外国人労働者の受け入れを基礎から解説

「いま外国人労働者ってどれくらいいるの?」
「年齢構成や男女比はどうなっているの?」
「どの国が一番多いの?」 

この記事は上記のような疑問にお答えすべく、外国人労働者の受け入れに関する現状についてまとめています。

外国人労働者に関する人数や国籍などの各種データを知りたい方は是非ご一読ください。

日本の外国人受け入れ政策・現状についておさらい

まずは日本の外国人受け入れ政策やその現状について見ていきましょう。

外国人労働者の受け入れ政策の歴史

はじめに、日本における外国人労働者受け入れ政策の歴史を遡って簡単に見てみます。

・1950~80年代前半

外国人労働者の受け入れの歴史は1950年の入国管理庁の設置から始まります。

1951年に出入国管理令が公布され、1952年には外国人登録法が公布されました。

これらの法令含めた当時の外国人政策は、基本的に在日韓国人や中国人への対応が中心となっていましたが、1960年代に入り変化が起きます。

人手不足を背景とした単純労働者の受け入れ要請が産業界から出されたのです。

しかし要請に対して「外国人労働者は受け入れない」という結論となり、その傾向が1980年代前半まで続くことになります。

・1980年代後半~現在

その後、1988年の第六次雇用対策基本計画で、外国人労働者を「専門的・技術的労働者」と「単純労働者」に分け、前者は可能な限り受け入れていくという方針が示されました。

そして1993年に技能実習制度が設けられたことで、外国人労働者の数が徐々に増えていくことになります

また2012年には高度人材ポイント制の導入2019年には人手不足が顕著な業種で単純労働の就労を認めた特定技能制度の設立など、時代が進むにつれて外国人労働者の受け入れが加速しています。

また、今後は、技能実習制度の問題点などを改善した育成就労制度という新たな在留資格ができる見込みです。

外国人労働者受け入れの現状

次に、外国人労働者の受け入れ状況がどうなっているか、統計数値を元に見ていきましょう。

厚生労働省が公表している、「外国人雇用状況」の届出状況まとめ (令和5年 10 月末時点) のデータでは、2023年(令和5年)10月末時点で、

外国人労働者数:2,048,675 人

外国人を雇用する事業所数:318,775事業所

であり、前年10 月末時点(1,822,725人、298,790事業所)に比べ、225,950人、19,985事業所の増加が見られ、外国人労働者数及び外国人を雇用する事業所数ともに、届出が義務化された以降、過去最高を更新しています。

在留資格別で見ると、以下のグラフの通りです。

在留外国人労働労働者数
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

最も多いのが身分に基づく在留資格です。2008年から緩やかに増加し続けていますが、ここ数年あまり変化がないのが分かります。

一方で、専門的・技術的分野の在留資格をはじめ資格外活動や技能実習などは、ここ10年間で3~5倍程度と増加率も高くなっています。

次に産業別で見てみると、

産業別外国人労働者数
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

製造業が最も多く、552,399人で全体の27.0%を占めています。また、対前年の増加率をみると、建設業が24.1%と最も伸びています。

続いて国籍別に見ると、

国籍別外国人労働者割合
出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

ベトナムが最も多く518,364人(外国人労働者数全体の25.3%)であり、次いで、中国が397,918人(19.4%)、フィリピン226,846人( 11.1%)の順となっています。

元々は中国人が最も多かったのに対し、2015年くらいからベトナム人が急増し、今では最も多くなっているのです。これについては、日本における外国人労働者の受け入れ態勢の強化、留学生の受け入れ推進、ベトナム政策の労働政策の強化などの要因が考えられます。

今後、外国人労働者はさらに増えていくのか?

過去最高を更新している外国人労働者ですが、今後はどのようになっていくのでしょうか?

考察なども踏まえて以下にて見ていきます。

日本の少子高齢化は加速度的に進行していく

まず、日本の少子高齢化について確認していきます。

以下のグラフは内閣府発表の資料を参考に作成したものですが、10年毎の人口推移と今後の予測を見てみると、2010年をピークに日本の人口は減少し続けています。

一方で、65歳以上の高齢者、更には75歳以上の後期高齢者の割合がどんどん増加し、15〜65歳の生産年齢人口は減少の一途をたどっています。

また、各種メディアでも取り上げられている通り、日本では2010年から出生率が下がり続けており、将来の労働力もどんどん減少する見込みです。

全国における少子高齢化の推移
内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」を参考にジンザイベースが作成

日本国内の労働力が減少する一方で、様々な業種で人手不足が叫ばれている状況は変わっておらず、外国人労働者に頼らざるを得ない状況に陥っていることは明確ではないでしょうか。

特定技能外国人の受け入れ人数を5年で82万人へ拡大?

では、国として労働力不足に対してどのような対策を講じる予定なのでしょうか。

出入国在留管理庁によると、政府は、2024年3月29日に特定技能制度の受入れ見込み数の再設定をすることを閣議決定しました。

これにより、今後5年間の特定技能外国人は、2023年末までの受入れ見込み数である345,150人から大幅に増え、820,000人にまで増える見込みです。また、新たに4分野と既存の3分野で業務の追加がなされています。

令和6年4月からの受け入れ見込み受け入れ見込み数
出典:特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)

今後は、人手不足が深刻な多くの分野で特定技能外国人が不可欠な存在になっていくのではないでしょうか。

高度人材における在留資格の緩和も進んでいく

特定技能の対象分野はいわゆるブルーカラー職種がほとんどですが、ホワイトカラー層でも在留資格制限の緩和が進んでいます。

具体的には、ITエンジニアや投資家、優良大企業の経営者や著しく優れた研究成果の博士号取得者などの専門的な技術力や知識を有する外国人材である「高度人材」において、「特別高度人材制度」「未来創造人材制度」が創設されました。

特別高度人材制度では、これまでのポイント制度と異なり学歴または職歴と年収が一定水準以上であれば認められること、在留資格においても幅広い活動での許可、5年間の在留期間、配偶者の就労可能職種の拡大などされています。

未来創造人材制度は、将来有為な人材として活躍が期待されるポテンシャルの高い若者を早期に呼び込み、日本で就職・起業してもらうことを目的としています。

特定のプロジェクトや研究に従事する高度専門職に特化しており、特別高度人材と同様の優遇措置が提供されます​。また、5年間または無期限の在留期間や永住権取得要件の緩和、配偶者就労や家族帯同条件なども緩和されています。

これにより、ブルーカラーだけでなくホワイトカラー層の外国人材の確保、増加が期待されます。

在留者数急増中の在留資格「特定技能」とは?

前項でも受け入れ枠の大幅増について紹介した「特定技能」ですが、ここで改めてどのような在留資格なのかを簡単に解説します。

在留資格「特定技能」は、人手不足が著しい特定産業分野の16分野で「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる」ことを目的に、2019年4月に設けられた比較的新しい在留資格の1つです。

上記の目的から、この特定技能の大きな特徴は、

単純労働を含む幅広い業務に業務ができる

ことです。

「技術・人文知識・国際業務」などをはじめとする専門性を要する他の就労ビザとは異なり、例えば、飲食店の現場などでの業務も可能になっています。

また、いくつかの取得要件はあるものの学歴や過去の職歴などは関係なく、対象の各分野で設けられた特定技能試験に合格すれば取得が可能なのも特徴のひとつです。

この特定技能は、1号と2号という2つの区分があり、特定技能2号は1号を経て決まった試験に合格する必要はありますが、在留期間の上限がなくなり家族帯同も認められているのも特徴です。

在留資格「特定技能」についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!

外国人労働者受け入れのメリット

ここでは、外国人労働者を受け入れるとどのようなメリットがあるかを解説していきます。

シンプルに「人手不足」を解消できる

まず何と言っても、人手不足の解消になるメリットがあります。

日本ではコロナ以前から様々な業種で人手不足が問題となっており、2022年度の人手不足による企業の倒産は前年比+26%とも言われております。また、前述の通り、少子高齢化が今後も進んでいくことで日本人の労働力だけでは人手不足は慢性化していくことが考えられます。

そのため、日本政府も人手不足が著しい業界の問題対策のために特定技能制度の導入などを進めてきました。

地方での採用や、日本人では採用に苦戦している職種なども、外国人労働者を対象に入れることで解消に繋がることもあります。

今後、外国人労働者を積極的に採用することは、各業界、各企業の人手不足の解決のキーとなるでしょう。

社内の若返り・ダイバーシティ化を推進できる

社内の若返りやダイバーシティ化に繋がることもメリットです。

来日してくる外国人労働者の平均年齢は30代半ばで、日本では確保しにくい若手人材も採用できる可能性が高いです。さらに、特定技能において言えば、20代の方が応募してくるケースも多々あります。特に今注目集めている、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、ネパールはどの国も平均年齢が非常に若いため、若手人材の採用も容易でしょう。

また、昨今言われている「ダイバーシティ」の推進に繋がるのもメリットでしょう。

ダイバーシティとは直訳では「多様性」という意味ですが、ビジネスにおいては、多様な人材を登用することによって、多様な働き方を実現するという考え方で、今世界的にも注目されている考え方です。

文化的背景や価値観の違う外国人労働者を雇用することは、日本人とは異なった視点や新しい発想を得ることができ、様々な面でビジネスの発展をもたらしてくれるでしょう。

海外進出のきっかけになりうる

これから販路や市場拡大のために海外進出を検討している企業にとっても、外国人労働者は貴重な存在でしょう。

今後も人口減少が予測されている日本では、マーケット全体の縮小も考えられます。そのため今後の企業発展のために、日本国内だけでなく海外展開を考える企業は少なくありません。

企業が海外展開を検討する際に、現地の習慣や法律、言語、文化的背景等の違いは大きなハードルとなることが多いです。しかし、現地に詳しい外国人労働者がいることは海外進出の一助になるでしょう。

多言語対応可能な体制ができ、インバウンド対応が可能に

2024年5月の速報値では、訪日外国人の数は約304万人と単月では過去最高となっています。また、2024年の予測数はコロナ前ピークの2019年を超え3,400万人とも言われています。

日本の特にサービス業と言われる業界では、日本語以外の外国語を話せる現場人材が少ないため、母国語に加え英語、日本語が話せるトリリンガルが比較的多い外国人労働者がいることは、このようなインバウンド需要の対応強化が可能になるでしょう。

外国人労働者受け入れのデメリット

一方で、外国人労働者を受け入れる場合のデメリットも見てみましょう。

文化・宗教・慣習の違いを理解し、配慮する必要がある

外国人労働者は、国籍ごとに文化・宗教・慣習などの点で日本人とは異なるため、それらを理解し配慮してあげる必要があります。これらの違いを理解していないと、思わぬところからトラブルになってしまうこともあります。

例えば、雇用した外国人労働者の母国の文化や信仰している宗教によっては、一日にお祈りの時間が必要であったり、特定の食べ物が食べられなかったりといった制約はあまり日本人に馴染みがないですが、事前にお互いの文化について理解を深めることが大切です。

日本人とは異なる手続きが必須で、受け入れまでに時間がかかる

外国人は誰でも簡単に就労が可能という訳ではなく、就労可能な在留資格(就労ビザ)の取得申請や更新手続きなどなど、日本人では不要な手続きが多くあり工数や費用がかかるのはやむを得ません。

また、海外から呼び寄せたり、就労ビザの許可がおりるまで就労できないなど、内定を出してから受け入れるまでに1ヶ月~数ヶ月程度の時間がかかってしまうのも事実で、これはすぐにでも雇用したいという企業にとってデメリットになるでしょう。

日本語力次第ではコミュニケーションのハードルが上昇する

やはり、言語の壁は外国人労働者を受け入れる上で、切っても切り離せない問題でしょう。

来日する外国人労働者は基本的に日本語を学習していますが、どうしてもうまくコミュニケーションを取れないというケースは往々にして発生します。また、個人差も大きいため外国人労働者の日本語能力次第ではコミュニケーションのハードルが上がってしまい苦労することもあるでしょう。

不法就労助長罪等の法令違反に気をつける必要がある

外国人労働者を受け入れる場合、細心の注意を払わなければいけないのが、不法就労助長罪等をはじめとした法令違反でしょう。

先述の通り、外国人労働者ならではの各種手続き、就労ルール、必要な支援がなどがあり、在留資格によっても異なります。また、就労可能な在留資格でもほとんどが就労職種に制限があるため、外国人労働者を受け入れる企業の採用担当者はこれらの知識が不可欠です。

これらの法令違反は、雇用主に違反の意図がなく知らなかったとしても罪に問われる可能性が高いため、特に注意が必要です。

外国人労働者受け入れの問題点

ここでは、実際に良く起こってしまいがちな外国人労働者受け入れの問題点をいくつか見ていきましょう。

在留資格制度が複雑(手続き・在留期限・任せる仕事内容)

まずは在留資格制度が複雑で起こる問題です。

就労が可能な在留資格(就労ビザ)はいくつかありますが、在留資格によっては手続きが他とは異なり複雑だったり、在留期限が異なるため更新の手続きが都度必要であったりします。これらを雇用側が正しく把握していれば大丈夫ですが、それぞれ細かくかつ複雑なため自社で全てを対応しようとすると、完璧に対応しきれない等の問題も起きています。

また、就労ビザは在留資格ごとに任せられる業務内容が異なるなどの制限があるため、それらを把握しきれず不法就労助長罪などに問われるなどもあります。

国籍・人種による差別はNG

あってはならないことですが、未だに外国人労働者に対する差別やいじめといった問題も残っています。特に国籍や人種によっては、日本人が古くから持っている間違ったイメージや先入観で差別と言えるような扱いを受ける外国人労働者は少なくありません。

このような間違った考えで、暴力的な指導や、暴言や差別用語を使うなどの精神的な攻撃、宗教や信仰上で行う行為を一方的に制限するなどのパワハラやは人権侵害にあたり、絶対にあってはならないことです。

プライベートにおいても問題が発生することがある

留学生を経て日本で就職をするなど、比較的日本の生活に慣れている外国人労働者でなければ、就職後に母国と日本の違いに仕事面だけではなくプライベートな生活面で苦労する外国人も多いです。

また、精神的な苦痛がなくても、例えば家賃や公共料金の滞納や、お金欲しさから犯罪に手を染めてしまうなどの問題が起きることもあります。

そのようなことにならないように、外国人労働者を受け入れる側は生活面でも細かなケアをする必要があります。

仕事観の違いから短期離職につながることもある

日本人と外国人の仕事に関する考え方は違うことが多いです。

外国人は、よりプライベートに重きを置き、仕事はそれを充実させるためにお金を稼ぐ手段として捉える傾向があります。

そのため、家族(特に子供)との時間を最優先し、なるべく残業をしない、家族のために休暇を取るなども少なくありません。

しかし、日本ではまだこのような考えが定着していなく、残業が当たり前に行われていたり、望んだ日に休暇が取れないなどがあるとすぐに離職をしてしまうなどの問題が発生してしまいます。

外国人労働者受け入れの実例

最後に、外国人労働者を実際に受け入れている企業の実例をご紹介します。

株式会社ウィントライアングル様

こちらの事例は、京都の比較的人材確保が難しいエリアの飲食店で外国人労働者を雇用し成功した事例です。

社会福祉法人永寿荘様

こちらの事例は、介護業で外国人労働者から応募が殺到した成功事例です。

まとめ

今回は外国人労働者の受け入れをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。

人手不足かつ、人口減少が進むこれからの日本では、外国人労働者も当たり前のように、採用上の選択肢に含めていく時代が来るでしょう。

当社は外国人労働者の受け入れに関する各種支援サービスを提供しておりますので、外国人労働者の採用や活用に少しでもご興味あれば、一度お気軽にお問い合わせください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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