この記事では、特定技能外国人の採用を考えている企業様に向けて、人材募集から採用までの流れや、要する期間や費用、必要書類などを徹底的に解説していきます。
特定技能外国人の採用に興味のある方はぜひ最後までご確認ください。
なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!
特定技能とは
特定技能とは2019年4月に新たに設けられた就労系在留資格です。
国内で特に人手不足が深刻とされている以下の12の産業分野において、単純労働を含む職種でも、外国人の受け入れが可能となっております。
各分野ごとに管轄省庁が存在し、それぞれ独自の受け入れ基準を設けています。上記の各分野ごとに解説ページのリンクを貼り付けているので、あわせてご覧ください。
また、特定技能をより詳しく知りたいという方は、以下の記事で解説していますので確認してみてください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
特定技能1号と2号
特定技能には1号と2号という区分があります。2号については、1号よりも熟練した能力を持った人材を受け入れるための制度であることから、まずは特定技能1号で受け入れ、一定の条件を満たした場合、特定技能2号へと移行するという流れが通常です。
それぞれ以下のような特徴がありますが、特筆すべきは、特定技能2号では、在留期限が無制限であるのと家族の帯同が可能である点です。
特定技能外国人の受け入れ要件
特定技能外国人を受け入れるための要件をみていきましょう。この要件を満たさない限り、特定技能外国人を雇用することができません。
受け入れ企業が満たすべき要件・基準
受け入れ企業は、前述の特定技能12業種に該当することに加えて①受け入れ機関自体に関する基準に適合すること、②雇用契約に関する基準に適合すること、③支援体制に関する基準に適合すること、が必要です。
①受け入れ機関自体に関する基準
こちらは、「出入国・労働法の法令違反がないこと」や「特定技能外国人から保証金や違約金を負担させていない」など、基本的な法令遵守ができているかが基準に置かれています。
注目すべきは、「1年以内に解雇者を出していない」という項目です。特定技能外国人が従事する予定の業務と同じ業務に従事している従業員を直近1年以内に解雇していた場合は、特定技能外国人の雇用ができませんので、ご注意ください。
また、例えば、建設業であれば建設業の許可や建設キャリアアップシステムの登録を済ませていることなど、12の産業分野ごとに、独自の受け入れ基準を設けているケースがあります。
そのため、各産業分野ごとに事前にどのような基準(特に許認可の取得状況や業種によっては受け入れできないなどのケース)が設けられているのかは、把握しておいた方が良いでしょう。(ぜひ↑の分野ごとのページで確認してみてください!)
②雇用契約に関する基準
ここで重要なのは、「特定技能外国人と同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払う」という点です。
日本人従業員の給与と比較して差がある場合、在留資格申請の審査時に、その合理的な理由を説明できなければ、不許可になる可能性が高いので、注意が必要です。
もちろん、福利厚生などの諸手当に関しても、日本人と比較し差別的な扱いをしている場合は、申請許可がおりませんので、気をつけましょう。
③支援体制に関する基準
最後に、「支援体制に関する基準」は一番注意が必要です。
ざっくり要約すると、「過去2年間で外国人を受け入れたことがある企業の従業員」または、「過去2年間で外国人社員への生活相談等に従事した経験のある従業員」を担当者として選任し、国が定めた「義務的支援」を特定技能外国人へ実施しましょう、ということです。
そのため、初めて外国人を受け入れる企業様は、ほぼ基準を満たすことができないようになっています。(過去2年間で外国人への生活相談経験を客観的に証明できる方がいれば可能です。)
では、この基準を満たせない場合、特定技能外国人を受け入れできないのか?そうではありません。
「登録支援機関」という第三者機関に義務的支援を委託することで、支援体制に関する基準を満たしたものとみなされます。
この「登録支援機関」は、出入国在留管理庁の認可を得た企業のみ、活動が認められており、外国人材の紹介や在留資格の申請サポートなど、特定技能外国人の受け入れに関する総合的なサポートを実施する民間企業と認識いただければと思います。
もし自社で対応が難しい・支援体制の基準を満たせない、という場合は、ぜひ一度登録支援機関のご活用をご検討ください。
特定技能の受け入れ企業が満たすべき基準は、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。▶︎【特定技能における受入機関(特定技能所属機関)】基準や義務などを紹介します!
特定技能外国人が満たすべき要件・基準
続いて、外国人が特定技能として就労するための要件・基準をみていきましょう。
特定技能外国人になるためには、以下の2つのルートがあります。
①試験に合格する
特定技能評価試験
12の産業分野ごとに独自で実施されており、基本的にはペーパーテストがメインです。しかし、一部の分野においては実技試験が実施されているケースもあります。
国外でも、二国間協定という協定を日本国政府と締結した国で一部実施されています。
日本語能力試験
「日本語能力試験(N4以上)」もしくは「国際交流基金基礎テスト(A2以上)」のどちらかに合格している必要があります。この試験は、日本国内だけではなく、国外でも実施されています。
試験に合格すると、合格証書が交付されますので、面接時に自社が該当する産業分野の技能評価試験に合格しているか確認するようにしましょう。(日本語試験に関しても同様に合格詔書の有無で確認できます。)
試験については、以下の記事でより詳細に解説していますので、合わせてご覧ください。
▶︎特定技能には試験が必要?日本語試験と技能試験の概要や合格率を解説
②技能実習を修了する
「技能実習2号」と「技能実習3号」を修了している場合、先ほどご紹介した「特定技能評価試験」と「日本語試験」は免除されます。
すでに3年以上、技能実習生としての経験を積んでおり、一定の日本語・技能を有しているとみなされるためです。
しかしながら、試験が免除されるのは、技能実習時と同じ業種・分野で「特定技能1号」へ移行する場合のみです。技能実習時と全く異なる分野で特定技能になるためには、「特定技能評価試験」と「日本語試験」に合格する必要があります。
「技能実習」と「特定技能」の違いや移行方法については、以下の記事をご覧ください。▶︎【特定技能と技能実習比較】8つの違いと特定技能への切り替え方法
特定技能外国人の採用ターゲットと採用方法
特定技能では、採用ターゲットとなる外国人の属性が複数あり、それぞれ注意するべきポイントが異なってきます。ここでは、採用方法と併せて確認していきましょう。
特定技能外国人の採用ターゲット
特定技能としての採用ターゲットは、大きく「すでに特定技能として働いている」か「これから特定技能になる」の二つに大別できます。
海外在住者を採用ターゲットとする場合以外において、採用方法・手法はさほど大きく変わるわけではありません。ただし、面接時や人選時に注意するべきポイントは押さえておく必要はあります。
すでに特定技能として働いている
前職と異なる分野へ転職する場合は、分野別の特定技能評価試験に合格しているかをしっかりと確認しましょう。
また、前職の退職日は決まっているか、また受入機関や登録支援機関から了承を得られているのかも併せて確認した方が良いでしょう。
これから特定技能になる
技能実習修了者は、技能実習時の作業内容と特定技能時の分野が一致していない場合は、分野別の特定技能評価試験に合格する必要があります。特に、前職の受け入れ企業が準備した寮で生活している場合は、退職と同時に寮を出なければいけないケースが大半のため、住居の支援が発生してくるでしょう。
一方、留学生から特定技能へなる場合は、週28時間の資格外活動の制限を守れているかは注意が必要です。28時間を超えてアルバイトしていた場合は、申請が不許可になる可能性がぐーんと高くなります。(弊社の申請事例でも、不許可になってしまうケースが大半を占めています)
また、住民税や国民健康保険などの滞納が発覚するケースもありますので、チェックしておきましょう。
特定技能外国人の採用方法
次に特定技能外国人を採用する際の、採用方法をいくつかご紹介します。
人材紹介会社・登録支援機関への依頼
まずご紹介する方法は、人材紹介会社・登録支援機関への紹介依頼です。
特定技能制度が設けられた2019年以降、外国人の紹介サービスを提供する企業はかなり増加しています。
求人条件を伝えるだけで、人材紹介会社が候補者を見つけてきてくれるため、比較的工数はかからないでしょう。
料金体系は成功報酬型であるため、採用が決定もしくは入社したタイミングで人材紹介費用が課金されるケースが大半です。
また外国人のマッチングを行う人材紹介会社は、登録支援機関として活動していることも多いため、紹介後の支援も一貫して対応してくれるという点も見逃せません。
求人広告メディアへの掲載
また求人広告メディアへの掲載も有効な方法と言えます。
外国人のマッチングを支援する人材紹介会社が増えた一方で、外国人採用に特化した求人広告メディアも増加傾向にあります。
これらを活用することで、国内在住の外国人を中心にアプローチすることが可能です。
一方で、求人票の作成及び母国語翻訳、応募者があるたびに対応が必要になるなど、工数が比較的かかってくる点はデメリットと言えるでしょう。
SNSを活用した採用活動
特定技能のターゲットとなる外国人はFacebookやTikTokの利用者が多くなっています。特にFacebookでは、一定の興味関心が近い方同士でグループを形成することが可能です。この無数にあるグループの中には、特定技能の求人情報をグループ内で投稿可能なものもあります。
こういった、国籍別の特定技能特化型の求人グループへ自社の求人票を投稿することで、費用をかけずに応募者を集めることが可能です。
ただし、求人広告メディアへの掲載時と同様に、求人票の作成や応募者対応などの工数は発生してきます。
採用までのステップ
続いて、特定技能外国人を採用するステップをみていきましょう。
ステップ①:人材募集・面接
まずは先ほどご紹介した方法などを活用し、外国人の募集を実施します。
初めて特定技能外国人を採用するのであれば、登録支援機関も兼ねる人材紹介会社の紹介サービスを利用すると安心です。
応募のあった外国人の履歴書などが問題なければ、対面もしくはオンラインで面接を実施することになります。
ステップ②:特定技能雇用契約の締結
無事面接が完了し、採用が決まれば、次に行うべきは特定技能雇用契約の締結です。
先にお伝えしたとおり、特定技能では報酬額など、雇用契約締結時に注意するべきポイントがあります。
以下の記事でポイントを取りまとめていますので、ぜひ併せてご覧ください。
▶︎【特定技能雇用契約書】内容や締結時の注意点などをまとめて解説
ステップ③:1号特定技能支援計画の策定
次に1号特定技能支援計画の策定を実施します。
特定技能1号の外国人を受け入れる際、外国人が安定して働くことができるように、業務上は勿論のこと、日常生活面での支援を行う必要があります。
次のステップで実施する在留資格申請の際に、具体的にどのような支援を行うのかを支援計画書として提示する必要があるため、雇用契約締結後に支援計画を策定することになります。
支援内容については、以下の支援を実施する必要があります。
以下の記事で支援内容の詳細を紹介しておりますので、あわせてご確認ください。
▶︎【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説
ステップ④:在留資格認定・変更申請
続いてのステップは、在留資格の申請を最寄りの出入国在留管理局へ実施します。
国外から呼び寄せる場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、すでに国内に在住している方は「在留資格変更許可申請」を行います。どちらも、概ね申請から許可が下りるまで、1ヶ月〜2ヶ月程度の時間がかかります。
この時に用意すべき書類は大きく「外国人本人に関する書類」、「受け入れ機関(雇用主)に関する書類」、「分野に関する書類」の3つのカテゴリーに分けられます。
以下、必要書類例をご紹介します。▶︎各表は、出入国在留管理庁HPをもとに株式会社ジンザイベースが作成しています。
外国人本人に関する書類(既に日本にいる外国人の場合)
受け入れ機関(雇用主)に関する書類(既に日本にいる外国人の場合)
分野に関する書類(既に日本にいる外国人の場合)
以下の表に必要書類のリンクを貼っておりますので、ご確認ください。
※ビザ申請(国外から呼び寄せる場合)
無事に出入国在留管理庁から在留資格認定証明書が交付されたら、当該書類を現地国の外国人へ郵送し、パスポート等と併せて在外日本国大使館へビザ申請を実施します。
ビザが無事に交付されたら、初めて日本へ入国することが可能となります。(ビザ交付までは概ね2-3週間程度が平均となっています。)
ステップ⑤:就業開始
無事在留資格の認定や変更が完了すれば、入国・就業が開始となります。
この際、外国人の引っ越しや住居の手配が必要な場合は、別途支援を実施します。
採用後に必要な手続きについては、後ほどお話します。
特定技能外国人の採用にかかる費用
特定技能外国人を受け入れる際の費用内訳として、以下のような項目が挙げられます。
国外から呼び寄せる場合、一部の国(ベトナム・カンボジア・ミャンマー・フィリピン)では送り出し機関を必ず通さなければなりません。そのため、送り出し機関への手数料として一定の費用が発生してくる点はご留意ください。
また、人材紹介会社を活用して募集をした場合は、成功報酬で人材紹介手数料が発生してきます。
申請書類の作成サポートを登録支援機関や行政書士に委託した場合、初回申請及び、毎年在留期間の更新を実施しなければならないので、その手続きのたびに費用が発生してきます。
最後に、登録支援機関に支援体制に関する基準を満たすために、支援業務を委託している場合、毎月支援委託費用が特定技能外国人1名あたり発生してきます。
あくまで概算のため、企業ごとに変動することはあるものの、一定の費用は発生してくる点は押さえておきましょう。
より詳細な特定技能外国人の受け入れ費用については、「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」をご覧ください。
採用後の手続き
特定技能外国人を採用した後は以下の通り各種書類の提出が求められます。
外国人雇用状況届出
こちらは、特定技能など関係なしに、新たに外国人労働者を雇い入れた際に、雇用主に対して義務付けられている届出になります。(退職した際にも実施が必要です)
指定された様式に必要事項を記載し、管轄のハローワークへ提出しましょう。(外国人雇用状況届出システムを利用することで、オンラインで届け出ることも可能です)
詳しくは以下の記事をご覧ください。
▶︎【外国人雇用状況届出とは】手続き概要や様式、提出方法などを解説
四半期ごとに報告が義務付けられている書類
特定技能外国人は、受け入れ後四半期ごとに定期面談を実施し、報告書に取りまとめて管轄の地方出入国在留管理庁へ提出しなければなりません。
対象となる主な書類は以下の3点になります。詳細はこちらの出入国在留管理庁のHPをご覧ください。
- 受け入れ状況に関わる届出書:就労場所、業務内容に変更があるか、といった点を報告
- 活動状況に関わる届出書:社会保険の加入状況や報酬の支払い状況などの報告
- 支援実施状況に関わる届出書:支援計画が適切に実施されているかの報告(登録支援機関に支援を委託している場合は提出不要)
変更事由発生時に報告が義務付けられている書類
在留資格の申請時に届出た情報に変更が発生した場合、都度管轄の地方出入国在留管理局へ随時届出を実施する必要があります。(例えば、特定技能外国人が引っ越ししたことで住居変更が発生した場合など)
詳しくは、こちらの出入国在留管理庁HPの「随時届出」の箇所をご参照ください。
- 特定技能雇用契約にかかる届出書
- 支援計画変更にかかる届出書
- 支援委託契約にかかる届出書
- 受け入れ困難にかかる届出書
- 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は不当な行為にかかる届出書
まとめ
今回は特定技能外国人の採用をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
これからさらに外国人の国内流入は加速すると言われており、特定技能制度は人材不足への有効な対策として期待されています。
是非この記事を参考に、貴社も特定技能制度の利用を検討していただければ幸いです。
特定技能制度についてより詳しい情報が知りたいといったご要望がございましたら、お気軽に当社までお問い合わせください。