この記事にたどり着かれた方の中には、外国人労働者の雇用に興味はあるものの、様々な問題があると聞いて、「なかなか一歩が踏み出せない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は外国人労働者を雇用した際に、どのような問題があるのかをご紹介した上で、その問題を引き起こす原因や対策について、解説していきます。
外国人労働者の雇用をご検討されている方は、是非一度最後までお読みくださいませ。
また、以下は「特定技能」を雇用している企業様でのトラブル事例にはなりますが、動画形式でも解説していますのでぜひご覧ください。
日本における外国人労働者数の推移
まず初めに、日本にいる外国人労働者の推移から確認していきます。
以下のグラフは厚生労働省が発表している2008年から2022年までの外国人労働者の推移です。
見て分かる通り、年々増加傾向にあり、2022年は前年と比べ95,504 人増加し過去最高の1,822,725人もの外国人労働者が在留しています。
また、国籍別・在留資格別では以下の通りです。
最新の2022年10月のデータでは、ベトナムが一番多く462,384人で全体の25.4%を占め、次いで中国(香港、マカオ含む)が385,848人で21.2%、フィリピンが206,050人で11.3%の順となっています。
在留資格別で見ると、身分に基づく在留資格が595,207人で32.7%を占め、専門的・技術的分野の在留資格が479,949人で26.3%、技能実習が343,254人で18.8%というデータが出ています。
外国人労働者雇用における問題とは?
外国人労働者雇用における問題を「受け入れ企業側が起点となる問題」「外国人労働者との間で生じる問題」に分けて、お話していきます。
受け入れ企業側の問題
まずは実際に外国人労働者を受け入れる企業側が起点となる問題から見ていきましょう。
①低賃金での雇用
一つ目の問題としては、「低賃金での雇用」が挙げられます。
上記は、厚生労働省が公表しているデータになりますが、外国人労働者は月額228,100円が平均給与額となっていることが伺えます。
一方、全労働者平均では、307,400円となっており、外国人労働者は統計データ的にも低賃金であることがお分かりいただけるかと思います。
特に外国人技能実習生の低賃金問題をメディアで目にされている方も多いのではないでしょうか。
技能実習制度に関して詳しく知りたい方は、ぜひ「技能実習制度とは?受け入れ方法から注意点まで基本を徹底解説」も併せてご覧ください。
「外国人労働者は日本人よりも安く雇用することができる」という古い考えから、最低賃金ぎりぎりで雇用している企業は存在し、待遇面が魅力的でないがために、失踪や早期退職などの問題へ繋がり、なかなか人材が定着しない、というケースは経験則上からも確かにあるといえます。
②:年功序列型の昇給・昇進
日本ではまだまだ根強く残っている年功序列型の昇給や昇進ですが、外国人にとっては理解がし難い人事制度です。
転職を繰り返してステップアップをすることが一般的な彼らは、能力主義の成果報酬の考え方が強いため、受け入れ企業が年功序列制度を採用している場合、優秀な外国人ほどすぐ離職をしてしまうでしょう。
事実、内閣府が2019年9月に発表している資料でも以下のように言及しています。
③:劣悪な労働環境
次に問題としてあるのは「劣悪な労働環境」です。主には、労働時間と労働環境があげられます。
まず、労働時間に関してですが、労働基準法などの労働関連法令は、外国人労働者であろうが、日本人であろうが、例外なく適用されます。もちろん、2019年4月に施行された、働き方改革関連法(時間外労働の上限規制や年次有給休暇の確実な取得など)も外国人労働者へ適用されます。
しかし、このことを知らずに、外国人労働者に長時間労働させている、というケースも一定数存在します。
一方で、外国人労働者側から、残業代が欲しいがために、「長時間労働をさせて欲しい」と会社側にお願いしてくるケースもあるでしょう。
本人からの申し出のため、快く残業をさせてしまうと、いつの間にか長時間労働が常態化し、問題が発覚した際には、労働基準監督署から是正がきたり、最悪のケースでは出入国管理庁へ報告が上がってしまい、外国人労働者受け入れ停止処分を受けてしまうなど、大きな問題に発展してしまいます。
次に労働環境に関しては、前述の低賃金や長時間労働といったことだけでなく、安全衛生的に問題のある現場での就労を強要したり、割増賃金を支払わなかったりといった、外国人労働者に対して劣悪な環境下で労働に従事させている企業も少なからず存在しています。
外国人技能実習生においては、在留カードやパスポートを取り上げ、強制労働させられているケースも過去に多発しておりました。
現在においては、技能実習生の管理・監督をする外国人技能実習機構をはじめとする行政機構が創出され、受け入れ企業への監視が強まってるので、上記のような悪質なケースは減ってはいるものの、水面下ではまだ根強く残っている問題と言えるでしょう。
④:ハラスメント
外国人労働者を雇用する上で、ハラスメントも問題となります。
上記は、2017年に法務省が実施した調査レポートから抜粋しておりますが、「外国人であることを理由に侮辱されるなど、差別的なことを直接言われたことがありますか?」と言う質問に対し、「よくある」が2.7%、「たまにある」が27.1%と、約30%の外国人の方が差別的な発言を直接言われた経験があることが伺えます。
さらに、「誰から言われましたか?」との質問に対しては、見知らぬ人が53%で最多である一方で、2番目には「職場の上司や同僚・部下、取引先」が38%となっており、職場での大きな問題となりつつあります。
最近では、レイシャルハラスメントと言う言葉がある通り、外国籍であることを理由に差別をしたり、偏見を抱いたりしてしまうことが実際の言動に出てしまえば、当然ハラスメントになってしまいます。
国籍やそれに基づく多様な価値観への理解などがなければ、これらのハラスメントはなくならないのでしょう。
外国人労働者との間で生じる問題
続いて外国人労働者との間で生じる問題について見ていきましょう。
①:コミュニケーション不全
外国人労働者との間で生じる問題として、コミュニケーション不全が第一に挙げられます。
来日する外国人労働者は当然ある程度の日本語を学んでいるわけですが、日常会話はさておきビジネスレベルでの細かな日本語でのコミュニケーションは難しいというケースが大半を占めています。
中でも、上記のアデコ株式会社の調査結果にもあるとおり、日本独特の「阿吽の呼吸」や遠回しな言い方は直接的なコミュニケーション文化を背景を持つ外国人社員にとっては中々ハードルが高いと言えるでしょう。
また、ブルーワークの職場でよくあるのが、経営者層では外国人労働者受け入れの必要性を理解しており、コミュニケーションに注意を払っている一方で、日々納期に迫られている現場層では、コミュニケーション不全が原因で暴言、最悪の場合、暴力へと問題が発展してしまうケースも発生しています。
このコミュニケーション不全は、仕事を進めていく上で致命的な問題になるため、外国人労働者を受け入れる際に、何かしら工夫を凝らす必要があります。
②:文化的背景/価値観の違いによる衝突
外国人労働者を雇用する場合、文化的背景や価値観の違いによる衝突も問題と言えるでしょう。
外国人労働者が育ってきた国の文化や環境は日本のそれとは異なるため、日本では当たり前のことが、外国人労働者にとっては当たり前でない、ということが業務上においても多発します。例えば、日本においては5分前行動が当たり前とされることが多いですが、他国においては比較的遅刻に寛容的であるため、外国人従業員に対して時間感覚がルーズすぎると感じてしまう経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
ちょっとした文化や価値観の違いからくる認識齟齬が日々積み重なることで、大きなフラストレーションに繋がりかねないので、外国人社員のバックグラウンドの理解と、日本人との認識の齟齬を極力減らす対策が必要になってきます。
③:地域社会との摩擦
地域社会との摩擦によるトラブルも挙げられます。
雇用した外国人労働者は当然日常生活における「日本での当たり前」を知りません。その「日本での当たり前」を知らないことが原因で近隣住民とトラブルとなってしまうケースも多くあります。
こちらは、福岡市の外国籍市民アンケートの調査結果ですが、騒音、ゴミ出しのルールなどで、特に地域住民間で問題が発生していることが伺えます。
他にも、スーパーやコンビニでの買い物方法、油を排水溝に流してしまうなど、基本的なことが原因で問題に発展するケースもあります。
最悪の場合地域住民から訴えられることもあるので、注意が必要です。
外国人労働者問題への対策は?
次は、ここまでご紹介してきた問題への対策方法についてご紹介していきます。
外国人労働者の受け入れ体制を構築する
外国人労働者の受け入れ体制を構築するにあたって、最低でも下記にあげたような事項は概要を理解しておく必要があります。
①日本人労働者に適用される基本的な労働関連法
賃金計算・時間外労働の上限規定・年次有給休暇制度などの労働基準法に関わる事項と、特別教育の必要有無・健康診断・労働災害などの労働安全衛生法に関わる事項について
②在留資格申請や在留資格更新申請に必要な手続き概要
在留期間更新許可申請や在留期間変更許可申請について
③外国人労働者を雇い入れる上での必要な手続き
社会保険加入の手続き・ハローワークへの外国人雇用の届出などについて
④不法就労に該当する代表的な事例とその見分け方
就労可能な在留資格・偽造在留カード・留学生の週28時間労働制限などについて
特に上記②〜④は外国人を雇用した場合に適用される法律や必要な手続きです。
これについて違反が合った場合は「知らなかった」では済まされず、労働者だけでなく雇用者も法令違反や不法就労助長罪に問われることもあります。
そのため、採用担当者は外国人材の労務管理や採用ルールの知識をしっかりと深める必要があります。
不法就労助長罪については【不法就労助長罪とは】成立要件や防止方法などをわかりやすく解説にも詳しく記載してありますので、是非併せてご覧ください。
外国人労働者の待遇/評価制度を整える
労働環境の整備や適切な評価制度を整えることも、重要な対策となります。
以下に具体的な例をいくつかあげていきます。
メンター制度の導入
メンター制度とは、経験豊富な先輩社員が自身が持っている知識やスキルを共有、指導し、新人や若手などの成長を促す制度です。これにより、外国人労働者の不安が解消され、より良い業務遂行や成長が促進されることが期待されます。
社内に複数の外国人社員がいる場合は、同じ国同士の社員をペアにしたり、母国語が同じ社員同士をペアにするのも有効です。
能力主義、成果報酬の評価制度
前述の通り、日本で古くから採用されている年功序列の人事評価制度は外国人にはあまり馴染みがありません。
ひとりひとりの貢献度・能力・態度を明確に把握と評価をし、処遇の格差付けの根拠をはっきりと説明がつけられるようにすることは、外国人労働者の離職対策だけでなく、企業組織の目標達成に向けた戦略的な人材マネジメントに欠かせないものでしょう。
外国人労働者独自の人材育成制度の整備
外国人労働者は、文化的背景や価値観が違うため、既存の人材育成制度の活用が必ずしも正しいわけではありません。
日本人であればなんとなく判断できる常識やルールも、外国人にとってはピンとこないというケースは大いにあり得るため、それらの違いを超え、同じ企業で働くスタッフとして意識を合わせるにはどうしたらいいかという視点で、外国人社員独自の人材育成制度を整えることが大切です。
例えば、外国人社員を集めた研修会の定期開催や、eラーニングの活用など、職場環境や仕事内容などを加味しながら、適した人材育成制度を構築しましょう。
他にも、外国人労働者に対して、基本的なビジネスマナー研修を受講する機会を提供したり、多言語マニュアルを作成し、新入社員に読んでもらうことなどは、実際に多くの外国人労働者雇用に成功している企業で導入されています。中には、「日本語能力試験〇級に合格したら〇〇円支給」と言うような、インセンティブを導入し、外国人社員の日本語能力向上を支援している企業様もございました。
また、定期的に1on1を実施することで、日本企業で働くことの様々な悩みや不安、業務上の疑問点などを解消できる機会を意識的に作られている企業様もいらっしゃいます。
一方で、実際に外国人社員へ指導する立場の日本人社員向けの研修を実施している企業様もあり、異文化コミュニケーション・ダイバーシティマネジメントの知見・ノウハウを取り入れ、外国人労働者が活躍できる職場環境作りがうまくいっているケースも多数目にしてきました。
投資が必要なものばかりであり、企業様にとっては手を出しにくい対策もあると思いますが、ぜひ一度ご検討してみてください。
地域社会への共生を促す
外国人労働者が住むことになる地域社会に属する人たちは、当該外国人とただのご近所さんとしての付き合いになりますが、地域のボランティアやイベントに参加するなどして関わりを持たない限り、外国人・日本人双方への理解が促進されず、地域での共生は実現できないでしょう。
そこで、外国人社員に対しては、地域社会におけるボランティア活動に参加を促してみたり、社内イベント等への参加を促すことも、中長期的には検討してみるのも一つの手であると言えるでしょう。
実際に、地域のお祭りなどに社員総出で参加し、地域住民の方と交流を持たれている企業様や、商工会の青年部等に在籍し、ボランティアをはじめとする福祉活動を通じて、地域の住民の方と交流を持つ機会を提供している企業様もいらっしゃいます。
外国人労働者を採用するメリットはある?
最後に外国人を採用するメリットについて紹介していきましょう。
人手不足の解消
まずあげられるメリットは何と言っても人手不足の解消です。
日本は、コロナ以前から人手不足が問題となっており、2022年度の人手不足による企業の倒産は前年比+26%とも言われております。また、少子高齢化が今後も進んでいくことで日本人の労働力だけでは人手不足は慢性化していくことが考えられます。
そのため、日本政府も人手不足が著しい業界の問題対策のために特定技能制度の導入などを進めてきました。今後、外国人労働者を積極的に採用することは、各業界、各企業の人手不足の解決のキーとなるでしょう。
日本の人手不足については【日本における人材不足】現状やデメリットを踏まえつつ、対策方法をご紹介の記事も是非併せてご覧ください。
ダイバーシティが促進され、組織が若返り活性化する
ダイバーシティとは直訳では「多様性」という意味ですが、ビジネスにおいては、多様な人材を登用することによって、多様な働き方を実現するという考え方で、今世界的にも注目されている考え方です。
文化的背景や価値観の違う外国人労働者を雇用することは、日本人とは異なった視点や新しい発想を得ることができ、様々な面でビジネスの発展をもたらしてくれることが期待できます。
また、日本に来る外国人労働者は20-30代の若い人材が多いため、上記のようなビジネス面での多様性だけでなく、組織自体の若返りによる活性化も促進してくれるでしょう。
海外展開への可能性が広がる
少子高齢化が進む日本は2011年以降12年連続で人口減少をしており、今後も加速していくことが予想されています。
そのため今後の企業の発展のために、日本国内だけでなく海外展開を考える企業は少なくありません。
企業が海外展開を検討する際に、現地の習慣や法律、言語、文化的背景等の違いは大きなハードルとなることが多いです。しかし、現地に詳しい外国人労働者がいることは海外進出の一助になります。
また、アフターコロナになりつつある昨今では海外からの観光客、いわゆるインバウンド需要も回復、増加傾向にあります。
外国人労働者がいることは、このようなインバウンド需要の対応強化から海外展開へのヒントを得ることもできるでしょう。
まとめ
今回は外国人労働者雇用における問題をテーマに、原因や対策も交えてお話してきましたがいかがでしたか。
実際に発生する問題やその対策をご紹介することで、少しでも外国人雇用の具体的なイメージを持っていただけたら幸いです。
もし外国人労働者の雇用に取り組みたいと思いつつ、手続きの複雑さや注意点の多さなどから、なかなか一歩を踏み出せない企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ当社にお気軽にご相談ください。
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