外国人労働者の在留資格
外国人労働者が日本で働くには、就労が認められている在留資格を取得する必要があります。
在留資格のうち就労が認められているのは、以下の2つのカテゴリーに属する在留資格のみです。
- 就労制限のない在留資格:永住者や定住者など
- 就労制限のある在留資格:技術・人文知識・国際業務や経営・管理など
留学や短期滞在といった就労不可の在留資格は、原則日本での就労は認められていません。
この記事では就労制限のない在留資格に属する「定住者」について取り上げ、詳しく解説していきたいと思います。
なお、在留資格の基本的な概要については、以下の記事で解説しています。
▶︎【在留資格とは】種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説
在留資格「定住者」とは
まずは定住者の基本的な内容から確認していきましょう。
概要
在留資格「定住者」とは、法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して移住を認められた者が取得する在留資格となります。
例として第三国定住難民や日系3世、中国残留邦人などが挙げられるでしょう。
また「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格を持つ外国人が、配偶者との死別によって「定住者」を取得するというケースや、日本人との間の実子を扶養する者が取得するというケースもあります。
従事できる業務
在留資格「定住者」は冒頭で触れた通り、就労制限のない在留資格のカテゴリーに属しています。
そのため基本的に在留活動に制限はなく、公序良俗に反する業務を除き、あらゆる業務に従事することができるのです。
営業やマーケティング系の職種は勿論、システムエンジニアや機械設計者などの技術者、経理や会計に関する業務など、高度人材が従事できる業務も当然従事することができます。
また高度人材が従事できない工場ラインでの作業員やホテルなどの清掃、レストランでの食器洗いといった単純作業系の業務にも従事することが可能です。
雇用形態・報酬
在留資格「定住者」を有する外国人労働者を雇用する場合、正社員は勿論のこと、契約社員や派遣社員、アルバイトやパートといった形態でも雇用可能となります。
報酬については、就労系在留資格のように要件として一定以上の報酬が定められているわけではありませんが、一般的に同等業務に従事している日本人従業員と同程度の報酬が求められるでしょう。
在留期間
定住者の在留期間は以下のようになっています。
- 5年
- 3年
- 1年
- 6か月
- 又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)
それぞれの在留期限が迫ってきた場合、在留期間更新許可申請を実施し、在留期間を延長する必要があります。
在留期間更新申請については、以下の記事で詳細をご確認ください。
▶︎【在留期更新の基本】手続きの流れや必要書類などをまとめて解説
家族帯同の可否
定住者の在留資格を有する外国人は、未成年且つ未婚の実子であれば同じ「定住者」の在留資格にて、日本に呼び寄せることができます。
また養子も6歳未満であれば、呼び寄せることができるケースがあります。
在留資格「永住者」との違い
在留資格「定住者」は、同じく就労制限のない在留資格に属する「永住者」と混同されがちですが、両者の違いについて確認しておきましょう。
永住者は法務大臣が日本での永住を認めたものが取得できる在留資格であり、在留期間は無制限となります。
在留期間が無制限であるため、在留期間更新許可申請なども必要ないのです。
対して定住者は先述の通り、在留期間には制限があるので、在留期間の更新手続きが必要となります。
在留資格「定住者」の取得要件
続いて、在留資格「定住者」を取得するための条件について確認しておきましょう。
取得要件
在留資格「定住者」は基本的に、法務大臣が定める以下の告示に該当する場合、取得することができます。
告示1号
インド、インドネシア、カンボジアなどからの第三国定住難民
告示3号
日本人の子として出生した者の実子であって素行が善良であるものに係る者(日系二世)
告示4号
日本人の子として出生した者で、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがある者の実子の実子であって素行が善良であるものに係る者(日系三世)
告示5号
日本人の配偶者等の在留資格を有し且つ日本人の子として出生した者や、1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格を持つ者などの配偶者
告示6号
日本人や永住者、1年以上の在留期間を持つ定住者、特別永住者などの実子
告示7号
日本人や永住者、1年以上の在留期間を持つ定住者、特別永住者の養子
告示8号
中国残留邦人やその配偶者、実子、養子
各告示については法務省が発行する資料により詳しい内容が記載されているので、併せてご参照ください。
※告示2号は削除されています。
素行善良要件
先に挙げた告示のうち3号~6号については、素行善良要件も設けられています。
素行善良要件として、以下に該当しないことも求められるのです。
- 日本、又は日本以外の国の法令に違反して、懲役、禁錮、罰金又はこれらに相当する刑(道路交通法違反による罰金等は除く)に処せられたことがある者
- 少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号、第3号)が継続中の者
- 日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等、特段の事情がある者
- 他人に入管法に定める証明書の交付、又は許可を受けさせる目的で不正な行為を行った者、又は不法就労の斡旋をした者
不許可になるケース
不許可になるケースとして、法務省が提示している事例から引用してご紹介しておきますので、先に挙げた要件と照らし合わせつつ確認してみてください。
事例4
“日系3世として、在留資格「定住者(3年)」の上陸許可を受けて入国し、以後1回の在留期間更新許可を受けて在留していたところ、詐欺及び窃盗の罪により、懲役2年・執行猶予4年の刑が確定したもの。
同人から、上記執行猶予期間中に、引き続き日系3世として在留したいとして、在留期間更新許可申請がなされたところ、在留状況に問題があるとして、在留期間の更新が認められなかったもの。“
事例5
“日系3世の配偶者として、在留資格「定住者(1年)」の上陸許可を受けて日系3世である夫とともに入国し、以後2回の更新許可を受けて在留していたところ、引き続き日系3世の配偶者として在留したいとして在留期間更新許可申請がなされた。
上記更新申請の際に提出された源泉徴収票上の住所地が入管法に基づき届け出られた住居地と相違していたことから、調査した結果、同人は、入国以来、源泉徴収票上の住所地に居住していたにもかかわらず、在留期間更新許可申請の際には、日系3世である夫の住居地を住居地として、虚偽申請をしていたことが判明したことから、在留期間の更新が認められなかったもの。“
在留資格「定住者」のメリット・デメリット
続いて外国人労働者を雇用するにあたって、定住者を対象とするメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
メリット
メリット①:業務における制限がない
定住者の在留資格を持つ外国人労働者を雇用する場合、業務における制限がありません。
そのため日本人従業員と同様に、様々な業務を任せることができます。
メリット②:長期的に雇用できる
永住者と異なり在留期間更新は必要であるものの、更新が許可される限り、長期に渡って雇用することができる点もメリットと言えるでしょう。
デメリット
デメリット①:永住者と比較して、人数が少ない
2021年末時点における永住者が831,157人いるのに対し、定住者は198,966人となっています。
そのため業務における制限がない外国人労働者を雇用したいのであれば、永住者を候補とする方が母数は多いと言えるでしょう。
デメリット②:難民など、複雑な事情を抱えているケースがある
定住者の中には難民などもおり、複雑な事情を抱えているケースも往々にしてあります。
そういった場合、長く安定して雇用することが難しい場合がある点には注意しておきましょう。
難民については、以下の記事もあわせてご確認ください。
▶︎【移民と外国人労働者】定義の違いや受け入れの現状などをわかりやすく解説
在留資格「定住者」の取得申請
最後に在留資格「定住者」の取得申請について、ご紹介しておきましょう。
手続きの流れ
在留資格「定住者」の在留資格を取得するまでの流れについて確認しておきましょう。
定住者を取得する際、以下のいずれかを実施することになります。
- 在留資格認定証明書交付申請(国外の外国人が来日する場合など)
- 在留資格変更許可申請(別の在留資格で在留中の外国人が変更する場合など)
- 在留資格取得許可申請(定住者の子として出生した場合など)
それぞれ流れについては
①必要書類を準備
②出入国在留管理庁に申請
という形になります。
在留資格認定証明書交付申請のみ、その後以下の流れを踏む形になります。
③交付された証明書を申請人(在留資格を取得する外国人)へ送る
④申請人が在留資格認定証明書等の必要書類を準備し、在外公館にてビザ申請を実施
⑤来日
取得申請に必要な書類
先にご紹介した各申請に必要な書類は多岐に渡るので、それぞれ詳細が記載されているページをご紹介しておきます。
更新の手続き
また在留期限が迫ってきた際に必要となる在留資格更新許可申請についても、簡単にご紹介しておきます。
手続きの流れは先にご紹介した手続きと同じで、必要書類を準備し出入国在留管理庁まで申請する形となります。
必要書類などの詳細については、こちらの出入国在留管理庁のページをご確認ください。
在留期間更新申請については、以下の記事で詳細をご確認ください。
▶︎【在留期更新の基本】手続きの流れや必要書類などをまとめて解説
まとめ
今回は在留資格「定住者」について、詳しくお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は外国人労働者に特化した人材紹介サービスを提供しており、定住者を含めた外国人労働者の採用を支援しております。
人材紹介サービスだけでなく、受け入れ体制の構築支援や定着率向上のためのサポートなども行っておりますので、少しでもご興味ありましたらお気軽にお問い合わせください。