外国人材業界マーケットの市場動向はどうなる?!技能実習・特定技能・育成就労に至るまで解説|株式会社ジェイタウン横山様

技能実習制度の廃止、育成就労制度の導入、特定技能制度の拡大。2025年に向けて、外国人材業界は大きな転換期を迎えています。政府は今後5年で特定技能人材を82万人まで増やす目標を掲げ、市場規模は1兆円規模に達すると予測されています。しかし、この急速な市場拡大の中で、受け入れ企業の体制整備や定着率の向上といった本質的な課題は、まだ十分に解決されていないのが実情です。

今回は、20年にわたり人材業界で実績を積み、外国人材紹介事業や登録支援機関向けコンサルティングを手がける株式会社ジェイタウンの横山氏に、業界の将来展望と企業における外国人材活用の要諦についてお話を伺いました。ベトナムやインドネシアなど送り出し国の特性、都市部と地方での受け入れ環境の違い、そして持続可能な人材活用に向けた具体的なアプローチまで。現場を知り尽くしたコンサルタントの視点から、外国人材活用の新たなステージに向けた処方箋を探ります。

技能実習の駆け込み需要が急増する一方、育成就労スタートと同時に特定技能が隆盛していく

ーーー まずは貴社の事業概要についてお聞かせください!

横山社長:

当社は2004年にリクルートの代理店として創業し、今年で設立20年を迎えます。創業以来、求人広告代理店事業を軸に、人材派遣業、職業紹介事業を展開してきました。外国人材事業への参入は約8年前からで、留学生の派遣からスタートし、技能実習生、特定技能、そして技人国の紹介と、段階的に事業を拡大してきました。

約2年前からはYouTubeでの情報発信も開始し、現在では登録支援機関向けのコンサルティングや、外国人材ビジネスの立ち上げ支援なども手がけています。また、企業向けに外国人雇用活用ガイドブックの販売も行っています。

ーーー率直に2025年以降の業界の見通しをどのように見ていらっしゃいますか?

横山社長:

2025年から2026年にかけては、技能実習の駆け込み需要が続くと予想しています。特定技能への移行が進むというよりも、まずは技能実習制度の最後の受け入れが急増するでしょう。

しかし、2027年に育成就労制度が始まると状況は一変すると考えています。その理由は、育成就労制度の制度設計にあります。現在の有識者会議での議論を見ると、1年経過後の転籍が可能となる一方で、受け入れ時に高額な経費負担が必要となる可能性があります。また、転籍時の費用負担の按分方法も未定で、企業間での調整も困難が予想されます。

このような制度設計では、企業側の受け入れ意欲が大きく低下する可能性が高いというのが、現場を知る者としての率直な見方です。

ーーー特定技能のマーケットについてはどのように推移していくとお考えですか?

横山社長:

今後の展開を考える上で、重要なポイントとなるのが建設業のJAC(建設技能者受入事業協議会)と製造業の協議会の動向です。これらの分野は需要が非常に高いにもかかわらず、中間団体による制限が需要の足かせとなっています。この制限が緩和されれば、特定技能での在留者数は一気に増加する可能性があります。

特に製造業については、対象業種は徐々に拡大しているものの、協議会による審査が非常に厳格です。電話での相談にも応じておらず、メールでの質問に対しても細かな指摘が繰り返されるなど、実務面での課題が山積しています。通常2ヶ月で完了するはずの手続きが、大幅に遅延するケースが一般的です。

一方で、農水省管轄の分野については比較的スムーズな運用がなされており、省庁による対応の違いが顕著に表れています。

ーーー新しく特定技能の対象となった分野についてはいかがでしょうか?

横山社長:

運送業については、2024年12月に福岡県で初めて特定技能のドライバー試験が実施され、これを機に本格的な展開が始まると考えています。運送業は最も需要の大きな市場の一つですが、海外からの直接採用については慎重な判断が必要です。

その理由は、運転習慣や交通ルールの違いにあります。海外で運転経験のある方を半年程度の研修で日本の道路事情に適応させることは非常にリスクが高いと考えています。代わりに、すでに日本の運転免許を持つ在留外国人を特定技能ドライバーとして採用していく方が、より安全で現実的なアプローチだと考えています。

実際、現地の交通事情を見ると、その違いは歴然です。例えば、接触事故に対する意識が大きく異なり、日本の厳格な交通ルールへの適応には相当な時間とトレーニングが必要です。万が一重大事故が発生すれば、特定技能での運送業受け入れ自体が停止されるリスクもあります。

ーーー送り出し国の動向についてはいかがでしょうか?

横山社長:

現在、増加率で見るとインドネシアが最も伸びている一方、実数ではベトナムが依然としてトップを維持しています。昨年の特定技能在留者数の増加でも、ベトナムは約3万人の増加を記録しています。

送り出し国は大きく二つのカテゴリーに分類できます。一つは、ベトナム、インドネシア、フィリピンのように、自国の経済発展に期待を持ち、将来的な帰国を視野に入れている国々。もう一つは、カンボジア、ネパール、ミャンマーのように、日本での定住志向が強い国々です。

特にミャンマーについては、現地の政情不安や徴兵制の問題が大きな影響を与えています。現在、パスポートの更新ができない状況でもビザ更新は可能となっていますが、今後、政府による規制強化や家族への圧力といったリスクも考えられ、状況を注視する必要があります。

特定技能の紹介ルートを一社に限定すると、新規人材の確保にリスクが生じる可能性も

ーーー市場のレッドオーシャン化が進む中エージェントはどのように企業開拓を進めるべきでしょうか?

横山社長:

まず重要なのは、得意分野にこだわらず、参入しやすい分野から着実に展開していくことです。具体的には、外食産業から始めることをお勧めしています。その後、介護、飲食料品製造業と、実績を積み重ねていくアプローチが効果的です。

一方、建設業などハードルの高い分野については、異なるアプローチが必要です。新規開拓よりも、すでに特定技能の在留者がいる企業に対して、価格競争力を活かした提案を行う方が現実的です。このような企業では、技能実習から特定技能に移行した方々が多く、実務経験も豊富なため、登録支援機関としての業務負担も比較的軽くなります。

製造業についても同様で、協議会による審査というハードルがある以上、新規での営業活動には時間がかかります。「半年後に許可が下りるかもしれません」という提案では、企業の期待に応えることは難しいでしょう。

ーーー特定技能における価格設定についてはどのような戦略をお考えですか?

横山社長:

現在、登録支援機関の費用は激しい価格競争の状況にあり、1万~1万5千円程度の価格も出てきています。特に特定技能在留者の多い地域ほど、価格競争は激化している傾向にあります。

しかし、企業側の視点に立った時に、目先の値下げ交渉に走ることには注意が必要です。なぜなら、特定技能の紹介ルートを一社に限定してしまうと、新規人材の確保が困難になるリスクがあるためです。そのため、複数の登録支援機関とのパイプを維持することを推奨しています。

現在は需要が供給を下回っている状況ですが、今後、訪問介護への拡大など、業種の広がりとともに応募者が減少する可能性もあります。その際に備えて、複数の人材確保ルートを確保しておくことが重要です。

ーーー人材の募集面での展望についてはいかがでしょうか?

横山社長:

2025年3月以降は、実は国内人材の採用がしやすくなる時期を迎えます。これは、コロナ禍で入国した技能実習生の3年満了時期と重なるためです。この時期には国内での採用需要が一時的に高まる可能性があります。

ただし、この状況がどの程度継続するかは、特定技能のニーズの伸びに大きく依存します。特に介護分野については、これまでグループホームや特別養護老人ホームなど、すでに受け入れ可能な施設では、常勤職員数との関係で受け入れ限度に達しているケースが多くあります。

しかし、2025年5月から訪問介護が解禁される見通しであり、これによって新たな需要が生まれる可能性があります。ただし、訪問介護については、日本語要件がより厳格化される可能性も報道されており、また移動手段の確保など、新たな課題も予想されます。

一方で、訪問介護は努力次第で収入を増やせる仕事であり、そうした特徴を適切に伝えることができれば、外国人材にとっても魅力的な職種となる可能性があります。採用活動においては、このような仕事の特徴や魅力を効果的に伝えていくことが重要になってくるでしょう。

相手国への理解を示す努力が、長期的な関係性構築には必須

画像_/外国人トラブルQ&A
株式会社ジェイタウン|外国人トラブルQ&A

ーーーこれから注目すべき送り出し国についてお聞かせください

横山社長:

今後の展望という点では、南アジア、特にインド、パキスタン、バングラデシュの可能性に注目しています。これらの国々は世界で最も人口増加が著しい地域であり、潜在的な市場規模は非常に大きいと考えています。

ただし、現時点では需要が供給を下回っている状況を考えると、すぐに南アジアでの展開を急ぐ必要性は低いかもしれません。今後5年程度は、東南アジアを主体とした人材送り出しの構図が続くと予想しています。

その中で、カンボジアについては、特に農業人材と建設人材の分野で今後の伸びしろが期待できます。ただし、それ以外の業種については、まだ課題が残ると考えています。

ーーー人材の獲得競争が韓国やオーストラリアと激化すると懸念されていますが本当でしょうか?

横山社長:

最近、メディアでよく取り上げられる「日本に外国人材が来なくなる」という報道については、実態と少し異なる部分があります。これらの報道の多くは、ベトナムの送り出し機関への取材に基づいているのですが、実際の数字を見る必要があります。

2023年の統計では、ベトナムからの人材送り出しのうち、日本と台湾で約9割を占めています。韓国やオーストラリア、ドイツなどの市場シェアは、実はそれほど大きくないのが現状です。

ベトナムからの人材確保で重要なのは、実は入国までの期間です。台湾が選ばれている理由の一つは、手続きが迅速なことにあります。そのため、日本での受け入れをより円滑にすることができれば、十分な人材確保は可能だと考えています。

つまり、真の競争相手は韓国やオーストラリアではなく台湾なのです。台湾並みの受け入れ体制の迅速化が実現できれば、ベトナムからの人材確保は十分に可能だと考えています。重要なのは、表面的な報道に惑わされることなく、実際の市場動向を正確に把握することです。

ーーー外国人材の定着については企業側の課題をどのようにお考えですか?

横山社長:

外国人材の離職に関して、よく懸念の声が聞こえてきますが、これは実態と少し異なります。日本人の場合、私自身の求人広告や派遣事業の経験から、肌感覚で3ヶ月以内の離職率は約50%に上ると感じています。ところが、特定技能での在留者は、ビザの制約もあり、日本人と比較してはるかに定着率が高いのが実状です。

ただし、企業側の受け入れ体制にも課題があります。例えば、最低賃金での雇用や昇給制度の不備を指摘されることがありますが、実際には最低賃金の上昇に合わせた昇給は毎年実施されています。こうした待遇面での誤解を解消し、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。

また、外国人材の活用がうまくいっている企業の特徴として、複数名をまとめて受け入れている製造業などが挙げられます。一人だけの配属となりやすい外食産業などと比べ、同じ国の仲間と働ける環境があることで、より働きやすい職場となっています。

ーーー外国人材の受け入れで成功する企業と苦労される企業の違いはどこにあるのでしょうか?

横山社長:

外国人材の活用でよく言われるのが、「その国の言語を覚えることで関係性が深まる」ということです。確かにその通りなのですが、実際にベトナム語などを習得できる経営者はごく少数です。

そこで重要になってくるのが、言語の習得ではなく、その国の文化や特性を理解するというアプローチです。

例えば、ベトナムという国について理解を深める、インドネシアの文化的背景を学ぶなど、相手の国への理解を示す企業では定着率が高い傾向にあります。逆に、こうした理解を深める努力をしない企業では、外国人材が働きづらさを感じるケースが多くなります。

特に地方部では、この点が課題となりやすいと感じています。都心部では外国人との共生が日常的になっていますが、地方ではまだ「村社会的な文化」が根強く残っている地域もあります。外国人材への理解が十分でない地域では、どうしても違和感のある目で見られることもあり、それが定着を妨げる要因となっています。

このため地方の企業では、外国人材をいかに地域に溶け込ませていくか、どのように馴染んでもらうかという点について、都市部以上に考える必要があります。ある意味、外国人材の受け入れは、地域全体での取り組みとして捉える必要があるかもしれません。

つまり、成功のポイントは「多人数での受け入れができる環境」と「相手の文化への理解を示す姿勢」の二つに集約されると言えます。これらの要素を意識的に取り入れることで、外国人材との良好な関係構築が可能になると考えています。

ーーーこれから外国人材の活用を検討している企業や同業の方々へメッセージをお願いします

横山社長:

私は現在、オンラインでの登録支援機関向けコンサルティングを月額1万円で提供しています。これは、かつて自身が経験した新規事業立ち上げ時の苦労を踏まえ、同じような課題を抱える方々のサポートをしたいという思いからです。

特定技能制度の活用方法や必要な書類の作成方法など、具体的なノウハウを必要とされている方は、ぜひご相談ください。このビジネスを適切に進めていくためのサポートをさせていただきます。

外国人材の活用は、決して特別なことではありません。しかし、その成功のためには適切な理解と準備が必要です。今後も制度は変化していきますが、企業と外国人材の双方にとって、より良い環境づくりを目指していければと考えています。

編集後記

今回は、外国人材業界で20年の実績を持ち、登録支援機関向けコンサルティングも手がける株式会社ジェイタウンの横山様にお話を伺いました。

2025年以降、技能実習制度が廃止され育成就労制度への移行が予定される中、業界は大きな転換期を迎えています。特に注目すべきは、横山様が指摘された送り出し国の二極化です。ベトナムやインドネシアなど「自国の発展に期待を持つ国」と、カンボジアやネパールなど「日本での定住を志向する国」で、人材の意識や行動に大きな違いが生まれている。

加えて、外国人との共生が日常となっている都市部に対し、地方ではまだ「村社会的な文化」が根強く、外国人材の地域への溶け込みに課題を抱えているケースが少なくありません。

今後、特定技能制度の対象業種は更に拡大していく見通しです。しかし、制度面の整備だけでは十分とは言えません。企業側の理解促進と受け入れ体制の構築、そして地域全体での意識改革。これらの要素が、持続可能な外国人材活用の鍵を握っているのではないでしょうか。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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