外国人労働者についての基本
まず外国人労働者に関する基本的な情報をおさらいしておきましょう。
外国人労働者の受け入れの歴史と現状
外国人労働者の受け入れは1950年の入国管理庁の設置に端を発します。
1950年から1980年代半ばまでは、外国人に対しての施策は在日外国人への対応が中心となっていましたが、1980年代後半から「専門的・技術的労働者」を積極的に受け入れていくという方針が政府より出されました。
その後、1993年に技能実習制度が設けられ、現場作業を担う外国人労働者の受け入れが一気に加速したのです。
続いて、2012年に高度人材ポイント制が導入されたり、2019年に特定技能制度が設けられたりしたことで、外国人労働者の数は増加の一途を辿り、2020年時点で約172万4000人が日本で就労しています。
外国人労働者が日本で働くために必要な在留資格とは
外国人労働者が日本で働くためには、それぞれの職種に応じた在留資格が必要となります。
その中心となるのは、就労系在留資格と呼ばれる19種類の在留資格です。
19種類ある就労系在留資格については、この後それぞれ紹介していきます。
就労系在留資格以外では、身分系在留資格である「永住者」や「特別永住者」、「定住者」などが日本での就労を認められており、就労系在留資格と異なり職種などの制限がありません。
なお、在留資格については、以下の記事でも詳しく解説しています。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
外国人労働者の在留資格別職種
それではさっそく就労系在留資格とそれぞれの代表的な職種を見ていきましょう。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」と代表的な職種
まずご紹介するのは在留資格「技術・人文知識・国際業務」です。
日本の公的機関や企業との契約に基づいて行う以下に該当する業務に従事するための在留資格となっています。
- 理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術・知識を要する業務
- 法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務
- 外国文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務
具体的な職種例としては
- 機械工学などの技術者
- プログラマー
- マーケティングなどの業務従事者
- 経理や人事、総務などの業務従事者
- デザイナー
- 通訳
- 企業の語学教師
等が挙げられます。
注意点として、大学等の教育機関で学んだ内容と関連のある業務である必要があるため、例えば、文系の経済学部を卒業した方が機械工学等の理工系業務に従事する場合は「技術・人文知識・国際業務」の許可がおりづらいと言えるでしょう。
また、大学等で学んだ内容と業務内容に関連があったとしても、専門性が必要とされない単純作業だった場合も不許可になってしまう可能性が高くなります。
そのため、人材の学歴と従事予定の業務内容については事前に確認しておくことが必須と言えるでしょう。
その他、以下の記事でも詳細を解説していますので、あわせてご覧ください。
▶︎【技術・人文知識・国際業務とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格「特定技能」と代表的な職種
続いてご紹介するのは在留資格「特定技能」です。
特定技能は人材不足が深刻な12の特定産業分野において、単純労働とされる職種でも外国人労働者を受け入れることが可能な在留資格となっています。
具体的な職種例は以下の通りです。
受け入れの要件が、人材側・受け入れ企業側双方に規定されておりますので、上記の業種に当てはまるからと言って、全ての企業様で受け入れが可能になるわけではございません。
細かい条件等については、以下の記事をあわせてご覧ください。
▶︎特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説
在留資格「技能実習」と代表的な職種
在留資格「技能実習」は、開発途上国を中心とした外国から技能習得を目指して来日した外国人が取得する在留資格です。
厳密に言えば労働者ではありませんが、特定技能への移行なども認められているため、就労系在留資格として数えられています。
技能実習の受け入れ可能職種としては、以下に掲げた86職種158作業(2022年4月現在)が該当してきます。
技能実習に関しても、細かく受け入れ基準が設けられているため、以下の記事から詳細をご確認ください。
▶︎技能実習制度とは?受け入れ方法から注意点まで基本を徹底解説
在留資格「経営・管理」と代表的な職種
次にご紹介するのは在留資格「経営・管理」です。
日本において、貿易やその他の事業の経営を行い、又は当該事業の管理に従事する活動を行うための在留資格と言えます。
ただし、次にご紹介する在留資格「法律・会計業務」に該当するような、資格を有しなければ法律上行うことができないとされている事業の経営や、管理に従事する活動は除きます。
具体的な職種としては、企業の経営者や取締役、監査役、管理者等が挙げられます。
その他の詳細につきましては、以下の記事をご覧ください。
▶︎【在留資格「経営・管理」とは】概要や取得要件、取得までの流れを解説
在留資格「法律・会計業務」と代表的な職種
続いて在留資格「法律・会計業務」について見ていきましょう。
在留資格「法律・会計業務」は外国法事務弁護士や外国公認会計士、その他法律上資格を有する者が行うこととされている、法律または会計に係る業務に従事するために必要になる在留資格です。
代表的な職種として弁護士や公認会計士、司法書士や税理士などが挙げられます。
在留資格「技能」と代表的な職種
在留資格「技能」についても確認してみましょう。
在留資格「技能」は、日本の公的機関あるいは企業との契約に基づき、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事するための在留資格となっています。
具体的な職種として
- 外国料理の調理士
- スポーツの指導者
- 貴金属の加工職人
- 航空機などの操縦者
- 動物の調教師
等が挙げられます。
総じて、「外国特有の業務」、「日本よりもレベルが高い業務分野」、「日本に技術者が少数しかいない分野」が在留資格「技能」に該当してくると言えるでしょう。
その他、取得要件等の詳細については、以下の記事を参照ください。
▶︎【在留資格「技能」とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格「企業内転勤」と代表的な職種
次に在留資格「企業内転勤」についてご紹介します。
日本に本店や支店などの事業所がある公的機関や企業で務めている外国人労働者が、日本の事業所で期間を定めて、業務に従事するための在留資格です。
具体的な職種としては、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に相当する業務となるので、機械工学の技術者やマーケティング業務の従事者、プログラマーなどが挙げられます。そのため、単純労働等に該当する業務には従事できませんので、ご注意ください。
以下の記事でも詳細を解説していますので、あわせてご覧ください。
▶︎【在留資格「企業内転勤」とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格「高度専門職」と代表的な職種
続いて在留資格「高度専門職」について見ていきます。
在留資格「高度専門職」とは、高度なスキルや技術を持つ外国人労働者のための在留資格です。
高度人材ポイント制度において、70ポイント以上を獲得した人材が取得でき、「高度学術研究分野」「高度専門・技術分野」「高度経営・管理分野」の3つの区分が存在します。
- 高度学術研究分野:在留資格「研究」、「教授」に相当
- 高度専門・技術分野:在留資格「技術・人文知識・国際業務」の国際業務を除いたものに相当
- 高度経営・管理分野:在留資格「経営・管理」に相当
具体的な職種としては公的機関・大学などで働く研究者や教授、機械工学系の技術者やマーケティング業務従事者、企業の経営者などが挙げられます。
また、「技術・人文知識・国際業務」などと比較すると、多くの優遇措置がなされております。詳しくは以下の記事でご確認ください。
▶︎【高度専門職とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説
在留資格「介護」と代表的な職種
在留資格「介護」とは、日本の公的機関や企業との契約に基づき、介護福祉士の資格を有するものが、介護又は介護の指導を行う業務に従事するための在留資格です。
在留資格「介護」は、国家資格である介護福祉士を取得しなければならないので、取得するにはハードルが高いことは否めませんが、在留期限など「特定技能」や「技能実習」と比べると優遇されている在留資格と言えます。
以下の記事でも詳細を解説していますので、あわせてご覧ください。
▶︎【在留資格「介護」とは】概要や取得要件、採用までの流れを解説
在留資格「興行」と代表的な職種
続いて在留資格「興行」についてご紹介します。
在留資格「興行」とは、日本国内で演劇や演芸、演奏、スポーツなどの興行に係る活動やその他の芸能活動を行うための在留資格です。
具体的な職種として
- 俳優
- 歌手
- ダンサー
- プロスポーツ選手
等が挙げられます。
在留資格「教授」と代表的な職種
次にご紹介するのは在留資格「教授」です。
在留資格「教授」とは日本の大学やこれに準ずる教育機関、または高等専門学校において、研究や研究に関する指導、教育に従事する業務に携わるための在留資格となります。
代表的な職種としては、大学教授や大学で勤務する講師なども挙げられます。
在留資格「芸術」と代表的な職種
在留資格「芸術」についても確認していきましょう。
在留資格「芸術」とは、収入が発生する音楽や美術、文学などの芸術上の活動を行うために必要な在留資格です。
在留資格「興行」に該当する職種は除くため、具体的な職種としては作曲家や画家、作家等が挙げられます。
在留資格「宗教」と代表的な職種
外国にある宗教団体によって、日本に派遣された宗教家の行う布教やそのほかの宗教上の活動に必要になるのが、在留資格「宗教」です。
具体的な職種として、司教や宣教師、牧師、神父などが挙げられるでしょう。
在留資格「報道」と代表的な職種
続いて在留資格「報道」についてご紹介します。
在留資格「報道」は外国の報道機関との契約に基づいて、日本国内で行う取材やそのほかの報道上の活動を行うために必要な在留資格です。
具体的な職種例としては以下のようなものが挙げられます。
- 外国の報道機関の記者
- 報道カメラマン
- テレビやラジオなどのアナウンサー
在留資格「医療」と代表的な職種
次に在留資格「医療」について解説します。
在留資格「医療」は、日本で医師や歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている、医療に係る業務に従事する活動を行うための在留資格です。
具体的な職種としては医師や歯科医師、看護師などが挙げられます。
在留資格「研究」と代表的な職種
在留資格「研究」とは、日本の公的機関や企業との契約に基づき、研究を行う業務に従事する活動を行うための在留資格となっています。
具体例としては公的機関の研究者、企業勤めの研究者などが挙げられます。
在留資格「教育」と代表的な職種
次に在留資格「教育」について見ていきましょう。
在留資格「教育」とは、日本国内の以下に挙げられる教育機関等において、語学教育やその他の教育をする活動のための在留資格です。
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 専修学校
代表的な職種例としては、上記に挙げた教育機関での語学教師などが挙げられます。
在留資格「外交」と代表的な職種
続いて在留資格「外交」についてお話していきます。
在留資格「外交」とは、日本国政府が迎え入れる外国政府外交使節団や領事機関の構成員、条約や国際慣行により外国使節と同様の特権・免除を受ける者、又はこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員として活動するための在留資格です。
具体的な職種としては、大使や公使などが挙げられます。
在留資格「公用」と代表的な職種
就労系在留資格の最後に、在留資格「公用」についてご紹介します。
在留資格「公用」とは、日本国政府が承認した外国政府もしくは国際機関の公務に従事する者、又はその者と同一の世帯に属する家族の構成員として活動するための在留資格です。
外国政府の大使館や領事館の職員、国際機関の公務などが、具体的な職種として挙げられます。
外国人労働者が多い業種・業界とは
最後に外国人労働者が多い業種・業界についても確認しておきましょう。
外国人労働者が最も多いのは製造業
以下の2020年10月末の外国人雇用状況届出のデータを見てください。
外国人労働者が最も多い業種・業界は製造業で、482,002人いることが分かります。
総数が1,724,328人いることを踏まえると、全体の28%にも及ぶ規模を誇っているのです。
その在留資格の内訳を見てみると、製造業で働く外国人労働者の内、技能実習生が半数以上を占めているという点も見逃せませんね。
次点が卸売・小売業の232,014人で構成比13.5%、その次に宿泊業・飲食サービス業の202,913人で構成比11.8%と続く形になっています。
まとめ
今回は外国人労働者が就くことのできる職種について、該当する在留資格とともにご紹介してきましたが、いかがでしたか。
外国人労働者を雇用する際、雇いたい職種によって在留資格が異なる上、それぞれ細かな条件などは異なってきます。
外国人労働者を雇用したいと考えているものの、「どのように始めたらいいかわからない、雇いたい職種はどの在留資格なら可能なのか」といったお悩みを抱えておられる方は、是非一度当社までご相談ください。