技能実習制度を活用し実習生の受け入れをする場合、実際は「何にどれくらいの費用がかかるのか」は気になる点ではないでしょうか。
この記事では、監理団体型を利用して技能実習生を受け入れる場合にかかる様々な費用やその相場感などについて解説をしていきます。
これから技能実習生の受け入れを検討される方のみならず、既に受け入れているがかかっている費用が適正なのか知りたい方なども是非参考にして下さい。
技能実習生の受け入れ費用の全体像
まず、おおまかに、技能実習生を受け入れる際にかかる費用の全体像を見ていきましょう。
大きく分けると、以下の①~④の4つの費用がかかります。
また、①~③それぞれの費用の主な内容は以下の通りです。
①入国前に発生する初期費用:監理団体への事前準備費、面接:費用、入国準備費用など
②入国後から配属(入社)までにかかる費用:入国後講習費用、生活手当、寮費、交通費など
③配属後(入社後)に発生する費用:組合監理費、送出管理費、技能試験費用など
①技能実習生が入国前に発生する初期費用
つぎに、実習生が入国前に発生する初期費用の内容をそれぞれを分解していきます。
主にかかる費用としては、
- 監理団体等への事前準備費用
- 技能実習生の現地面接に要する費用
- 技能実習生の入国準備に要する費用
があります、それぞれ以下にて詳しく見ていきましょう。
監理団体等への事前準備費用
まずは、監理団体等への事前準備費用についてです。
具体的には費用がかかるものとしては以下の通りです。
監理団体入会費
「団体監理型」を利用して実習生を受け入れる場合は、いずれかの監理団体への加盟が必須です。海外に支店や取引先がある企業でない限りは、この団体監理を利用する必要があり、これは入会(加盟)時のみかかる費用です。
監理団体ごとに入会費は異なりますが、相場としては1万円~3万円程度です。
監理団体年会費
こちらは監理団体へ毎年支払う年会費です。相場としてはやや幅がありますが、1万円~10万円程度です。
また、監理団体は2024年3月現在で3,600組合以上(事業休止中含む)あり、その規模や対応可能なエリアは様々です。受け入れ後のサポート体制や費用感なども含めてしっかりと検討する必要があるでしょう。
JITCO賛助会費
JITCOとは「公益財団法人国際人材協力機構」の略称で、外国人技能実習制度の総合支援機関として、「受入れ」「手続き」「送出し」「人材育成」「実習生保護」の5つの支援事業を柱に、監理団体、実習実施者、送出機関等の制度関係者全般のサポートをする機関です。入会は必須ではありませんが、技能実習生に関係する申請をスムーズに行うことができるようになるため、多くの監理団体がこのJITCOの賛助会員になることを推奨しています。
賛助会費は企業の資本金、出資金の額によって異なりますが、毎年10万円〜15万円かかると認識しておくとよいでしょう。
技能実習生の現地面接に要する費用
技能実習生の選考では必ず面接を行います。
昨今はオンラインの面接というケースもありますが、現地に出向いてまとめて何人も面接をする場合も多く、その場合は現地までの旅費がかかります。
技能実習生の入国準備に要する費用
実習生の選考が終わり採用者が決まると、日本へ入国するための様々な準備に入ります。実習生が母国(送出し国)から来日するまでにかかるこれらの準備に要する費用です。
基本的に、手続きは現地の送り出し機関が行いますが、費用の負担は受け入れ企業側がすることが一般的です。具体的には以下の通りです。
健康診断費用
こちらは入国前の健康診断の費用です。病気はないか、健康か、日本へ行く前に現地で健康診断を必ず受診します。健康上の問題が、日本に呼び寄せてから発覚したなどのリスクを抑えることができます。
現地での入国前教育費用
技能実習生は日本での実習に向けて、入国前に送り出し機関による入国前教育を受ける必要がありますが、その費用も受け入れ企業が負担をします。教育内容は、日本語教育だけでなく日本の文化や習慣に関する教育などです。
在留資格(ビザ)の申請サポート費
技能実習生は海外から呼び寄せる必要があり、その場合においては、在留資格の申請ステップがやや多くなります。それらのサポートも送り出し機関の重要な役割ですが、サポート費用は受け入れ企業負担となります。
入国渡航費
入国渡航費は主には航空券代になるため、どこの国から来るかで大きく費用は変わってきます。
実習生総合保険(37ヶ月分)
技能実習生は、入国後から配属までの講習期間は受入れ企業との雇用関係がまだないため、社会保障の対象外となってしまいます。また、配属後も慣れない日本の生活様式や気候によって体調を崩すほか、病気やケガに備えて、民間の傷害保険等に加入することが法務省ガイドライン「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」で推奨されています。外国人技能実習生総合保険は病気や怪我以外にも賠償責任などをカバーする、技能実習生のみが被保険者となる総合保険です。
前述のJITCOが保険契約者となる「JITCO保険」と言われるものや、他民間企業がやっているものなど様々ありますが、加入する場合は、この保険料も受け入れ企業が負担をします。
また、上記各費用のそれぞれの相場感は以下のイメージです。
②入国から配属(入社)までにかかる費用
無事に技能実習生が入国を果たしても、そこから配属までに様々な準備とそれに伴う費用が発生します。
具体的に以下に挙げていきます。
入国後講習費用
技能実習生は、日本入国後から配属までの間に、座学などの入国後講習を受講する必要があり、その費用です。ほとんどのケースが研修センターと呼ばれる施設にて、約1ヶ月間かけて日本語の勉強のほか日本での生活ルールやマナーなど、これから日本で生活していくために必要な知識を学びます。
講習期間中の生活手当
上記の入国後講習の期間は受入れ企業からの給与がないため、講習期間中の生活費を講習手当として渡す必要があります。これは受入れ企業に義務付けられているものです。
雇入れ時健康診断
労働安全衛生法にて義務化されている雇入れ時の健康診断は技能実習生においても必要で、その費用となります。
交通費
入国後、空港から研修センターなどの講習施設までの交通費なども受け入れ企業が負担する必要があります。
寮費
寮費は、住居準備のための敷金・礼金の他にも、生活するために必要な家具家電なども含まれます。これら全て受け入れ企業が負担し、準備する必要があります。
また、各費用の相場感は以下のイメージです。
③配属後(入社後)に発生する費用
次に配属後(入社後)に発生してくる費用に関して見ていきます。
主には、月額で発生する監理団体、送り出し機関への費用と、都度発生する費用です。
月額発生する費用
前述の通り、月額発生する費用としては監理団体への組合監理費と送り出し機関への管理費の2つになります。
組合監理費
組合監理費とは、監理団体が技能実習法令に規定する監理事業(実習生の斡旋や実習監理)を行う上で、実習実施者(受入れ企業)から徴収する経費です。
大きく3つに分けられ内訳は以下の通りですが、月額発生するものは2番目の定期費用の一部になります。
- 初期費用:入国後講習に要する費用、募集・選抜に要する費用、入国後講習における手当
- 定期費用:監査・訪問指導費用、送出機関に支払う費用、帰国のための渡航費
- 不定期費用:一時帰国に係る渡航費、帰国のための渡航費、来日する際の初回の渡航費
また、外国人技能実習機構の調査によると、各監理団体におけるこれら費用の平均値は以下の表の通りで、月額費用(定期費用)は約3万円程度と見て良いでしょう。
送出管理費
実習生の配属後も現地の送り出し機関に対して、毎月送出管理費を支払う必要があります。この費用の内訳は、研修生の選抜・選考に要する費用、日本語教育等の事前研修に要する費用、研修生・実習生に対する相談・支援に要する費用などが挙げられています。国や送り出し機関によって金額は異なりますが、一般的には実習生1名あたり月5千円〜1万円程度とされています。
都度発生する費用
都度発生する費用としては、具体的には以下の費用が挙げられます。
技能検定試験費用
実習生が技能検定を受験する際の費用で、技能実習1号修了前と2号修了前の計2回受験をします。
技能検定試験資材費
技能検定試験の際に必要な資材等の費用です。
在留資格更新費用/収入印紙代
技能実習生の在留可能期間は最長で5年間ですが、実習生が最長の5年間在留するためには、技能実習1号⇒2号⇒3号と在留資格の変更と、必要なタイミングで在留期間の更新が必要になっています。また、その都度、出入国在留管理庁に納める費用として収入印紙代がかかります。
帰国渡航費用
技能実習2号から3号へ移行する場合、3年間の実習終了後(2号修了後)に母国へ1ヶ月以上1年未満の一時帰国をする必要があります。一時帰国の際の帰国渡航費用(航空券代)も受け入れ企業が負担をします。
技能実習責任者講習費用
企業が技能実習生を受け入れるためには、「技能実習責任者」を選任する必要があります。この技能実習責任者は、技能実習制度を正しく理解、運用するために、養成講習である技能実習責任者講習の受講が必須です。この講習の有効期限は3年間のため、3年に1度の技能実習責任者講習を受講しなければなりません。
④技能実習生本人の給与
技能実習生にかかる費用の4つ目は、技能実習生本人への給与です。
受け入れ企業や業種などによっても異なってはきますが、外国人技能実習機構の令和4年度の調査によると、技能実習生の給与支給平均額は、1号⇒2号⇒3号と上がるにつれて多くなっている傾向があります。
全産業平均で見ると、技能実習1号は185,579円、2号は196,272円、3号は222,179円となっています。
最も平均給与額が高い業種で見ると、1号では製造業で190,294円、2号では医療、福祉で200,086円、3号では建設業で247,877円となっています。
技能実習制度は廃止される見込みなので、要注意!
ここまでかかる費用を見てきた技能実習制度ですが、制度自体に様々な問題があるのも事実で、今後廃止される見込みとなっているので注意が必要です。
本来、技能実習の創設の目的は、日本の技術移転による国際貢献でしたが、結果的には実習ではなく労働力として扱われているケースが多いこと、労働基準法の対象となる労働者であるにもかかわらず転職できないといった、労働者の権利を主張できないことなどが大きな問題として挙げられます。
上記以外にも様々な問題があることなどを理由に、日本政府は、外国人技能実習制度を廃止し、新たに外国人材の確保を目的とした「育成就労」制度を創設する出入国管理・難民認定法などの改正案を閣議決定し、今後法案提出をする予定です。
育成就労制度においては、受け入れる職種は介護や建設、農業など、専門の知識が求められる特定技能制度と同じ分野に限るとしていますが、それ以外の職種についても今後、人材確保などの観点から追加するかどうか検討を進めるとされています。
また、これまで原則不可であった「転職(転籍)」についても、同じ分野に限り認めるとした上で、最初の受け入れ先で働く期間を職種ごとに1~2年の範囲で定められるとしています。
技能実習のみならず、特定技能も比較検する
前述の通り、技能実習制度においては廃止される見込みがあることや、現制度自体にも様々な問題があることなどから、技能実習のみならず特定技能も比較することをオススメします。
特定技能は、人手不足の業種への労働力確保が目的のため、技能実習ほどややこしい決まりはなく、かかる費用についても比較的抑えることが出来るでしょう。
出入国在留管理庁の調査によると、特定技能外国人1人当たりの支援委託料(月額)の平均金額は28,386円で、採用にかかった費用は「支払っていない」が最も多く、支払った場合でも「10万円~30万円未満」が最も多くなっています。
これらを見ても、特定技能で外国人を雇用するほうが圧倒的にコストが安いことがお分かりいただけるかと思います。
以下に技能実習と特定技能の1名あたりのおおよそのコストを比較してみます。
特定技能においては、既に国内にいる外国人材の採用が出来るため、コストを抑えることが可能です。
まとめ
ここまで技能実習生を受け入れる場合の費用について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
前述の通り、技能実習制度は今後廃止となる見込みがあるため、外国人材の確保においては、当社では特定技能外国人をオススメしています。また、技能実習から特定技能への移行も、一定の要件を満たすことで可能になります。
特定技能外国人の採用、技能実習⇒特定技能への移行を検討される場合は、是非当社にご相談ください。