【外国人労働者の賃金・給与】現状や代表的な疑問を3つ取り上げて解説

 外国人労働者の雇用を検討している方の中には、賃金をどのようにしようかお悩みの方もいらっしゃると思います。

そこでこの記事ではそのような方に向けて、外国人労働者の賃金について現状などを交えつつ、賃金に関するよくある疑問に対する答えを簡単に解説していきます。

外国人労働者の賃金・給与について、基本的な知識を得たい方は是非最後までご一読ください。

 

外国人労働者の賃金について

はじめに外国人労働者の賃金について、現状などを見ていきましょう。

外国人労働者の賃金の現状について

外国人労働者の賃金の現状は、厚生労働省が21年3月31日に公表した「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」に求めることができます。

調査結果によると、2020年度の外国人労働者の平均賃金は「21万8100円」となっています。

ちなみに2019年度は「22万3100円」であり、前年よりも5000円下がってしまう結果となりました。

国内一般労働者の2020年度における平均賃金が「30万7700円」であることを踏まえると、「8万9600円」の賃金格差が存在しているのが現状と言えるでしょう。

 

外国人労働者の適正賃金とは

それでは外国人労働者の適正賃金はどれくらいなのでしょうか。

厚生労働省が21年6月に配布している「外国人雇用のルールに関するパンフレット」では、賃金含めた労働条件について以下のように言及しています。

“労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならないこと”

つまり外国人であることを理由として、日本人労働者の賃金と差を設けてはならないというわけです。

そのため適正賃金は業界や職種によっても異なりますが、同じ仕事をしている日本人労働者の相場が、外国人労働者にとっての適正賃金ということができます。

 

主な就労系在留資格別の賃金

外国人労働者全体の賃金の現状や、適正賃金についての考え方を見ていただいたところで、就労系在留資格別の賃金も確認しておきましょう。

 

・専門的・技術的分野の在留資格

専門的・技術的分野とは、技術・人文知識・国際業務や経営・管理、高度専門職などの在留資格を指しています。

これらの在留資格の2020年度における平均賃金は「30万2200円」です。

専門的・技術的分野の在留資格で働く外国人労働者は、先ほどお話した国内の一般労働者の平均賃金と大きな開きはない結果となっています。

 

・特定技能

特定技能は2019年に新たに設けられた特定技能制度において、外国人労働者が取得する在留資格です。

特定技能の2020年度における平均賃金は「17万4600円」となっています。

特定技能では単純労働での就労も認められており、その分賃金が低くなっているのでしょう。

 

・技能実習

技能実習とは、技能実習制度で来日している外国人実習生が取得する在留資格です。

技能実習の2020年度における平均賃金は「16万1700円」となっており、特定技能をさらに下回る結果となっています。

 

外国人労働者の課税範囲

外国人労働者の課税範囲についても押さえておきましょう。

 

・所得税の課税範囲

外国人労働者も日本人同様に所得税が課税されます。

ただし当該外国人労働者が「居住者」か「非居住者」かによって、課税範囲が異なります。

(1年以上の滞在が想定される場合は「居住者」、1年未満の滞在となる場合は「非居住者」)

まず居住者の課税範囲は以下のようになります。

非永住者:全国内所得と、国外所得のうち国内で支払われたもの及び国内に送金されたもの

永住者:全ての所得が対象

非居住者は国内において行う勤務などに起因するものが課税範囲となっています。

 

・住民税の課税範囲

居住者の場合、非永住者と永住者ともに1月1日時点で、居住者として日本に住んでいれば、課税対象になります。

対して非居住者は非課税です。

 

外国人労働者から見た日本の賃金の優位性

続いて外国人労働者から見た日本の賃金についてお話していきましょう。

 

・世界における日本の平均賃金

まずOECD(経済協力開発機構)が発表している以下の統計を見てください。

 

グラフ_OECD平均賃金主要統計
画像引用:OECD 主要統計 平均賃金


上記はドル表示ですが、日本は約38,500ドルとなっています。

OECD加盟国の平均が49,200ドルであることを見ると、10,000ドル以上の開きがあることがわかります。

 

・日本の昇給率

また日本は昇給率の面でも課題があり、2019年から2020年にかけての昇給率は0.6%に留まっています。

その点ベトナムやインドネシアなどの東南アジア諸国の昇給率は高水準で推移しています。

例えばICONIC Co., Ltd.の実施した調査によると、ベトナムの2020年度昇給率は7~8%程度となっているのです。

現時点では日本はベトナムやインドネシアなどと比べると平均賃金は高いですが、徐々にその差が縮まり、その優位性も失われていくことが想定できます。

 

 

疑問①:外国人労働者に最低賃金は適用されるの? 

ここからは外国人労働者の賃金に関するよくある疑問について解説していきます。

 

日本の最低賃金についてのおさらい

まずは「最低賃金が外国人労働者に適用されるのか」という疑問から解説していきますが、結論に入る前に、そもそも最低賃金とは何かについて簡単におさらいしておきましょう。

最低賃金とは、最低賃金法に基づいて国が定めた賃金の最低限度です。

雇用主はその最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。

最低賃金には都道府県ごとに定められた地域別最低賃金と、特定の産業について定められている特定最低賃金の2種類あり、同時に両方適用される場合は高い方の最低賃金を適用しなければなりません。

2021年における平均最低賃金は930円となっています。

 

外国人労働者にも最低賃金は適用される

この最低賃金は外国人労働者にも適用されます。

最低賃金法は、労働基準法などと同様に日本国内で働く労働者すべてに適用される法律です。

そのため日本で働く限り、外国人労働者であっても最低賃金は適用される形になります。

ちなみに労働力として扱ってはならないとされている技能実習生であっても、最低賃金法は適用されるので注意してください。

 

外国人が最低賃金以下を希望した場合

また何かの事情で外国人労働者が最低賃金以下の賃金を希望したとしても、最低賃金を下回ることはできません。

最低賃金法で定められた最低賃金を下回る契約は無効とされ、地域別最低賃金もしくは特別最低賃金が適用されるからです。

また外国人労働者が希望しなくても、企業側の都合で最低賃金を下回る契約をした場合も同様ですので注意しましょう。

 

 

疑問②:外国人労働者に同一労働同一賃金は適用されるの?

次に同一労働同一賃金が外国人労働者に適用されるかどうかも見ていきましょう。

 

同一労働同一賃金についてのおさらい

同一労働同一賃金とは、同一企業や組織における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止するものです。

つまり企業内で職務内容が同じとき、合理的な理由がある場合を除いて、賃金を含めた待遇についても同じ取り扱いをする必要があるということですね。

同一労働同一賃金は現時点で罰則規定はないため、仮に対策が不十分であっても、ペナルティなどは発生しません。

ただし従業員側から損害賠償請求などの法的措置をとられる可能性はあるため、必ず押さえておきたいところです。

 

同一労働同一賃金は国籍関係なく適用される

同一労働同一賃金は外国人労働者であっても、最低賃金と同様に適用される形になります。

同一労働同一賃金は先ほどお話した通り、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の均等待遇を確保するための制度であるため、国籍に関係なく適用されるのです。

 

同一労働同一賃金における合理的な理由とは

同一労働同一賃金は不合理な待遇差を禁止するものですが、合理的な理由があれば待遇差があっても構わないとしています。

例えば勤続年数に応じて異なる賃金を設定することや、個人の貢献度や評価に応じた賞与設定などは合理的と言えます。

ほか職務内容の範囲やレベルが異なる場合なども待遇差があっても構いません。

 

疑問③:外国人労働者の賃金が低い場合に起こる問題は?

最後に外国人労働者の賃金が低い場合に起こる問題についてもお話しておきます。

 

賃金が低くなりがちな在留資格

まず賃金が低くなりがちな在留資格を確認してみましょう。

先程「在留資格別の賃金」でも述べた通り、特定技能や技能実習の賃金は往々にして低賃金になりがちです。

先述の通り特定技能は17万4600円、技能実習は16万1700円となっており、平均最低賃金930円を月額換算(8時間×20日)した14万8800円を、少し上回る程度の水準となっています。

 

問題①:在留資格の認定許可が下りない可能性がある

外国人労働者の賃金が低い場合に起こりうる問題として、まず挙げられるのが「在留資格の認定許可が下りない可能性がある」という点でしょう。

先程挙げた特定技能制度においては、賃金について日本人労働者と同等以上の賃金を支払う必要があるとされています。

そのため日本人労働者と比べて賃金が低い場合、そもそも日本で働くための在留資格申請の認定許可が下りない可能性があるのです。

 

問題②:離職される場合がある

また二つ目の問題として「離職される場合がある」という点も忘れてはいけません。

外国人労働者といえども、日本における平均賃金などの情報は把握した上で来日するので、その基準よりも低い賃金である場合は、より良い条件の職場を求めて、離職してしまう可能性があります。

また昇給などについても日本人が考える以上にシビアに捉えているので、昇給率が低い場合でも、転職活動を始めるなどのリスクがあるので、十分に留意しておきましょう。

 

まとめ

今回は外国人労働者の賃金について、現状などを踏まえつつ解説してきましたが、いかがでしたか。

外国人労働者は日本人以上に賃金や待遇を重視する傾向にあり、母国よりも高い給与を求めて来日してきます。

東南アジアなどと比較すれば、最低賃金でもまだ日本の方が高い水準となっていますが、このまま外国人労働者を低賃金で雇用していれば、いずれ日本の優位性は損なわれ貴重な労働力が失われる結果となってしまいます。

この記事を読まれた方は、是非外国人労働者の賃金や待遇について、改めて考えてみてください。


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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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