【外国人労働者雇用にまつわるトラブル】原因や防止法、対処方法などを解説

外国人労働者の雇用に興味があるけど、どんなトラブルが起こりやすいの?

この記事は上記のような疑問をお持ちの方に向けて、外国人労働者を雇用する際に起こりがちなトラブルやその原因などを解説していきます。

トラブル自体を防止するポイントや対処方法なども併せて解説していますので、外国人労働者の雇用を検討されている方は、是非最後までお読みください。

 

外国人労働者を雇用する際に起こりがちなトラブル

まずは外国人労働者を雇用する際に起こりがちなトラブルを、4つのカテゴリーに分けてみていきましょう。

 

不当待遇によるトラブル

はじめは不当待遇によるトラブルからご紹介します。

外国人労働者の雇用にまつわるトラブルにおいては、不当待遇によって起こりうるものが多いと言えます。

不当待遇として考えられるケースとしては

・賃金の未払い
・長時間労働を強いられる
・暴力や暴言によるパワハラ

などが挙げられます。 特に、日本語でのコミュニケーションが原因での日本人従業員とのトラブルはどの会社でも頻繁に発生しますので、要注意です。単なる口喧嘩で収まればまだましですが、暴力や暴言によるパワハラに発展してしまうケースもあります。

これらの不当待遇は外国人労働者の退職や失踪に繋がるだけでなく、外国人労働者から訴訟を提起されるといった法的トラブルにも繋がりやすいと言えます。

また最低賃金よりも低い賃金や未払いは、当然労働基準法における罰則規定の対象となるため、懲役や罰金などが科せられるので注意が必要です。

 

不法就労によるトラブル

続いては不法就労によるトラブルをご紹介します。

在留資格の整備が進み、外国人労働者も日本に来日して働きやすくなったものの、いまだに不法就労事件は毎年発生しており、厚生労働省の発表によると2020年においては10,993件発生しているのです。

偽造在留カードを持つ外国人労働者を雇用することはもちろん、許可された在留期間を越えて業務に従事させた場合や、許可された活動以外の業務に従事させた場合は不法就労になります。

在留期間の管理や許可された活動内での業務指示については、企業側も把握していることが多いですが、偽造在留カードに関しては「そういうことがある」と意識していなければ、見抜けない可能性があるでしょう。

もし不法就労に該当してしまった場合、その事実に対する認識の有無に関わらず、当然企業も責任が問われることになり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されるので注意が必要です。

 

労働慣習の違いによるトラブル

日本のビジネスで当たり前とされることでも、海外の労働慣習では当たり前でないということは往々にしてあるものです。

こういった日本と外国人労働者の母国の労働慣習の違いによって、従業員同士の衝突が起こることがあります。

例えば、日本の企業の多くは、「まだ仕事が残っているのであれば、残業をしてでも終わらせる」ということを当たり前としていると思いますが、海外においてはそうではないケースが大半を占めています。

海外では基本的に雇用契約に基づいた労働時間を過ぎれば帰る、ということをベースとしているため、残業をあまりしません。

この辺りに意識のずれがあるため、まだ仕事があるにもかかわらず外国人労働者が定時で帰ろうとした場合、「え、まだ終わってないけど?」となり、衝突してしまうことに繋がる場合もありますので、気をつける必要があります。

 

ミスマッチによるトラブル

ミスマッチによるトラブルも見逃せません。

ミスマッチとは、そもそも雇用側のニーズと求職者側のニーズが合っていなかった場合に起こりうる現象であり、外国人労働者に限らず起こりうることです。

とはいえ外国人労働者の場合、在留資格や許可された在留期間、将来的に帰国するつもりかどうかなどを採用の際にしっかりと確認できていなければ、後々大きなトラブルに繋がる可能性があります。

また、面接の際にしっかりと任せる業務内容や雇用条件をしっかりと説明しないと、「聞いていない」、「想像と違った」という入社後のギャップも生まれてしまいます。特に日本語は世界的にも難しい言語のため、日本語でしっかり説明したけど、通じていなかったというケースもあります。

ふたを開けてみれば

・自社が想定している業務に従事できない在留資格だった
・在留期間の制限が間近に迫っており、更新もできないため、雇用してすぐ帰国してしまう
・想像していた業務イメージと異なり、リアリティショックが大きく早期退職する

などといったことが起こりうるわけです。

 

外国人労働者にまつわるトラブルの原因

それではこれらの外国人労働者にまつわるトラブルの原因には、どのようなものがあるのでしょうか。

 

企業側の外国人労働者雇用に関する知識不足

一つ目の原因として挙げられるのは、企業側が外国人労働者を雇用する上で必要な知識を十分に持っていないという点です。

外国人労働者に対して、明確な意図を持って不当な扱いをしている企業は論外ですが、労働基準法や社会保険が適用されることなどを知らないことに起因して、不当な扱いをしてしまっている企業もあるでしょう。

その他

・不法就労となるケース
・雇用するポジションに該当する在留資格
・日本における労働関連法令が適用されること

といった知識がなければ、法的なトラブルなども起きやすくなるのは当然と言えるでしょう。 

そのため外国人労働者を雇用する際は、「どういったことに注意すべきか」という知識を事前に得てから取り組むべきなのです。

 

コミュニケーション不全

またコミュニケーション不全が原因となっていることもあります。

来日してくる外国人労働者はある程度日本語の学習をしてくるので、日常的な会話であれば特に支障なく行えることが多いでしょう。

しかしビジネスにおける専門的な用語や、相手との関係性によって言葉遣いを変える必要がある場合などにおいて、なかなかコミュニケーションが取りづらいケースがあります。

そのため業務上において適切にコミュニケーションを図ることができず、従業員同士の衝突や、労働災害などのトラブルにも繋がるのです。

 

文化・価値観の違い

また文化・価値観の違いもトラブルを引き起こす原因の一つです。

育ってきた環境や母国の文化・風土などによっては、当然価値観が異なってきます。

そのため日本人社員の持つ価値観と外国人労働者の持つ価値観は異なり、もちろん仕事に対する姿勢やスタンスもその影響を受けることになるでしょう。

日本人社員にとっては「こういった点に注意するのが当たり前」と思っていることでも、外国人労働者にとっても「当たり前」とは限らないのです。

こういった価値観や当たり前の違い、常識の差にしっかりと向き合わず、外国人労働者側が働きにくい環境になってしまっているというケースも多いと言えるでしょう。

外国人労働者のトラブルを防ぐには

ここからは先に挙げてきたようなトラブルを防ぐためのポイントについて、ご紹介していきたいと思います。

 

適切な契約の締結と説明

まずは雇用する際に適切な内容の契約を締結し、その内容をしっかりと外国人労働者に対して説明することがポイントになります。

外国人労働者に提示する雇用条件は、労働基準法などをクリアした上で、同じ業務に従事している日本人社員と同等である必要があります。

適切な内容の雇用契約を作成したとしても、それを外国人労働者が理解できていなければ意味がないので、理解してもらえるように内容を丁寧に説明することも求められるでしょう。

そのため、ただ単に雇用契約書を用意するだけでなく、より簡単な日本語で記載したものや母国語で記載したものも用意するなどといった、配慮を実施することもポイントになるのです。

一番ベストなのは、通訳者を手配し、面接に同席してもらうことです。やはり母国語で一度詳細を説明してもらった方が、圧倒的にミスマッチを防止することが可能になります。

 

職場環境の整備

職場環境の整備も重要なポイントです。

外国人労働者を雇用する際、実際の受入現場において、母国語で記載した就業規則やマニュアルを用意したり、相談役・相談窓口などを配置したりすることが求められます。

職場環境の整備においては、「自分が海外で働くことになったらどういったことに困るだろう」、「どんな風に周りの社員が接してくれたら働きやすいだろう」といったように、外国人労働者の目線で取り組むことが効果的です。

「とりあえず日本語マニュアルを用意しておけばいい、相談窓口を設ければいい」というわけではないということも覚えておきましょう。

 

法制度や日本独自の労働慣習などの説明

また法制度や日本独自の労働慣習などの説明を実施することも、ポイントとして挙げられます。

日本における労働基準法や労働安全衛生法において、労働者側も知っておくべき知識について、外国人労働者側が理解できる簡単な日本語や母国語を用いて、説明することが求められるでしょう。

他にも日本ならではの労働慣習などの説明も行うべきです。

特に残業などについては先ほど触れた通り、外国人労働者は避ける傾向にあるため、「こういった場合は残業をお願いするかも」という風に、事前に説明して理解を得ておく必要があります。

 

一緒に働く日本人社員への説明・フォロー

次にご紹介するポイントは一緒に働く日本人社員への説明・フォローです。

外国人労働者を雇用する場合、どうしても外国人労働者の方に意識が行ってしまいがちですが、一緒に働くことになる日本人社員への説明やフォローも重要なポイントになるでしょう。

・なぜ外国人労働者を雇用するのか
・外国人労働者と働く上で注意すべき事項 

などを事前に説明しておいた上で、実際に外国人労働者を受け入れた後も、定期的に現場の日本人社員にヒアリングなどを実施し、必要に応じてフォローしていくことも求められるのです。

 

文化・価値観の相互理解

文化・価値観の相互理解もトラブルを防ぐ上で重要と言えます。

外国人労働者に対して「日本語や日本の労働慣習、法制度などを勉強しておいて」と一方的な立場を取るのではなく、こちら側も当該外国人の母国の文化や価値観を学んでいくという姿勢が重要なのです。

例えば雇用した当該外国人に母国の文化や言語を教えてもらう機会を設ける、という施策は有効と言えます。

他にも異文化マネジメントやダイバーシティなどを勉強することで、異なる価値観を持った外国人労働者と一緒に働く時に大いに役立つでしょう。また、外部の講師を招き、研修を実施してもらうのも一つの有効な施策と言えます。

 

万が一外国人労働者との間でトラブルが起きたときの対処方法

最後に万が一外国人労働者との間でトラブルが起きた場合の対処方法についても押さえておきたいと思います。

 

交渉を実施

トラブルが起きた場合にまずすべきは交渉です。

外国人労働者側の主張をよく確認して、どちら側に責があるのかを明確にしていきましょう。

労働関連法令や就業規則などに照らし合わせながら事実確認を実施し、お互いの主張について記録していくことも重要です。

その上で当事者同士による解決ができないかを粘り強く交渉していきましょう。 

また、この交渉段階で解決できないと、労働審判や訴訟に入ってしまいますので、なるべく交渉段階でトラブルを解決する方向に持っていくことが大切になってきます。

 

労働審判

もし当事者同士での交渉において、トラブルが解決しなければ、労働審判に入ることになるでしょう。

労働審判とは、企業側と労働者との間で起きた労働問題について、労働審判官1名と労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、問題の審理や調停を行う制度です。

労働審判においては基本的に和解を目指す形になります。

労働審判のスケジュールとしては、3回以内の期日と定められているため、そこまで長引くことはありません。

労働審判については、外国人労働者側からの申し立てもできます。

 

訴訟

労働審判でも解決できなかった場合は訴訟に移行します。

またケースによっては交渉からいきなり訴訟に入る場合もあるでしょう。

訴訟は基本的にどのようなトラブルがあったのかが世間に公表され、当然企業名も開示されることになります。

そのため風評被害などのレピュテーションリスクが生じてくるのです。

もしレピュテーションリスクを避けるのであれば、トラブルを防止するための対策を徹底した上で、万が一トラブルが起きた際は早めに外国人労働者に関する事案を専門とする弁護士に依頼し、早期解決に取り組むと良いでしょう。

 

まとめ

今回は外国人労働者の雇用にまつわるトラブルやその原因、防ぐためのポイントなどについてまとめてお話してきましたが、いかがでしたか。

外国人労働者を雇用するには日本人を雇用する場合とは異なった注意点もあり、興味があるものの、どうしても二の足を踏んでしまう方も中にはいらっしゃるかもしれません。

当社はそういった企業様を支援すべく、外国人労働者に特化した人材紹介サービスを提供しております。

外国人労働者雇用におけるトラブルなどを防ぐため、受け入れ体制の構築・整備についてもサポートしておりますので、是非一度お気軽にご相談ください。


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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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