技能実習制度を利用し外国人を雇用する場合、雇用できる人数に制限があるのはご存知でしょうか?
この記事では技能実習生の人数制限についてや、制限に対する対処法について解説していきます。
そもそも、技能実習制度ってなに?
まずは技能実習制度について簡単におさらいしておきましょう。
技能実習制度とは、
です。
この制度に基づき発行される在留資格は「技能実習」で、国際貢献という制度趣旨から、この在留資格を有する技能実習生は「労働者」よりも「研修生」としての側面が強くなっています。
この技能実習生は、建設、製造、農業などの特定の業種(90職種165作業)で1年から最大5年間働くことが可能です。
また、技能実習制度は実習生の受け入れ方法にも特徴があり、以下の2通りがあります。
- 企業単独型:海外の現地法人等に所属する職員を日本に呼び寄せ、技能実習を実施する方法で、海外支店や海外の取引先がある場合のみ可能
- 団体監理型:営利を目的としない団体(通称「監理団体」)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する方法
企業単独型を活用できる企業はごく一部のため、約98%が団体監理型にて実習生を受け入れています。
また、監理団体型の場合は、監理団体の他に送出し機関を利用する必要があります。
技能実習制度については、「技能実習生って問題だらけ?制度や受け入れ方法について徹底解説!」も併せてご覧ください。
技能実習生の人数推移はどうなっている?
次に、技能実習生の全体数や国籍、職種ごとの人数について見ていきます。
技能実習生全体数の推移
まずは技能実習生全体数とその推移を見てみましょう。
法務省出入国在留管理庁のデータ(外国人技能実習制度について 令和6年4月15日改訂版)によると、2023年12月末時点で、日本に在留する外国人3,410,922人のうち、約11.9%の404,556人を技能実習生が占めています。
過去からの推移で見ると、以下図のグラフ通りで、令和元年の410,972人がピークで、昨年末ではそれに次ぐ人数となっています。
国籍ごとの受入れ人数
次に技能実習生の国籍ごとの受入れ人数を見ていきます。
同様に2023年12月末時点では、ベトナムからの受入れが最も多く203,184人で全体の50.2%を占め、次いでインドネシアが74,387人で18.4%、フィリピンが35,932人で8.9%の順になっています。
職種ごとの受入れ人数
続いて職種別に見てみましょう。
2023年の外国人技能実習機構の調べによると、職種別の技能実習生は、建設関係の職種が最も多く21.9%(20.8%)、次いで食品 製造関係の職種が19.0%(19.5%)、機械・金属関係の職種が14.4%(14.9%)となっています。
また、移行対象職種・作業以外の取扱職種による技能実習計画の認定を受けた件数の割合は、全体の2.8%(1.8%)となっています。※( )内は2022年の割合
技能実習生の採用人数に制限があるって本当?!
さて、本記事の本題である技能実習生の採用人数の制限について詳細を見ていきます。
技能実習生は「何人でも受け入れられる」というわけではありません。簡単に言うと、技能実習生の採用人数制限は、受け入れ企業の常勤職員数に応じて変わります。
常勤職員数に応じて受け入れ人数枠が決定する
技能実習生の受け入れにおいては、1年間の上限数である基本人数枠というものが定められています。そして、その人数枠は受け入れ企業の常勤職員数に応じて変わります。
また、常勤職員数の定義は、雇用保険に加入している社員の数です。雇用保険の加入要件は、
- 労働日数が週5日以上
- 年間 217 日以上
- かつ週労働時間が30時間以上
とされています。
正社員と同等の就業時間にて継続的に勤務をしている、フルタイムのパートの方なども含まれることになります。
技能実習生の受け入れ基本人数枠
では具体的に基本人数枠はどのように決まるのかを見ていきましょう。
基本人数枠は以下のように決められています。
これは、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護の観点から定められているものです。
しかしながら、受け入れ企業には優良認定というものがあり、この認定がされると上記の基本人数枠の2〜6倍の実習生を受け入れることが可能になります。こちらは後述いたします。
常勤職員の定義に要注意
前述の通り、常勤職員の定義は雇用保険加入の社員数とされていますが、これはあくまで自社の社員に限られています。
例えば、建設業等の場合、下請け先の協力会社などもあるかとは思いますが、この協力会社などの社保加入の社員などはカウントされないので注意が必要です。
また、建設業と介護業の場合においては、1つの事業所ごとで常勤職員が何名いるかが算定の基準になることも注意してください。
例えば、介護事業所の場合は以下の表のようなテーブルになります。
また、常勤職員には受け入れをしている技能実習生は含まれず、さらに実習生の受け入れ総数として以下の上限規定があるので併せて注意が必要です。
- 1号技能実習生:常勤職員の総数
- 2号技能実習生:常勤職員数の総数の2倍
- 3号技能実習生:常勤職員数の総数の3倍
優良認定を受けることで受け入れ可能人数枠が拡大する?!
さて、先述の技能実習生受け入れ企業の優良認定とはどのようなものなのでしょうか。以下に詳しく見ていきます。
技能実習制度における優良認定とは?
技能実習制度で優良認定を受ける企業は、正確には「優良な実習実施者」と言います。
2017年以前の技能実習制度では、技能実習1号⇒技能実習2号と3年間の実習が修了すると実習生は母国に帰国する必要がありました。
しかし、2017年11月に施行された新たな技能実習法により、実習実施者である企業、監理団体がそれぞれの条件をクリアすることで技能実習3号の受け入れが可能になり、技能実習期間を最長5年まで延長することができるようになると共に、基本人数枠が技能実習1号だと2倍、2号だと4倍、3号だと6倍に拡大することが可能になったのです
優良認定を受けるためにはどうすべき?
技能実習生の受け入れ人数枠の拡大・実習期間の延長などのメリットがある優良な実習実施者ですが、ではこの優良認定を受けるにはどうすれば良いのでしょうか。
優良認定を受けるには、外国人技能実習機構へ優良要件適合申告書を提出し、優良な実習実施者の基準をクリアする必要があります。
基準については、下記の表で6割以上の点数を獲得した場合に、「優良」であると判断することとされています。
優良認定を受けた場合の受け入れ人数シミュレーション
それでは、受け入れ企業が優良認定を受けた場合の受け入れ可能な人数のシミュレーションを見ていきましょう。
具体例として、次のケースで考えます。
- 常勤職員が30名
- 1期生の3年間実習修了時に優良認定を受ける
すると以下の表のようになります。
まず、常勤職員30名の場合、技能実習生の基本人数枠は3名のため、3年目までに9名となります。その後、優良認定を受けますので、4年目以降は6名の1号技能実習生の受け入れが可能となり、6年目は1期生が帰国をするため、24名の受け入れ人数となります。
優良認定を受けないと技能実習3号がNGに
先述の通り、2017年11月に施行された新たな技能実習法で、技能実習3号の受け入れが可能になり、技能実習期間を最長5年まで延長することが可能になりました。
ただし、技能実習3号の受け入れが可能なのは、優良認定を受けている実習実施者(企業)に限られます。また、監理団体も優良監理団体として認定を受けていない技能実習3号の受け入れができませんので注意しましょう。優良監理団体については後述いたします。
優良認定だけではない?一般監理団体と特定監理団体の違い
監理団体型で技能実習生の受け入れをする場合、欠かせないのが監理団体です。
監理団体には一般監理団体と特定監理団体の2種類が存在し、技能実習3号の受け入れ可否などが変わってきます。ここでは、その監理団体の種類について見ていきます。
一般監理団体と特定監理団体の違いは?
まず、一般監理団体と特定監理団体の違いを見ていきます。
結論、特定監理事業のみ行えるのが特定監理団体、一般監理事業まで行えるのが一般監理団体という認識となります。この2つの違いは「受入れ可能な技能実習区分」と「許可の有効期間」になっており、それぞれ以下のとおりです。
- 特定監理事業:技能実習1号と2号のみの監理事業が可能、許可の有効期間は3年間
- 一般監理事業:技能実習1号~3号までの監理事業が可能、許可の有効期間は5年間
この一般監理事業を行うためには、一定の優良要件を満たす必要があり、これらをクリアした一般監理団体は「優良な監理団体」とも呼ばれます。
特定、一般という名称のため混同されやすいのですが、技能実習3号までの監理事業を行えるのが、一般監理団体なのでお間違いないように注意してください。
また、この優良要件をクリアするためには、具体的な以下の項目ごとで72点(満点120点)以上をとる必要があります。
優良要件の審査項目と配点
- 団体監理型技能実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制(50点)
- 技能等の修得等に係る実績(40点)
- 法令違反・問題の発生状況(5点)
- 相談・支援体制(最大15点)
- 地域社会との共生(最大10点)
もし、技能実習制度にて外国人雇用をする場合、技能実習3号までの受入れを考えているようでしたら優良な監理団体(一般監理団体)を選択する必要がありますので注意してください。
中長期で技能実習生を受け入るには、監理団体の精査も必須
2種類の監理団体の違いは先の通りですが、監理団体を選ぶ際に一般監理団体を選んでおけば良いというわけではなく、また、一度選んだ監理団体を使い続ければ良いわけでもありません。
2024年5月14日現在で、外国人技能実習機構が発表している監理団体数は、
- 一般監理団体:2,038組合
- 特定監理団体:1,688組合
の合計3,726組合となっています(事業休止中も含む)。
このなかには、決められた監理事業を行わない悪質な監理団体があるのも事実で、毎月のように許可の取り消し、業務改善命令などの行政処分をうける監理団体が発生しています。
そのため、中長期的に技能実習生を受け入れる場合は、最初はもちろん、一定期間で監理団体の精査も必須と言えるでしょう。
特定技能制度では、人数制限がありません!
ここまで、技能実習生の受け入れ人数について見てきました。一方で、技能実習と良く比較され、近年は技能実習2号からの移行も増えている特定技能制度についても比較のために簡単に解説いたします。
技能実習制度はいずれ廃止になる?!
まず大前提として、制度自体に様々な問題がある技能実習制度ですが、今後廃止される可能性が非常に高いです。
既に、技能実習に代わる「育成就労」という制度の新設が進められており、それによる出入国管理・難民認定法などの改正案が国会でも可決される見込みです。
この育成就労制度が成立すれば、これまで技能実習では原則不可であった「転職(転籍)」についても、同じ分野に限り認めるとした上で、最初の受け入れ先で働く期間を職種ごとに1~2年の範囲で定められるとしています。
また、育成就労の期間は3年間とし、より技能レベルの高い「特定技能」に移行しやすくなり、より長期間の日本での就労が可能になる見込みです。
激変緩和措置として3年間の移行期間が設けられる予定で、その間は現行の技能実習制度も並行して残し、技能実習生は所定の期間を終えるまで在留が認められるようですが、いずれは廃止となるでしょう。
特定技能制度のざっくり概要
特定技能制度とはどのようなものかを簡単に解説します。
特定技能制度は、日本の労働力不足対策として、人手不足が著しい特定産業分野の16分野で、外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された制度のことを指しています。
特定産業分野において一定の「技能」と「日本語能力」を有する労働者に対して許可がなされます。
この制度により、これまで「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザでは従事できなかった、例えば、外食業・建設業・農業・宿泊業・製造業などの単純労働を含む作業に従事させることが可能になりました。
特定技能の在留資格は、特定技能1号と2号という2つの区分が存在し、特定技能1号は最大5年間の滞在が可能、特定技能2号はより高度な技能を有する者に与えられ、在留期限の制限もなく家族の帯同も認められています。
特定技能制度についての詳細は「在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!」の記事を御覧ください。
人数制限のない特定技能も検討すべし
この「特定技能」ですが、建設と介護を除いた14分野では受け入れ人数の制限がありません。わざわざ日本人の常勤職員数を気にしながら採用する必要がないのです。
そのため、大手の企業様であれば新卒一括採用のタイミングに合わせて大量に特定技能外国人を雇用したり、新規工場の新設計画に合わせて柔軟に外国人社員を雇用することが可能になります。
また、国内在住歴の長い国内居住人材を雇用することも可能なため、わざわざ日本語力が低い方を時間と費用をかけて呼び寄せる必要もありません。そのため、突発的な欠員が出てしまった際に、日本語力が一定ある特定技能外国人をスピーディーに採用することで人員計画を充足させる企業様も増えています。
もし、特定技能の採用についてもっと詳しく話を聞きたい、具体的に検討してみたいという企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ以下のURLから無料相談の問い合わせをくださいませ。
まとめ
この記事では、技能実習生の受け入れ人数と、最後に特定技能制度についても見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
お伝えした通り、育成就労という新たな制度の成立と共に技能実習制度は今後廃止となる見込みです。
最後に記載の通り、外国人材の確保においては、特定技能外国人がオススメです。また、技能実習から特定技能への移行も、一定の要件を満たすことで可能になりますので、特定技能外国人の採用・技能実習⇒特定技能への移行を検討される場合は、是非当社にご相談ください。