接呼び寄せるという形で採用することができるような形になっております。
ただ、国内在住の方に関しては、基本的には都心部の求人を好まれるケースが多いのが実態です。地方で展開されている企業様に関しては、国外からの採用をぜひ、ご検討ください。
国外在住の方に関しては、日本の大都市で働くというよりは 、日本で働きたいという方が多いので比較的場所を選ばずに応募者を獲得できるケース があるからです。
具体的な手続き
続いて具体的な手続きをご説明させていただきます。
①まず募集・集客をし面接をしていただき、②雇用契約を締結します。
③この後、支援計画という書類を作成していただく必要がありますが、弊社のようなエージェントにお任せいただいても問題ありません。
④その後、出入国在留管理庁へ各種届けを行い、就労開始となります。募集から就労開始までは、最低でも1.5ヶ月から2ヶ月程度は要するという点をご留意たいだければと思います。
また、国外在住者を雇用する場合はさらに時間がかかってきます。早ければ、3か月で許可が下りることもありますが、平均して4、5 ヶ月くらい、遅くて半年というケースもあります。そのため、早めに動いていくことが非常に大切かなと考えております 。
特に出入国在留管理局の審査というのは、コントロールのきかない部分になってきますので、ここのスケジュールについては、前後する可能性は大いにあります。
繰り返しになりますが、余裕を持ったスケジュールで特定技能外国人の採用に動いていただければと思います。
特定技能外国人の内訳
つづいて、現在の特定技能外国人の内訳について見ていきます。
日本で特定技能で就労をしている外国人は現在約13万人となっております。
そして、国籍別でみると、一番多いのはベトナム、次いでインドネシアとなっております。一方で、2021年から2022年の推移について、インドネシア人は増加傾向にありますが、ベトナム人は減少傾向にあります。
この背景としては、前述のとおりベトナムとオーストラリアが連携を締結をしたという点が挙げられます。その結果、 ベトナム人は日本ではなくオーストラリアへの就労を希望するようになったと考えられます。
採用ターゲット
つづいて、採用ターゲットとなる外国人の概要について、説明させていただきます。
特定技能外国人の在留者数について、宿泊業と製造業に絞って見たところ、やはりベトナム人とインドネシア人が多くなっております。一方で、ミャンマーやネパール人についても技能実習生がいるので、今後技能実習生からの移行を考慮すると、これらの国についても増加していくことが考えられます。
特記事項としまして、ベトナム人については、やはり母数も多いため問題も多く発生します。
同じベトナム人同士で給与や福利厚生を明し、その結果、条件の悪い方が転職を希望してしまうというケースがたまにありますので、企業様につきましては、給与額などの福利厚生については、不必要に口外しないように指導することが求められます。
また、インドネシア人については、80%以上がイスラム教徒です。イスラム教については、特に豚肉を食べることができないという食事の制約や、礼拝の実施、ヒジャーブの着用などが特徴的です。これら宗教的な事項については、事前に面接でしっかり話合うことが求められます。
ミャンマーの場合は、軍事政権化にあることから、国内情勢が不安定で、日本での就労希望者は非常に多くなってきているという印象を受けます。
国内人材は、大都市を好む傾向
特定技能外国人を都道府県別で見てみると、国内在住者はやはり、東京・大阪・名古屋・福岡などの大都市で働きたいという方が多い印象です。 そのため、地方企業様につきましては、国外からの呼び寄せに絞って採用活動を実施すれば、人材は集まりやすいと考えております。
求人設定の注意点
次に、求人条件について、求職者が知りたい情報を紹介していきます。
まずは、報酬です。基本給及びボーナスについては、しっかりと明示することが求められます。
また、住宅について、社宅があるか、手当がでるか、引越し費用は自腹かなどについても明示が必要です。
福利厚生の部分については、残業を希望する外国人が多数おりますので、月の残業時間の目安や残業手当の金額、まかないの有無(有料か無料か)、通勤手当の有無も明示することが求められます
編集後記
今回は、福島県磐梯町との共催でセミナーを開催しました。福島県磐梯町をはじめとした地方都市については、少子高齢化による人手不足が特に深刻化している状況です。人手不足による問題が顕在化する前にぜひ外国人材の活用を考えてみてはいかがでしょうか?
弊社では、「特定技能外国人」の紹介および登録支援機関としても活動しておりますので、ご興味ある方は、ぜひこちらの問い合わせフォームからご連絡くださいませ。