特定技能外国人の住居確保は企業でする?住居基準・ルールや支援内容などを解説!

1号特定技能外国人(以下、特定技能外国人)を雇用するには様々な支援が必要となります。

中でも特定技能外国人の日常生活に直結する「住居に関する支援」は非常に重要な位置づけと言えるでしょう。

そこでこの記事では特定技能外国人の住居に関する支援をテーマに、具体的な支援内容や押さえておくべきルールなどを解説していきます。

外国人が住居を用意する際のハードルとは

まず、外国人が日本で住居を用意する際のハードルについて見ていきます。

特定技能外国人に関わらず、外国人を雇用する場合は住居の確保が必要です。日本に在留している外国人であれば既に住居はあるでしょうが、海外から新規で呼び寄せる場合は、新たに日本で住む家を探さなければなりません。

しかしながら、外国人が日本で住居を借りる場合、本人が自力で賃貸借契約を結ぶのは困難なケースが多いです。

出入国在留管理庁の調査報告書によると、外国人の住居探しにおける困りごとと回答割合は以下の通りです。

住居探しにおける困りごと
出入国在留管理庁|令和2年度在留外国人に対する基礎調査報告書

「特に困ったことはない」と回答した外国人が50.4%と一番多いものの、これは日本語能力・経済面で安定している永住者からの回答が多く、それ以外の外国人の大半は住居探しで困った経験があるようです。

困りごととしては、家賃や初期費用の金額面国籍が理由で断られた、保証人が見つからなかったという回答や、日本語がハードルとなったことが伺える回答が多く散見されます。

特に、一定の日本語能力を持っている外国人だとしても、賃貸契約時の専門的な日本語を理解するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。

このようなことから分かる通り、外国人が日本で住居を自力で確保するのは困難であるというのが現状なのです。

企業による住居確保の支援

上記の通り外国人が住居を自身で契約するのは困難なため、受け入れ企業が支援をすることが望ましいとされますが、特定技能外国人を雇用する場合においては、受け入れ企業が「適切な住居の確保に係る支援」をすることが義務とされています。

ただ、この支援は、登録支援機関に委託することが可能です。登録支援機関の住居サポートについては弊社YouTubeでも解説しておりますので是非ご覧ください。

支援の方法と選択肢

特定技能外国人に対して行う「適切な住居の確保に係る支援」では、以下の3パターンのいずれかの対応が求められます。

特定技能外国人への住居支援
出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」を参考にジンザイベースが作成

寮や社宅の提供

「受け入れ企業が所有する社宅を提供する」という支援方法です。

特定技能外国人の合意を得れば、受け入れ企業が既に所有している社宅をそのまま当該外国人に住居として提供することができます。

毎月の家賃に関しても、一定の条件を満たしていれば、特定技能外国人本人から徴収することが可能です。

企業による住宅の賃貸契約

特定技能外国人に代わり、企業が住宅の賃貸借契約を行うパターンです。

受け入れ企業が、直接不動産仲介業者と手続きを実施した上で、特定技能外国人の合意の下、借り受けた住居を当該外国人に対して提供します。 

企業が借りるため、契約はスムーズですが、敷金・礼金などの初期費用も企業負担となります。

一方で、毎月の家賃を特定技能外国人に負担してもらうことは可能です。(近隣の家賃相場や本人の給与額から妥当な金額であるかは、ビザ申請時に入管に審査されますので、不当に高額な賃料を負担させることはできません。)

個別サポートの充実

住居探し・賃貸契約のサポートを実施する支援方法です。

特定技能外国人が賃借人として、賃貸借契約を締結するにあたって、最寄りの不動産仲介業者や賃貸物件に関する情報(間取りや賃料など)を提供します。

また必要に応じて、当該外国人に同行し、物件の内見や契約手続き時の通訳・補助を行います。

契約時には、受け入れ企業が保証人になったり、保証会社を確保するなど、契約に必要な保証についてもサポートする必要があります。注意点として、保証会社を確保する場合は、保証料を受け入れ企業が負担しなければなりません。

住居情報の提供や契約の同行補助は手間がかかる場合もあるため、これらを登録支援機関に委託することも可能です。登録支援機関についての詳細は以下の記事をご覧ください。

登録支援機関の役割って何?特定技能外国人への支援内容や選び方を解説!

住居確保支援の具体的なルールと基準

この住居確保に係る支援については、具体的なルールと基準があります。

出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」を参考に、解説していきましょう。

こちらについては以下の弊社YouTubeでも解説しておりますので併せてご覧ください。

部屋の広さに関する最低基準

まずは部屋(居室)の広さに関する基準です。

特定技能外国人に対して提供する居室は、1人当たり7.5㎡以上とされています。

また、ルームシェアなど複数人が居住する場合においては、居室全体の面積を居住人数で割った1人当たりの面積が7.5㎡以上でなければならないので注意しましょう。

なお、技能実習2号などから特定技能1号へと在留資格を変更する場合かつ、既に確保している社宅などの住居に引き続き居住することを希望する場合は、この居室7.5㎡以上の規定は適用されません。ただし、その場合は、技能実習の規定に基づき、1人当たりの寝室を4.5㎡以上確保する必要があります。

また、技能実習2号を修了した技能実習生が一度帰国した上で、特定技能1号の在留資格申請を行い、かつ受け入れ企業が確保している社宅をそのまま当該外国人の住居として継続して提供する場合も、同様に寝室が4.5㎡以上あれば問題ありません。

居室とは、居住や執務、作業などの目的のために継続的に使用する部屋を指し、ロフトなどは含まれないので注意が必要です。

社宅提供時の利益禁止ルール

企業が住居の賃貸契約をする、もしくは、社宅や寮を提供する場合、受け入れ企業が住居を貸与することによって経済的利益を得てはならないとされています。

そのため特定技能外国人から費用を徴収する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

受け入れ企業が契約した住居を提供する場合‍は、借上げに要する費用(管理・共益費を含む/敷金・礼金・仲介手数料などは含まない)を入居する特定技能外国人の人数で除した額以内の金額とされております。

例えば、家賃15万円の住居に2人が入居する場合は、1人当たり7.5万円までしか負担をさせてはなりません。

企業が所有する寮や社宅を提供する場合は、建設・改築などに要した費用、物件の耐用年数、入居する特定技能外国人の人数などを勘案して算出した合理的な金額とされています。

敷金・礼金等の費用負担

物件探しや賃貸契約のサポートをする場合、敷金・礼金は基本的に特定技能外国人が負担し、受け入れ企業側が負担する必要はありません。

しかし、本人の希望や報酬額などを踏まえ、適切な住居確保をすることができるように支援することが求められるため、受け入れ企業が任意で敷金・礼金を全額負担、もしくは一部負担しても問題はありません。 

もし、連帯保証人が必要にも関わらず、適当な者がいない場合は以下のいずれかの対応を取る必要があります。

  • 受け入れ企業が連帯保証人となる
  • 利用可能な家賃債務保証業者を確保し、受け入れ企業が緊急連絡先となる

 なお、家賃債務保証業者を利用した場合に発生する保証料は受け入れ企業が負担しなければなりません。

一方、受け入れ企業が契約した住居を提供する場合、敷金・礼金などの初期費用一式は受け入れ企業が負担する必要があります。毎月の賃料から、初期費用を上乗せして特定技能外国人へ負担させることもできません。

企業として注意すべき事項

ここからは特定技能外国人の住居支援に関して、受け入れ企業として注意すべき事項について見ていきます。

自治体への必須届出について

住居が決まったら、まず大事なのが、自治体への転入の届出です。

外国人住民に係る住基台帳制度により、外国人は住所が定められた日から14日以内に各自治体で転入の届出を行わなければなりません(既に日本に住んでおり引っ越しの場合は転出の届出も)。

届出の際は、在留カードの裏書に新しい住所が記載されるため、在留カードも忘れずに持参するようにしましょう。

この届出を行っていない場合、在留資格の取り消し処分を受ける可能性もありますので、忘れずに対応しましょう。

社宅提供での可処分所得向上

こちらは注意事項ではなく、特定技能外国人から選ばれるポイントですが、

社宅を提供することで、雇用する特定技能外国人の可処分所得を向上させてあげるのも、良い人材を確保する上では重要です。

住宅手当を支給する方法もありますが、手当は課税対象となるため、社宅提供をするほうが実質的に使えるお金が増えることになります。

良い特定技能人材を確保するために、住居確保に係る支援として社宅の提供を検討してみてはいかがでしょうか。

支援業務の外注とその活用

ここまでは住居確保の支援について見てきましたが、1号特定技能外国人を雇用する場合、受け入れ企業は住居確保の支援以外にも様々な支援を行う必要があります。

しかしながら、この支援業務をすべて自社で行うには、一定量の知識と経験そして工数が必要です。

また、直近2年間で外国人労働者の受け入れ実績がない場合は、自社で1号特定技能外国人の支援を行うことは出来ず、登録支援機関に支援を委託をしなければなりません。

1号特定技能外国人の支援は登録支援機関を活用することをオススメします。

支援業務を委託するメリット

支援業務を登録支援機関に委託するメリットはいくつか挙げられます。以下に解説します。

人材の募集

特定技能外国人の募集を人材紹介会社を通じて行っている場合、その人材紹介会社に支援業務を委託することで、優先的に多くの特定技能人材を紹介してくれるメリットがあります。

今後、特定技能外国人の雇用拡大を考えられている企業にとっては大きなメリットでしょう。

社内工数の削減

支援にかかる工数や手間を削減できるのも大きなメリットです。

教育係をつけたり、雇用契約書や業務マニュアルなどの翻訳など、外国人社員特有のフォロー業務を行いつつ、さらに来日手続きの準備や送迎、住居やライフラインの契約への同行、ガイダンスを行うのは多大な時間と労力が必要です。これを代わりに行ってもらうことで負担や工数を大幅に軽減できます。

法令違反の未然防止

法令違反を防げるという点も見逃せません。

特定技能制度では、支援に付随してやることが多数あるため、「うっかり随時報告を忘れていた」なんていう理由で、罰則を受けることを物理的に防げます。また、何より心理的な安心感も得ることができます。

もちろん支援業務を委託する場合は、委託費用は発生するものの上記のメリットは大きいと言えるでしょう。

弊社は、登録支援機関として特定技能制度スタートから約500名の特定技能外国人(ベトナム・ミャンマー・インドネシア・ネパール)の支援実績があり、インドネシア語、ネパール語、ミャンマー語、ベトナム語、中国語、韓国語、英語と幅広い言語での対応が可能です。

もし特定技能外国人の受け入れや委託先を変更したいという場合には、是非こちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。

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監修者
菅原 勇人
菅原行政書士事務所代表。埼玉県熊谷市生まれ。2017年早稲田大学大学院卒業後、建材商社へ入社。主に営業として、中小中堅の建設事業者への提案に従事。就労をしながら、行政書士や宅建など法務系資格を複数取得。現在は菅原行政書士事務所の代表として、約1,000件にも及ぶ申請取次業務に携わる。行政書士(埼玉県行政書士会所属 / 第24132052)
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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