外国人労働者の在留資格
高度専門職の詳細をお話していく前に、まずは在留資格に関して簡単におさらいしておきましょう。
在留資格とは、外国人が日本に在留して何かしらの活動を行うために必要な資格のことです。
出入国管理及び難民認定法によって規定されており、2022年2月現在、29種類の在留資格が存在しています。
ただし、全ての在留資格が就労を認められているわけではなく、29種類のうち24種類しか就労を認められていません。
このうち今回は「高度専門職」と呼ばれる在留資格についてフォーカスして、ご紹介していきたいと思います。
在留資格について、より詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
高度専門職とは
それではここから在留資格「高度専門職」についてお話していきましょう。
高度専門職の概要
高度専門職とは、高度なスキルや知識を有する外国人労働者が取得することができる在留資格となっています。
出入国在留管理HPによれば、高度専門職で働く外国人労働者のイメージとして、
- 国内の資本・労働とは補完関係にあり,代替することが出来ない良質な人材
- 我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに,日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し,我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材
と挙げられています。
2012年5月7日に導入され、後に説明する「高度人材ポイント制度」を活用し在留資格「高度専門職1号」を取得することができます。
高度専門職で働く外国人労働者のイメージと、この高度人材ポイント制度をクリアした方でないと取得できないというハードルの高さがある一方、取得できれば多くの優遇措置を享受することが可能になります。
さらに、一定の条件を満たすと、在留資格「高度専門職2号」へ資格変更が可能で、1号よりもさらに優遇措置を受けることが可能です。
以下のグラフは、出入国在留管理庁HPを参考に、ジンザイベースが作成した高度専門職外国人の在留者数の推移を表したグラフになります。
2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響か多少減ってはいますが、コロナ以前は順調に毎年在留者数を伸ばしていたことが伺えます。政府としても、2020年末には10,000人、2022年末には20,000人の高度専門職外国人の認定を目指すと公表している通り、国をあげて優秀な外国人材の獲得に力を入れています。
高度専門職で従事できる業務
高度専門職が高度なスキルや知識を持って、日本国に貢献できる外国人労働者に付与される在留資格であることはわかりましたが、実際どのような業務に従事できるのでしょうか。
高度専門職1号においては、その活動に応じた3つの種類が存在し、より優遇された高度専門職2号が設けられています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
高度学術研究活動「高度専門職1号イ」
高度専門職1号イは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動」をするための在留資格です。
基本的に在留資格「教授」や「研究」などに相当する活動と重複していると言え、大学教授や企業の研究機関における研究者といった業務が挙げられます。
高度専門・技術活動「高度専門職1号ロ」
高度専門職1号ロは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動」のための在留資格となっています。
「技術・人文知識・国際業務」における「技術」や「人文知識」に相当する活動と重複しており、エンジニアや営業、マーケティングといった業務に従事できます。
高度経営・管理活動「高度専門職1号ハ」
高度専門職1号ハは、「本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動」のための在留資格です。
「経営・管理」に相当し、企業の経営者や管理者などの業務に従事することが可能となっています。
高度専門職2号
高度専門職2号は、高度専門職1号で3年以上活動を行っている外国人労働者が、特定要件を満たせば取得できる在留資格です。
高度専門職1号を含めたほぼすべての就労系在留資格の活動を行うことができます。
高度専門職の在留期間
高度専門職の在留期間については1号と2号で異なります。
まず、高度専門職1号は在留期間が5年となっています。更新制限などもないため、更新許可さえ降りれば永続的に在留することが可能です。
対して高度専門職2号は在留期間が無期限となります。永住者と同様に、更新をすることなく、永続的に在留することが可能になります。
家族帯同の可否
高度専門職では、配偶者や子どもの帯同が認められています。
また一定の条件を満たすことで、外国人労働者本人もしくは配偶者の親を呼び寄せることも可能です。(後ほど詳しく説明します)
これは高度専門職1号と2号の両方で可能となっています。
高度人材との違い
高度専門職と関連した概念として「高度人材」という言葉があります。
高度人材とは、本来「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」といった専門的・技術的分野で働いている外国人労働者全般のことを指します。
ただし、出入国在留管理庁による定義では、高度専門職を取得した外国人労働者を指す言葉として高度人材が使われています。
そのため広義で言えば「専門的・技術的分野の外国人労働者」、狭義で言えば「高度専門職で働く外国人労働者」といったように理解しておくとよいでしょう。
高度専門職における優遇措置
高度専門職にはその他の就労系在留資格にはない優遇措置があります。
ここからはどのような優遇措置があるのか、詳しく見ていきましょう。
高度専門職1号の優遇措置
まずは高度専門職1号の優遇措置から確認していきます。
優遇措置①:複合的な在留活動の許容
通常は在留資格ごとに認められている活動しかできません。許可された範囲外の活動を行うには、出入国管理庁へ「資格外活動許可」を申請しなければなりません。
しかし、高度専門職の場合は、大学での研究活動と合わせ、関連する事業を展開する企業を経営するなどといった複合的な活動を「資格外活動許可」がなくとも行うことができます。
なお、資格外活動許可については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
▶︎【在留資格における資格外活動許可とは】要件や申請方法などをわかりやすく解説
優遇措置②:在留期間5年の付与
高度専門職で働く外国人労働者には、最長在留期間である5年が一律で付与されます。
在留資格や受け入れ企業、申請人本人の素行等に応じて「5年・3年・1年・4ヶ月」などと付与される在留期間が異なっており、通常は1〜3年の許可がもらえます。その後、外国人本人の素行や滞在年数が増すに連れて信用度が上がっていき、徐々に長い在留期間を付与されるようになりますが、高度専門職の場合は、いきなり5年の在留期間が付与される点が他の在留資格と比べて、大きく優遇されている点としてあげることができます。
優遇措置③:永住権の取得要件の緩和
永住権を取得するには通常10年以上の滞在期間が求められます。しかし、高度専門職の場合、以下の条件に当てはまると、10年以上滞在しなくとも永住権の許可対象となります。
- 高度専門職における活動を3年間行っている
- 高度人材ポイント制において80点以上を取得して1年間活動を行っている
優遇措置④:配偶者の就労
高度専門職の外国人労働者の配偶者は、資格外活動許可を取得せずに、「研究」、「教育」、「興業」、「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動が可能となっています。各在留資格取得時に課される学歴や職歴などの要件を満たす必要もなく、フルタイムで就労が可能です。
ただし、高度専門職の外国人と同居し、日本人と同等額以上の報酬を受けることが条件になります。高度専門職の外国人と別居してしまった場合は、許可されていた就労活動を行えなくなる点に注意が必要です。
通常、外国人の配偶者は「家族滞在」を取得するのが一般的です。「家族滞在」で就労するには、資格外活動許可を得た上で、週28時間以内のみ就労することが可能になりますので、かなり優遇されていることが伺えます。
在留資格「家族滞在」については、以下の記事もあわせてご確認ください。
▶︎在留資格「家族滞在」で働けるって本当?制限や取得要件などを解説!
優遇措置⑤:一定条件下で親の帯同が可能
7歳未満の子を養育するもしくは高度外国人本人もしくはその配偶者が妊娠しており、その介助等を行う場合において、下記の条件を満たした場合、両親の入国及び在留が可能になります。
- 高度外国人本人もしくはその配偶者の親に限ること
- 世帯年収が800万円以上であること
- 高度専門職を所持している人と継続して同居すること
優遇措置⑥:一定条件下で家事使用人の帯同が可能
高度専門職では、「世帯年収が1000万円以上」、「家事使用人に対して20万円以上の報酬を支払うことを予定している」などの条件を満たすことで、家事使用人を帯同することが可能となっています。
「外国で元々雇用していた家事使用人と共に入国する場合」、「新たに家事使用人を雇用する場合」、「投資運用業務等に従事する金融人材が家事使用人を雇用する場合」で条件が異なりますので、詳しくはこちらの出入国在留管理庁HPからご確認ください。
優遇措置⑦:入国・在留手続きの優先処理
高度専門職の外国人労働者に対しての入国・在留審査は、優先的に処理されます。
通常であれば、入国・在留申請は早くて2週間、遅いと3ヶ月近くかかることもありますが、高度専門職の場合、入国審査に係る「在留資格認定証明書」の交付申請は申請受理から10日以内、在留審査に係る「在留資格更新申請等」については申請受理から5日以内を目途に処理されることになります。
高度専門職2号の優遇措置
高度専門職2号の優遇措置については以下の4点となっています。
- 就労系在留資格で許可されているほぼ全ての活動が可能
- 在留期間が「無期限」
- 高度専門職1号における③~⑥の優遇措置が受けられる
- 転職時に在留資格変更許可申請が必要ない
最後の「転職時に在留資格変更許可申請が必要ない」という項目ですが、高度専門職1号については、在留資格取得時に後に説明する「高度人材ポイント制度」を元に在留審査がなされます。このポイント制度の中に、年収や年齢をみる項目があり、転職により年収が変動したり、時間経過に伴い年齢も異なってくるため、転職する度に在留資格申請をする必要が出てきています。
しかし、高度専門職2号に関しては、転職時にこういった在留資格申請をする必要がなくなるのです。
高度専門職の取得要件
続いて高度専門職の取得要件について確認していきましょう。
高度人材ポイント制度とは
高度専門職を取得するためには、高度人材ポイント制度を活用する必要があります。
高度人材ポイント制度とは、高度専門職における3つの活動内容の特性に応じて、学歴・職歴・年収・研究実績などの項目ごとにポイントを設定し、外国人労働者の希望する活動に対応する分野でポイント計算による評価を実施する制度です。
高度人材ポイント制度において、ポイントの合計が70点以上に達した場合、高度専門職1号の在留資格が取得できる形になります。
こちらは、出入国在留管理庁が公表しているポイント計算表になります。
ポイント加算対象となる項目は、3つの活動内容によって異なりますが、先に挙げた内容に加え、年齢や日本語能力試験の結果、職務に関連する資格の有無などが設けられています。
高度専門職1号の在留資格申請
最後に高度専門職1号の取得申請に関して確認していきましょう。
「海外から日本に来日するケース」と「すでに日本国内に在留する外国人が高度専門職を取得するケース」に分けて見ていきます。
手続きの流れ(新規入国の場合)
ステップ①:在留資格認定証明書交付申請の実施
まずは在留資格認定証明書の交付申請を、出入国在留管理庁に実施します。
この際、行おうとする活動に係るポイント計算表および、そのポイントを立証するための資料を提出することが求められます。詳しくはこちらの出入国在留管理庁HPをご覧ください。
ステップ②:在留資格認定証明書の送付
審査が通り、在留資格認定証明書が交付された後は、それを外国人労働者に送付します。
ステップ③:ビザの取得
外国人労働者が在外日本公館にて、在留資格認定証明書やそのほかの必要書類と合わせて、ビザ申請を行います。
ステップ④:来日・就労開始
ビザが無事交付されれば、来日して就労開始となります。
手続きの流れ(すでに日本国内に在留している場合)
ステップ①:在留資格変更許可申請の実施
まずは在留資格変更許可申請を、出入国在留管理庁に実施します。
この際、行おうとする活動に係るポイント計算表および、そのポイントを立証するための資料を提出することが求められます。詳しくはこちらの出入国在留管理庁HPをご覧ください。
ステップ②:許可・就労開始
無事に在留資格変更許可がなされれば、すぐに就労を開始することが可能です。
更新の手続き(すでに高度専門職を取得している方)
更新に係る手続きとしては、出入国在留管理庁に対して、在留期間更新許可申請の実施が必要となります。
その際
- 在留期間更新許可申請書
- 写真
- パスポートおよび在留カードの提示
- 各活動に応じた個別資料
- ポイント計算表
- ポイント計算表の各項目に関する疎明資料
が必要になります。
手続きの流れ自体は、先の日本国内に在留している場合と同じで、出入国管理庁へ更新申請し、許可が降りればそのまま日本に滞在・就労が可能になります。
まとめ
今回は在留資格「高度専門職」にフォーカスしてお話してきましたが、いかがでしたか。
高度専門職は、その他の在留資格と比べ優遇されており、雇用する企業にとっても非常にメリットの多い在留資格となっています。
当社は「高度専門職」を含めた、外国人労働者の人材紹介サービスを提供しておりますので、もし「高度専門職」の外国人労働者の雇用にご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。