技能実習の在留資格を有する外国人の50%以上を占めるベトナムは、技能実習人気大国と言っても過言ではありません。
この記事では、そんなベトナム人の技能実習生について、ベトナム人の国民性などと併せて解説していきます。
日本で働くベトナム人が増えている!?
ベトナム人技能実習生について見る前に、まずは日本に在留しているベトナム人の推移を見てみましょう。
以下のグラフを見て下さい。
こちらは、出入国在留管理庁が公表している、2013年末から2023年末までの在留ベトナム人数と外国人総数に占める割合をグラフにしたものです。
見て分かる通り、ベトナム人の数は2021年末に新型コロナの影響で前年を割ったものの、それ以外はずっと右肩上がりで、外国人総数に占める割合も同様に増えています。
2023年末では中国人の788,495人に次ぐ2番目の多さとなっており、2013年末から2023年末までの10年間で日本で働くベトナム人は約7.2倍にまで急増しているのです。
日本で働くベトナム人が増えている理由?
では、なぜここまで日本で働くベトナム人が増えているのかを紐解いていきます。
まず大きな背景として、ベトナム政府が労働輸出国を目指し、海外への労働者の送り出しを促進することで、海外で働くベトナム人から家族への送金がベトナムの経済を支えているという点があります。
それにより、日本で働きたいベトナム人が増えており、特に技能実習・留学生・技人国・特定技能の4つの在留資格が増えているのです。
以下にそれぞれの在留資格ベトナム人が増えている理由を見ていきます。
技能実習生が増加している理由
まず、ベトナム人技能実習生が増えている背景としては、日本の恒常的な人手不足があります。
本来は、日本の技術移転による国際貢献が目的の技能実習ではありますが、労働者確保の手段として活用する人材難の企業も多く、また、2017年技能実習制度が改正され、対象職種の追加や受け入れ枠の拡大、最長在留期間が延長されたことなどがベトナム人技能実習生が増えた要因と考えられます。
また、当初は技能実習生の大半を占めていた中国の急速な経済発展により、中国人技能実習生が減少しているため、その補填のために日本企業が多くのベトナム人を受け入れていることも増加理由になっています。
留学生が増加している理由
次にベトナム人留学生が増加している理由について見ていきます。
この理由のひとつには、日本政府が2008年に掲げた「留学生30万人計画」があります。これにより留学の在留資格取得が緩和され、多くのベトナム人学生が日本に留学するようになりました。
また、親日国として知られるベトナムですが、多くの日本企業がベトナムに進出していたり、若者に日本のアニメなどの文化が定着していることなども、学生が留学先として日本を選ぶ後押しになっています。
就労ビザ人材(技術・人文知識・国際業務)が増加している理由
就労系ビザで最も一般的な技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)の在留資格ですが、この在留資格を持つベトナム人が増加している理由としては、留学生として日本に来たベトナム人学生がそのまま技人国ビザを取得するケースが増えているからです。
また、近年のグローバル化に伴い、現地の有名大学を卒業した若い優秀な人材を日本企業が技人国ビザにて積極的に受け入れているなどの理由も考えられます。
特定技能も増加している?
近年は、上記以外でも特定技能ベトナム人も増加していることが、ベトナム人労働者が増えている理由のひとつになっています。
特定技能制度が始まった2019年末では特定技能ベトナム人は9,412人に対して、2023年末では110,628人にまで増加をしています。
また、この特定技能は、技人国ビザでは就労が出来なかったサービス業をはじめとする単純労働での就労も可能なため、留学生が日本で就職する間口の拡大となった他、学歴要件などで技人国ビザでは日本に就労に来れなかった外国人の新たな選択肢となったことも大きな理由でしょう。
このような大きな4つの要因が、日本に来るベトナム人の急増に繋がったと考えられます。
ベトナムはどんな国?
ここで、ベトナムという国やベトナム人の特徴について少し見ていきます。
ベトナムについては以下の記事でも詳しく解説をしているので、こちらも是非併せてご覧ください。
▶【日本人と似てるって本当?!】ベトナム人の気質や国民性・特徴を徹底解剖!
ベトナムの基本情報
ベトナムの正式名称「ベトナム社会主義共和国」、インドシナ半島東部に位置し、南シナ海と面し、北部は中国、西部はラオスやカンボジアと国境を接します。
国土面積は約33万㎢と日本から九州を除いたくらいの広さで、人口は約1億人で今も増加傾向にあります。
首都はハノイで、北部に位置しています。南部には、みなさんも一度は聞いたことがあるホーチミンがあります。
平均年齢は31歳と非常に若く、15〜59歳の占める割合は65%で、中でも25〜29歳が最も多いです(参考:ジェトロHP)。
通貨は、ドン(Dong)といい、国際通貨コードはVND(※2024年5月30日時点で1ドンは0.0062円)。
平均年収は、日本円で約49万ほどです。
ベトナム人の国民性・考え方・性格は?
次にベトナム人の国民性・考え方・性格などについて見ていきます。
ます、前提として、考え方や性格などは人ぞれぞれ異なるため一概には言えませんが、一般的なものとしてお伝えします。
①家族を大切にする
ベトナム人は家族を非常に大切にし、特に両親を尊重します。そのため両親に何かあった場合、すぐに帰国を申し出ることもあるでしょう。ベトナム人を雇用する際には、定期的に母国に帰国できる制度を設けることで、従業員の満足度を向上させることができるでしょう。
②感情が出やすい
日本人と比較して、感情が態度に出やすい傾向があります。特に仕事をする上での注意やアドバイスなどは要注意です。人前では行わず、別室で行うなど、個別に対応した方が良いかもしれません。
③阿吽の呼吸は伝わらない
日本のいわゆる「阿吽の呼吸」はベトナム人には理解が出来ません。そのため、コミュニケーションを取る場合には、曖昧な表現はなるべく避けて、具体的な表現を意識しましょう。
④報連相が苦手?
日本ではビジネスマンとして当たり前と言われる、報連相ですが、ベトナム人はこのイメージを持っていません。
「報連相をちゃんとしてください!」と言われても理解ができないため、「いつまでに、何をやって、いつ報告して、いつ連絡して、いつ相談して」を具体的に提示する必要があるでしょう。
なぜベトナム人は日本で働く?
日本に在留するベトナム人が増えているのは前述の通りですが、なぜ彼らは日本で働くことを選ぶのでしょうか。
こちらに関してはYouTubeチャンネルでもお話しているので、是非併せてご覧ください。
ベトナムは親日国?
ベトナムは親日家として知られています。これには様々な理由があります。
一つ目は、日系企業のベトナム進出が増えていることです。これにより日本の社名やブランドをより身近に感じていることが考えられます。バイク大国であるベトナムでは、日本製のバイクが浸透していたり、日本製の家電などを利用することで日本に親近感を持っている方は多いでしょう。
二つ目に、日本のアニメをはじめとする文化が比較的若い世代に浸透していることが考えられます。アニメで言えば、ドラえもんやドラゴンボールを幼少期に見て育ったベトナム人も少なくありません。
三つ目に、日本からベトナムへのODAなど国際援助が多いことです。そのため、日本の援助に感謝をしているベトナム人がいるのは確かです。
ベトナム人の学習意欲
ベトナム人が日本で働く理由として、彼らの学習意欲の高さも考えられます。
一概には言えない点もありますが、ベトナムの平均年齢で考えても、日本に来るベトナム人は比較的若く学習意欲が高いです。そのため、途上国である母国とは違う環境下でより自身の可能性を伸ばしたい、日本の技術を学びたいと考える若者は多いでしょう。
また、前述のような理由から日本に憧れをもつ方も少なくなく、おおまかに「日本について学びたい」と考える若者も多いでしょう。
ベトナムと日本の生活環境格差
日本との生活環境格差もベトナム人が日本で働く理由の一つでしょう。
特に経済格差は彼らが日本で働く大きな理由です。
また、ベトナムと比べインフラ整備がされていたり、医療が発達していたり、公共サービス、治安や医療などの様々な福利厚生が整っているのも彼らが魅力に感じる要素と考えられます。
ベトナムと日本の給与格差
前述の通り、年収が約49万円のベトナム人にとって、日本との給与格差を魅力に感じるでしょう。
ただ、ベトナムの昇給率は日本に比べて高く、毎年5〜10%の昇給が一般的と言われており、また、ベトナムのエンジニアはスキルが高いと評価されていることから、給料も急速に上昇しています。
しかし、ながら上記は一部の話にとどまり、OECDの調査によると日本と比べてベトナムの大学の進学率が半分程度のため、収入を得たいと考えるベトナム人の多くは国内に留まらず収入格差が大きい、日本をはじめとする先進国で働く傾向があります。
ベトナム人技能実習生の割合は減少している?
技能実習人気国として全体の半数以上を占めるベトナムで、毎年ベトナム人技能実習生は増えているものの、ここ3年間ではその全体に占める割合が減少しています。
具体的には、出入国在留管理庁のデータによると、
2021年末から2023年末の3年間では、技能実数生全体とベトナム人数も増加傾向ではあるものの、増加率の鈍化からベトナム人が全体に占める割合は58.1%から50.2%と減少傾向にあります。
ベトナム現地の変化
技能実習生ベトナム人の増加率の鈍化の理由のひとつに、ベトナム現地の変化の影響があります。
大学進学率アップ
近年、ベトナム人の大学進学率が上がっていることが技能実習希望者が以前よりも減少している要因として考えられます。
日本などと比べるとまだまだ高くはないですが、大学進学率が現在では30%を超えていると言われています。技能実習を希望するベトナム人は高卒以下の人が多いため、教育水準の向上による大学進学率増加で技能実習を希望する若者が減っているのです。
ベトナム現地の就業機会増加
ベトナムのGDP成長率は2023年だと5.05%と伸びており、GDPの42.5%を占めるサービス業では6.82%と好調な伸びを見せています。そのため、都市部を中心に雇用は増えており、若者が職業を選べる状況となっています。
ベトナム現地の給与増加
上記通りの経済発展に伴い、ベトナム国内の給与も増加傾向にあります。また、2022年7月に最低賃金が約6%引き上げも実施されています。
まだまだ、都市部と農村、山間部などの格差はありますが、特に都市部の給与は国内全体の1.3倍程度あり、送り出し機関に高いお金を払って技能実習生として日本に来なくてもある程度の給与が得られるようになっています。
その他の変化
ベトナム国内の変化以外でも日本に来るベトナム人技能実習生が少なくなっている要因があります。
他国での就労機会の増加
近年は、日本以外のアジア各国や欧米などを留学先、就業先に選ぶベトナムの若者も増えています。また2022年からオーストラリアもベトナム人の受け入れを開始しており、人気となっています。
また、昨今の円安の影響も日本の魅力を下げる原因になっているでしょう。
来日前の費用が膨大
技能実習生は日本に来る前に、現地の送り出し機関や仲介者に手数料を払うのが一般的です。
出入国在留管理庁の調査によると、母国の送り出し機関や仲介者に送り出し機関や仲介者に手数料を費用を支払った技能実習生は約83%で、その費用の平均は542,311円となっています。
ベトナムに関して言えば、手数料額の平均は688,143円と高額になっており、これらの高額費用を支払うために借金をする方も多いです。ベトナム国内経済の成長から給与水準も上がっているため、わざわざ借金のリスクを取ってまで日本に来ることを敬遠する若者も少なくありません。
技能実習制度廃止に伴いベトナム人雇用も再検討が必須?!
現在、技能実習に代わる「育成就労」という制度の新設が進められており、それによる出入国管理・難民認定法などの改正案が国会でも可決される見込みです。
移行期間はあるもののゆくゆくは技能実習制度は廃止される見込みで、それに伴いベトナム人の雇用手法も再検討が必要な時期に来ているのではないでしょうか。
ベトナム人を受け入れるためには特定技能も視野に入れる!
新制度である育成就労は、人材確保と人材育成を目的としており、3年間の育成期間で特定技能1号の水準まで育成するとしており、特定技能を見据えた制度となっています。
また、特定技能は、現状の技能実習ビザから移行する外国人も多くなってきているため、特定技能でベトナム人を受け入れることも視野に入れるべきでしょう。
特定技能ベトナム人の雇用については、以下の記事で詳しく解説していますので是非ご覧ください。
▶特定技能でベトナム人を雇用するには?独自の手続きや費用がある?
特定技能の概要
ここで、特定技能制度の概要を簡単にご説明します。
特定技能制度は、日本の労働力不足対策として、人手不足が著しい12分野14業種の特定産業分野で外国人労働者の受け入れを促進することを目的に、2019年4月に導入された制度です。
この制度に基づき発行される在留資格は「特定技能」といい、取得するには特定産業分野において一定の「技能」と「日本語能力」を有する必要があります。
この在留資格の大きな特徴としては、これまで「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザでは従事できなかった、例えば、外食業・建設業・農業・宿泊業・製造業などの単純労働を含む作業に従事させることが可能なことです。
特定技能の在留資格は、特定技能1号と2号という2つの区分が存在し、特定技能1号は最大5年間の滞在が可能、特定技能2号はより高度な技能を有する者に与えられ、在留期限の制限もなく家族の帯同も認められています。
特定技能制度についての詳細は以下の記事をご覧ください。
▶在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!
Nextベトナム?他の国籍の外国人の雇用も検討!
在留外国人の国籍として中国に次いで多いベトナムではありますが、前年増加率などは年々緩やかになってきています。
一方で、インドネシア、ミャンマー、ネパールの3カ国の増加率が高くなっており、Nextベトナムとして日本での雇用も増えてきております。
人気急上昇1位のインドネシアがオススメ!
インドネシアは、2023年末の在留者数の前年増加率はミャンマーに次ぐ2番目の50.8%で、先述の特定技能においては55.2%と急上昇しており、インドネシア人の雇用もオススメです。また、国籍割合が7%から16%に増加しておりNextベトナムとして注目を集めています。
特定技能制度でのインドネシア人の雇用については、以下の記事を是非ご覧ください。
▶【特定技能】インドネシア人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説
来日希望者多数?!ミャンマー
ミャンマーは2023年末の在留外国人の集計では、前年増加率が53.9%と増加率で言えばどこよりも多くなっており、日本に来たいと考えるミャンマー人が急増していると考えられます。
また、仏教徒が多いため、食べ物や服装などの宗教的影響がほぼなく、日本人と似た特徴を持っています。
ミャンマー人の特徴や採用に関しての詳細は以下の記事をご覧ください。
▶【特定技能】ミャンマー人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説
これから増加間違いなし!ネパール
上記2カ国と併せて、必ずおさえておきたいのがネパールです。
ネパールはインドや中国などの国境位置にあり、様々な文化や価値観が入ってくる環境化のため非常に多民族ですが、一方で多様性に対してとても寛容な姿勢を持ち、人懐っこい性格の方が多いのも特徴です。
グローバル化で日本でも様々な国籍の外国人が多くなってきているため、上記のようなネパール人の特徴は強みになると言えるでしょう。
ネパール人の採用に関しては、以下の記事にて詳しく解説していますので是非ご覧ください。
▶【特定技能】ネパール人の採用ルートや注意点、費用などをまとめて解説
まとめ
この記事ではベトナム人技能実習生について、ベトナム人の特徴なども交えて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
また、最後に特定技能についても簡単に触れました。特定技能においては、技能実習からの移行や、今後できる育成就労からの移行が可能な在留資格として、外国人雇用を検討するのであれば必ず押さえておきたい就労ビザです。
特定技能について詳しく聞いてみたい、雇用を検討したいなど、是非お気軽に弊社にお問い合わせ下さい。