この記事では在留資格「特定活動」について解説しています。特定活動全46種類の概要から指定書の確認方法、就労制限や特定技能との違いなどについても触れています。在留資格「特定活動」の基本について押さえておきたい方は、是非最後までご確認ください。
前提となる「在留資格」について知っておこう!
在留資格「特定活動」を説明する前に、まず「在留資格」とは何かを見ていきます。
「在留資格」とは、外国人が日本に在留し、何かしらの活動を行うために必要となる資格のことを指します。
これは、出入国管理及び難民認定法によって規定されており、活動の種類によって29の在留資格が存在しています。在留資格ごとに取得要件が異なり、在留期間や就労制限なども様々です。
現在29種類の在留資格の中で、就労が認められている在留資格は24種類ありますが、外国人雇用をする際は必ず「どの在留資格を有しているか」「その在留資格は就労が可能か」の確認が必須です。
在留資格で許可された範囲外の活動に従事させたり、そもそも就労が認められていない外国人を働かせてしまうと、雇用主が「不法就労助長罪」という罪に問われてしまう可能性があるため、要注意です。
今回29種類ある在留資格の中でも、少し特殊な位置づけである「特定活動」と呼ばれる在留資格について、具体的にご紹介していきたいと思います。
「在留資格」に関して詳しく知りたい方は「在留資格ってなに?ビザとの違いや取得方法、29種類まとめて解説!」もあわせてご覧ください。
在留資格「特定活動」ってなに?
まずは在留資格「特定活動」の基本的な内容について解説していきます。
「特定活動」とは、現在あるどの在留資格にも当てはまらない活動を行うために設けられた特別な在留資格です。
現在は個人の活動も多岐に渡るため、全ての活動を特定の在留資格に当てはめるのが難しい場合があります。このため、他の在留資格に該当しない活動の受け皿としてあるのが特定活動です。
また、この特定活動は法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格のため、政府が「出入国管理及び難民認定法」を改正することなく、法務大臣の判断で日本に在留可能な活動の種類を増やすことができます。
そのため、例えば「新型コロナウイルス感染症拡大の影響による帰国困難者」のような一定期間だけ必要な活動を増やす場合など、柔軟な対応が可能になります。※ 「新型コロナウイルス感染症拡大の影響による帰国困難者」の特例措置は令和4年5月31日に終了済みです。
特定活動には、就労制限がある
特定活動では活動がそれぞれ違うため、特定活動の在留資格を持っていたとしても就労制限があります。
就労制限については、特定活動の種類によって異なり、就労できる場合には、どこでも就労可能な場合や特定の業務しか出来ない場合、さらにはフルタイムで就労できる場合と週28時間までしか働けない場合などに分けられます。
また特定活動は、公表されているだけで53種類もあり、雇用する場合はそれぞれの就労制限の確認には注意を払う必要があります。
就労可否や制限については、在留カードと指定書を必ず確認しましょう。指定書については後述します。
特定活動の種類は?
ここでは具体的に特定活動の種類について見ていきます。
特定活動には、
の大きく3種類があり、それぞれ従事できる活動と就労制限が違います。
① 出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
こちらは、法務大臣の告示ではなく、出入国管理及び難民認定法に規定されて入管法の中で規定されている特定活動で、法定特定活動とも言われます。
専門的な研究や情報処理機関で働く外国人、その家族向けの在留資格で以下の3種類があります。
「特定研究活動」
法務大臣が指定している日本の企業・教育機関・政府機関において、特定の分野に関する研究や研究への指導など、高度な知識を持った外国人(高度人材)を受け入れる目的で作られた在留資格です。研究内容によって、外国人ごとの審査があります。
「特定情報処理活動」
法務大臣が指定した機関で、自然科学または人文科学の分野の技術または知識を要する情報処理関連の業務に就く外国人向けの在留資格です。
「特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動」
上記2つの「特定研究活動」「特定情報処理活動」を行う外国人の配偶者や子どもに許可される在留資格です。日本で就労する場合は「資格外活動許可」を取得する必要があります。
② 告示特定活動
告示特定活動は、法務大臣によってあらかじめ指定された活動で、2023年10月現在47種類があります。各種類は「◯号告示」というように番号で呼ばれます。
また、入管法ではなく法務大臣の判断によって種類は増減します。
表にすると以下の通りです。(※変更頻度が多いためあくまで参考としてご覧ください)
※ オリンピックに関係する32号、48号、49号は今後削除される可能性が高いでしょう。
③ 告示外特定活動
これまで紹介した①②の特定活動に該当しない活動が、告示外特定活動に該当します。
代表的なもので言えば、以下のような場合、告示外特定活動が許可される可能性があります。
それぞれ簡単に説明します。
留学生が卒業後に引き続き就職活動を行う場合
日本の大学や専門学校を卒業した後、留学生が引き続き就職活動を行う場合、「特定活動」の在留資格が許可されることがあります。
これらの「特定活動」の外国人は基本的に就労不可ですが、資格外活動許可を得ている場合のみ、例外として週28時間以内の就労が可能になります。
日本に在留する外国人の方が高齢の両親を呼び寄せる(老親扶養)場合
これは「老親扶養ビザ」とも呼ばれるもので、人道上の配慮を理由として許可されますが、現在、明確な許可基準は公表されておりません。
単に親子で日本の生活を送りたいからと言って許可されるものではなく、以下のような比較的厳しい条件があります。
また、この他に親子交流歴などもポイントになるようですが、基本的には親を日本に呼んで同居する合理的な理由が必要になります。
在留資格更新が不許可になった場合(出国準備)
在留資格更新が不許可となった場合、出国準備期間として「特定活動」の在留資格が許可されます。
その場合の準備期間は通常30日間ですが、現在の仕事の契約上で30日間での出国が難しい場合は、2〜4ヶ月の期間が与えられることもあります。
この出国準備の「特定活動」では原則就労不可です。
面接で応募がくる可能性のある「特定活動」5選!
ここからは、恐らく皆さんが目にすることが多く、面接に応募がくる可能性がある「特定活動」について見ていきましょう。
「就職活動継続中の留学生」(告示外特定活動)
まずは、告示外特定活動の就職活動継続中の留学生です。
前述しましたが、日本の大学や専門学校への留学生が、就職活動をしていたものの卒業までに就職先が決まらなかった場合に、卒業後も就職活動を継続するための在留資格です。
対象者は以下のいずれかに該当する者です。
- 継続就職活動大学生:在留資格「留学」をもって在留する日本の大学(短期大学及び大学院を含む)を卒業した外国人で、卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として在留を希望する者
- 継続就職活動専門学校生:在留資格「留学」をもって在留する日本の専門学校を卒業した外国人で、卒業前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として在留を希望する者のうち、「技術・人文知識・国際業務」等、就労に係るいずれかの在留資格に該当する活動と関連があると認められる者
- 継続就職活動日本語教育機関留学生(海外大卒者のみ):海外の大学又は大学院を卒業又は修了した後、在留資格「留学」をもって在留する一定の要件を満たす日本の日本語教育機関を卒業した外国人で、かつ、日本語教育機関を卒業する前から引き続き行っている就職活動を行うことを目的として在留を希望する者
在留資格「留学」の在留期間がまだ残っていたとしても、卒業で「留学」の活動が終わるため、卒業後も就職活動を続けたい場合は必ず「特定活動」への切り替えが必要です。
卒業前であっても、在籍してる学校からの推薦状、卒業見込み証明書や継続して就職活動をしていることを明らかにする資料があれば在留資格変更許可申請が可能です。
詳しくは法務省出入国管理庁のWEBサイト「本邦の大学等を卒業した留学生が就職活動を行う場合」をご覧ください。
また、この就職活動継続中の留学生をアルバイトで雇用する際は、週28時間の就労制限があるので注意が必要です。
留学生をアルバイトで雇用する際の注意点などは「外国人留学生のアルバイト雇用 | 法令違反になるリスクも?!」をご覧ください。
就労可能な「特定活動46号」
「特定活動46号」は、告示特定活動の在留資格の一つで、日本の4年制大学(大学院)を卒業した者で、N1以上の日本語力を有する外国人を常勤雇用する際に取得できる在留資格です。
この在留資格を有している場合、専門性が求められない「接客業務」「製造業務」などの現場業務にも従事が可能ですが、翻訳・通訳要素があるコミュニケーションや、大学で学んだことを活かせる専門的な内容を他業務に含んでいる必要があります。つまり、単純作業のみに従事させることはできない点は注意が必要です。
ただし、外国人本人の学歴と業務内容が関連してなくても良いのがポイントです。
特定活動46号についてもう少し詳しく知りたい方は「【特定活動46号とは】概要や取得要件、必要な手続きなどを解説」もあわせてご覧ください。
新型コロナウイルスの影響による「帰国困難者」
これまでは、元々有していた在留資格の期限が切れてしまうが新型コロナウイルスの影響で母国に帰れない外国人もおり、政府は特例処置としてこの帰国困難者に対して帰国ができるまでの間、「特定活動(6か月)」又は「短期滞在(90 日)」の在留資格を許可してきました。
しかしながら人流の回復や帰国困難者の減少などにより、2022年6月13日移行はこの特例処置の対応も以下表の通り変更となりました。
上記の変更は、在留期限が2022年11月1日までの方が対象となり、在留期限が2022年11月2日以降の方の変更が認められなくなっています。
2022年11月1日までが在留期限で、実習継続が困難になった技能実習生や特定技能外国人は「特定活動(最大1年・雇用維持支援)」の在留資格で最大1年間の更新が可能でしたが、2023年10月31日が最大の在留期間となるため、2023年11月現在はこの特例処置は全て終了したと言えます。
(参考:出入国在留管理庁|新型コロナウイルス感染症に関する在留諸申請について)
難民認定申請者
次に難民認定申請者で一時的に「特定活動」の在留資格を与えられている方です。
そもそも難民とは、
をいい、日本でもこのような理由で難民申請をする人たちがおり、これらの外国人の方は「難民認定申請者」と呼ばれ、一時的に特定活動の在留資格が与えられることがあります。
難民認定申請中の就労は、「特定活動(6月・就労可)」や「特定活動(3月・就労可)」の在留資格を有していれば就労が可能です。
就労可能でも不可でも、在留カードには「特定活動」としか記載されませんので、難民認定申請中の外国人を雇う場合、雇用者は特定活動の条件が記載される「指定書」を必ず確認しましょう。
特定技能申請準備のための「特定活動(4か月・就労可)」
次は、他の在留資格から特定技能1号への移行が在留期間中に間に合わず、特例処置で「特定技能(4か月・就労可)」の在留資格が与えられた方です。
在留資格「特定技能(1号)」への変更にはかなりの数の書類、資料が必要なため、まずこの書類の準備に相当の時間がかかったり、申請後も審査に約1~2ヶ月もかかることもあり、審査がおりるまでに既存の在留資格での在留期間が終わってしまう可能性があります。
その場合、特例処置として、「特定技能1号」で就労を予定している受入れ機関で就労しながら移行のための準備を行うことができるよう「特定活動(4か月・就労可)」への在留資格変更許可申請を行うことができるのです。
要件としてはいくつかありますが、重要なのは、特定技能外国人として業務に従事するために必要な技能試験及び日本語試験に合格していること(技能実習2号良好修了者等として試験免除となる場合も含む。)です。
なお、「特定技能1号」へ移行完了前から就労ができることにより、この在留資格で在留した期間については、「特定技能1号」の通算在留期間(上限5年)に含まれることになります。
詳細については、出入国在留管理庁のWEBサイト「特定技能1号」に移行予定の方に関する特例措置についてをご覧ください。
また、在留資格「特定技能」について詳しく知りたい方は「在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!」も併せてご覧ください。
特定活動の確認方法はどうすればいい?
前述の通り、とても種類が多い「特定活動」の在留資格ですが、実際どのように確認すれば良いのかを見ていきます。
まずは「在留カード」を確認しましょう
まず最初は「在留カード」の確認です。
在留カードは、日本に滞在する外国人のうち、中長期在留者に対して交付されるカードで、在留資格・在留期限・就労制限の有無などが記載されています。
ですので、外国人がどの在留資格を有しているかはこの在留カードで確認します。また、「特定活動」については、就労制限の有無の欄に「指定書により指定さえた就労活動のみ可」との記載になっております。(指定書については後述)
なお、在留カードについては「在留カードとは?確認すべきポイントや偽造在留カードとの違いを解説!」でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
次に、パスポートの「指定書」をチェック
在留カードで在留資格を確認した後は、「指定書」の確認です。
前述の通り、「特定活動」の在留資格でも個々人によって許可される活動が異なるため、就労可否や制限は様々です。
特定活動で認められている活動(就労可否)を確認するには、在留カードとともに発行され、パスポートに添付されている「指定書」という書類で確認ができます。
特定活動には多くの種類があるため、この「指定書」の本文の記載も様々です。
もし指定書の本文に「報酬を受ける活動を除く」と書いてある場合は、就労が認められていない特定活動です。
就労が可能な特定活動でも、活動可能な分野や業種が細かく記載されているため、細かな部分まで内容を確かめる必要があります。
「特定活動」の外国人が応募に来た際の注意点
特定活動の在留資格を有する外国人から応募が来た際は以下の点に注意をしましょう。
しっかりと活動内容を「指定書」で確認する
まずは前述の通り、「指定書」で活動内容と就労制限についての確認をします。
もし就労不可の特定活動外国人を雇用し就労をさせてしまったり、認められていない分野、業種で就労をさせた場合は、不法就労助長罪になりますので充分に注意して下さい。
「特定活動」の審査基準・許可については不確実性が伴う
特定活動は種類も多く制度が細かいのが特徴です。
また、詳細な資格審査基準も非公表の活動も多いため、資格認定の手続きで、しっかりと要件を把握しポイントを押さえた書類を準備するのは困難な場合が多いです。
そのため、在留資格を取得する難易度は高く、不許可にもなりやすい点を理解する必要があります。できる限り経験が豊富な専門家にご相談されることをおすすめします。
まとめ
今回は数ある在留資格の中から「特定活動」にフォーカスしてお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は外国人労働者に特化した人材紹介サービスを企業様に提供しております。
今回ご紹介した「特定活動」は勿論、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの在留資格を持つ外国人労働者の紹介も対応しておりますので、外国人労働者の雇用を検討されている方は、是非一度お問い合わせください。