【就労制限とは】在留資格別の就労制限の有無や確認方法を解説

この記事では、外国人の就労制限の概要や在留資格ごとの就労制限、確認方法などを解説していきます。就労制限をしっかりと理解した上で外国人雇用をしないと、不法就労助長罪に問われてしまうケースもあるため、これから外国人労働者の雇用に取り組まれる方は、是非最後までご覧ください。

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就労制限って何?

まずは在留資格における就労制限とは何かについて、概要をお話していきます。

就労制限とは?

外国人は来日する際に、日本でどのような活動を行うかを提示し、その活動内容に基づいた「在留資格」が与えられます。

在留資格」は29種類存在し、その種類によって、日本で行うことができる活動範囲が指定されます。この「在留資格」は、巷でよく「ビザ」と呼ばれることがありますが、厳密には「在留資格」と「ビザ」は別物です。「ビザ」は外国人が日本に入国する際に必要な入国許可証のことを指しています。一方で、「在留資格」は、先に説明した通り、入国してから付与され、日本国内での活動範囲を指定するものになっています。

活動範囲としては、「就労活動の可否」や就労できたとしても、「従事可能な業務範囲」などが指定されることとなります。この就労活動の可否や就労活動の範囲を指定することを「就労制限」と言い、具体的には、

  • 就労制限なし
  • 一部就労制限あり
  • 就労不可

の3種類存在しています。 それぞれの就労制限については、後ほど詳しく解説していきます。

在留資格について、より詳しく知りたい!という方は、ぜひ「【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説」の記事もあわせてご覧ください。

就労制限が設けられている理由は?

在留資格に就労制限が設けられている理由としては、外国人労働者の在留を適切に管理することや、日本国内における日本人の雇用の保護などが考えられるでしょう。

就労制限を設けることで在留資格を分類し、在留後の外国人の活動を明確にすれば、在留管理も適切に行いやすくなります。

また、来日した外国人全員が就労制限なく、どんな業務でも就くことができれば、国内の労働市場のバランスが崩れ、国内における日本人の雇用が維持できなくなる恐れがあるわけです。

こういった背景から在留資格には就労制限が設けられていると考えられます。

在留資格別の就労制限はどうなっている?

ここからは就労制限における在留資格の分類について、詳しく解説していきます。

就労制限のない在留資格

まずご紹介する分類は「就労制限のない在留資格」です。

就労制限のない在留資格は、どのような業務にでも従事することができ、日本人とほぼ同じような働き方が可能となります。 パート・アルバイト、正社員などの雇用形態についても原則制限はありません。

2022年現在において在留資格は29種類ありますが、そのうち就労制限のない在留資格は以下の4つとなっています。

永住者

永住者とは、日本に永住することができる在留資格です。

永住という言葉通り、在留期間も無制限となり、就労制限もありません。就労時間にも制限がなく、パート・アルバイト、契約社員、正社員の雇用形態の区別なく、日本人と同様にあらゆる業務に従事可能です。

ただし帰化とは異なり、あくまで外国籍であることには変わりませんので、参政権や戸籍などを持つことができない点は留意しておきましょう。

永住者については、「【外国人労働者の永住権】概要や申請方法、帰化との違いなどを簡単に解説」の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

日本人の配偶者等

日本人の配偶者等は、日本人の夫又は妻、あるいは実子や特別養子が取得できる在留資格です。

日本人の配偶者等も就労制限がないため、どのような業務でも就労時間等の制限もなく、従事することができます。

在留期間としては5年・3年・1年または6か月となっていますが、更新が可能であるため、長期に渡り在留することが可能となっているのです。 

日本人の配偶者については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

永住者の配偶者等

永住者の配偶者等も、就労制限のない在留資格の一つです。

永住者の配偶者等は、永住者の配偶者や永住者の子として日本で生まれ、そのまま日本に在留することになる外国人が取得する在留資格になります。 

在留期間は5年・3年・1年または6か月となっており、日本人の配偶者等と同様に更新が可能です。 

日本人・永住者の配偶者に関しては、こちらの記事もあわせてご覧ください。

定住者

定住者とは、法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める者に付与される在留資格です。

具体的には難民や、日系三世などが定住者として挙げられるでしょう。

5年・3年・1年・6か月、又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)において在留が可能となっており、永住者と違い在留期間の更新も必要となります。

定住者について、より詳細な情報については、「【在留資格「定住者」とは】概要や取得要件、取得までの流れを解説」の記事をあわせてご覧ください。

就労が一定範囲に限定される在留資格

続いてご紹介するのは「就労が一定範囲に限定される在留資格」です。

いわゆる就労系在留資格のことを指し、それぞれ個別に許可された活動範囲において、業務に従事することが認められています。

29種類ある在留資格のうち、19種類が該当することになります。

一つずつ紹介していきますが、数が多いためどのような業務に就くことができるかといった概要のみ記載します。

  • 外交:外国政府の大使や公使、総領事やその家族
  • 公用:外国政府の大使館・領事館などの職員やその家族
  • 教授:大学教授
  • 芸術:作曲家や画家、作家
  • 宗教:外国の宗教団体から派遣される宣教師
  • 報道:外国の報道機関の記者、カメラマン
  • 高度専門職:営業、エンジニア、研究者
  • 経営・管理:企業などの経営者、管理者
  • 法律・会計業務:弁護士、公認会計士
  • 医療:医師や歯科医師、看護士
  • 研究:政府機関や企業の研究機関の研究者
  • 教育:中学校・高等学校などの語学教師
  • 技術・人文知識・国際業務:機械工学などの技術者、デザイナー、マーケティング従事者
  • 企業内転勤:外国の事務所からの転勤者
  • 介護:介護福祉士
  • 興行:俳優や歌手、ダンサー、プロスポーツ選手
  • 技能:外国料理の調理士、スポーツ指導者、航空機の操縦者
  • 特定技能:特定産業分野における業務に従事する外国人労働者
  • 技能実習:技能実習生

これらの在留資格はそれぞれ対応する業務のみ従事することができます。

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する外国人労働者が、「法律・会計業務」の在留資格に該当する弁護士や公認会計士の業務に就くことはできないというわけです。

また、在留期間もそれぞれ異なる上、通算在留期間の上限が定められている在留資格もあります。

先に挙げた「技術・人文知識・国際業務」は在留期間が定められているものの更新ができる上、通算上限などもないため、更新さえ許可されれば長期間にわたり就労することができます。

反面、「特定技能」や「技能実習」などは通算上限が定められているため、上限を迎えた場合、帰国するか、その他の在留資格に変更する必要があるのです。

また、上記の19種類とは別に「特定活動」と呼ばれる在留資格も存在しており、特定活動1号から46号とさらに細かく細分化され、各号ごとにある種就労が一定の範囲内に限定されています。法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を指し、外交官の家事使用人やワーキングホリデーインターンシップなどに従事するための在留資格となっています。

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就労不可の在留資格

就労制限による分類の最後にご紹介するのは「就労不可の在留資格」です。

就労不可に該当する在留資格は原則就労が認められていません。 

就労不可の在留資格は以下の5つあります。

文化活動

文化活動とは収入を伴わない学術や芸術上の活動を行う者や、文化などの研究を行う者に付与される在留資格となっています。

在留期間は3年・1年・6か月又は3か月です。

短期滞在

短期滞在とは日本への観光や保養、親族への訪問、講習会や会合などへの参加といった活動をするための在留資格です。

在留期間は90日もしくは30日、又は15日以内の日を単位とする期間としています。

その他の詳細はこちらの記事もあわせてご覧ください。

留学

日本の大学や高等学校などへの留学を行う外国人に対して付与される在留資格です。

法務大臣が個々に指定する期間在留することができますが、基本的に4年3か月を超えない範囲となります。

原則就労することはできませんが、「資格外活動許可」を出入国在留管理庁から取得することで、週に28時間までのアルバイトのみ可能になります。(夏休みなどの学校が長期休暇に入る期間は、アルバイト可能時間が週40時間まで延長可能です。)

その他の詳細については、「【在留資格「留学」とは】申請の流れなど基本的な概要を解説」の記事もあわせてご覧ください。

研修

日本の公私の機関によって行う研修に参加する外国人に付与される在留資格です。

在留期間としては1年、6か月または3か月となっています。

その他の詳細については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

家族滞在

高度専門職や技術・人文知識・国際業務などの在留資格を有する外国人労働者の扶養を受ける配偶者や子が、日本に滞在するための在留資格です。

5年を超えない範囲において、法務大臣が個々に指定する期間在留することができます。

その他の詳細は、こちらの記事をあわせてご覧ください。

上記のうち「留学」については、資格外活動許可を取得した場合に限り、28時間以内のアルバイトが可能と記載しましたが、そのほかにも「文化活動」、「家族滞在」に関しても、資格外活動許可を取得することで、アルバイトが可能になります。

資格外活動許可について詳しく知りたい!という方は、「【在留資格における資格外活動とは】要件や申請方法などをわかりやすく解説」の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

就労制限に違反するとどうなるのか?

ここまで就労制限や就労制限における在留資格の分類などについて見てきましたが、これらの就労制限に違反してしまった場合どうなるのでしょうか。

就労制限に違反すると不法就労に!

就労制限に違反すると、不法就労に該当することになります。

本来就労することができない在留資格で働いたり、許可された活動範囲を超えた業務に従事したりすれば、不法就労として罰則対象となります。

また、不法就労をさせてしまった企業側も不法就労助長罪に問われることになりますので、要注意です。

不法就労助長罪はぜひ「【不法就労助長罪とは】成立要件や防止方法などをわかりやすく解説」も併せてご確認ください。

不法就労にあたるケース

ここで不法就労にあたるケースを改めて確認しておきたいと思います。

不法就労に該当するケースとしては大きく以下の3つが考えられるでしょう。

  1. 不法滞在者(不法入国者や違法滞在者など)の就労
  2. 就労が認められていない在留資格での就労
  3. 許可された活動範囲外の活動に従事する 

このうち2と3は先ほど触れた通り、就労制限に違反したケースを指しています。

外国人労働者の雇用を検討しているのであれば、これらのケースをしっかりと理解した上で、不法就労の防止にも取り組んでいく必要があります。具体的には、後ほど説明するポイントを、面接を通じてしっかりと確認するようにしましょう。

不法就労における罰則

万が一不法就労に該当してしまった場合、当然罰則の対象となります。

外国人労働者本人に対しては、刑事処分として3年以下の懲役もしくは禁錮、又は300万円以下の罰金が科されます。

さらに行政処分として、強制送還や国外追放の対象となってしまうのです。

企業側も不法就労助長罪が適用されるため、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらを併科されることになります。

不法就労助長罪については、不法就労の事実を知らなかった場合でも原則処罰の対象となる点は理解しておくべきでしょう。

就労制限の有無を判断するためのポイント

最後に就労制限の有無を判断するためのポイントについてご紹介しておきましょう。 

ポイント①:在留カード

まず一つ目のポイントは在留カードです。

在留カードには外国人の氏名や生年月日、性別や国籍・地域などの基本情報の他に以下のような情報も記載されています。

①在留資格
②就労制限の有無
③在留期限
④資格外活動許可の有無

在留カードのサンプル画像(出典:出入国在留管理庁HP)
出入国在留管理庁「在留カード」はどういうカード?を元にジンザイベースが作成

このうち就労制限の有無の欄から、就労制限について確認することができるでしょう。

就労制限の有無欄の記載としては、

  • 就労制限なし
  • 在留資格に基づく就労活動のみ
  • 就労不可

の3つのパターンがあります。 

これらの表記と合わせ、在留資格の名称を確認することができれば、就労制限の有無を把握することができるわけです。

また就労不可と記載されていた場合でも、裏面の資格外活動許可欄に「許可:原則週28時間以内・風俗営業などの従事を除く」とあれば、アルバイトなどには従事できるので、併せて確認するとよいでしょう。

ポイント②:パスポート

もし在留カードを確認するだけでは不安であれば、併せてパスポートも確認してみてください。

パスポートにおいても、上陸許可証印などによって在留資格や在留期間を確認することができます。

また資格外活動許可についても、資格外活動許可証印などを確認することで、資格外活動許可の有無や許可の期限、許可されている活動内容を把握することが可能です。

在留カードと合わせてパスポートもチェックすれば、不法就労などのリスクを下げることができるでしょう。 

ポイント③:パスポートの指定書

また在留カードを確認した際に、在留資格が特定活動となっていた場合の確認方法についてもお話しておきます。

この場合、在留カードには「指定書により指定された就労活動のみ可」としか記載されていません。

そのため具体的な内容を確かめるには、パスポートの「指定書」を確認する必要があるのです。

指定書にてどのような活動が許可されているのかを確かめなければ、当該外国人が就労活動に従事できるかも判断しかねるので、必ず確認するようにしましょう。 

まとめ

今回は就労制限をテーマに、就労制限における在留資格の分類や就労制限の有無を判断するためのポイントなどをお話してきましたが、いかがでしたか。

外国人労働者の雇用に取り組む場合、出会うことが多くなるのは就労系在留資格でしょう。

就労系在留資格は「就労が一定範囲に限定される在留資格」に該当してくるため、在留資格ごとに設定されている範囲を超えて業務に従事させることはできません。

そのため雇用を検討しているポジションに該当する在留資格がどれかをしっかりと見極め、就労制限の範囲も把握した上で、雇用に取り組む必要があるでしょう。

当社は外国人労働者を専門とする人材紹介サービスを提供しておりますので、もしどの在留資格が適しているのかわからないなどのお悩みがあれば、一度お気軽にご相談ください。

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監修者
編集
菅原 勇人
菅原行政書士事務所代表。埼玉県熊谷市生まれ。2017年早稲田大学大学院卒業後、建材商社へ入社。主に営業として、中小中堅の建設事業者への提案に従事。就労をしながら、行政書士や宅建など法務系資格を複数取得。現在は菅原行政書士事務所の代表として、約1,000件にも及ぶ申請取次業務に携わる。行政書士(埼玉県行政書士会所属 / 第24132052)
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