日本語能力試験とは?
日本語能力試験はJLPT(Japanese-Language Proficiency Test)とも言われ、日本語が母国語ではない方の日本語能力を測定する試験の1つです。
国際交流基金と日本国際教育支援協会の2つの団体が運営しており、国内のほか海外46ヶ国の地域と147都市で実施され、2018年度には年間100万人以上が受験する世界最大規模の日本語試験となっています。
内容は、言語知識(文字、語彙、文法)・読解・聴解の3つの科目から日本語のコミュニケーション能力を測るものとされており、日本語能力がレベルが5段階に分かれており、N1、N2、N3、N4、N5と表現されます。N1が最も日本語能力が高く、N5が最も低いレベルです。できるだけ細かく日本語能力を測るために試験問題はレベルごとに作られており、受験者は自分のレベルに合わせて試験を受けることが可能です。
試験はマークシート方式で180点満点で構成されていますが、点数配分や試験時間などはレベルによって異なり、以下の通りです。
合格水準も同様で、以下の通りです。
なお、各レベル合格するためには①総合得点が合格点以上であること、②各得点区分別得点が、区分ごとに設けられた基準点以上であること、の2つが必要です。
日本語能力試験受験要件
日本語能力試験の受験要件は、日本語を母国語としていない方であれば、国籍・年齢の制限なく受験可能です。
申込方法については、日本では、インターネットでの申込みのみで最初にMyJLPTへの登録が必要です。海外都市の場合は、各都市の実施機関にて確認が必要です。
2024年の試験日程と詳細
日本語能力試験は、毎年、基本的に7月と12月の年2回開催されています。
2024年の試験日程は、
- 2024年7月7日(日)
- 2024年12月1日(日)
です。
試験は全国47都道府県で実施しますが、試験会場に関しては試験直前まで確定しないため、各受験者は受験票で実施会場を確認する必要があります。また、応募の状況等により、隣接都府県の試験会場になるなど、希望に添えない場合もあります。
また、日本語能力試験は海外でも国内同様に7月、12月の年2回実施されており、実施国は以下の通りです。国や都市によっても開催有無が異なるため、詳細は日本語能力試験公式WEBサイト|海外の実施都市・実施機関一覧 をご覧ください。
■東アジア
韓国、中国、モンゴル、台湾
■東南アジア
インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス
■南アジア
インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ
■大洋州
オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー(休止中)、マーシャル諸島(休止中)
■北米
カナダ、アメリカ
■中南米
コスタリカ、メキシコ、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、コロンビア、チリ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア
■西欧
アイルランド、イタリア、イギリス、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル
■東欧
アゼルバイジャン、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、ジョージア、スロベニア、セルビア、タジキスタン、チェコ、トルクメニスタン、ハンガリー、ブルガリア、ベラルーシ、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、ルーマニア、ロシア
■中東
イスラエル、イラン、カタール、サウジアラビア、トルコ、ヨルダン
■北アフリカ
アルジェリア、エジプト、スーダン(休止中)、チュニジア、モロッコ
■アフリカ
ガーナ、ケニア、コートジボワール、コンゴ民主共和国、セネガル、ベナン、マダガスカル、南アフリカ
日本語能力試験の各レベルの解説
日本語能力試験は5段階(N1~N5)のレベルがありますが、ここでは各レベルの日本語能力(認定の目安)と実際の問題例を見ていきます。
N1レベル - 難易度と概要
N1レベルの日本語能力は「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」とされています。
読み、聞く、の能力で分けると以下の通りとされています。
■読み
- 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
- 様々な話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
■聞く
幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
問題例は以下の通りです。
N2レベル - 日常とビジネスの日本語力
N2レベルの日本語能力は「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」とされています。
読み、聞く、の能力で分けると以下の通りとされています。
■読み
- 幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。
- 一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。
■聞く
日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。
問題例は以下の通りです。
N3レベル - 日常会話の理解
N3レベルの日本語能力は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」とされています。
読み、聞く、の能力で分けると以下の通りとされています。
■読み
- 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。
- 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
- 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
■聞く
日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
問題例は以下の通りです。
N4レベル - 基本的な日本語能力
N4レベルの日本語能力は「基本的な日本語を理解することができる」とされています。
読み、聞く、の能力で分けると以下の通りとされています。
■読み
基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
■聞く
日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
問題例は以下の通りです。
N5レベル - 初歩的な日本語力
N5レベルの日本語能力は「基本的な日本語をある程度理解することができる」とされています。
読み、聞く、の能力で分けると以下の通りとされています。
■読み
ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。
■聞く
教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。
問題例は以下の通りです。
それぞれのレベルの問題例は、日本語能力試験公式WEBサイト|問題例に挑戦しよう でも確認ができますので是非ご覧ください。
外国人採用における日本語能力試験の役割
ここからは、外国人採用において、日本語能力試験(JLPT)がどのような役割を果たしているのかを、以下のいくつかの点に触れながら見ていきましょう。
就職に有利な理由
日本語試験(JLPT)は日本のみならず世界各国で実施されている最もポピュラーな日本語試験です。
そのため、外国人採用においては、候補者がN1~N5のどのレベルなのかは日本語でのコミュニケーションや業務を円滑に進めることができるのかのとても重要な指標とされています。また、どれだけ日本語習得に対して本気で取り組んできたかという、勤勉さをはかる指標にもなるでしょう。
外国人材を雇用する企業側は、応募者の選定において「N◯以上」などの条件を設けることは少なくありませんし、主に書類選考時において、応募者の日本語能力をレベルごとの目安で判断するのが一般的になっています。
日本語レベルが高ければ高いほど就職に有利に働くのはもちろんですが、特に、N2以上のレベルを持つ外国人は、日本語でのコミュニケーションが円滑に行えるスキルがあると判断されるケースが多いです。
特定技能のための条件
昨今、話題となっている在留資格「特定技能」の取得要件としても日本語能力試験は重要な役割を担っています。
特定技能の取得要件は、
- 各分野の業務に関連した技能試験
- 日本語能力を判断する試験
それぞれに合格しなくてはなりません。
後者の日本語能力を判断する試験に関しては、「日本語能力試験(JLPT)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」のどちらかで決められたレベル以上であることが必要で、日本語試験試験(JLPT)の場合はN4レベル以上が必須なのです。
N4レベルの日本語能力は「基本的な日本語を理解することができる」とされているので、各分野での一定の知識と基本的な日本語理解力があれば、即戦力として業務が可能だと考えられているということになります。
在留資格「特定技能」については、以下の記事で詳しく解説をしておりますので、是非併せてご覧ください。
▶在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!
日本語基礎テスト(JFT)との違い
前述の通り、外国人の日本語能力を測る試験は日本語能力試験(JLPT)以外にも、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)があります。この試験は、就労を目的として来日する外国人が日常生活でのコミュニケーションに必要な日本語能力を持っているかを判定する試験で、特定技能の日本語要件を証明する試験としても利用が可能です。
内容は、文字と語彙・会話と表現・聴解・読解の4つの要素から日本語力をはかる、CBT方式で、250点満点で点数により、A1・A2・B1・B2・C1・C2の6段階に日本語レベルが分けられます。A1が最も低いレベル、C2が最も高いレベルとされ、特定技能取得ではA2レベル以上が必要とされています。
日本語能力試験(JLPT)との違いは、開催頻度、試験実施方法、受験レベルの種類などが主な点です。
開催頻度は、JLPTが年2回に対し、JFTは日本では年6回の実施があります(海外は国ごとに異なる)。
試験実施方法は、JLPTがマークシート方式に対して、JFTはCBT(Computer Based Testing)方式と言われるコンピュータを利用して実施する試験方式です。
受験レベルの種類においては、JFTはJLPTのように複数のレベルがあるわけではなく、1つのレベルのみで日本語能力を測るもので、250点満点中200点以上のとき、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力」(A2レベル)があると判定されます。
その他、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)についての詳細は、国際交流基金日本語基礎テスト公式WEBサイトをご覧ください。
日本語能力試験のメリット
日本語能力試験のレベル認定は、学校での単位・卒業資格の認定や、企業での優遇や社会的な資格認定など、、、様々な取得メリットがあります。
特には以下の2点が大きなメリットと言えるでしょう。
①高度人材ポイント制の加点対象になる
在留資格「高度専門職」の高度外国人材においては、その受入れを促進するために、ポイント制を活用した出入国在留管理上の優遇措置を講ずる制度を導入しています。
これは、高度外国人材の活動内容を、「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類し、それぞれの特性に応じて、「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設け、ポイントの合計が70点に達した場合に、出入国在留管理上の優遇措置を与えるものです。
そのひとつに日本語能力試験N1、N2の取得があり、N1取得者には15点、N2取得者には10点が加点されるため、高度人材ポイントに有利に働きます。
高度人材ポイントの計算表については、こちらをご覧ください。
②就職の際に有利に働く
前述の通りですが、外国人採用においては、候補者の日本語力が日本語能力試験で言うところのN1~N5のどのレベルなのかは、日本語でのコミュニケーションや業務を円滑に進めることができるのかのとても重要な指標とされています。
企業には書類選考時の選定で「N◯以上」という基準を設けているところもあり、日本語能力試験でなるべく高いレベルを取得しておくことは、就職の際に有利に働きます。
上記2点以外にも、日本の中学校卒業程度認定試験で国語の試験の免除が受けられたり、外国人が日本の医師等国家試験を受ける際に必要であったり、EPA看護師・介護福祉士の候補者選定の条件であったりなどの取得メリット(必要性)があります。
実際の会話力との差異
こちらは注意点になりますが、日本語能力試験の各レベルに合格していたとしても、実際に本人と日本語で会話をしてみると、各レベルの目安とされている日本語能力ではないのでは?と差異を感じるケースがあります。
日本語能力試験の回答は4択のマークシート方式のため、意図せず点数が取れてしまうことがあります。また、日本語能力試験は日本語での会話力を測るものではないため、問題は解けても、実際の会話力は認定目安のレベルと見合わないこともあるでしょう。
そのため、どのレベルを取得しているかは目安と考えて、実際の日本語能力(特に会話力)は面接時に確認をすると良いです。
また、採用後に関しては、日本語能力についてはもちろんですが、文化や宗教、国民性の違いなどでもコミュニケーションギャップが生まれてしまわぬように、様々な点でケアをしてあげる必要があるでしょう。
外国人とのコミュニケーションの取り方については、弊社YouTubeでも取り上げておりますので是非ご覧ください。
まとめ
今回は外国人採用基準としても良く使われる日本語能力試験(JLPT)についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
日本語能力は、外国人材とのコミュニケーションを円滑にする上でとても重要なポイントとなるため、企業側がより高い日本語能力の外国人材を求めるのは当たり前と言ってもよいでしょう。
特に、昨今では在留資格「特定技能」でN1やN2の外国人材は取り合いになるなど重宝されるケースが多いです。ただ、N1やN2ではなくても、高い日本語会話力を持っている特定技能の外国人材が多いのも事実です。
弊社では、様々な特定技能人材をクライアント企業の要望に合わせてご紹介が可能です。もし、特定技能外国人の採用を検討している、一度話だけでも聞いてみたい、、、などがありましたらお気軽にお問い合わせください。