異文化コミュニケーションって何?よくある問題からポイントまでを解説!

外国人労働者の採用を検討した場合、コミュニケーションはどのようにすればいいのかという悩みが出てきますよね。

そこでこの記事ではそういったお悩みを抱えている方に向けて、外国人労働者を雇用する際に役立つ異文化コミュニケーションについてご紹介していきます。

ポイントもあわせて解説していますので、是非最後までご確認ください。


異文化コミュニケーションとは

異文化コミュニケーションの定義

前提として、異文化コミュニケーションの定義を確認していきたいと思います。

異文化コミュニケーションとは、「文化的な背景を異にする者同士によるコミュニケーション」と定義されています。

もっとかみ砕いて言えば

・性別
・年齢
・職業
・出身地
・価値観

などが異なる相手とのコミュニケーションのことを指しています。

外国人の方との交流をイメージしがちですが、上記の定義から、国籍ではなく、文化的な背景が異なる人とのコミュニケーション全てが異文化コミュニケーションに当てはまることがご理解いただけたかと思います。

例えば、出身地や年齢が異なる日本人同士でのコミュニケーションも、異文化コミュニケーションと言うことができます。

異文化コミュニケーションの意義

この記事をご覧になられている方は、すでに外国人労働者の方と一緒に働いた経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、その際に「指示は通じているはずなのに、何か仕事がスムーズに進まないなあ」と違和感を感じた瞬間はありませんでしたか?

その違和感、自分と相手の間でのちょっとした考え方や背景となる慣習の違いが原因である可能性があります。

実は、外国人労働者側でも感じているケースがほとんどで、そのまま放置されてしまうと、最悪の場合、日本人社員vs外国人社員と言う対立構造が社内で形成されてしまいます。


このような、ちょっとした考え方や慣習の違いから生み出される対立や誤解は、異文化コミュニケーションを円滑にすることで、大幅に減らすことが可能になります。


異文化コミュニケーションが必要とされる背景


①外国人労働者数の増加

現在日本国内では、少子高齢化が進んでいることが原因で、人手不足が深刻化しています。この状況を打開するため、日本政府は国外から優秀な外国人労働者を多数呼び寄せる政策を推し進めており、結果として、日本国内に在住する外国人労働者数は年々増加傾向にあります。

以下のグラフをご覧ください。

 

グラフ引用:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和2年10月末現在) 法務省

このグラフを見ると外国人労働者の数が年々増加していることが視覚的にご覧いただけると思います。

現在は新型コロナウイルス感染症によって新規外国人の受け入れが制限されているものの、少子高齢化は継続的に続いていくことなどを踏まえると今後もさらに外国人労働者数は増加すると言えるでしょう。

つまり、日本国内における外国人との異文化コミュニケーションの機会はますます多くなっていくことが確実と言えます。


 ②ビジネスのグローバル化

1990年代、インターネットの登場をはじめとするICT技術(Information and Communication Technology)の発展により、通信と輸送のコストが著しく低下しました。結果として、国境を超えたビジネスを展開することが容易になり、ビジネス環境は急速にグローバル化して行くことになります。

また、上記産業界の環境変化にともない、各国で規制緩和や自由競争が推し進められ、昨今ではさらにグローバル化が加速してきています。

上記の影響で、各企業においては日本と異なる文化に属する人々とコミュニケーションを取る機会が増えてきています。


 ③価値観の多様化

インターネットをはじめとする技術革新は、ビジネスのグローバル化だけではなく、大量の情報を一瞬で世界中に届けることが可能になる情報化社会の引き金にもなりました。

この情報化社会の影響により、人々は様々な情報を毎日大量に受け取ることになり、一人一人が異なる価値観を形成しやすくなりました。

価値観が多様化することにより、同じ国籍の人間同士であったとしても、相手の価値観を形成する背景を理解した上でコミュニケーションをとらなければ、先にあげたような対立や誤解が生じてしまいかねません。


異文化コミュニケーションの問題点

では、異文化コミュニケーションの問題としては、どのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、外国人労働者との間で、異文化コミュニケーションを阻害する代表的な要因を取り上げていきたいと思います。


 問題点①:日本語能力

​​日本語以外の言語を話せる日本人、つまりバイリンガル人材は日本国内に果たしてどのくらいいるのでしょうか。

残念ながら、正確な統計データを見つけることができなかったのですが、最も日本人にとって馴染みの深い英語に関して言うと、2013年に株式会社クロスマーケティング社が行った「グローバル化と英語に関する実態調査」と言うリサーチがあります。この調査では、20代〜40代の男女1,200人を対象に実施している調査になりますが、英語と日本語を話せるバイリンガル人材は約10%しかいないと言うリサーチ結果になっています。

つまり、そもそもの前提として、日本で外国人労働者が働くには、日本語がどの程度話せるのかが、コミュニケーションを取る上で重要な要素となっております。(日本語以外の言語を話せる日本人がほとんどいないため。)

全ての外国人労働者が日本語が流暢に話せるわけでは無いので、日本語能力次第によっては、大きな問題となってしまうでしょう。


問題点②:ハイコンテクスト vs ローコンテクスト

暗黙の了解と呼ぶように、「〇〇産業さんへメール送っておいて」「はいわかりました」というような、どのような用件でいつまでに送るのか等細かい内容を伝えなくても、意味が通じてしまう光景は、日本人同士であれば当たり前では無いでしょうか。

日本人は世界的に見ても、極めてハイコンテクストなコミュニケーションスタイルであるとよく言われます。この概念は、1976年にアメリカの人類学者エドワード・ホールによって提唱されました。話し手と聞き手の間で文化的背景・文脈の共通性が高いことをハイコンテクストと呼び、一方で、反対の意味としてローコンテクストと言います。

以下に双方の特徴を取りまとめましたが、自社で雇用もしくは雇用する予定の外国人が、どちらの文化圏出身であるかと言うことは、異文化コミュニケーションを成立させる上で重要な観点となってまいります。


ハイコンテクストとローコンテクストの比較(ジンザイベースが編集)


問題点③:ジョブ型雇用vsメンバーシップ型雇用

日本人にとっては馴染みのある、総合職としての新卒一括採用や年功序列などの雇用慣行は、外国人労働者にとっては当たり前ではありません。

上記のような日本の従来の雇用慣行を「メンバーシップ型雇用」と呼ぶのに対して、欧米型の雇用慣行を「ジョブ型雇用」と呼びます。

総合職という職務内容を明記せずに、新卒学生を大量に採用する。その後社内のジョブローテーションを経て、勤続年数に応じた報酬が支給される終身雇用制度は、かつての高度成長期の日本経済の発展を支えたと言われています。一方で、先にお伝えしたようにグローバル化が進み、多様な価値観をもつ外国人労働者が増加している現代においては、日本型雇用は時代にそぐわなくなってきたと言われています。

このような背景もあって、ジョブ型雇用へシフトチェンジする日本企業も増えてきていますが、様々な抵抗や阻害要因によりメンバーシップ型雇用を継続している企業もまだまだ多いのでは無いでしょうか。

外国人労働者にとってみれば、「自分の業務内容はどこまでなのだろうか」「どうして給与はこの金額なのだろうか」といった混乱や誤解が生じやすくなってしまいます。

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の比較(ジンザイベースが編集)

問題点④:時間感覚のズレ

日本人には、学校教育の影響か「5分前行動」というように、1分の遅刻でさえも厳禁とされる意識を持っている方がほとんどでは無いでしょうか。
しかし、このような考え方は異文化コミュニケーションを円滑にするためには、日本特有のものであると認識を改める必要があります。

また、残業に対する意識も注意が必要です。
日本ではサービス残業という言葉がある通り、少しくらい定時を超えても会社のためにサービス残業をするという方は多いのでは無いでしょうか。しかしながら、外国人労働者にとっては、定時で退社し、プライベートの時間をしっかり確保するという意識が当たり前で、残業するのであれば、しっかりと対価を求めてきます。

この時間感覚の違いをしっかりと認識しておくことも大事になってきます。



異文化コミュニケーションのポイント

続いて、異文化コミュニケーションを行う際のポイントを押さえておきましょう。

 

ポイント①:違いを理解し、否定しない

異文化コミュニケーションの最大のポイントとして、「違いを理解し、否定しない」ことが前提の意識として必要になってきます。

外国人労働者と働く中で、相手の価値観や文化と自分たちとの違いはどこにあるのか、またどのように違うのかといった点を理解することが重要と言えるでしょう。

また、相手との違いや自分たちとは異なる考え方を頭から否定せずに、理解し、歩み寄る姿勢も大事なポイントになってきます。

ポイント②:相手の理解度に応じた会話を心がける

外国人労働者個々人で日本語能力の習熟度は異なってきます。そのため、相手の理解できる会話レベルで話すように心がけることが重要になってきます。

特に、技能実習生や特定技能外国人と言われる、いわゆるブルーワーク層で働く外国人は、「みんなの日本語」と呼ばれるテキストを活用して学習しているケースがほとんどです。テキストの内容を見ると、「〜です」「〜ます」という丁寧な日本語を学んでいることがお分かりになるかと思います。そのため、「〇〇やっといて」➡︎「〇〇をやってください」や「〇〇お願い」➡︎「〇〇お願いします」というように、丁寧語で会話を心がけると伝わりやすくなる傾向があります。

また、地方の企業様は、方言などは極力使わず、標準語で会話をしていただけると伝わりやすくなるかと思います。

ポイント③:会話以外のコミュニケーションツールを活用する

会話だけだと、どうしても細かいニュアンスが伝わらない、というケースも多々あるかと思います。

その場合は、ぜひテキストベースのコミュニケーションを取り入れていただくことがおすすめです。特に重要な業務やルーティン作業に関しては、テキストベースのマニュアルに図解も含めて落とし込んでおくことで、細かい仕様や認識の齟齬を格段に減らすことが可能になります。

また、ポケトークをはじめとした翻訳機器の精度もかなり向上しているので、導入をご検討されるのも一つの手です。

ポイント④:期待する役割やルールを明確にする

外国人労働者を採用する際や、新たな職務を与える際には、期待する役割や組織のルールを明確にしておきましょう。

日々外国人労働者の支援をしていると、「面接時に聞かされた職務内容と異なる業務をやらされている」という声を外国人の方から聞くことがあります。

仕事なので、業務範囲を明確に線引きすることは困難なケースもあるかと思いますが、極力任せる可能性のある業務は全て面接時に伝え、その業務内容も口頭だけではなく画像や動画を見せながら説明した方が、誤解や対立を未然に防ぐことが可能になるでしょう。少なくとも、雇用条件書など、書面にしっかりと記載しておくことをおすすめします。

また、組織特有のルールも明確かつテキストに落とし込んでおいた方が、入社後の外国人労働者にとっては伝わりやすくなります。口頭だけだと日本人だとしても忘れてしまいますし、ニュアンスが誤って伝わってしまい、業務上のミスに繋がってしまう可能性もあります。

ポイント⑤:指示や業務の依頼は具体的に

業務の指示や依頼事項は極限まで具体的に伝えるようにしましょう。

成果物の納品基準・納期・活用可能なリソース(一緒に作業する人との役割分担や使用する道具)など、明確にしていないことで全く予想していない成果物が生み出されることが多々あります。

わからないことはわからないまま作業を進めてしまう方もよくいらっしゃるので、指示を出す段階でしっかりとアウトプットイメージを持ってもらうように心がけましょう。



まとめ

今回は異文化コミュニケーションの概要から問題、その問題に対処するポイントをお話ししてきましたが、いかがでしょうか。

外国人労働者を雇用する際に、少しでもお力添えできれば幸いです。

当社は外国人労働者の採用支援をさせていただいており、採用後の受け入れ体制構築の支援なども行っております。

外国人労働者の採用や適切なマネジメントに取り組みたい方は、是非一度お気軽にお問い合わせください。


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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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