技能実習生って問題だらけ?制度や受け入れ方法について徹底解説!

この記事は、「技能実習がどんな制度なのか知りたい」、「技能実習制度のメリットやデメリットを押さえたい」、「技能実習生を受け入れる流れや注意点を知りたい」 という方に向けて、技能実習制度の概要や対象となる職種、受け入れ方などを分かりやすく解説しています。技能実習制度の利用を検討されている方や興味がある方は是非ご一読ください。

なお、YouTubeでも解説動画をアップロードしていますので、ぜひ併せてご覧ください!

技能実習制度の概要

はじめに技能実習制度の概要についてお話していきます。

そもそも、技能実習制度の目的はなに?

技能実習制度とは、

開発途上地域を中心とした外国から技能実習生を迎え、母国では習得が困難な日本で培われた技能、技術、知識を移転することで、その国の経済・技術発展を担う「人づくり」に貢献することを目的とした制度

です。

技能、技術、知識の移転を通じた国際貢献という制度趣旨から、技能実習生は「労働者」よりも「研修生」としての側面が強くなっています。

「出入国管理及び難民認定法」を根拠とし、1993年の研修制度が源流となっており、その後、さまざまな問題(劣悪な労働環境、人権侵害など)が発生し、度々法改正がなされています。

直近では、2017年に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行されたのを契機に、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を目的に外国人技能実習機構が設立されています。

技能実習生の受け入れ人数は増えてるの?

ここで、統計データで技能実習生の推移を見てみましょう。以下のグラフは厚生労働省のWEBサイト(外国人技能実習制度について)にて公表されている資料から抜粋したものです。

研修生・技能実習生の在留状況
出典:厚生労働省、法務省「外国人技能実習制度について」より抜粋

こちらからも分かる通り、2014年(平成26年)までは横ばいであったものの、2015年(平成27年)からは右肩上がりに増加をし、2019年がピークで41万972人、その後新型コロナの影響で2021年12月までは減少していたものの、2022年12月末時点で、32万4940人と回復傾向にあります。

同時期の日本に在留する外国人は307万5213人でしたので、全体の約10.5%を技能実習生が占めています。これは永住者の約28%(86万3936人)に次ぐ在留者数を誇っています。

次に、国籍別で見ていきます。

国籍別の技能実習在留数(2022.12)
法務省の統計データをもとにジンザイベースで作成

2022年12月末時点での国籍別の技能実習生在留数は、ベトナムが最も多く全体の54%を占め、次にインドネシア14.1%フィリピン9.0%となっております。

また、業種別で見ると、以下グラフの通りです。

職種別の技能実習生在留者数(令和2年/令和3年)
出典:厚生労働省、法務省「外国人技能実習制度について」より抜粋

こちらは、外国人技能実習機構統計で、2020年(令和2年)、2021年(令和3年)共に建設関係が最も多く、次いで食品製造関係、機械・金属関係、農業関係の順に多いというデータが出ています。

技能実習制度に関わってくる団体とその役割は?

技能実習制度ではいくつかの団体が実習生に関わってきます。

具体的には以下の5つの団体で、それぞれの関係や役割は以下の通りです。

技能実習制度に関わってくる団体の相関図
参考:外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」をもとにジンザイベースが作成

実習実施者‍

技能実習生の受け入れ企業のことを指します。技能実習生を受け入れるには、外国人技能実習機構へ「技能実習計画」を提出し、認定を受けなければ、技能実習生の受け入れができません。また、受け入れ後に関しても、計画通りに実習を実施していない場合や人権侵害が認められた場合は受け入れ停止処分が課されることになります。

監理団体‍

外国人技能実習機構から許認可を受け、活動をしている非営利法人です。実習実施者へ技能実習計画の作成指導や受け入れ後の定期監査等を行います。適切な監査・指導ができていないと、許認可の取り消し処分を受けることとなります。

送り出し機関‍

送り出し機関とは、各国送り出し国政府から認定を受けた外国法人です。技能実習生の募集や面接の調整、入国前の事前教育、査証(ビザ)申請を行います。

外国人技能実習機構‍

実習実施者、監理団体を監督する厚生労働省と法務省が所管する認可法人です。技能実習制度の適正な実施及び技能実習生の保護を図るために2017年に設立されました。技能実習計画に認定や実習実施者・監理団体双方へ定期的に実地検査を実施しています。

出入国在留管理庁‍

日本に滞在する全ての外国人の在留管理を行っている法務省の外局です。在留資格に認定を行います。

これらの手続きを経るため、技能実習生が来日するには6.5ヶ月〜8ヶ月近く時間を要するケースが大半となっております。

技能実習生が働ける期間は最長5年?

技能実習生の在留可能期間は最長で5年間です。

このうち、1年目、2-3年目、4-5年目で在留資格の区分が分かれており、以下のように在留資格の呼称が異なります。(企業単独型と団体監理型については後ほど解説します)

在留資格「技能実習」の区分
企業単独型団体管理型
1年目
(技能等を習得)
技能実習1号イ技能実習1号ロ
2-3年目
(技能等に習熟)
技能実習2号イ技能実習2号ロ
4-5年目
(技能等に熟達)
技能実習3号イ技能実習3号ロ

※参考:公益財団法人 国際人材協力機構HP

実習生が最長の5年間在留するためには、技能実習1号⇒2号⇒3号と在留資格の変更と更新が必要になっています。

流れは以下の通りで、1号⇒2号⇒3号の在留資格変更時までに、職業能力開発協会が実施・運営し、各職種ごとに実施される「技能検定試験」を受験し、合格しなければなりません。

技能実習の流れ(1号〜3号に至るまで)
出典:厚生労働省、法務省「外国人技能実習制度について」より抜粋

実技試験と学科試験があり、基礎級に関しては両方合格(2回まで受験可能)しなければ、技能実習2号へ移行することができません。

この技能検定試験の申請期限等に関するイメージは以下の通りです。

技能検定試験の受験流れ(1号〜3号まで)
参考:外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」をもとにジンザイベースが作成

なお、技能検定試験の過去問題は、東京都職業能力開発協会のHPから閲覧することが可能です。また、窓口・郵送にて過去問題を購入することも可能ですので、ご興味ある方は東京都職業能力開発協会のHPからご覧ください。 

技能実習生になるための条件は?

技能実習生になりたい外国人は、以下の要件をクリアする必要があります。

  1. 18歳以上で、帰国後には日本で修得した技能等を要する業務に従事する予定がある。
  2. 従事予定業務と同種の業務に、母国で従事した経験を有すること。
  3. 本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行うものであること。
  4. 技能実習を過去に行ったことがないこと。

介護の業務に従事予定の方については、日本語能力試験N4もしくはN4相当の能力を有していることを証明しなければなりません。

※ 参考:厚生労働省 技能実習「介護」における固有要件

技能実習生の給与相場ってどのくらい?

結論、月額給与177,800円が相場となっている様子です。こちらは、厚生労働省が公表している「令和4年賃金構造基本統計調査」によって公表されています。

技能実習生の平均給与(在留資格別)
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとにジンザイベースが作成

同じ外国人であったとしても、技能実習生の給与は圧倒的に低いのがお分かりいただけると思います。なお、同資料内には、25〜29歳の日本人平均給与が251,200円となっていましたので、日本人と比較しても、大きな差があることが伺えます。

同一労働・同一賃金での雇用が前提とされていますが、日本語力や経験の差を理由に、いまだに最低賃金で雇用されているケースが多いことを物語っています。

技能実習生の受け入れ方法

次に技能実習生の受け入れ方法について確認してみましょう。

企業単独型と団体監理型

技能実習生は、「企業単独型」・「団体監理型」という2つの受け入れ方式が存在します。

  • 企業単独型
    海外の現地法人等に所属する職員を日本に呼び寄せ、技能実習を実施する方法で、海外支店や海外の取引先がある場合のみ可能
  • 団体監理型
    営利を目的としない団体(通称「監理団体」)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する方法

現地に支社や支店を有しており、当該法人で雇用している外国人労働者を日本の事業所で就業させる場合に、企業単独型を活用することができます。企業単独型では、間に「監理団体」や「送り出し機関」を挟まないため、余計な工数や費用をかけることなく呼び寄せが可能になります。ただし、手続き等は基本自社で対応することになる点は注意が必要です。

とはいえ、2021年末のデータでは、技能実習生のうち、団体監理型での受け入れが98%を占めていることからも、大半の企業様は「団体監理型」で技能実習生を雇用する前提でご検討いただいた方が良いでしょう。

技能実習制度の対象職種・業種に制限がある?

技能実習生が従事可能な職種としては、基本的には以下の表に掲げた職種・作業が該当してきます。

こちらの表に掲げている職種は、先に説明した技能検定試験を受験し、合格することで、技能実習1号⇒2号へと移行することができ、最長5年日本に滞在することが可能です。(2022年4月現在、2号移行対象職種は以下の86職種158作業です)

技能実習制度 移行対象職種・作業一覧
出典:外国人技能実習機構HP

一方で、上の表に記載のない職種・作業であっても、「同一の作業の反復のみによって習得できるものではないこと」かつ「適切な技能実習計画を作成し、認定を得る」ことができれば、1年のみ技能実習生として日本へ呼び寄せることが可能となります。

技能実習生は受け入れ人数にも制限がある?

技能実習生は、受け入れ可能な人数に制限が設けられています。

実習実施者の常勤職員数(社会保険加入者数)に応じて、受け入れ可能な技能実習生の人数は以下表の通り変わってきます。(参考:外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」

技能実習生の受け入れ人数枠一覧
外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」をもとにジンザイベースが作成

また、受け入れ企業が外国人技能実習機構の定める基準に適合し、「優良な実習実施者」と認められた場合、この受け入れ可能人数枠を以下のように増やすことが可能です。

  • 技能実習1号:基本人数枠の2倍
  • 技能実習2号:基本人数枠の4倍
  • 技能実習3号:基本人数枠の6倍

ちなみに、優良な実習実施者と認められると、技能実習3号の受け入れが可能になります。つまり、技能実習2号修了者を技能実習3号へ延長し、5年間雇用するには優良な実習実施者であると認定を受けないといけないのです。優良な実習実施者である認定が受けられない場合は、技能実習2号の3年しか技能実習生を雇用することができません。

この優良な実習実施者かどうかを判定する基準は、以下外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」から抜粋しておりますので、ご覧ください。

優良な実習実施者の要件
出典:外国人技能実習機構「外国人技能実習制度について」

合計で150点満点で6割以上を獲得していれば、優良な実習実施者とみなされます。

特定監理団体と一般監理団体の違い
外国人技能実習機構「技能実習制度運用要領」を参考にジンザイベースが作成

また、監理団体についても、優良認定を受けることが可能で、「特定監理団体」と「一般監理団体」の2種類あり、それぞれ違いがあります。

上記の優良基準を満たした監理団体のみが、優良監理団体として一般監理事業を行うことを許され、技能実習3号の監理を行うことができます。

そのため、技能実習3号の最長5年技能実習生を受け入れるには、自社が優良認定を受けることに加えて、監理団体が一般監理事業を行える優良監理団体であることが必須という点は注意が必要です。

もちろん、2号までは特定監理団体、途中一般監理団体と新たに契約し、3号に移行するタイミングで切り替える、なんてこともできます。ただ、手続きや調整業務に時間がかかる可能性もあるため、最初から優良な一般監理団体とお付き合いしておいた方が無難でしょう。

技能実習生の受け入れの流れは?

技能実習生を受け入れる流れは、基本的に以下の7つのステップを踏みます。

技能実習生の受け入れまでのスケジュール
技能実習生受け入れまでの流れ

ステップ①:監理団体への受け入れ申込み

まずは監理団体に技能実習生の受け入れに関する申し込みを実施することになります。この時点で希望人数やどの国から受け入れたいのか、といった一般的な求人相談と受け入れ後の流れなどをすり合わせします。

ステップ②:面接・内定

続いて監理団体/送り出し機関から候補者を紹介してもらい、面接を実施しましょう。双方問題なければ採用決定となります。 求人条件によっては、1ヶ月近く時間がかかる場合もあります。

ステップ③:技能実習計画の策定と認定申請

採用が決まれば次に行うべきは、技能実習計画を策定することです。策定した技能実習計画は外国人技能実習機構に申請し、認定を受けなければなりません。許可が降りるまで、2-3ヶ月程度時間がかかります。

ステップ④:在留資格の申請

無事技能実習計画の認定をもらえれば、次に在留資格の申請を行います。申請に必要な書類を準備し、出入国在留管理庁に申請を実施することになります。こちらも、許可が降りるまで2-3ヶ月程度時間がかかります。

ステップ⑤:現地での入国手続き

在留資格の許可が降りると、在留資格認定証明書(COE)が発行されます。こちらの書類を現地に送付し、現地の在日本国大使館へ提出することで、入国許可証(VIZA)が取得できます。また、現地の送り出し機関等に依頼し、入国のための航空券を手配し、具体的な入国日の調整を行います。

ステップ⑥:外国人の講習受講

技能実習生は入国後、監理団体が実施している入国後講習を1か月程度受講することになります。こちらの講習では、道路交通法や社会保険制度について、外部の専門講師を招いて実施する形が一般的です。

ステップ⑦:実習開始

講習終了後、無事実習の開始となります。

ざっくりと、面接終了してから配属まで、6.5ヶ月〜8ヶ月ほど時間がかかることになりますので、すぐに入社・就労ができるわけではない点は注意が必要です。また、諸々の審査期間中、内定者については現地の送り出し機関にて日本語講習を受けながら、待機する形が一般的となっています。

受け入れる際の細かいルールにご注意を!

技能実習生を受け入れるにあたって注意すべき点は数多くあります。

その中でも代表的なものをご紹介しますので押さえておきましょう。

注意点①:業務の割合は適切か

技能実習は各業種・作業に応じて、必須業務と関連業務、周辺業務という3つの業務が設けられています。

このうち必須業務は全体の2分の1以上、関連業務は2分の1以下、周辺業務は3分の1以下と割合が決まっているので注意しましょう。 

必須業務、関連業務、周辺業務の割合例
出典:JITCO「技能実習制度の職種・作業について」

注意点②:技能実習日誌は適切に管理されているか

技能実習生を雇用する際、業務内容や安全衛生講習内容などを記録した技能実習日誌を作成する必要があります。

これを技能実習指導員が毎日記録し、保管する必要があるので忘れないように対応しなければなりません。 

注意点③:住居の広さは適切か

技能実習生の住居に関しても細かく規定があります。特に寝室が一人当たり4.5平米以上確保されていないと、住居の規定を満たしていないとみなされ、技能実習計画の認定がおりません。また、住居費用の徴収額にも上限が設けられるケースもあり、全額技能実習生に負担させることはほぼ不可能です。そのため、受け入れ企業側で一定の住居費用を一部負担することが求められるのです。

技能実習生の住居については、「特定技能外国人と技能実習生の住居は企業で準備?支援内容や住居ルールなどを解説」でも解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

注意点④:労働基準法は順守しているか

賃金は勿論、労働時間などの守らなければならない基準を順守できているかも重要です。特に注意が必要なのは、以下の2点です。

  • 月の残業時間数が45時間を超えていないか
    例え特別条項を盛り込んだ36協定書を労基に提出していても、技能実習生は月に45時間までしか残業させることができません。
  • 給与の未払いが発生していないか
    残業時間の計算ミスなどで、1円でも未払いが発生していた場合に是正対象となってしまいますので、ご注意ください。

違反が発覚した場合、監理団体から労働基準監督署へ通報されてしまいますので、実習を担当する社員含め、全員が理解しておくべきでしょう。

注意点⑤:人権侵害行為がなされていないか

当たり前ではありますが、暴力・暴言等の人権侵害行為は一切認められていません。

よくあるケースとして、社長は技能実習生の受け入れに対する必要性を理解し、コンプライアンス意識もしっかりしているものの、現場の社員には理解されていないという場合があります。こういったケースだと、日本語能力・技術水準がまだ未熟な外国人が現場に配属されることにより、現場社員に一時的に負荷がかかり、暴力・暴言に繋がってしまうケースがあったりします。

そのため、経営層だけではなく、しっかりと現場側にも人権侵害行為は一切禁止されていること、また技能実習生の受け入れの必要性を理解してもらう必要があると言えるでしょう。

さらに、在留カードやパスポート、預金通帳等の貴重品を取り上げる行為も禁止されていますので、間違っても失踪を防止するために会社で保管するなどという行為はしないようにしましょう。発覚した場合、認定取り消し処分を受けてしまいます。

監理団体と送り出し機関には問題がある?

ここまで見てきた中で、技能実習生を受け入れるには、「監理団体」と「送り出し機関」を通さないといけないことはご理解いただけていると思います。

ただし、この監理団体と送り出し機関、度々ニュースに出てくるように、問題も一部発生しうる可能性がありますので、注意が必要です。

監理団体と送り出し機関の役割

まず前提として、監理団体については、ざっくりと以下の3つの役割があります。

  1. 送り出し機関との連絡調整、技能実習計画の作成支援
  2. 技能実習の配属後、3ヶ月に一度の監査を実施することで、技能実習計画に従った技能実習が行われているか確認する。違反が認められた場合は、関係各所に通報を行い、技能実習生の保護を実施する
  3. 技能実習生の相談・苦情対応を行う

一方の、送り出し機関としては、以下の3点が役割として挙げることができるでしょう。

  1. 人材の集客
  2. 入国までの日本語教育
  3. 現地における手続き

なお、送り出し機関については、「送り出し機関は問題だらけ?認定要件や選び方を徹底解説します!」で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

技能実習生から違約金を取っているケースも

上記の役割がありながら、監理団体や送り出し機関の許可が取り消されるケース、実は多くあります。もちろん、受け入れ企業自体も不正行為をしていると認められた場合は、受け入れ停止処分となってしまいますのでご注意ください。

外国人技能実習機構HPのトップページ下部「報道発表資料」にて確認することができます。

「適切な訪問指導や監査を実施できていなかった」や「技能実習機構へ虚偽報告をしていた」等、監理団体としての役割を果たすことができていない場合に取り消し処分を受けることがあります。

また、基本的には3年間転籍が認められていないが故に、失踪という選択をとる技能実習生も中にはいます。失踪してしまうと、入国までに発生した費用や時間が無駄になってしまうため、失踪した時に違約金を定めている監理団体や送り出し機関もあります。

当然ながら、違約金については、技能実習生保護の観点から禁止されていますので、発覚した際に取り消し・処分をされてしまいます。

監理団体・送り出し機関選びには注意しましょう

上記のような事態を防ぐためにも、適切な監理団体・送り出しを選定して、お付き合いをしていくことが技能実習生を受け入れる上でかなり重要となってきます。

特に、受け入れ企業から、「3ヶ月に一度の監査に担当者が来ない」「問題発生時に相談しても、レスポンスが悪い」などといったお声を聞くことがよくあります。

監査や相談対応費として、受け入れ企業は毎月技能実習生1名あたり「監理費」を監理団体へお支払いすることとなりますので、「どの程度手厚くサポートしてくれるのか?」というのは事前に確認しておくべきでしょう。

現地の送り出し機関についても同様です。違法な違約金を徴収していないか、募集時に高額な手数料を徴収していないか等、可能な限り把握しておくと、入社後のトラブルを防ぐことができます。

外国人技能実習機構HPには、監理団体の一覧がございますので、ぜひ検討の際にはご活用ください。

技能実習制度は問題が多いから廃止される?

実は、この技能実習制度、先に挙げた問題以外にも、多くの課題点があります。こういった課題点は国際社会から度々批判を受けることとなっており、2021年7月にアメリカの国務省が、日本の技能実習制度を問題視する発言をしたことも記憶に新しいのではないでしょうか。

こういった背景があり、国としても是正する方向で制度改正の議論を進めています。

技能実習制度の抱える問題点

そもそもの前提として、技能実習制度は制度自体に問題があると指摘されています。

問題視されている背景としては、実習ではなく実際には労働力として扱われているケースが多いことや、労働基準法の対象となる労働者であるにもかかわらず転職できないといった、労働者の権利を主張できないことなどが挙げられます。

劣悪な環境の中で、実習ではなく労働を強要されている技能実習生がいる、という事実も忘れてはいけません。 明らかな人権侵害や未払い賃金などの法令違反があった際は、他の企業へ移籍することも可能ですが、諸々の手続きをへなければなりません。

気軽に転職ができないからこそ、「失踪」へと繋がり実際に増えてきていることも事実です。

技能実習生の失踪者数一覧(平成25年〜令和4年)
参考:法務省「技能実習生の失踪者数の推移(平成25年〜令和4年)」

送り出し機関/監理団体の問題

また、送り出し機関や監理団体の問題も先に指摘したとおりです。

送り出し機関が起こす問題は、実習生と失踪などの契約不履行について違約金を定めていたり、実習生から法外な手数料の徴収をする等のお金に関わるケースや、履歴書の改ざん等の虚偽に関わるケースがあります。

上記の動画では、元ベトナム人実習生で、現在は弊社で正社員として働いているベトナム人女性のインタビュー動画となっております。動画内で発言している通り、数十万円〜百万円近く送り出し機関やブローカーに支払っているケースもあったりします。

また、監理団体が起こす問題は、本来、非営利団体という立ち位置にも関わらず、送り出し機関とリベートを含む不正な契約を取り交わしていたり、役割である「訪問指導」「定期監査」を実施していなかったり、虚偽の監査報告書の提出や名義貸しなどの不正行為をしているケースなどがあります。

これは監理団体への国の審査基準が、団体側の自己申告に基づくなど、あいまいで形骸化していることが問題だと指摘する声もあります。読売新聞の調査では、国から優良認定を受けている16都県の18団体で、技能実習適正実施・実習生保護法に反する違反が確認されています。(読売新聞オンライン:【独自】実習生の監理団体、許可取り消しの半数超に国が「優良」認定…ずさんな審査浮き彫り より)

繰り返しにはなりますが、受入企業側は、このような監理団体に巻き込まれないよう、きちんとした監理団体を選ぶ必要があるのです。

受け入れ企業側の問題

技能実習の問題は受け入れ側の中にも潜んでいます。具体的には、受け入れ企業が様々な法令違反をしているケースです。

厚生労働省が2023年8月に発表した資料では、2022年に全国の労働基準監督機関において、労働基準関係法令違反が疑われる実習実施者に対して 9,829件の監督指導を実施し、その73.7%に当たる7,247件で同法令違反が認められたというデータがあります。

その主な違反事項は、多いものから、労働基準法の割増賃金や最低賃金の支払いに関わるものが37.0%、労働安全衛生法の安全基準に関わるものが23.7%の順と報告されています。(参考:厚生労働省 外国人技能実習生の実習実施者に対する令和4年の監督指導、送検等の状況を公表します より)

上記のような労働関連法規の違反だけでなく、技能実習生に対して暴力や脅迫、パワハラやセクハラといった人権侵害を行ったというケースも少なくありません。

技能実習生側の問題

残念ながら技能実習生側にも問題はあります。

その主な問題は、実習途中での失踪や途中帰国です。

昨今ではSNSの普及により、同国人同士のコミュニティなど横の繋がりが簡単になり、情報共有が活発に行われます。もちろん技能実習生の待遇面や受け入れ企業側の対応などの情報もすぐに共有されるでしょう。

これにより、自身の環境に不満を持つ実習生が自他を比べることで、モチベーションの低下による失踪や、不法就労などに走るケースも少なくありません。

また、最初から技能習得や語学力の向上に意欲を示さず、ちょっとした留学気分で来日してくる技能実習生も少なからず見受けられ、しっかりと面接でスクリーニングできないと入社後に問題を起こしてしまいがちです。

技能実習制度は育成就労制度へ変わっていく?

こうした諸々の問題を受け、日本国政府は技能実習に変わる新たな制度「育成就労」の創設に向けて議論を進めています。

政権与党内で、微修正が加えられているところではありますが、有識者を集めて約1年間議論した結果、大枠としては以下のような形で運営されていく見込みです。

「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第16回)」の提言内容要点
出典:法務省「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第16回)

具体的なスタートは2027年を想定しているものの、激変緩和措置として、3年間の移行期間が設けられる見込みです。そのため、技能実習制度は2030年までは運用が継続されるそうですが、遅かれ早かれ、転籍が認められ、特定技能制度へよりスムーズな移行ができるなど、大幅にアップデートされた育成就労を活用する前提で、受け入れ企業は準備を進めていく必要があるでしょう。

技能実習制度と特定技能制度の違い

最後に、技能実習制度と特定技能制度の違いについて触れていきます。

前述で、技能実習から特定技能への在留資格の移行が可能なことはお伝えしましたが、元々それぞれ制度が出来た目的、背景が異なるため、様々な面で相違があります。

具体的には以下の表の通りです。

特定技能技能実習
制度の設立目的国内の人手不足の解消日本の技能を発展途上国などに移転することによる経済・技術発展を通じた国際貢献
受け入れ可能な業種・職種人手不足が深刻な12分野86職種158作業
滞在可能な在留期間特定技能1号:5年
特定技能2号:無期限
技能実習1号:1年
技能実習2号:2年
技能実習3号:2年
受け入れ可能な人数制限人数制限なし(建設と介護は制限あり)常勤職員数に応じて人数制限あり
家族帯同の可否特定技能1号:不可
特定技能2号:配偶者と子に限り認められる
認められない
転職の可否可能基本的には不可能
受け入れ方法制限なし送り出し機関を通じて、国外から呼び寄せる
関与する団体自社で支援可能な場合はなし
ただし、登録支援機関へ支援を委託することも可能
送り出し機関、監理団体

このように制度設立の目的が、「技能実習制度は他国への技術移転による貢献特定技能制度は国内特定分野の人手不足の解消」と大きく異なることを理解すると分かりやすいかもしれません。

記事内CTA_ホワイトペーパー誘導バナー_特定技能vs技能実習

まとめ

今回は技能実習制度についてお話してきましたが、いかがでしたか。

国際社会に貢献することができる上、社内における人材不足の解消や活性化にも繋がる制度である一方で、技能実習制度には様々な問題があります。

外国人雇用を検討しているけど、技能実習生にするべきか、他の在留資格保持者を受け入れした方が良いのか、そもそも技能実習生以外の選択肢は何かあるのだろうか?とお悩みの企業様は、ぜひこちらのフォームからお問い合わせをお願いいたします。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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